知っておくべきデジタル政府の失敗の歴史
2021/02/15 17:39
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:けいちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
個人的に昔、SEABISやGIMA、人給など府省共通システムに断片的に関わったことがあったので、興味深く読みました。
日経コンピュータや日経クロステックの過去記事からの収録が多いですが、それが「デジタル政府の失敗」というひとつのテーマでまとまっていることに本書の価値があります。
e-Japan戦略から始まる政府のデジタル政策の大きな流れや、その過程で起きた特許庁、年金、人給といった失敗事例がよく分かります。
直近で起こったHER-SYS、COCOA、G-MIS等についても問題の経緯を詳細に記載しており、とても分かりやすかったです。
失敗事例だけではなく、政府CIOによる立て直しの記録やBPMの導入、農水省によるSlackを用いた自治体や農業従事者とのコミュニケーション事例など、成功事例についてもいくつか触れられていたので、示唆的な内容もありよかったです。
自治体の失敗事例として、京都市の事例が詳細に載っているのもよいです。まだ民事調停も続いているところですが、判例として旭川医大とNTT東の発注者側責任を問う判決事例と並んで後々に残りそうなものなので、最新の状況も踏まえて経緯が記載されており、読みごたえがありました。
本書の記載内容に関しては中央省庁や自治体の情報なので、失敗事例についても契約情報など基本的にはすべて公開されている情報であり、本書独自の情報としては、いくつかあるインタビュー記事の内容くらいかなと思います。
ただ、公開情報であっても、それが時系列的に網羅的にまとまっているので、本書には資料的な価値が十分にあると思いました。
これから政府も自治体もデジタル化が大きく進んでいく中で、それに関わる人たちは、本書に記載されている内容は知っておき、過去の失敗を繰り返さないようにする必要があると思います。
特に地方自治体は基幹系システム17業務の標準化を「25年度末までに統一」という話が降って湧いてきたところで、「標準化」の中身が明らかでない中でもBPRを進めなければならず、国の「業務・システム最適化計画」の失敗を繰り返さないように早急に検討を進めなければなりません。
発注者側のガバナンス、BPRを含めた仕様の作成、ステークホルダーの協力体制など、当たり前のことですが、プロジェクト現場に入り込むとなかなか問題が見えにくくなってしまうことがあります。
その時に、過去の失敗事例を知っていれば、「ヤバい」という勘所は掴めるようになると思います。そうすれば、何が「ヤバい」のか落とし込んでいき、足りないリソースは外部コンサルでも使って埋めていくことができます。「ヤバい」ことの具体的な原因は組織やプロジェクトによっても異なりますし、まずは「ヤバい」ことに気付けることが大事かと思います。
今年の9月にデジタル庁ができることで、国や自治体だけではなく、民間企業への影響も多かれ少なかれ色々な形で出てくるのではないかと思います。
「DX」がバズワードになって久しいですが、民間企業も政府の失敗事例から学ぶところは大きいと思います。
政府だけではなく、自治体でも民間企業でも、デジタルに関わる人は読んで知っておく価値のある内容の一冊です。
難しけれど、拾い読み
2021/03/01 17:05
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:すぱこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
どちらかというと苦手な分野。
ゆくゆくは、マイナンバーをスマホ搭載ということを含め、1度は読んでおきたい内容。
自分が興味あるページを読むだけでも、勉強になります。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:怪人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
成果はこれからだろうが、デジタル庁が発足して何が変わるのだろうか。IT基本法制定以来20年余りの失敗がコロナ禍でいみじくも世間に露呈してしまった。冒頭に紹介されている、IT活用3つの壁として、縦割りの壁(霞ヶ関、横割りの壁(自治体と政府)、国民の壁(政府による監視を嫌う)が挙げられている。
確かに事例をみると多くはそうだろう。行政組織の責任もあるだろうが、政治家の責任もあるだろう。国も地方も行政のトップは政治家、議会はそれをチェックする役割がある。行政組織は20年どころかそれ以前から定員削減が続けられてきた。削減が始まったころは確かに不要と思われるあるいは民間に任せた方がよい業務もあったが、次第に皮だけでなく骨も切るような定員削減になり、その影響は大きくなったといえるのだろう。
