「光明に芽ぐむ日」の続編。
2015/08/27 19:07
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夜メガネ - この投稿者のレビュー一覧を見る
男性は特に気がつかないのではと思った部分なのだが、吉原遊郭に病院は欠かせない。
感染症検査・性病検査・堕胎など。非常に多岐にわたる。
同じ吉原が題材の小説では、確かこんなやりとりがあった。
月のものがきちゃったんだよ
それじゃあ、○○さんは商売お休みだ
無論、これは吉原全体の景気がよかった江戸時代が舞台だった。本作ではそのような描写はない。
ほとんど年中無休で客を取らせていた。
女性ならば、それがどれほど状況に輪をかけて酷なことか想像に難くないと思う。
やがて春駒さんも入院する事になるのだが、これは彼女にとっては精神衛生上の救いだと感じた。
ここにいる患者たちはリンパ腺の手術が多いが、春駒さんも含めてきちんとした説明は受けていない。
その為、少し解説を。
淋病(性感染症)に気付かず、リンパ腺が腫れるまで化膿してしまった状態。
さらに専門外が判断しているので、残すべき器官も切除してしまっているケースも見受けられる。
春駒さんは、本書では客について割と多く語っている。
そうしてある日、柳原白蓮氏のことを彼女は知り、雲の上の天女のように崇める一方で、
頼れるのはこのお方、と脱走計画がハッキリとしてくる。
私がなぜ、春駒こと森光子さんのことを知ったのかというと、
柳原あき子さん(あきの字が使用不可だったのでひらがな。「火」+「華」と書くと解り易いだろうか)について調べていたときだった。
白蓮を名乗る前に、すでに彼女の人生は大変なものであるが、
なぜ吉原の遊女を匿い、救うに至ったのか? そこに森光子さんが登場する。
(ちなみに、「ごきげんよう」飛び交うドラマより、やや前のことだった。)
本書には吉原遊郭の地図が記載されている。
読みながら地図と照らし合わせると、せまりくる現実感に息が詰まる。
生きて出るには、脱走するより他にない。 それなら、一度で絶対に完遂せねば。
春駒さんが辿った道筋は、地図ですっかり辿る事ができる。
細かすぎず、回り道しすぎず、練に練った計画である事がうかがえた。
ギリギリと胃が痛くなるような描写力は、本人だけが書けるものだ。
まだ、公娼に疑問を持っていなかったこの国で、生きて出られても何かしらの追っ手が際限なくついて回る。
一度、警察で娼妓登録するということは、生涯、公娼の「モノ」であるということ。
この制度を無視した形で、人道的に人生を切り開いていく事=自由廃業と解釈した。
海外からの指摘によって、公娼制度は外聞の悪さで表向きには廃止となるが
ご存知の通り、性産業は現在も続いている。
女性はいざとなったら体を売ればいいと思っている男性は、今でもいる。
(男娼という需要を彼らは知らないようだが。無知というのは恐ろしい。)
女性にも男性にも知ってもらいたい、著者渾身の体験記。
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昔の遊女の方の日記といので、
すごく悲惨な感じを想像していたけど、意外と淡々と毎日の出来事が綴ってあり驚きました。…劇的でないだけに、ほんの少し昔、これが日常だった日本の女性がいたと思うと、何とも言えない気持ちになってしまいました。
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『吉原花魁日記 光明に芽ぐむ日』を読んだからにはこちらも読めねばね。だけど前作のほうがスリリング。こっちは女同士の噂話みたいな色合いも感じられて。とはいえ、花魁たちのどうしようもない毎日をここまでリアルに描いたものに出会ったことがなかったので、この本を読んだことはやっぱり貴重な体験でした。資料として吉原遊郭の地図が掲載されていて、そのあまりの広さに呆然。どれだけの数の女性がここで暮らしていたのか。公娼制度についてきちんと勉強したくなりました。
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『吉原花魁日記』と同じ著者による本です。
前作の補完のような形で、著者が遊郭にいた時のエピソードが複数描かれています。
著者が脱出した後の遊郭の様子や、著者の親友であり同じく花魁であった千代駒の脱出の様子など興味深い内容となっていました。
前作と今作は過去に出版された物の復刊のような形ですが、著者である森光子さんの晩年が不明ということで著作権継承者も判明していないそうです。
遊郭の中から、遊女の視点から描かれた前作と今作はとても貴重なものであり、多くの人に読んで欲しいと思いました。
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大正初期、吉原には、7000人の娼婦が花魁として死に物狂いで生きていた。吉原病院での悲惨極まる病床生活。そして吉原からの脱出劇。ドキュメンタリーとして、また歴史的資料としても非常に貴重な読み物だと思う。後半部分は凄く重いが、前半部分のダメ男話はかなり笑えるものがある。一読の価値あり!
