1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゆかの - この投稿者のレビュー一覧を見る
この不思議な、けれどどこまでも現実を感じさせる作品たちが本当に好きです。
『今夜の月はしましま模様?』のラジーがいいキャラしてて、やりとりに思わずクスリとなったり、でもしっかりしたお話だから最後はむしろゾクッとした。自分は大丈夫だろうか?なんて思ってしまった。
『終末硝子』のストークス男爵みたいな、ある意味未来を生きてる人は周りに理解されにくく生きづらかったのでは、と哀れに思えた。
投稿元:
レビューを見る
元からSFとのハイブリッドみたいな作品(「少年検閲官」シリーズとか)が多い作家さんだけど、これはかなりSF(ファンタジー)寄りの短編集。どこにもSFとは謳われてないが、謳ってしまうと売り上げに響くのかな。やれやれ。
☆「見返り谷から呼ぶ声」
黄泉の国に通じていると語られる「見返り谷」周辺では、説明の付かない不可解な失踪が多発していた。そんな中、つまはじきにされている少女クロネは見返り谷に異様に執着していることに、少年シロ(語り手)は不安を覚えて……。
所謂、読み返したくなるお話。うまいなあと感心しますね。
☆「千年図書館」
文明崩壊後の世界。謎の遺跡「千年図書館」に司書として送り込まれてしまった、臆病な少年は、数年前に送り込まれた少女に救われる。二人の暮らしは楽しいものだったが、図書館に宝物があると誤解した村人たちが……。
まっとうなポスト・アポカリプスもの。
☆「今夜の月はしましま模様?」
語り手のラジオが勝手にしゃべり出す。彼女の正体は地球を侵略に来た音楽生命体だという。仲間を裏切ったと言う彼女と僕は……。
普通のSF読者なら、このオチは見え見えだと思う。そこまで過程を緩く楽しむ感じかな。
☆「終末硝子」
肺を病んで故郷へ戻った青年医師は、「船長」と呼ばれる、新しく村にやってきた貴族が、塔型の墓という奇妙なものを村中に建てていることを知る。船長に殺されると訴える、彼の妻のために、船長の動向を探ることとなった医師は、船長からその意図を打ち明けられるが……。
舞台設定もあって、まるでドイル卿のノンシリーズみたいな出来。こういうのがいちばん好きかも知れない。
☆「さかさま少女のためのピアノソナタ」
ピアニストとしての才能に絶望していた少年は、古書店で「けっして弾くな」と記された楽譜を手に入れてしまう。不吉な伝説を持つ、その楽譜を半ばやけくそで彼は弾いてみるが……。
切ない感じとトリッキーなオチが合わさって、トリを飾るにふさわしい。
投稿元:
レビューを見る
色々と調べなければわからないことがあり
それも含めて面白かった
解釈が当たっているかどうかの答え合わせは欲しいなと思った
どこか得体の知れない不思議なことごとが現実に寄り添っていて良かった
投稿元:
レビューを見る
北山先生×片山若子さん(カバーイラスト)の方は、個人的にハズレなし!!!
