紙の本
傷を負いしものたちの嘘と真実。
2021/08/15 17:58
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投稿者:ゲイリーゲイリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
臨床心理士のサイラス・ヘイブヴンと嘘を見破る能力を持つ少女イーヴィ・コ―マックの視点で物語は進んでいく。
凄惨な事件に巻き込まれたことにより、心に計り知れない傷を負うイーヴィ。
一体彼女のに身に何があったのかという謎と他者を信用できない彼女のキャラクター造形が物語前半部を牽引する。
そんな彼女と関りを持つことになるサイラスもまた凄惨な事件を経験しており、心に傷を負っているのだ。
この心に傷を負いし両者が徐々に歩み寄ろうとする展開は、本書の見どころの一つと言えるだろう。
本書では彼らの内面を描きつつ、フィギュアスケート界の新星と謳われるジョディ・シーアン殺害事件も並行して描かれる。
警察に協力を要請されたサイラスは警察が下そうとする事件の真相に納得出来ず、独自に捜査を行う。
本書の素晴らしい点は、限られた登場人物しかいないにも関わらず事件の真相は一向に見えてこない部分だ。
誰もが容疑者に見えてしまうと同時に、被害者の本性も少しずつ明らかになっていく展開は見事。
サイラスとイーヴィの関係性はどういう形に落ち着くのか。
イーヴィの過去に一体何があったのか。
そしてジョディ・シーアン事件の真相とは。
本書は上下巻であるものの、様々な謎が提示されるため意外なほどアッサリと読み進めることができる。
真相が明らかにされる下巻を読み終えるのが待ち遠しい。
紙の本
嘘を見抜く少女
2021/09/28 10:44
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投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
臨床心理士が一人の主人公、そしてもう一人の主人公は、年齢不詳であり、人がついた嘘を見破るという特殊な能力を持っているらしい。人は誰でも嘘をつく。コミュニケーションをなめらかにするため、自分を守るため、親しい人を守るため、自分を飾るため、等々。嘘がなくなり、事実だけ、真実だけの世界の住みやすさはあるのか。二人の主人公の心の交流が楽しみな後半であり、ひとつの惨殺事件がどのように明らかにされるのかも、楽しみである。
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臨床心理士の男と人の嘘を暴く少女
共に凄惨な過去を持つ二人はどこか似ている
歩み寄ろうとする男と、人を全く信用出来ない少女の関係がもどかしい
嘘を暴けるというのは、人の気持ちに寄り添えるある種途方も無い優しさなのかもしれない
自分が何者なのかを証明出来ない少女
奪われる自由、尊厳
何も持てずに孤立する少女を見て、世の人々が日々何か行動する背景には、強い自己の証明が欲しいからなのかとも感じた
並行して巻き起こる事件
二人は協力する事になるのか、事件の真相は 少女の本当の姿は 下巻へ
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臨床心理士のサイラスは、かつて異様な殺人現場で発見された少女と施設で邂逅する。イーヴィと呼ばれる彼女は、人がついた嘘を見破るという特殊な能力を持っていた。折しも、スケートの女子チャンピオンが惨殺される事件が発生。将来を期待された選手にいったいなにが起きたのか? 捜査に加わったサイラスは、イーヴィと事件の真相を追及する――。
著者の作品は初めて読む。上巻は、まだ助走といった感じ。
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――
真実ではない。それだけ。
けれど真実が常に自分の手の中にあるなんて
そんな恐ろしい人生を送ってきたのかい? 君は。
軽い気持ちで読み進めてたら思った以上にはまった。
ひとつのセンセーショナルな殺人事件を軸に、臨床心理士サイラス・ヘイヴンと、養護施設で暮らす“嘘を見抜ける少女”イーヴィ・コーマックの視点から犯罪を描くのだけれど、主要なテーマはどちらかというとこのふたりの不器用な? うーん、言葉選びが難しいけれど不具合な? 関係の生成の過程にある。というか事件よりそっちに夢中。
主題の殺人事件よりももっとセンセーショナルな過去を抱えるティーンエージャーであるイーヴィと、同じくきっとセンセーショナルだったに違いない事件でまともなティーンエイジを過ごせなかったサイラスが、奇妙に繋がっていく。
職業的にも、そしてキャラクタ的にも多分に分析的なサイラスと、欺瞞に満ちた(そのぶん世に溢れている)ワイドショーじみた分析なんてその能力で反則的に乗り越えて鼻で笑ってしまうイーヴィという、コンビとしては不倶戴天なふたりの縺れが魅力的。
翻訳ものによくあるタイトル問題。今回は原題のが好きか…と思ったけれど最後まで読んでみると、邦訳のほうが核心を突いているようにも思えた。
筆致は軽くていかにも海外TVシリーズ、という感じなので、上下巻と構えずさらりと読めると思います。
今回は邂逅編とでも云おうか、シリーズも序盤。
今後が楽しみ、というのも含めて、控えめに☆3.4
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心の傷を負った少女と心理学者の話。少女には人の心を読める力があるようだ。
里子にして心を開く初めた矢先に急転回。
心の傷は治らないのだろうか?