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第二弾だけれども内容全てが続編ということではない。書体が日記形式ではないが、ほんの数頁でポロッと書いてるエピソードがその人や出来事を思い出しながらしたためているんだなぁと寧ろリアリティがあった。玉のつけ方、廓内の忙しいスケジュール、貧しい食事、身につける・口にする物全てが遊女の借金になる理不尽なシステム、不衛生な病院内…知るほどに、煌びやかなことなんか上辺だけの世界なんだと痛感。巻末の脱走記、新聞記事が"これは本当にあった出来事なんだよ"と訴えかけてるようだった。
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大正時代、吉原の遊郭を脱出して、白蓮夫人(大正三美人と言われた、大正天皇のいとこ)の家に逃げ込み、助けてもらった花魁の、日記。先日読んだ「光明に芽ぐむ日」と同じ著者。
生きながら牢屋の様に逃げることができなかった、吉原の遊女。彼女は文学が好きで、日記をつけていた。
遊郭における遊女同士の人間関係、お客さんの様子が細かく書かれている。病院でリンパ腺の手術を受ける部分は、壮絶である。
自分を売った母親の死に目に会うことができたものの、葬式に参列することは親戚が世間体を気にして許してくれない。
政府ぐるみでこの恐ろしい伝統的な売春が行われていたというのは、日本の恥の歴史だ。
涙なくしてこの本は読めない。
ただ、遊女が病気になった時みんなが助け合ったり看病しあったりする様子は感動的だ。苦労している女性たちなのでお互いの痛みがよくわかるのだ。
この著者は、この後結婚した。夫婦でやくざに追われていたようだ。その後のことは誰も知らない。幸せに一生過ごしたのだろうか。
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正直に言って興味本位だったわけですが、読んでみてそれだけではない感情を持ちました。
借金をせざるを得ない環境、今ほども教養のない状況、そういったものから虐げられていた人たちを興味のみで見ることはできないな。
脇道なのかもしれないけど、教育、教養、知識と言ったものの重要性を強く感じる一冊でした。
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吉原に身売りされ、毎日のように客を10人も取らされる日々。そんな中でも自分を失わないように日記をつけ、歌を詠む春駒。白蓮を知ることによって、自分の置かれている場所から逃げるという道を選ぶ。白蓮夫妻が、彼女を吉原に返さず、親身になって社会運動家に彼女を繋いだことに安堵した。ほんの70年ちょっと前、戦前は女性の地位は低く、貧しさを理由に人身売買が行われていたこと、水揚げの4分の3は遊郭の主人が受け取り、女郎はたった4分の1しか受け取れない。そこから借金を返し、医者代や衣裳代、髪結い代などを引かれたら、いくらも手元に戻らず、いつまでも借金は返せない。ひどい仕組みだったということもよくわかった。
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遊郭部さんに教えていただいた本。日記というか、手記、回想録。大正時代の吉原の様子、娼妓のことが知れる。でも春駒(光子)はあまり昔の人のように、遠い人とは感じない。
もっと他愛のない日記のようなものは残っていないだろうか?
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大正時代の吉原の花魁が書いた日記。客とどんな話をしたかとか、同僚とどんなことを話したといった内容が中心。当時の吉原は脱出が困難だったらしく、後半にかけて著者とその友人が脱出した経緯も書かれる。
警官が店側に付く等、現代では考えられないような事柄も多い。性病になった著者が吉原病院に入院する話があり、同じ境遇の花魁も多数入院していて、それぞれの境遇を嘆き合う辺りの描写は悲惨の一言。
すごい作品だが、著作権継承者が判明しないまま出版されているようだ。
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壮絶な実話なのに、本を愛し、自分の人生を見捨てなかった作者。吉原に身売りされ、壮絶な毎日を送る中、日記形式で描かれています。吉原の細かい地図もあります。著書でもある主人公は本が好きで文字も読め、経営者が花魁達の稼ぎを誤魔化している事を見抜き、吉原から自らの力で抜け出します。実話なので、歴史として男女問わず読んでも後悔しない作品。
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当時の新聞が記載されていたが、文字が小さくうまく読めなかった…残念
白蓮さんと多少馴染みがあって訪ねたと思っていたので手紙を送っただけと見て驚いた
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『吉原花魁日記』第ニ弾。80年ぶりの復刻とのこと。遊女モノは多く読んできたが、本作は時代小説とは異なり、ノンフィクション。吉原脱出時の新聞記事も収録されている。前作のような日記形式ではなく、エッセイのよう。吉原病院での治療の様子などは貴重な記録と言えるが、その他の話は前作と重なるところがあり、全体としてはイマイチ。
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花魁の苦しい日々の日記。男性達は彼女を通り過ぎるだけ。恋だと言いつつ、自分の思いだけで彼女の牢獄のような日々には気がつかない。 病気になったときに互いを気遣う花魁同士の優しさに、貧しくとも心は踏みつけられない女性の強さを思う。 花魁から脱した後も、夫とふたり、ヤクザに追われる日々だったようだが、幸せもある人生であってほしい。