短編なのに、毎回1話1話読み終える度ドキドキして、長い映画を見終えた感覚になる。北山先生の独特な世界観と、どう落とす?と構えていたら突然目の前が拓けた(あるいは目の前が断崖絶壁のパターンもある)感じがたまらない。
そして色々知識を得る面白さ。
(千年図書館の『元』を恥ずかしながら知らず、読後夢中で調べました)
どの話もいろんな方面の知識が出てきて、作家さんってとにかく知識が豊富だなぁとおバカ丸出しなことを考え感心したり。
こうして知らない言葉、事象を知って調べて新たな知識として身につけられるのも本の醍醐味ですね。
さかさま少女~は有名なタモリさんのアレで見ましたが北山先生だったのか!と驚愕(笑)
ドラマではなんかあっさりしていたイメージがあった。小説では音楽が伝わらない代わりに主人公の心情や境遇がありありと伝わってくる。そして余計な説明がなくとも行間で考えさせられる。素敵でした。
『終末硝子』はラスト、いろいろ考察したけれど…意図せず塔が村人を救うこととなったのか、それも男爵の計算のうちだったのか(そうだといいなと思うけど男爵悲しすぎるし、その場合としても前妻殺したのは変わりない?か?と思うと同情できないようなうーん)
『見返り~』は実は最初の一行で大オチがわかってしまっていたんだけど、ダイラタンシー現象にうおおおすごい!!と興奮してしまった。その場合地面の中にとんでもなくあれしてるわけで。非現実が『非』ともいいきれないのが楽しい。
『しましま~』は音楽生命体がゆるキャラすぎていろいろツッコミどころ満載で楽しかった。マイケル…すごいよマイケル…(笑)
星新一の世界観を勝手に感じました。
短編しか読んだことないけど、シリーズものも読んでみようかなー
でもいくつかあってどれから読んだものか
(音野順は昔読んだ記憶があるけど覚えていない…刺さらなかったのか??笑)
投稿元:
レビューを見る
● 感想
北山猛邦は、今、最も好きなミステリ作家の一人。豪快な物理トリックも嫌いではないが、何より「私たちが星座を盗んだ理由」という短編集の「妖精の学校」がめちゃくちゃ好きな作品。この短編集「さかさまの少女のためのピアノソナタ」は、「私たちが星座を盗んだ理由」と同様に、いわゆる「世にも奇妙な物語」的な5つの短編が収録されている。
この短編集には「見返り谷から呼ぶ声」、「千年図書館」、「今夜の月はしましま模様?」、「週末硝子」、「さかさま少女のためのピアノソナタ」の5作品が収録されている。
今回の5作品の中には、「妖精の学校」ほどの抜けた出来の作品はなかった。しかし、いずれも粒ぞろい。この5作品の中では、「見返り谷から呼ぶ声」が一番好き。主人公が実は既に死んでいたということを隠す叙述トリックが秀逸。同様のトリックとしては、乾くるみの「セカンド・ラブ」のプロローグがあるが、再読したときに、叙述トリックの冴えにしびれる。内容は、子供らしい残酷さがあり、これもいい。
そのほか、漫画、寄生獣を意識している「今夜の月はしましま模様?」もいい。読者を巻き込む系のオチだが、この話の展開で、この終わり方をするとは全く想定外。オチの意外性で勝負するというより、話の展開の意外性で勝負するタイプのプロットだが、コミカルな書きぶりと合わさって非常に楽しめた。
「千年図書館」は、「妖精の学校」に近いテイストの作品だが、沖ノ鳥島の座標を現す座標の数値を示し、領土問題という現実的なオチを付けていた「妖精の学校」ほどのデキには感じられず。オンカロ計画がそんなに身近なものではない、という点にオチの弱さがあるか。そもそも、既に、「妖精の学校」を経験したことがあったという点もマイナス。二番煎じ的に感じてしまった。雰囲気は悪くない。
「さかさまの少女のためのピアノソナタ」は、どうして演奏していると時が止まるのか。どうして止まっている時の中で、聖と吉野八重が会話できるのか。反対に演奏すれば時が遡るのか。そもそも反対に演奏するために楽譜をひっくり返すか?など細かい点に疑問はあるものの、演奏を止めると落下してしまう少女。演奏を止めることができない。どうする?というサスペンスと、反対に引いて時を戻して助けるという分かりやすいオチがテレビ向き。世にも奇妙な物語として映像化されたのは分かる気がする。楽譜をさかさまに引いたというベートーベンの逸話を知っていれば、もっと楽しめたのだろう。
