紙の本
官能小説にも「解説」がつく
2019/02/07 15:45
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
文庫本についている「解説」を楽しみにしている人は意外に多い。
まず「解説」を読んで、購入するかどうかを決める人もいる。
それが文庫オリジナルの官能短編集であっても、「解説」が付いて、しかもそれを執筆しているのが女性の書評家だとしたら、官能小説であっても女性読者が手にする機会は増すだろう。
「演技ではない「秘め事」を覗き見たいのだ」、なんて書かれると、なんだか女性の本音が聞けたような気になる。
この短編集は第1回団鬼六賞大賞を受賞してから、官能小説の世界をひたすら書き続ける女性作家花房観音の6つの作品を収めている。
講談社文庫オリジナルで、6つのうち4作が「書下ろし」になっている。
この文庫の「解説」を書いているのが、女性書評家の藤田香織。
花房観音の作品の魅力は確かに官能場面(つまりはsex描写)の巧さだけでなく、まるで京都観光ガイドのように京都の知られざる名所旧跡を舞台にしている点も挙げられる。
ちなみにこの短編集でいえば、表題作になっている「恋塚」には袈裟御前の墓がある恋塚寺、「懸想文」という作品では須賀神社といったように、花房観音の裏京都ガイドがばっちり楽しめるようになっている。
女性が官能小説をどのように読んでいるかは「解説」を読んでもらうのがいい。
特にその最後のこんな一文、「知りたい、見たい、感じたい。女にも、自分にも欲望があるということを肯定し続ける花房作品」なんて、ぐっとくる。
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2018年、9冊目は、昨日&今日で読了した、花房観音の最新短編集。6編収録。
今回も一言コメントを添えて。
鳴神:正しく生きる≠正直に生きる。善と偽善。価値観や、考え方で、物の見え方も変わってくる。
恋塚:身体の相性、個人的感情、社会生活。それらのバランスが崩れた時……。
菊花:趣味嗜好は千差万別。奇妙なベクトルの重なりあい。
蛇女:予想通りの展開と思ったが、その遥か上をいった、珠玉のラスト。
枕本:『指人形』収録「妻の恋」の後日譚。ある夫婦の幸せのあり方。
懸想文:官能度激低。主人公は自己陶酔しているのか❔実は悔しがっているのか❔
官能だと見下さない方が、身の為です。「鳴神」「枕本」で語られているのは、そんな方々のコトなのですから。
今回のお気に入り、テーマは「鳴神」。オチは「蛇女」他もハズレなし。先読み厳禁の解説まで含め、★★★★☆評価、文句なし。
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「恋したい」なんて、もう言えない。恋は人を殺す
再会した幼馴染みとのセックスに籠絡され、夫殺しに荷担する不倫男の末路を描く表題作「恋塚」。性と愛の地獄に嵌まり、時には生死を顧みぬ男女の業を、団鬼六賞作家が生々しくも艶やかに描く傑作、極みの6編。
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性にまつわる短編集。いずれも京都にあるお寺と、そこに関係する物語を連想させる形式。
セックスの描写は結構きつめ。でも、男性が描く性欲中心のものとは異なり、感情がうごめいている感じがする。エロいんだけどどこか切なくて、どこか愛に溢れてる。
男と女は違うなんてことは考えず、世の男はこの本を読んで、女性の欲望と情について触れるべきだろう。
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短編集。今回もホラーとしてなかなか深いが、「情人」にはさすがに及ばない。
日本のミステリーの熟練の読み手の方が、HPでこの作家さんを繰り返し絶賛しておられたので、新刊が出るたびに読むようになった。官能小説に分類されていたらまず手にすることはなかっただろう。その方に感謝。
今回まさかのBL登場でより楽しませていただいた。
同性ながら女は怖い。外からはわからないその怖さの深さを描ける貴重な作家さんだとは思うが、性描写がきついので、なかなか知り合いにはおススメできなくて無念。
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六話からなる短編集。最後の「懸想文」は花房作品では異例のセックスをしない男女の話。「性」だけではなく「生」が描かれていて、一番心に響いた。藤田香織さんの解説にも共感。花房作品を読んでいて、いつも感じていた事。女友達とは軽い物は別として、性に関して踏み込んで、自分の経験を赤裸々に語り合ったりはしない。でも、『疑問や不満や欲望、打算や計算や駆け引き、どこまでをどんなふうに誰とするのか、できるのか。それは普通のことなのか、当たり前のことなのか。花房作品には、そんな「本当に知りたいこと」が、いつも描かれている。』