環境問題に向き合うということ
2021/10/23 09:20
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Ted - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近聴講したマイケル=サンデルと福岡伸一の対談ウェビナーでも話題になっていたが、これからの時代は文系とか理系とか関係なく自然科学と社会科学の両方の視点をもって大局的にものを見る力がある人が、色々な分野で必要とされるであろう。そういう意味で、日本でも自分より若い世代でこういう本を書くことが出来る人が現れてきたのは本当に喜ばしい。しかも著者は学者ではなく元日本石油今はENEOSに勤めるサラリーマンだという。恐らく大学のような学部ごと縦割りの世界ではこういう学際的な視野を持った本を世に問うことは簡単でなく、サラリーマンが副業として自由な立場で進めたからこそ出来た労作に違いない。
是非多くの人に読んで頂きたい。色々な気付きを与えてくれる本だが、特に環境問題に対する冷徹な視点には目からうろこであった。
環境問題に向き合うというのは、地球を守ろうとかシロクマが可哀想とかそういう崇高な理念の話ではなくつまるところ人類の「自分たち可愛さ」から来る身勝手な運動なのだと素直に認識すべきと著者は言う。
考えてみれば当たり前のことかも知れないが、そもそも人間が環境をコントロールして人類の持続可能な発展を願うなどということは、個人が不老不死を願うのと同じくらい不遜なことなのかも知れない。
けれどもその不遜な願いを持ち続けるほどに欲望と脳を発達させて、火を発明し農業を発明し産業革命にてエネルギーをコントロールし、ついには化学肥料と農薬とで土壌を都合よく改良し他の動物たちを家畜化して工業製品化することで飢餓を克服して自分たちの人口を爆発的に増やしてきたそんな人類だから、今直面している気候変動や食糧危機などの問題もなんとか克服出来るのかも知れない。
SDG を語る人は必読
2021/10/16 21:16
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:むらま - この投稿者のレビュー一覧を見る
これほど広い分野を一冊で網羅した本を知らない!
地理、世界史、物理、化学、経済学、哲学、社会学、そしてSDG と多岐にわたる内容を、エネルギーというキーワードで貫き、人類の未来を考察する好著。
不偏不党な記述に好感が持てる。
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図書館で何気なく手に取った本だった。
目に入るきっかけになったキーワードはタイトルの「旅」という言葉だった。
文明の歴史と人類の歴史をエネルギーを視点にまさに「旅」のように駆け巡り、
未来への課題や希望を気づかせてくれた。
こんなにも知らないことがあったのかと夢中になって読んだ。
現代の「気候変動問題」が何故起きたのか、『ヒトの脳が大きくなったのは火のおかげ』から始まる、第1次エネルギー革命「火」~第2次エネルギー革命「農耕生活への移行」~第3次エネルギー革命「蒸気機関」~第4次エネルギー革命「電気」~第5次エネルギー革命「人工肥料」と人類の歴史と併せ時間軸に丁寧に書かれており、理解が深まる。
ヒトの脳が更なるエネルギーを獲得するために加速させた現代の「気候変動問題」や「太陽エネルギー問題」に著者はヒトの脳だからこそ解決できると締めくくっている。
未来へ向けて自分たちにできることは何か。
何度でも読み返し考えていきたい。
多くの人に読んで欲しい本です。
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エネルギーについて、また昨今話題の脱炭素について、著者の言葉で丁寧に解きほぐして記された力作。エネルギー会社に勤められている著者のこれまでの経験や思索を纏められており、読み進めること自体が旅のようであり、読んでいて楽しい。
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『第三部ではヒトの心のうちに分け入ることで、エネルギーに関連したヒトの思考回路を明らかにしていき、エネルギー問題を紐解く鍵を見出していくことを試みます』―『第3部 心を探究する旅』
エネルギー資源や環境問題に関して徒(いたずら)に不安を煽るような論調で表明し極端な(それをそう呼んでよいのであれば)解決策を強要する人々に対して、冷静な視点を提供しようとする試み。著者の言いたいことは『第4部 旅の目的地』に記されているのだが、その論点に至るまでの前提、エネルギーというものに関する理解を三部に分けて読み解いていく構成となる。第1部では人類が如何にエネルギーを利用し更にその利用方法を発展させてきたかについて、続く第2部ではその利用の過程で進んだエネルギーというものに関する理解(人類の得た知)について、いずれも歴史的な経緯を辿りながら網羅的になぞる。参考資料が一覧できるように整理されてはいないものの、各章とも豊富な資料に当たり、論点を整理していることが伺える良書。