「週末硝子」は、棟に上って洪水から助かりました、というオチが、分かりやすくはあるものの、落語やコントのようなオチに感じてしまった。作品全体に馴染まない浮いたオチに感じてしまった。この作品をこの短編集の中でベストとしているサイトもあるが、そのようには感じなかった。これが一番、凡作だと思う。
平均的なレベルの高さは感じるが、「妖精の学校」ほどの傑作はない。★3~★4。好きな作家なので、おまけで★4で。
● メモ
● 見返り谷から呼ぶ声
叙述トリックによる作品。シロという登場人物が,1年前に死に,幽霊になっているのだが���そのことが巧みに隠された叙述となっている。
シロは,幽霊なので,当然,回答はできないが,「相川は僕の名前だ。出席確認などしなくても,この生徒の人数なら,いるかいないかは一目瞭然だけど,学校教育として実施する方針らしい。」と書いて,出席の確認をされていると誤認させる部分など,なかなか秀逸な叙述トリックである。
「僕の言葉は,もちろん彼らの耳に届くことはなかった。」とか,「彼女は僕を透かして,壁を見つめるように呟く。『待ってて』」とか,結構あからさまな伏線もあり,再読するのも面白い。
話としては,子供の残酷さを描いており,クロネのこれからを思うとぞっとする作品であり,イヤミス系の作品。それだけに心に残る。好きな作品
● 千年図書館
個人的には,北山猛邦の短編では最高傑作と思っている「妖精の学校」と同じ系統の作品。ファンタジーと見せかけて,オチがフィンランドの核処理計画である「オンカロ計画」に結び付いている。
オンカロ計画の最大の課題である10万年もの時間,この施設の存在をどのように継承するかということから思いつかれた作品だと思われる。「妖精の学校」を読んでいなければ,衝撃度ももっと大きかったと思われるが,既に妖精の学校を読んだことがあるため,そこまでの衝撃はなかった。「考えオチ」系としては,最高レベルの作品だと思うが,新鮮味でやや割引き。「妖精の学校」の存在を逆手にとった,別の系統のオチにしていれば,「妖精の学校」を読んだことがある人にとっては,
より意外性の高い作品となるが,それをすると,妖精の学校を読んだことがない人にとっては衝撃度が落ちてしまうだろうし。この辺りがミステリの難しさだろう。
● 今宵の月はしましま模様?
漫画「寄生獣」パロディ要素を含むメタミステリ。しましま模様になった月→地球を侵略しに来た知的音楽生命体というSFチックな展開から,どうオチを付けるのかと思ったら,別の異星人による侵略行為。言語生命体の存在。この小説を読み終わった人間の頭の中に言語生命体が移動するというオチだ。
これは,なんというか,星新一のショート・ショートのようなオチである。序盤の展開から,このオチは想像できない。この短編集の中で,衝撃度では一番だろう。
● 終末硝子(ストームグラス)
舞台は19世紀のイギリス。マイルスビーという村では「棟葬」。棟に埋葬する習慣がはやっていた。棟葬を始めたのは「船長さん」と呼ばれ、慕われているプリングル・ストークス男爵。エドワードという医師が病気の療養のために、マイルスビーに戻ってきた。
エドワードは、男爵と知り合いになり、棟葬について話を聞く。棟葬を始めたのは男爵だという。その後、エドワードは、男爵の後妻、3番目の妻から話を聞く。「このままだと男爵に殺されてしまう。」と。男爵は、なぜか、棟葬されている棟に行っていた。死体を観察している様子である。なぜか。
エドワードは男爵から話を聞く。男爵は、かつて航海で死にかけていた。そのような経緯もあり、今は、気象学に傾倒している。様々な手法で気象を予測する。マイルスビーで作物が良く取れるようになったことなど、村人が棟葬のおかげと思っていることは、��象学のおかげだったのだ。
棟葬も気象学の一環だった。男爵は遺体を利用した気象の予測もしていた。男爵は、自身の気象学の結果、終わりの日が来ると考え、死ぬ。
大雨が来た。トレント川に洪水が起こり、マイルスビーの村は沈む。しかし、棟に上ったことで、村人は助かったというオチ
