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紙の本
読者参加型ミステリー
2002/03/10 08:12
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:modern - この投稿者のレビュー一覧を見る
印象的な装丁といい、収録作の前半と後半で「DISC-1」、「DISC-2」と分けられている趣向といい、全体に洒落た雰囲気を漂わせた短編集である。しかしこの作品の読みどころはその「収録順」にこそある。「DISC-1」における最初と最後の短編、そして「DISC-2」における最初と最後の短編に留意して読めばすぐ気付くものであることは著者もあとがきで述べているが、「読者参加型」のミステリーになっているのである。推理小説における「読者」の役割を見つめ直す、という逆説的な試み。それは完全に成功していると言って良い。特に最後に収められた「不在のお茶会」は、「小説」そのものの意義を問い直す極めて意欲的な作品であり、日本短編ミステリ史上最高峰の作品と言っても過言ではないだろう。大傑作。
紙の本
あなたと私と本の中
2007/08/20 21:16
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
言葉がまとまらない・・・なにせ短編集。面白いものもあればつまらないものもある。ミステリーを読みなれている者であれば新鮮さは無いかもしれない。「密室症候群」や「禍なるかな、今笑う死者よ」など最初からわりと展開がわかりやすいし、わけもわからず混乱のうちに終わる奇妙なものもある。だから既存のミステリを再構築したり使いまわしたり、という感は、正直ある。しかし私は非難しているのでは決して無い。そうした寄せ集めでありながらも一貫して一つの図太いテーマが貫かれていることに賞賛さえあたえたくなるからだ。
虚構と真実、真実と事実、世界と私、被害者と犯罪者、主人公とその他大勢、そして作者と読者・・・。二元論で語りつくせる世界ではないが、そこに有るか無いか、これは正か偽か?そんな単純な選択からこの世界は成り立っている。そして人間は往々にしてその選択を「これはこうなのだ」と思い込んで当たり前の如く選択する。その選択によって人は被害者や加害者、受態にも能動態にもなるのだから、選択を誤ったとき思わぬほうに事態が転がるのである。
最終章『不在のお茶会』は「私」とは何なのか?合わせ鏡のように続いていく「私」と私を見つめる「私以外の存在」との相互認識の無間地獄。誰もが一度は陥る?永遠の合わせ鏡の恐怖だ。存在するということは主語を伴わないで表される「こと」であり、その対極に守護となりうる既製の事実に存在する「もの」がある。非情に面白い見解だった。しかし物語りはさらに進み、もう一つの大きな命題に突入する。作者と著者と物語の住人との関係だ。
どの章にも一貫して感じるのは著者は常にわたしたち=読者に謎を問いかけ挑戦し、読んでもらうことで読者にこの本を存在せしめているのだということ。なぜなら本は、小説は、わたしたちが読者となった瞬間に初めてこの世に存在するからである。
ソレが本当に有る・無いという認識論を始めると途方もないし、興味がある方は哲学書を読み漁るか仏教の空の思想でも習うがいいだろう。
しかしこれはミステリーズ、ミステリーを純粋に楽しめばよい。
著者はミステリ作家なのだし私たちは読者以外の何者でもないのだから。
紙の本
自身を見つめる
2001/02/12 00:42
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投稿者:ヤスフミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
この『ミステリーズ』には、作者が自分自身を見つめなおしているような雰囲気があります(あくまで僕の考えですが)。詳しくは作者があとがきで語っている、この作品集のトータルコンセプトについて読んでもらえばいいのですが、各作品にこめられた「私」という存在についても言及しておく必要があると思います。
『密室症候群』は、密室トリックものばかりを書く小説家には、何か密室を書く原因があるのではないか、と小説家の心理を暴こうとする心理療法家の話ですが、最終的には「存在」で終わります。精神分析を行っているのも面白いです。
『解決ドミノ倒し』は、難しい話ではなくトリックとして、そのコンセプトに沿っています。雪に降り込められた山荘で起きた殺人事件を探偵が解くという、本格ではオーソドックスな舞台設定です。題名の通りで、ドミノのように一番最初が崩れたが最後、ラストまでそれを引きずります。
『私が犯人だ』は、目の前に死体があり、犯人である自分もすぐそばにいるにも関わらず、そこで働いている刑事達が、自分に気付いてくれない、というもの。「私が犯人だ!」と何度も叫んでも相手にしてもらえない孤独の悲しさがあります。
『不在のお茶会』。題名から分かる人もいると思いますが、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』のパロディ(?)っぽいものです。作家・精神科医・植物学者という三人の登場人物たちは、そこに本来いるべき“主人公”がいないということに気付きます。しかし、“主人公”とは誰なのか、という疑問にぶち当たり、いつしか彼らは、自分たちは誰かの夢の中の人物なのかもしれない、などと考えるようになります。そしてラストまで続く「私」についてのメタ論理的な会話はかなり理解するのが難しいです。しかし、この作品集で作者が表現したかったことは、ほとんどがここに集約されているといってもいいと思います。
紙の本
ミステリーとはちょっと違う
2001/03/10 00:09
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投稿者:真 - この投稿者のレビュー一覧を見る
短編集で、ミステリーらしくないものもいくつか混じっているが、この作者のカラーが前面に出た作品。
個人的に楽しめたのは「解決ドミノ倒し」ぐらいで、あとはいまいち。タイトルは「ミステリーズ」だが、少しミステリー色が薄いような気がした。