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おじさんと少女という探偵もので、読んでいる最中に「ストーンサークルの殺人」が脳裏をチラついた。(あちらは少女ではないが、良い凹凸コンビ)
こちらの方は二人とも不安定な感じがして、ミステリーパートと二人のきずなをはぐくむパートとが並行している。イーヴィは最後にはまた施設へと戻ってしまったが、彼女の心には安らぎが残った。次回作ではイーヴィの蚕片が語られるらしい。
彼女に何があったのか気になる。
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実力派作家にも拘わらず日本での翻訳は不遇をかこつ実力派作家、マイケル・ロボサムの新訳が、魅力的なキャラクター・コンビを引き連れて登場した。
嘘を見抜く能力を持つ少女、イーヴィ・コーマック。拷問を受けて殺された謎の人物テリーの死体とともに発見された少女、新聞ではエンジェル・フェイスの呼び名で知られた少女。
本書では、少女スケーターが殺害された事件がメイン・ストーリーである。証拠を遺した性犯罪者がすぐに容疑者として逮捕されるが、家族や親族間という狭い世界で未成年の男女たちが複雑に絡む謎多い事件として、臨床心理士のサイラス・ヘイヴンが真相究明に乗り出す。
サイラスもまた凄惨な過去の記憶を持つ。両親と妹二人を殺害したのはサイラスの兄。サイラスは唯一の事件の目撃者として生き残ったのだ。女性警部レニーは、彼の臨床心理士としての能力を高く買っており、事件の捜査に対する強固な信頼関係が既にできている。
本書の事件では、サイラスが、イーヴィという人間嘘発見器と出会うことで、二人のコンビらしき体制を作りつつ、事件の謎を究明に当たるという骨組みである。現事件を追いながら二人それぞれの過去がプロット全体に黒い影を落としているところは、まさに本書の読みどころであり、魅力である。
スピーディな展開と、二人の独白で交互に綴られる読みやすい文体。あまりに個性的な二人の主人公のコントラストと、彼らの人間の心に迫る独自な捜査が、読者の心拍を上げる。これほどのページターナーはあまり経験がない、と言いたくなるほどだ。
事件の向こうに見え隠れする複雑な人間関係と、真相の追求という課題を抱えながら、二人は、それぞれの自身の過去とどう折り合いをつけてゆくか、という私的命題にもまた挑んでゆく。性別も年齢も異なりながら、彷徨う二つ魂たちの葛藤と心の繋がりとが、作品に温かく流れる血のようで、魅力的である。
この作品では、絡み合う迷路の向こうに予想外の真実を見出すのだが、イーヴィの思わせぶりな過去の体験については、二人のシリーズとして、改めて次作に持ち越されるそうである。キャラクター造形だけで大成功と言いたい本作なのだが、やはりイーヴィの真実を知りたい気持ちが心を捉えてならない。次作が早くも待ち望まれる。
マイケル・ロボサムは、オーストラリア人作家でありながら、前作『生か、死か』ではアメリカを、本作ではイギリス、ノッティンガムを舞台に描き、堂々ゴールドダガー賞の複数受賞という快挙を遂げた。ヒーロー、ヒロインのみならず作家そのものも怪物みたいである。
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辛い過去を持つ臨床心理士が担当することになった少女殺害事件、そして彼が出会う凄惨な過去を持つ少女。
この二人の正反対の少女(生と死、真実と嘘)がベースに話が進んでいく。
上巻ではそれぞれのキャラを描くのに力が注がれており、ミステリ的要素は少ない。それでもなお、多彩な修飾語や比喩で彩られた文章は陰影があり、キャラを魅力的に浮き彫りにしていて飽きない。
下巻にも期待できそう。
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とある花火大会の夜のお祭りムードの翌日、学校で人気のスケートチャンピオンの少女、ジョディが帰宅していないことが判明。
その後、凌辱の痕跡と共に死体で発見されるという至ってありきたりな展開。
容疑者もすぐに見つかるが、いかにも冤罪っぽいなぁというにおいぷんぷん。