世界の終わりの「世界」がマイルスビーの村のことであり、大雨の洪水でマイルスビーが水の中に沈む。村人が棟に上って助かるというオチだが、唐突なオチという印象が否めない。伏線がしっかりと張られていないと感じてしまった。洪水についての伏線や、棟を作ったことがどういう点につながるのか、もう少し伏線があればと感じる。「棟を見かけるたびに、死んだ仲間から見守られているような気分になるんだ。」とあるが、この程度。伏線不足に感じてしまい、オチに納得できず。イマイチ
● さかさま少女のためのピアノソナタ
引くと、引いている者以外の時間が止まる「さかさまの少女のためのピアノソナタ」という楽譜。挫折したピアニストの主人公、聖が、この楽譜を聞く。演奏を続けている間、演奏者以外の時が止まる。演奏を途中で止めた場合、両手を失う?一音でもミスした場合、両手を失う?そのような楽譜を、聖は卒業式の日に改めて引く。そのとき、窓の外に、飛び降りた少女の姿が。時が止まっているので落下しない。しかし、演奏を止めると落下していくことが予想される。聖は、止まった時の中で、なぜか落ちていく少女=吉野八重と会話ができる。演奏を止めると吉野八重が死ぬ。しかし、いつまでも演奏ができるものではない。最後に、聖は楽譜をひっくり返し、反対向きに楽譜を引くことで時を戻し、八重を助ける。
投稿元:
レビューを見る
千年図書館改題
ちょいちょい臭いセリフ回しが気になるけど、ファンタジックで少しホラー要素もあり、だけど平和で…って感じで面白かった。
読みやすい
投稿元:
レビューを見る
『私たちが星座を盗んだ理由』が面白かった人は、楽しめるミステリ短編集。ただし、3作目の『今夜の月はしましま模様?』は2作目の『千年図書館』より先に読んではならない(2作目にとんでもないオチがあるため)。2作目の『千年図書館』は『私たちが星座を盗んだ理由』の『妖精の学校』に似たオチで、驚愕必死。
投稿元:
レビューを見る
五つの物語全てが衝撃のどんでん返し、痺れる余韻。ミステリの醍醐味が詰まった短編集。『千年図書館』を改題
投稿元:
レビューを見る
「僕たちが星座を盗んだ理由」と同じくファンタジーと日常に起こるミステリが半分半分。
表題作のピアノソナタが恐ろし過ぎて絶対に弾きたくない!と思いながらそぉっと音を立てないよう失敗しないよう読んでいました。
どれもおもしろかったです。
個人的にファンタジーものが好きかな。
投稿元:
レビューを見る
装画のような印象の物語に予想できない結末が待つ5話の短編集
こちらも面白かった!
「私たちが星座を盗んだ理由」を楽しめた人はこの作品も楽しめると思う!
短編だけど世界観が印象的でどれも心に残る
「今夜の月はしましま模様?」が特に好き
投稿元:
レビューを見る
自分は合わなかったが、不思議な話が多く評価が高いのはわかる作品。
人様の解説で理解できた話が多かった。
投稿元:
レビューを見る
不思議な世界観のSFミステリー短編集。
全編暗めの雰囲気の話が多く、秀逸なオチで満足度が高かった。特に「千年図書館」がめちゃくちゃ好み。
ディストピアな雰囲気がある世界観。村で凶兆があるたびに生贄が、果ての島の"図書館"へと捧げられ司書となる。司書の仕事はすでに荒廃した図書館で"本"を地下深くに封印すること。ただそれだけの事が何百年も繰り返されている。遺された石碑は多言語で書かれており、人類みんなが使える施設で、人類の未来のために建てられたことが示唆されている。この図書館は誰が何のために建てたのか、司書の仕事の意味とは?
最後のページの記号が目に入った瞬間、ファンタジーの世界から一気に現実に引き戻されて度肝を抜かれた。無機質な記号になにか根源的な恐怖を感じてゾッとしてしまう。すぐに実際の施設をググって、現実にも似たようなことを引き起こす可能性があること、遥か先の未来に情報を伝えることの不正確さを実感した。
投稿元:
レビューを見る
全体的にファンタジー要素が強い短編集で、短い話の中に仕組まれた違和感と終盤の伏線回収の鮮やかさが素晴らしく、一人の男子高校生が怪しい楽譜に翻弄される『さかさま少女のためのピアノソナタ』や謎の図書館を巡る『千年図書館』などバラエティに富んでいた。