なぜ子育てしにくいのか、背景をうまく言語化
2021/08/31 15:05
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
子育ては楽しい。子どもは可愛い。そんなふうに、かけがえのない体験を楽しんでいる子育て世代は少なくないはずだ。もちろん子どもと接する中でしんどいこともたくさんある。だけど子どもとの会話や笑顔などでそれをカバーできるからみんな育てることができるのだと思う。
でもそれは家庭内のことで一歩、外に出るとしんどいことがたくさんある。例えば働きながらの子育ては男も女もしんどい。子どもを優先することで、一人前とみなされない。マミートラックのようなレールの上に乗せられ、戦線離脱。好きで子どもを持ったのだからと言うような社会の目線もある。
子育ては本来、選択肢の1つであるはずなのに、それが罰のように働く社会の現状を、本書はうまく言語化してくれていていろいろ腹に落ちるところがあった。
日本政府の少子化対策が産めよ増やせよを中心としている歴史や、それでも近年各党が知恵を絞っている政策立案の様子、少子化対策がうまくいっている諸外国との比較なども、とても参考になった。
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インパクトの強いタイトルだが、子育て中の母として何度も何度も頷きながら読んだ。
社会制度的にも、世の中の空気的にも、育児とは修行なのかなと感じる日々。
皺寄せが子どもに向いてしまうのも、とても心苦しい。
末尾には議員個々人のお名前とその考えが具体的に記されていた。
若い世代の投票率をあげて、子どもに優しい社会にしていきたい。
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タイトルでジャケ買いした一冊。
膨大なデータと実践例を元に今の日本がいかに子育てがしにくいかを知ることが出来る。
子どもを生み育てること自体に膨大な費用がかかり、タイトル通りの「子育て罰」になっている現状。
教育への財源の確保、公的資金を投入することで家計の圧迫を避けることが出来る。
それは子ども達への機会の保障、ひいては保護者のQOLの安定につながる。
本書にも触れられていたが、実際に政策に携わる人々の意識が旧態依然のままでは改革が望めない。
前途多難ではあるけれど、著者のように改革的な考えをする方の母数が増えていくことで徐々に変化していくことを期待したい。
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もともとのchild penaltyは子どもを持つ母親と子どもを持たない母親の間の賃金格差のこと。本書は定義を拡張して,「社会のあらゆる場面で,まるで子育てすること自体に罰を与えるかのような政治,制度,社会慣行,人びとの意識」としている。子どもを持つことによって被る不利益といったところか。
児童手当の特例給付に係る所得制限の見直しや教育の無償化や日本の労働慣行のことなど,色々と考えさせられる。
最後に,「子育て罰」をなくしていくためには国民の「声」と「投票」が大事になるとの指摘がなされていたが,「子育て罰」の観点からも今後の選挙を注視していきたいと思った。
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日本では、ひとり親家庭の就労支援をするよりも現金給付などの支援の方がより効果的だという内容があった。自民党はとにかく現金給付をしたがらず、カネを配る以外の支援をしがちだということもわかった。また両親の収入により手当てがある無しの区別もあり、子育て世代の分断も招く。データを提示されながら、改めて子育て支援の貧弱さを確認し、主な政治家たちは少子化に全く感心がないことが感じられる。その感心の無さ(もしくは余裕の無さ)が庶民にも伝播し、結果子どもの泣き声でクレーム、ベビーカーを蹴るなど冷たい社会を更に加速させている。
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「チャイルドペナルティ」という概念があるとのことで、それを訳したのが「子育て罰」。そのような概念の存在は知らなかったし、発想は今までなかった。
OECDの、「ひとり親家庭の親が全員働く想定でシュミレートした結果、日本だけは貧困率がさらに悪くなる」という調査が衝撃的だった。このシュミレートのやり方は複雑で正しい理解か分からないけど、今働いていないひとり親が働いたと仮定するとすれば、つまりは、働いているひとり親の収入よりも、働いていないひとり親の収入(生活保護等)のほうが高いということなんだろうか。この、桜井啓太さんが書いた「2章」が最も衝撃的で、読んでいて最も現状に悔しくなった。
高所得世帯には子ども手当の支給がないとか高校無償化の適用がないとか、自分も以前は疑問に思っていなかったし思っていない人は多そうだけれど、確かによく考えたら変な話だ。
とはいえ現金給付は確実に目的とするところにお金が使われるか保証できない。現物給付(教育の無償化)を検討すべきというのは基本路線だけど、実効的な制度設計にしていくために不断の議論が必要だ。
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現在の日本にある子育て罰についてとてもわかりやすく書いてあり、なるほどそんなペナルティーを受けていたのか!と開眼する内容がたくさんありました。それらをどのうに改善していくのか、強いてはペナルティーからボーナスへ変えていくのかという具体的な説明はちょっと難しくて概念がようやくわかっている程度の感触です。それでも個々の親としてできる行動についてもご提案がありましたし、ゴールの絵図は理解したので、そこに向けて行動したいと思います。
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Amazonのレビューに、「でも、末富先生もパワーカップルなんじゃないの?というモヤモヤを抱いてしまった」というコメントがあって、それが気になって読んでみたのですが、私も同じ感想になってしまいました。
私自身は独身中年男性で、自分一人がやっと生活できるだけの給料をフルタイムでやっと稼いでいます。
この本のマミートラックなどの説明のところで、男性中心的社会での働き方が、専業主婦の奥さんや子どもを預けられる近くの実家と言った、その働き方を可能にする特権的な「何か」を運良く所有している人だけ可能とあり、その中には「体力・気力が人一倍ある」も含まれていて、「裏を返せば、それらを持てなかった人々は脱落していきます」(p88)とあり、私は体力がなかったので脱落した部分はあるなと思いました。
第3章は非常にわかりやすかったです。戦後、子育てが私的領域に追いやられたのはよくわかりました。そのときはそれで良かったのですが、それに乗っかった平成政治が良くなかった気がします。今の政治は、「子育ては自分たちでなんとかしろ。ただし、国の役に立つ人間しか育てるな」と言っているように思えてなりません。
子どもをよりよく育てるイデオロギーが日本にはあって、それも少子化に拍車をかけているという論が最近聞かれます。それを考えると、この本を書いているお二人には耳が痛いでしょうが、大学を縮小して、中卒や高卒でもそれなりに食えて子育てできる社会にしないと少子化問題は解決しないだろうなと思うわけです。農業とか地に足の付いた職業で、初任給が30万円ぐらいで、そこから徐々に年齢とともに昇給、とかでないと、20代で子育てしてもらうのって、結構難しい気がします。残念ながら、現在の日本では子育ては贅沢品になってしまったのです。
私自身は少子化には貢献できませんでしたが、子育てしている人たちは応援したいと思います。
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子育て罰とは正にその通り。本書で述べられている児童手当の所得制限は撤廃になったものの、異次元の少子化対策も案の定期待外れだった。これで3人目産もうなんて一欠片も思わない。ただ本書を読んで自民党でも若手の子育て世代議員や、与野党内でも真剣に子育て罰をなくそうと奮闘されている議員がいることを知れて、少し希望が持てた。もっと選挙の時に自分から情報を集めてちゃんと考えてくれている人に投票せねば。