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投稿者:ME - この投稿者のレビュー一覧を見る
今年は遠藤周作の没後25年、中江有里のラジオでの対談を聞いて読んでみた。活字も大きく読みやすかった。インドに行ってみたいと感じた。また深い河創作日記やテレーズを読んでみたいと思う。
ぜひ読んで欲しい
2022/02/26 11:46
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投稿者:なつみかん - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み進めるにつれ、どんどん主人公たちの人生が心に入ってくると感じました。みながそれぞれ何かをかかえながら生きている。矛盾の中で白黒つけられずに、それでも生きていると思うと、ほんの少し息がしやすくなり、救われた思いがしました。
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本屋さんに行って、ふと友人が沈黙読んでたなと思い出して探したけれど見当たらず。次に代表作と言えば?と思い、海と毒薬は既読なのでこちらを購入。
集大成と言われるだけあって、登場人物全てが遠藤であった。特に、遠藤のテーマである宗教、それも日本人にとってのキリスト教と言うものが、どうにも今までしっくりこなかったのだが、この大津を通して語られる宗教感が、本当にストンと腑に落ちた感じがした。
インドを訪問したのは10年ほど前だが、訪れた場所やその雰囲気が思い返されて、より臨場感ある小説に感じられた。
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インドとガンジス川に興味を持ったことがきっかけ。
先に中谷美紀さんの「インド旅行記」と、妹尾河童さんの「河童が覗いたインド」を読み、
インドの地名と空気感を想像してから遠藤周作さんの「深い河」を読んだ。
いや、本当のところはタイトルと厚みからして重く難しそうに感じ、後回しにしていたのが本音だがこの順が結果的に正解だった。
いざ読み始めると夢中になった。
美津子の心の動きとともに気になって仕方がないのが大津という1人の人物。
彼を探しに行くときにワクワクすらしてしまう。
会って話しているうちに興醒めし、それなのになおも気になる。
出てくる人物全て、人とは…と何度も考えさせられる。
深い部分に刺してくる。
この本に出会えて良かったと心から思った一冊。
・ぼくが神を棄てようとしても……神はぼくを棄てないのです
・善のなかにも悪がひそみ、悪のなかにも良いことが潜在していると思います
・玉ねぎは誰の心のなかにも生きている
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インドのガンジス川であらゆる過去を持つ人々が交差する。好きなタイプな小説と思い手に取ったが、大正解だった。
後悔や懺悔、悲しみを背負った登場人物が救いを求めている中で、ひとり信仰心を持たない美津子が、物語を牽引している。
宗教の混沌とした矛盾そのものが、世界に争いや災いももたらしているわけで、なぜそこから脱げ出さないのかと説得する美津子こそ常識的に考えると正論な訳だけど、やはり人は後悔や懺悔、悲しみを乗り越えるためには、説明のつかない矛盾に満ちた探求や試行錯誤を経なければ救いの境地に辿り着けないということだろう。
たとえそれが救いのない結末であったとしても、それを認め、受け入れるのがガンジス川に象徴されるなにかであろう。
それをひとは神と呼んだり、たまねぎと呼んだり、もしくは愛と呼ぶ人もいるでしょう。
遠藤周作はちょっと重そうで避けて通って来たけど、普遍的なテーマなのかとても現代の心にも馴染み良い素晴らしい作品でした。
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誰にも他人に言えぬ考えや過去がある
登場人物それぞれの物語から
私も己を見出そうと内省する
それは実生活に続き
問うことをやめたり、忘れたり
忙しく生活できる日々
それでも
何のために生まれ死ぬのか
私とは何なのか
根源的な主題への問いを与えてくれる
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初めての遠藤周作。
綿密に作り込まれた全13章は、河のように美津子と大津の物語に合流していく。
生と死、カトリックの信仰、日本人の無宗教。
様々な過去を抱えた日本人がインドのツアーで集まる。ガンジス川に集まるインドの人々を見て、また、異国の地で同行者たちと話すことで起こる心情の変化が描かれている。
非常に読みやすいテーマと文体。
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モハメド・オマル・アブディンさんが著書の中に今まで読んだ(聞いた)本を挙げていて、その中の一冊。面白くて手が止まらず。ラストは「えええええ」宗教色強めなので、本を紹介する相手は選ばないとだわ…
そしてインド、一生に一度は行ってみたくなったw
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【推薦者】
スポーツ文化学部 スポーツ国際学科教員 山口 和之
【学生へのメッセージ】
著者の生涯のテーマは、「日本人にとってのキリスト教」でした。本書はその集大成ともいえる作品です。著者はいわゆる「重いテーマ(純文学)」だけではなく、気軽に読めるエッセーも数多く書いていますので、そちらもお勧めです。どの作品も平易な日本語で書かれています。日本語を磨くうえでも良書だと思います。