本書に、国、自治体のシステム開発改良の失敗談がルポされている。大きな要因の一つに発注者側の行政側の人材不足を指摘している。社会インフラとして継続的なサービスをしていかなくてはならない仕事はもちろんだが、IT活用のような新規業務のために、専門的職員を大幅な増員することもできずに不十分な体制しかできていなかったのではないか。
時代の流れを読むトップの政治家の判断と決断が必要だ。誰が悪いといっても始まらないが、韓国の成功事例でも手本にすべきだろう。
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なぜデジタル政府は失敗し続けるのか|日経BPブックナビ【公式サイト】
https://www.nikkeibp.co.jp/atclpubmkt/book/21/281970/
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個人的に昔、SEABISやGIMA、人給など府省共通システムに断片的に関わったことがあったので、興味深く読みました。
日経コンピュータや日経クロステックの過去記事からの収録が多いですが、それが「デジタル政府の失敗」というひとつのテーマでまとまっていることに本書の価値があります。
e-Japan戦略から始まる政府のデジタル政策の大きな流れや、その過程で起きた特許庁、年金、人給といった失敗事例がよく分かります。
直近で起こったHER-SYS、COCOA、G-MIS等についても問題の経緯を詳細に記載しており、とても分かりやすかったです。
失敗事例だけではなく、政府CIOによる立て直しの記録やBPMの導入、農水省によるSlackを用いた自治体や農業従事者とのコミュニケーション事例など、成功事例についてもいくつか触れられていたので、示唆的な内容もありよかったです。
自治体の失敗事例として、京都市の事例が詳細に載っているのもよいです。まだ民事調停も続いているところですが、判例として旭川医大とNTT東の発注者側責任を問う判決事例と並んで後々に残りそうなものなので、最新の状況も踏まえて経緯が記載されており、読みごたえがありました。
本書の記載内容に関しては中央省庁や自治体の情報なので、失敗事例についても契約情報など基本的にはすべて公開されている情報であり、本書独自の情報としては、いくつかあるインタビュー記事の内容くらいかなと思います。
ただ、公開情報であっても、それが時系列的に網羅的にまとまっているので、本書には資料的な価値が十分にあると思いました。
これから政府も自治体もデジタル化が大きく進んでいく中で、それに関わる人たちは、本書に記載されている内容は知っておき、過去の失敗を繰り返さないようにする必要があると思います。
特に地方自治体は基幹系システム17業務の標準化を「25年度末までに統一」という話が降って湧いてきたところで、「標準化」の中身が明らかでない中でもBPRを進めなければならず、国の「業務・システム最適化計画」の失敗を繰り返さないように早急に検討を進めなければなりません。
発注者側のガバナンス、BPRを含めた仕様の作成、ステークホルダーの協力体制など、当たり前のことですが、プロジェクト現場に入り込むとなかなか問題が見えにくくなってしまうことがあります。
その時に、過去の失敗事例を知っていれば、「ヤバい」という勘所は掴めるようになると思います。そうすれば、何が「ヤバい」のか落とし込んでいき、足りないリソースは外部コンサルでも使って埋めていくことができます。「ヤバい」ことの具体的な原因は組織やプロジェクトによっても異なりますし、まずは「ヤバい」ことに気付けることが大事かと思います。
今年の9月にデジタル庁ができることで、国や自治体だけではなく、民間企業への影響も多かれ少なかれ色々な形で出てくるのではないかと思います。
「DX」がバズワードになって久しいですが、民間企業も政府の失敗事例から学ぶところは大きいと思います。
政府だけではなく、自治体でも民間企業でも��デジタルに関わる人は読んで知っておく価値のある内容の一冊です。
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「動かないコンピュータ」をはじめ、システム導入刷新の歴史を長年ずっと追いかけてきている日経コンピュータは、信頼に足るメディア。
最後の有識者のチョイスだけ疑問だったが、行政システムの歴史を手軽に追えて良書だった。
若手官僚は特許庁システムや年金システムの話を知らないままデジタル政策に携わる人も多いので、最初のうちに読んでおくとよいのではないか。
あとはデジタル庁が行政システム庁と揶揄されないように、願うばかり。
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日本のデジタル敗戦20年間の総括 ここが出発点 他にない良書
菅政権のデジタル庁も同じ認識というが、菅総理にどこまで理解されているか
なぜ官房長官の時に全く手をつけなかったのか?
問題の本質が日本の国の形にある=永田町・霞が関の中央集権体制
江戸幕府と同じく時代に合わない宿痾と化している
必要なのは「明治維新」
江戸幕府大老として長く権力を振るってきた菅氏に果たして可能だろうか?