但し、ここまでなら似たような啓蒙書や個別の論点についての議論は既に他所で為されているとも言える。特に、バーツラフ・シュミルが大著「エネルギーの人類史」の中で、その歴史的事実を丹念にかつ定量的な推計により検証しているほぼ同じ内容の議論と読み比べると、若干物足りなさを感じなくもない。これは個人的な趣味の問題とも言えるが、著者古館恒介が構成する歴史的なエネルギー利用・理解の変遷についての記載は、一つのブレークスルーがその後の展開を決したとする歴史的必然、いわゆる「エネルギー革命」として描かれるのだが、例えばβとVHSの争いのように、物事の雌雄は全て合理的に決まる訳でもないし一朝一夕には決しないものではないかという歴史観を持つ立場からすると、やや単純化され過ぎた人類のエネルギー史ではないかという気もする。もちろん、著者の論点はその事実の詳細にあるのではなく、飽くまでその幾つかのエネルギー革命の結果とそこに共通する特徴について、シュミル同様エネルギー収支(古館は効率性という視点で説明するが)の視点からみた合理性のようなものを読者に理解してもらうことに力点があり、その意味では分かり易く書き記されていると言える。その歴史的変遷の理解の上に立って第4部での議論に誘いたかったのだということは、もちろん、充分に理解できる。
第3部では、他の動物から抜きん出た人類の精神活動についての考察を著者は試みる。ここでは二つの考察について記されていると整理され得るのだが、一つ目は、火の持つ宗教性と、神聖性あるいは絶対性、について、特に神聖性についての視点から、人間が如何に白黒付けたがる生物なのかについての独自の展開・論考を試みている。ミスチルの歌詞からの引用がにくい。その議論の中で時間という概念とエントロピーの関係から人類がもつ抽象的な思考について考えを巡らし、強引に白黒を決着する以外の議論というものの重要性を訴えているのだが、この姿勢が続く第4部での議論の土台ともなっている。もう一つの考察として、経済合理性とエネルギー経済合理性の橋渡しを試みるのだが、この点はやや考察が浅いとも感じる点。古館は、エネルギーを巡る議論が経済学との相性が悪いとしつつ、その理由を判断の前提となる情報を十分かつ正しく認識することがエネルギーに関する議論では難しいから(特に、外部経済性をどこまで正確に取り込めるかに関して)とするが、果たしてそれだけだろうか。この点に関しては、例えば岩井克人の貨幣論などを参考に考察を深めても良かったと思う。自分の理解するところ、エネルギー収支が飽くまで物理学的に定義可能な不変性を前提と出来る一方で、貨幣の価値に関する岩井の議論を基本とするなら、経済学の土台である貨幣はその価値をどう定めるかについての根本原理のようなものを我々が未だ見出していない、すなわち価値の不変性を前提と出来ない、という違いに目をつぶって一方から他方への変換を試みるところから生じる齟齬であるように思う。しかしそこには近視眼的な視界に捕らわれがちな人類の癖があって、長期的なエネルギー収支と短期的(敢えて英語で言うならinstantaneous)な貨幣価値の比較という時間軸上の差も大きく関わってくると思う。余談になるが、岩井はその貨幣論の議論の行き着く先として「倫理」ということを俎上に挙げている。古館も似たような議論の行く先を見定めているだけに、その点が惜しまれる。
第4部では、ここだけを取り出して読むと、各方面から色々な数々の異論を招きそうな議論が展開する。エネルギー問題と格差問題が密接に絡み合うとの指摘はまさに正しい指摘であると思うが、格差問題解消がエネルギー問題の解決によって単純に為されるかどうかは議論の余地が残るところ。何故なら、エネルギー(収支)問題の解決は前述のシュミルが指摘しているように「エネルギー生産の集約化(≒効率化)」によって為されるが、それはすなわち更なる都市化を促進してしまうから。これに対して古館は「地産地消型の社会」を一つの理想として提案する。つまりエネルギー収支を合わせる系の大きさを小さくして不必要な余剰エネルギーを生み出さない、ということを志向するものだろう。知識人の間でもそのような分散型の社会として旧幕藩体制の良い面を挙げる人々がいるし、それは案外進むべき方向なのかも知れない。その一方で、核融合によるエネルギー生産の可能性にも期待を寄せているのは興味深い。これは、エネルギー収支の観点から見れば、地球が享受する太陽の放射エネルギーによる収支の枠組みを越えて、宇宙論的規模の枠組みで原子の質量という形で蓄積されたエネルギーを利用することにより従来の収支の枠組みにおいて「特別収入」を大きくするというもの。確かに実現すればエネルギー問題は解決を見るのかも知れないけれど、更なる都市化、格差拡大、ひいては環境負荷の増加を招かないという保障はない。詰まるところ、余剰エネルギーがあればあるだけ使ってしまうという人類の(生物学的)性癖(さが)を、如何に哲学的な思考で解消するか、ということが肝要なのだろう。
もちろん、そのような議論が残ることも古館は理解しており、むしろ様々議論をすることの重要性を示すために敢えて現時点で視界に入っている様々な可能性を列挙しているのだとも読める。結局のところ、そのような議論が出来る余裕を生んでいるのも余剰に生産されたエネルギーのお陰なのだが、ハンス・ロスリングらの「ファクトフルネス」も指摘するように、人類のほとんどは生存することがぎりぎりの生活レベルから脱却しつつあり、巨大化した脳を活用して生物の生存本能を越えた脳細胞の活動(=思考)をより多くの人々が営めるようになっている。だからこそ、著者の期待する人類の未来への多様な議論が具現化する可能性はあるし、それを冷静に開始すべきなのであろう。