主となる事件の展開だけを見ると、ありきたり感満載なのだが、この事件解決の過程を盛り上げる味付けとしてのヒロイン、イーヴィと、その保護者替わりのサイラスのキャラクター造形、彼らの過去を種としたサイドストリーが秀逸でぐいぐい読まされる。
イーヴィはかつて世間を賑わせた事件の関係者。
腐乱死体が発見された建物から、後日隠し部屋から見るも無残なほど不衛生な状態で救出された”箱の中の子”、”エンジェル・フェイス”。
人の嘘を見抜く力を持ち、人間関係で常にマウントを取れる異能力者だが、かつての事件の心理的影響からか、社会適応性が著しく低く、その暴力性から児童保護施設で暮らす日々。
知人からの相談をきっかけに心理カウンセラーとして彼女と出会ったサイラスは、彼女を里子として引き取ることを決め、一緒に暮らし始める。
サイラス自身も兄が家族を惨殺した猟奇的事件の被害者であるが、当時新米、現在は少女殺害事件の捜査責任者、レニーの保護下に置かれ、現在は臨床心理士として自立している。
レニーから少女殺害事件への協力を求められ、被害少女には隠された面があると睨み調査を進めるが、やはりきな臭いにおいが、、、という上巻。
下巻はイーヴイの能力が事件解決に影響を与えることになるんだろうなぁ。。
いや、面白いシリーズものが出てきました。
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英国推理作家協会賞、ゴールド・ダガー受賞。
海外新作は、冒険できないのでどうしても受賞作を。
ただ、翻訳が越前氏だったので、躊躇わずにチョイス。
正解~、読みやすくてすぐに物語に入って行けます。
二人の並外れた境遇と事件がどう絡まっていくのか、ぞくぞくしながら、読み進めてあっという間に後半に続いていく・・・
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まあまあ面白かった。特に驚くような展開ではなく、想定の範囲内だった。受賞作との事で内容はちゃんと読ませるし、結末も悪くはなかった。だが、あまり満足度は高くない。主人公の設定があまり良くないのと、もう一人の女性の主人公もリスベットサランデル風で最近の流行りのようでもあり、真犯人もそれほど驚きはない。
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臨床心理士という資格でもって公的捜査に加わっているという英国の警察制度がよく分からないままではあるが、ともに精神的不安定さを抱えた少女と男
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心理療法の人がいちおう主役なので、事件は起こっていて解決に向かっているような気もするが、ミミズのような足取りである。知り合いの刑事に頼まれて相談役的な。それと別物件で、昔殺人現場に潜んでいた少女を引き取って生活するようになる。なんだか嘘が見抜ける特技がある。生き様プラス能力のせいで少女は荒みまくっている。その心療内科医も過去に家族を兄に惨殺されていて、結構根深いものがある。自分的にはあらすじとかどーでも良くて、読んでて気持ちいいか悪いかで、この本は気持ちよかった。なので下巻も読んでる。
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「哀惜」の後ろの広告で見て。
どうして人は、特殊な才能を持つ人間に引き付けられるのだろう。
ミレニアムのリスベットしかり、
「ストーンサークルの殺人」のティリーしかり。
いや、キャロル・オコンネルのマロリーや
ジェフリー・ディーヴァーのキャサリン・ダンスには、
それほど惹かれないので、
この作品のイーヴィの魅力はそれだけではないらしい。
イーヴィは嘘を見破る少女。
ある民家の隠し部屋に隠れていたのを発見され、
エンジェル・フェイスと名付けられた。
いろいろな調査にもかかわらず、身元は特定できず、
問題のある子供たちの養護施設で自称18歳を迎えようとしていた。
もう一人の主人公のサイラスも、
兄によって両親と双子の妹たちを殺された壮絶な過去を持つの臨床心理士。
イーヴィがいる養護施設で職員をしている大学時代の同級生に頼まれ、
彼女に会う。
サイラスは警察の捜査にも協力していて、
アイススケートのチャンピオンの女子中学生が殺された事件も追っていく。
(下巻へ続く)