紙の本
こころが再生していく
2023/04/30 07:41
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投稿者:りら - この投稿者のレビュー一覧を見る
連作短編集。
依頼された額を創作するにあたり、依頼主や収めるもののことを知っていく。
そのことで、自分の気持ちにも変化が起こっていく。
身近な人に額装を依頼される。
というか、そのようにもっていく。
そうして、そのひとのことを知っていく。
額に収めることで、いつでも見られるようになる。
依頼主は、そうする勇気が持てたから額装を依頼するのだろうし、また見守ってもらいたい面もあるのだろう。
こころの中のいろいろな感情を含めて額装したものを見つめる。
そのことで、未来へ向かう力を得るというか見出す。
詩的な描写で、淡々と語られる。
谷さんの透明感のある文章をしっとり味わいたい。
電子書籍
作品全体に祈りが込められているよう
2022/12/01 06:38
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投稿者:美佳子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
谷瑞恵はこれまでコバルト文庫などの少女向け小説家というイメージがありましたが、この作品は新潮文庫というだけあって、文学性が高いです。
主人公は、婚約者を事故で亡くし、その婚約者の職業であった額装を自分で始めることで、亡くした人とのつながりを保とうとする奥野夏樹。
彼女の元にくる変わった額装の依頼(宿り木の枝、小鳥の声、毛糸玉にカレーポット)のために依頼主の背景や動機など依頼の裏に隠されているものを探し、その心を祭壇のような額で包み込む。そうした額装は夏樹の祈りのようなもの。
彼女の額装に興味を示し、何かと話しかけたり、手伝ったりする純。彼もまた子どもの頃に友だちと川でおぼれ、不思議な臨死体験をしたことがあり、後遺症や罪悪感にもがいています。
登場人物たちは皆、心に傷を負っており、その思いを額装してもらうことで観賞可能にし、心の折り合いをつけていきます。
身近な人を失った喪失感とそこからの立ち直りが本書の根底にあるテーマで、作品全体に祈りが込められているようです。
額装というなじみのない世界を垣間見ることもできて、その奥深さにも感動を覚えます。
紙の本
心あたたまる本
2021/10/31 22:22
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投稿者:Pana - この投稿者のレビュー一覧を見る
登場人物は暗い過去を持つ人が殆どで、辛くもなりましたが、皆それぞれに前に進んでいこうとする前向きな気持ちへと変化していく過程はとてもいいなと思いました。
額装師という知らない世界を知れた感じで、楽しんで読めました。
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この作者は西洋画のイコンの話も書いてるし、こういうジャンルがとくいなのかな。
頼めばなんでも額装してくれる額装師、奥野夏樹。
彼女はいかにして額装師になったのか。
登場人物の関係が複雑に絡み合って、少しずつ解けていく感じがとてもよかった。
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婚約者の死に関わりのある男に対する昏い思いを抱きつつ、持ち込まれる依頼に応えて額縁制作に没頭する。そんな緊張感をはらみつつ優しさにも満ちた物語です。
額装という仕事も興味深い。決して主役にはなってはいけないけど、存在感がなさすぎてもいけない。塩梅の難しそうなお仕事です。
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そろそろ文庫になりそうだけどまだかなと思っていたら改題されていて少し驚き。
2章のインコの話が好きです。
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「額を紡ぐひと」を文庫化した作品。
額装師という言葉はほぼ初めて聞いたのですが、ただ絵の枠組を作るのではなく、その絵を引き立たせる「脇役」のような存在ということで、今度からは絵だけでなく、額にも注目しようと思いました。
主人公は額装師の奥野夏樹。男性のような名前ですが、女性です。バスの転落事故により、婚約者を喪くし、意志を継いで、額装師になりました。小さな工房には、様々な依頼者が。ただ、額を作るのではなく、依頼者の背景となる過去や家、どんな絵に収めるのか色々なことを聞いたりします。
全5編の連作短編集です。
ただ、額装師という職業の魅力を伝えるよりも三人の過去に重点を置いている印象で、もう少し魅力が伝わって欲しかったなと思いました。
三人の過去が、まぁ重い事情を抱えているのですが、言葉の選び方が優しいためか、あまり重い気持ちにはなリませんでした。オブラートのような優しく包み込むような雰囲気にさせてくれるので、温かみがありました。
また、依頼者は奇妙な依頼が多いのですが、主人公の推理がちょっと無理矢理感があるかなと思いましたし、果たしてその推理があっているのか?〇〇なのでは?といったモヤっと感で終わるので、消化不良かなと思いました。
次作があるならば、今度は額装師としての魅力を前面に引き出していただきたいなと思いました。
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『額を紡ぐひと』を改題し、文庫化された本。
額装することで昇華する、気持ちにケリをつけ、自分だけのものでなくなって初めて客観的に見ることが出来る。
改題しない方が良かったのでは?
文庫は表紙もラノベっぽい仕上がりで少し残念…谷さんのライトノベルは面白く、優しい視点で描く世界観が素敵だけれど大人向けにももっと書いて欲しいと思う。
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文章が良みやすい。額装することで個の経験が一般性を持つものなら、私の人生にも額装して欲しいものがある。着想の妙といったところか。
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連作集。
細やかで繊細な人の心の揺れ動きを各話で描きつつ、全編で主人公が抱えていた想いを昇華させてゆく過程が描かれています。
終盤に急に出てきた登場人物が、主人公とその婚約者を取り巻いていた状況をがらりと変えてしまったので驚きました。かなり重要な人物のように思えたのですが、あまり深く触れられなかったのは主人公がそこから抜け出しかけていたからなのかな…。
それぞれの依頼人の変わった注文が、その人が抱えている問題へ帰結していくストーリーは読んでいて心地好かったです。
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本屋でぶらぶらしてるときに額装師という単語が目について、買った本。
宿り木と小鳥の話が好きだな。
額は何かを封じ込める、時を止めるもののような表現をされていてなんだかかっこいいなと思った。
額を作る奥野の取り組み方がいいなとおもった。人の内面に踏み込むなんて、踏み込む物も踏み込まれる方も怖い感じがする、でも安心することもあるんだろうな。
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大切な人を亡くしたこと、仕事を変えたこと、重なる部分が多くて、はっとする。
心残りを整理して、きっぱりスタートできたら、どんなにいいことだろう。
そして、私もこんな風に自分の心の奥底を暴かれたい、そんな風に思った。
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額を作るってとてもシンプルなことだと思っていたが、額は単に写真や絵を収めるためのものではないということに吃驚した。
このお話は、夏樹の依頼人の心の秘密を明らかにしていく…と言う点で、ほんの少しだが少しミステリー要素があると思った。もちろん、その依頼人の秘密に迫るところもこの本の読みどころではあるが、個人的に、依頼人の複雑な想いに添って夏樹がどんな額を手がけるのかが気になった。
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装丁に惹かれて「額装師」という言葉を知らないまま読み始めました。
額装=絵画というイメージしかなかったので、絵画以外のものでも何でも額装出来てしまう夏樹の魅力にいつの間にか惹き込まれていました。
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自分の作品をよく自分で額装するので、額装を少し勉強しようと何冊か取り寄せた中の1冊。
これは「思い出の時~」の谷さんが書いてるので気になりました。内容は思い出の時の時計が額になった感じかな。でも、モノを作るってその人の人生をさらけ出してしまうから、額に入れるモノの持ち主の人生もさらけ出されてしまうのね。