紙の本
江戸三度飛脚たちの心意気とスリリングな展開が読者を興奮させる
2009/12/08 19:02
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る
<あらすじ>
加賀藩公用のために創設された金沢と江戸、百四十五里を行き来する三度飛脚『江戸三度飛脚』
三度飛脚十七軒のなかでも老舗の浅田屋は加賀藩の機密文書・品物の取り扱いを任せられていた。
特に機密品物の中でも重要であった『密丸』は、肝臓や胃などの特効薬であり、肝ノ臓に病を抱えていた加賀藩主の内室には定期的に欠かせない薬であった。
ある時加賀藩主の元に、老中首座に就任した松平定信より正月二日に催す『初潮(はつしお)を愛でる宴』の招待状が届いた。
内室同伴で催される新年祝賀の私的な宴へ招待されたのは加賀藩と土佐藩のみ。
内室は幕府の人質同然である。その内室が病床にあるとき公儀はさまざまな指図を下してくる。
宴は内室が病床にあることを隠している両藩へ、明確な口実をつけるためのものであった。
加賀藩と土佐藩は、公儀からのさまざまな指図を受けないためにも内室を宴に同道しなければならない。
しかし両藩の内室の病を癒す密丸はすでに底を突きつつあった。
加賀藩用人・庄田要之助は、浅田屋に密丸を加賀から調達すべく手配するが、密丸運びを任されていた三度飛脚の玄蔵は加賀にあった。
玄蔵の江戸到着後、加賀から密丸の調達という行程を待っていては間に合わない。
かくして浅田屋は江戸店にいる三度飛脚八人すべてを使い、密丸調達を計画する。
三度飛脚八人が加賀へ発ったとの情報を得た定信は、密丸調達の為だと見抜き、それを阻止すべく、御庭番を使い三度飛脚の始末に動き出した。
雪の降る中山道、北国街道を舞台に、三度飛脚と御庭番たちの追走・死闘劇が繰り広げらる。
<感想>
本書は、これまでに読んだ山本作品「峠越え」「だいこん」にはない、スリリングでエキサイティングな展開が魅力で、先の二作品よりも魅力の多い作品だった。
そして山本作品には欠かせない、登場人物たちの威勢のよさ、人情、心意気なども健在である。
序盤、明確な主人公が登場せず、三度飛脚や御庭番たちを取り巻く環境、立場、使命など説明的な内容となっており、少々物語に入りにくく感じた。
しかしそれは、読み進めていくにしたがってクライマックスである三度飛脚と御庭番の闘いによりリアリティを持たせ、読者を堪能させるために描かれた助走であることに気付いた。
その助走によって勢いづけられた先の展開を読みたいという欲求は留まることを知らず、中盤以降、三度飛脚のごとく読み進めていってしまう。
本作品の見所はなんといっても、中山道、北国街道を舞台にした三度飛脚と御庭番の追走・死闘劇。
単なる追いつ追われつの物語ではなく、裏切りがあり、思わぬが助力あり、そして時折挿入される三度飛脚を待つ人々の姿が描かれることによって、目が離せないサスペンスに仕上がっていると感じた。
また骨折・捻挫の特効薬『龍虎』の話における少々コミカルな描写は、物語に色を添えるものとなっており、より内容に厚みを持たせている一因のように思われる。
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一力先生の作品の中で最も好きな作品。
ダイナミックで読者を飽きさせず
涙がホロリ。ほほえみもチラリ。
柴錬作品を彷彿とさせます。
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足自慢の飛脚さん.メールや携帯が飛び交い,荷物なんてあっという間に届く現代では,考えられない時間の過ごし方がはらはらする.
書店で平積みになってて,偶然手に取り,山本一力を初めて知った作品.