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p194 自治体職員100人に一人くらいはコンピュータマニアがいる(登大遊)
p215 サイボウズ kintone
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ここに出てくる大臣や関係者の話を読んでも、残念ながら、今後、日本で、政府のデジタル化が格段に進展するとは感じられない。まぁ、デジタル化したからと言って、即、改「善」につながる訳ではないので、そもそもの目的によるのだが・・・
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P84 お金に財務省や会計検査院があるように、ITにもあったら、少しはマシかも。会計検査院の根拠は憲法なので、無理ですけど。
P96- 特許庁の案件がすばらしいことみたいに書いてあるのですが、あたりまえのことなので。
高評価しておいてなんですが、「お金がない」で増税しておいて無駄金使って……。読んでいて嫌な気分になりました。原資が税金なので、最悪のゾンビ企業は国家なんじゃないかと。
伝統的に、この国の官僚は標準化・共通化をする能力がないと思っています。電力の周波数、列車のレール幅の統一すらできないのですから。
※レール幅 狭軌、標準軌、馬車鉄道由来……が混在
発注側(官僚)が一方的に悪いみたいな論調ですが、受注側のヒアリング力というか、業務内容を引き出す能力にも問題があるかと。
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発注者側、つまり官側の人材を手厚くすべきということは理解したが、優秀な人材をたくさん入れると発注者側の人件費が結構膨らむのでは?
ベンダ側に払うコストが減ってもトータルであまり差がなければ、コスト削減にはならないかも、、、?
試算した例があるといいかなと思いました。
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政府や自治体のデジタル施策の失敗の歴史。
後半は希望のある書き方をしているけど、これからも負け続けるだろうな。
平井卓也や竹中平蔵らのインタビューがあったけど、これに対する批判的な視点が無かったのが残念。
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特別定額給付金のマイナンバーカードを使うオンライン申請、感染者情報管理「HER-SYS」、接触確認アプリ「COCOA」の相次ぐ不具合を皮切りに、年金システムや特許庁システムなど過去の失敗プロジェクトを振り返り、入札から開発そして検収のプロセスを検証する。移動の多い公務員ならではの理由で発注側(行政)の力量が不足しているとのことです。自分のシステム開発を振り返っても顧客側の力量不足は致命傷であることは間違い無いところですが、こちらでRFPを書いていると豪語する大手SIerが受注して顧客側の力量不足に帰結するのもなんかもやもやします。デジタル庁にもその期待を込めてページが割かれてますが、約73億円のオリンピックアプリなど前途多難のようです。また、渋谷区のLINEを使った住民票取得にも言及していて、総務省が「セキュリティ、法律の観点から問題がある」と指摘したようですが、あんな事件があったにも関わらず渋谷区は改める気が無いようです。これは総務省が正しい、さっさと止めさせて欲しいものです。渋谷区民としてもまったく情けない限りです。。。
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新型コロナウィルス対応であらためて明るみになった政府のデジタル施策ですが、実は2001年に策定された「e-Japan重点計画」以降、失敗の連続でした。
縦割り組織、丸投げ体質(と、そこに起因する政府/自治体の発注能力低下)などが主な要因として考えられます。
加えて、中央と地方自治体との間に横たわる壁(横割り)であったり、政府内に優秀なIT人材が不足していたなど、問題点を挙げればキリがありません。
こうした課題を解決すべく2021年9月に発足する「デジタル庁」には、自ずと大きな期待が寄せられます。
各省庁がバラバラで動いていたデジタル施策をデジタル庁が横串で関与することで、デジタル化予算を効果的かつ効率的に活用してほしいものです。
今後の政府/自治体のデジタル施策に要注目です。
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# 政府・自治体とデジタルの歴史とこれから
## 面白かったところ
- 新型コロナウイルスでによって対策された施策のうち政府のIT戦略はほぼ失敗したが、その原因や傾向などが事実ベースで分析されていたこと。特別給付金の給付が成功した自治体もあれば手こずった自治体も有り、その両者を分かつものが何だったのかや、根本的に問題だったマイナンバーへの提言などがあって面白かった。
- 国や地方自治体がシステムを開発してきた歴史があるが、失敗した理由や事由をもとに近年どのような対策が練られ、法整備のもと実施されている歌がわかること
## 微妙だったところ
連載記事の切り抜き・まとめみたいなものだったため特定の著者がおらず
、良くも悪くも著者独特の意見がないところ。
## 感想
「日本は海外と比べてITが下手くそ。これからうまくいく見込みがない」って、祖父が言ってた。たしかにそうだなーと思いつつ、当時の上司や先輩方を見ていた身からすると、全く貧弱だとは思わなかった。
祖父が想起した理由は度重なる日本政府・地方自治体の失敗イメージが強かったことだろう。ITとはかけ離れた祖父と、稀にBADニュースが流れる政府のIT投資。
当本では祖父が抱いていたような失敗の具体的なケースが割としっかり書かれていて、とても勉強になった。
特に作りたいものを全て他人任せにする姿勢が民間企業とは全く異なるものだと感じた。
失敗が許されるとは思えないが、同じ轍を踏まぬよう我々国民のUI・UX向上に務めてもらいたい。