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表紙に惹かれて手に取った本。夕暮れ時の、さまざまな色がグラデーションになっている空が好きです。
ギターが好きで、大切な人が若いうちに亡くなってしまって、死を考えたことがある人。うたを読みながら伝わってきたこと。
彼女の時間の過ごし方はわたしと重なる部分が多くはないはずなのに、人生で感じたことは近しいものがあるような気がしました。
2024/06/08 もくじ-p.138
p.5
”寝ころんであなたと話す夢をみた 夏で畳で夕暮れだった”
夏の夕暮れ、いいですね……。なんだか懐かしい気持ちになります。具体的な思い出がなくても。
p.8
”ふくらかな向日葵のくき手折りつつきみが子どもを産む日をおもう”
いま未婚の君はいつか子を産む日が来るのでしょうか……。君がどんな人生を選んでも、君を応援できる心でいたいです。
p.25
”すごい雨。ってきみがわらう 明日だって明後日だってわたしがすごい雨になるからわらって”
こういう、純粋で真っ直ぐな愛が眩しいです。多分彼女はこれを口にすることはないのでしょうけれど。
p.25
”ありがとうすこしだけ弾いてくれたギター花瓶の水が震えてたこと”
もし君の生活に花があったら、わたしの記憶の中にも花瓶があったかもしれないね……と思いました。
p.26
”生きる側の人間になる 夕暮れにながく使えるお鍋をえらぶ”
生きる側の人間になるつもりなんてずっとずっとなかったのに、しにぞこない続けていたら死の選択肢がずっと小さくなっていました。いなくなってはいないけれど。
p.32
”おわかれのローソン前の電話ボックスの水槽みたいにゆらめく光”
このうた、好きです。美しいです。
p.33
”自殺防止の広告は漢字だらけで、いいなこどもが自殺しないとおもってるようなひとたちは”
むしろ子どもの頃のほうがずっとしにたかったです、わたしは。そんな子どもはいないってことになっているのでしょうか。
p.48
”むりやりに光にならなくていいとあのとき言ってあげればよかった”
「無理しなくていいよ。無理に笑わなくていいよ」って言えたら、どんなに良かったでしょう……。
p.58
”幸せな気持ちをこんなに集めてもまだ死にたいね さみしい朝だ”
「生きたい」と思って生きられる日は来るのでしょうか。
「生きたい」と思った後に「しにたくない」って思うのがこわくて、いつでもしんでもいい気持ちでいたい気持ちもあります。いつまでもしにたいとしねないのがつらいけれど。
p.61
”人として好きだからって何回も言う”
けれど同時に、嫌いなのは人なんですよねえ……。
p.103
”きみの歌うたってきみを思いたいふとサイダーをこぼすみたいに”
わたしは歌えないから、意図せず曲を聞く度君のことを思い出しています。
p.118
”協会と思うあなただ 微睡みに呼ばれてる日曜の朝”
日曜日は、あなたと会えない曜日。嫉妬する相手は神様でよろしいでしょうか?
p.138
”大切なものはいつだってきれいなままでわたしのなかを通り過ぎてしまって、十代が終わっても人生は続いて、言葉では誰かに触れたりできなくて、”
きれいなままでしにたかったです。わたしはずるずるとしにぞこない続けて、年を重ねて……彼女からどんどん離れていってしまいます。
わたしのことばは永遠に届かないままです。
p.138
”生きることも死ぬことも、取り返しがつかなくてまぶしい。”
わたしが生死を並べる時は、どちらも簡単ではないから絶望してしまうのですけれど……”まぶしい”と言える感性が好きです。