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江戸時代中期、幕府の緊縮政策に喘ぐ旗本・武家は世の経済を停滞させていた。その状況を打破すべく幕府がとった方法は、旗本を配下に置く外様大名への発破であった。時を同じく、幕府から宴(=呼び出し)を持ちかけられた加賀藩と土佐藩は、公儀に対して、それぞれに知られたくない状況を持ち合わせていた。なんとしても宴の折にそのことが呈しないよう、加賀藩は国許からあるものを飛脚を使って取り寄せる。当然、公儀もそのことは内偵しており、阻止せんと御庭番に命じる。
幕府と大名との思惑の狭間で、使いとして責務を全うしようとする飛脚にスポットライトを当てた時代小説。
時代背景の描写はともかく、中盤~終盤にかけての展開にはスピード感があった。しかし、総合して場面転換が多く、区切りを都度つけなければならない為、個人的には前半の展開にじれったい気持ちがあった。ストーリー性としても普遍的で、丁寧な描写で良作だとは思うが、読後感に惹かれるものは無かった。少し残念。
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前半は食いつけず。
後半から面白くなった。
人間らしさが出ていたなーと。
読みはじめから少しずつ、
読了までに2ヶ月もかかってしまった。
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一時期固め読みをしてたけれど『ワシントンハイツの風』で勢いをそがれしばらくお休みしていた山本一力さんの作品。久しぶりに読んだので夢中になってぐいぐいと一気に読了。身分や立場、性別など個人の努力ではどうこうできようもないものに縛られながら分をわきまえ相応に、そして潔く懸命に生きた江戸の人たちの様子が生き生きと、でもさっぱりと描かれていて大変面白かったです。義理人情もたっぷりですが、松平定信という大きな政治権力に対し、忠義心と男気で立ち向かう加賀藩お抱えの飛脚たち、という感情移入しやすくダイナミックなストーリーで、とても面白かったです。良質な娯楽作品。
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加賀と江戸をむすぶ飛脚の話。
しかも途中で親不知だの青海だのが出て来て、金沢出身、本籍地青海(親の実家)現在東京勤務の私にはめちゃくちゃゆかりのある地満載でした。
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本書は山岳小説ではないものの、マタギの知識などがふんだんに入っているので取り上げました。
『かんじき飛脚』は、江戸時代の三度飛脚が主人公に物語が展開する。
時代は、『銀しゃり』と同じ時期で、棄捐令が出されたときだ。加賀藩と土佐藩のつながりも面白いし、風景が目に浮かんでくる描写が凄い。
飛脚を助ける猟師たちの知恵もとても参考になります。
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加賀藩の「三度飛脚」が、藩の危機に密命を帯びて江戸と領国を往復する。で、それを阻止せんとする幕府隠密との対決。
いやー、飛脚っていうヒトたちは凄かったんだなぁ。
はじめて知りました。
で、その任務の重要性と過酷さを人々は知っているものだから、すごく手厚く扱われていたのですね。
厳冬の時期の交通の難所の描写も、昔の旅の命がけ具合がよくわかりました。
猟師さんたち、ナイスガイ!
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#booklog ある藩のために公儀と対峙する主役は・・武士でも忍者でもなく、飛脚。権力者たちの水面下の事情に命をかけてでも飛脚としての矜持を崩さない者、裏切った者をあっさりと描いている。前半部分は
盛り上がりはないが、飛脚という職業を具体的にイメージさせ後半を楽しむための布石である。後半は緊張感がキリキリ高まるが、文章が暑苦しくないのが、好ましい。ただし、クライマックスから終わりにかけて少し物足りない気もする。軽く読める良書。
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山本作品には珍しく闘いのある作品。加賀藩の支援もなく、それでいて、猟師が飛脚を損得抜きで助ける姿に感動を覚えた
。
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「三度飛脚」は、江戸・金沢間570kmを毎月3度、夏場なら5日間で走り抜く。平場なら15kgの荷を担ぎ一日に80km走り抜く。しかも、「同じ側の手足を同時に出すのが飛脚の走り方。体がよじれなくてすむため、見かけには不器用でも長い道中を行くには身体にやさしい走り方。」本当だったらすごい。
「筋」は、幕府の棄損令による世情の不満を転化するため、外様への仕掛けを強める。取り潰しを防ぐため加賀から秘薬「密丸」を運ぶ三度飛脚とそれを阻止するお庭番の攻防という流れだが、「本筋」は飛脚達の生き様、それを取り巻く人たちの思い。
筋としては多少無理があり、もう一つに見えるかもしれないし、終章の攻防にそれぞれの思いをもう少し出して欲しい気もする。
山本一力の作品は当りハズレが大きいとも言われるが、これはなかなかいい。
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始まりは微妙・・・でも読み進めていくうちにどんどん面白くなってきました。
臨場感溢れる描写とか流石!
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唸るス トーリーと筆致力5☆〜。 本作品は飛脚がテーマ。しかも江戸と加賀藩 約570kmをわずか5日で走破、かつ月に三度 往復する強者どもに光をあてる。物語は寛政 の改革で名高い松平定信が推し進めた棄損令 (債権放棄)により年末も越せない旗本が急 増そして不平不満が爆発寸前。この難局を乗 り切るために定信が考案した奇策。加賀藩が 秘する内儀の病を公に顕にする事で非難を逸 らす事。だが病に効く特効薬は遠く離れた金 沢に。期限は年末までの二週間。藩の危機を 救うために命を賭して立ち上がった精鋭飛脚 達。道中には吹雪や断崖絶壁の海沿いの道そ して薬の運搬を邪魔する公儀。さーて想像を 絶する難局を彼等は乗り越える事が出来るの か!?ハラハラドキドキするテンポの良い物 語の進みは勿論、当時の食事を始め、日々の 鍛錬風景、雪道を歩くかんじき等の製法も含 めて細やかな描写が特徴。そして何と言って も一人一人の心情、心意気や熱気がダイレク トに伝わる。史実にうまくからめて物語を創 造しているので読み手に信憑性を持たせてい るな〜。
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山本一力らしい小説でした。
なかなか世界観が面白かったのですが、ストーリーとしては特に山がなかったかな、と。
個人的には期待はずれでした。
十分楽しめたんですけどね。