▼配架・貸出状況
https://opac.nittai.ac.jp/scripts/mgwms32.dll?MGWLPN=CARIN&wlapp=CARIN&WEBOPAC=LINK&AL=%25u6DF1%25u3044%25u6CB3&EXIT=2&i=1636521802236
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初読。遠藤周作は二冊目。とっつきにくそうだなという思い込みで敬遠していた。今、自分の年になって読んだから沁みたのかもしれない。インドを訪れる何組かのそれぞれの事情。それぞれの過去や思いは決して重ならない。人は大なり小なり、胸の内に秘密めいたものを抱え込んでいる。してやれなかった後悔は枷のように身を苦しめる。生き延びた意味や、生かされている意味なんてものが果たしてあるのだろうか。身分制度や未整地の道路だけを見て、豊かさは測れない。宗教への理解が幸せにつながるとも思えない。答えは決してでないが、それでも考えてしまう。幸せとは、生きることとは。を。
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この本にはキリストのメタファーが色々出てくるが、ガンジス河もその一つであるように思う。「彼はさげすまれ、人々からのけ者にされ、 悲しみの人で病を知っていた。」
聖書は続ける。
「だが、私たちは思った。彼は罰せられ、神に打たれ、苦しめられたのだと。しかし、彼は、私たちのそむきの罪のために刺し通され、私たちの咎のために砕かれた。彼への懲らしめが私たちに平安をもたらし、彼の打ち傷によって、私たちはいやされた。」
生も死も生活の苦しみも全てを受け入れ流れる深い河は、汚く汚れ悪臭を放つ。それでも人々は全てを受け入れる深い河へ向かう。インドに救いや人生の答えを求めて旅立つ若者(この本では様々な人生バックグラウンドを抱えた壮年期以降の人物が多数登場するが)は絶えないが、この旅する人々は、カトリックで洗礼を受けながら終生、魂の行き所を求めて彷徨っていたかのような遠藤周作その人自身の人生を物語っているように思える。
美津子は後半で自分の求め続ける正体不明の何かをXと表現するが、物語の終焉から見るに、そこには大津の「玉ねぎ」がいつか代入されるのだろうと予感される。
そして大津は、遠藤周作自身である。母に着せられたような信仰というのは遠藤周作自身が生涯拭えなかった宗教観で、宗教多元論者で異端的であると批判もされたが(欧州で遠藤が体験した苦労は想像にかたくない)、その自身の心の叫びを大津に代弁させている。
それでは美津子とは遠藤周作にとっての誰であったのだろうか。十字架上のみすぼらしい男から大津を奪ってやると画策し誘惑し、ほんのひとときは思いを遂げたかに見えるがその大津は得体の知れない玉ねぎとしてのキリストに再びとらわれ帰ってゆく。
日本人のキリスト教観をこの本に探ろうとする人は多い。人は誰しもXを求めて生きているが、そこに代入されるものとしてキリスト教もあれば神社仏閣やアニミズムに帰着する人も多いだからこれこそが日本人の持つ多様性だとうそぶくのが、大方の見方になるのだろう。
ただ日本人がキリスト教に至ることはあってもキリスト自身に出会うことは稀である。遠藤文学を読むにつけ、遠藤はキリスト教とともに生きたが、キリストとともに生きたのだろうかと、いつまでも拭えない気持ちが残るのだ。
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『影に対して』を読んだのをきっかけに、『海と毒薬』『悲しみの歌』『深い河』を読み返してみた。
悲しみがわかる人間とそうでない人間がいる。
わからないのではなく、わかろうとしないが正しいかもしれない。
私はまだ本当の悲しみを経験したことはないが、
悲しみはわかる。それは、やがて本当の悲しみを経験することがわかっているからだ。
深い河に出てくる、妻を亡くした磯辺の情景は、
やがて来るであろう最愛の人を亡くした後の気持ちや、世界の見え方を想像させるものだった。
途方もない喪失感と寂しさを経験するのだろう。
でも、それを乗り越えて生きていかねばならない。
この三部作を読み終えて、私の今抱えている悩みや苦しみなど、本当に小さなものでしかないのだということを思った。
今はまだ孤独ではない。
愛する人を失った時、孤独になるだろうか。
私の中にその人が転生すれば、孤独を感じないだろうか。
心の中に生き続けること。
それが転生なのだろう。
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日本人旅行者それぞれの物語をなぞりながらインドを訪れ、深い河(ガンジス河)で交錯する。著者晩年の作品ということもあり、生涯描き続けた日本人にとってのキリスト教、信仰というテーマも、ガンジス河で終着しているかのようです。深い作品。
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初めて読んだとき、自分の在り方について考えさせられた。
その後も数回読んだが、その度に思うこと考えさせられることが異なり私にとっては大事な一冊。
が、宗教的な色合いも強く人におすすめするにはやや抵抗がある。
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母親が知人からの感化を受けて読んでいたので、一応、息子としても母親の読んでいるものくらいは、読んでおこうと思って手に取る。既に読んでいた事に気づいたのは100頁ほど読み進んでから。
遠藤氏の、「弱さの中の」キリスト教信仰については非常に強い共感を持っているのだけれど、当作品においては、どうしても無理筋な展開と感じてしまう。