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内容は主に
・人とエネルギーとのこれまでの関わり
・エネルギーとは何か
・これから先、人はエネルギーとどう向き合っていけばよいのか
について書かれた本
わかりやすく面白いので、ワクワクしながら読むことができた。
エネルギーや資源は有限である以上、産業革命以降に発展を遂げた今の文明社会、生活はいつか立ち行かなくなることを改めて再認識。
分かっていても、今の自分の生活をすぐに変えれる訳でもないけど、その事を心に留めながら生活していきたい。
足るを知る。何ごともほどほどに。
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抽象的で流動的そして普遍的なエネルギー。
日々の生活でエネルギーと無関係なものはゼロに等しいのにその実態はなんとも掴み難い。
そんな不思議な存在であるエネルギーを「歴史」「科学」「思想」の観点から読み解き、そこから見えてきたエネルギーの姿をもとに、現在から未来における人類とエネルギーのあるべき関係性が語られている。
本書内でも語られているように、エネルギーと言われてもぼんやりとしたイメージしか湧かなかったが、読後には多少は理解度が深まったように感じる。
個人的に一番刺さったのは、熱力学第二法則(散逸/エントロピー増大)のアナロジーが適応できる幅広さ。これから何を見ても、この法則が適応できるかどうか考えてしまいそう笑
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人類の歴史を辿りながらいくつかの変革期にフィーチャーする構成が、とても勉強になります。
終盤の方の筆者の意見が色濃くなって来た頃から脳が飽和状態であまり頭に入って来ませんでしたが、各々がもっと前のめりに考えるべき問題だと言うことに気づかされ、万人にオススメしたい本です。
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1ヶ月かけて読んだ甲斐がある素晴らしい本。
エネルギー問題の本質がよく分かる。
とても納得できるエネルギーの将来イメージ。
読み終わる前から色々使わせていただいてます。
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400ページありたじろいだが、読み進めるほど面白くなり一気に読了した。「旅」と題しているだけあり、構成から興味深く考えることができた。
まずエネルギーの5つの革命でとらえている。通説とは異なるのだが、熱力学第二法則、すなわちエントロピー増大の法則、に基づけばこのような切り口は説得力を増してくる。目から鱗であった。
エネルギーの歴史のあとに、物理・化学的な分析が続き、哲学的な考察に移行する。最後は心と脳の問題なのだということに気づいた。途中でミスチルのGIFTの歌詞が引用されているように、グラデーションなのだろう。
最終章は筆者の提言。これまで読んだことの延長から考えれば、納得性はある。ただ、自然の法則に縛られるエネルギーと、無限の資本の増殖を続ける資本主義とが両立するかは難しいと改めて感じる内容でもあった。核融合には期待したい。と同時に自然への悪影響には触れておらず、ややモヤモヤ感が残った。
一番最後、江戸の粋、気障、野暮につながるのはユニークであった。日本型のSDGsとは突き詰めるとこれなのでは?との印象を受けた。
結論。エネルギー問題をシロクロすぐつけようとしない、人間は自然が生み出す資源に謙虚であるべき、人類の叡智への希望は失わない。
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ここ数年で最高の書。
深い洞察と人類に対する希望。
エネルギーを広く根本的に問い直し、人類が獲得してきた歴史を辿る。
時空間を縦横無尽に渡り、科学や哲学、宗教の領域まで踏み込み未来に思いを馳せる。まさに旅本。
<量の追求>
5つの広義エネルギー革命:エネルギーの新たな獲得手段や利用手段の発明により、人類によるエネルギー消費量を飛躍的に増加させることになった事象
①火(100万年~150万年前)
・食べ物を「料理」することで、消化器官が行う仕事を一部外製化、余剰エネルギーで脳を発達
②農耕(1万年前)
・エネルギー収支の良さ、保存性から太陽エネルギーを占有
・文明、奴隷の発生
①´森林資源(古代~近代)※火の延長で新たな革命とはカウントされない
・40~60年蓄えられた太陽エネルギーの占有
・文明衰退まで進められる森林伐採
・金属製品加工、軍用船建造
・森林資源の枯渇を原動力とした技術革新:省エネルギー、リサイクル
③蒸気機関(1712年)
・熱エネルギーから運動エネルギーへのエネルギー形態の転換
→1)当時の主力動力源だった水車等に縛られる工場立地の自由度の向上、土地から独立した乗り物を動かす動力への利用
→2)投入熱エネルギーの拡大、エネルギー損失の縮小によるより大きな運動エネルギーを得るための技術革新の方向性の明確化
→3)蒸気機関の働きの観察から得た、エネルギー保存則等の科学的発見
・製鉄技術と蒸気機関の相乗効果
・内燃機関の誕生
・石炭と石油の用途による使い分け
☆特定のエネルギー源が他を圧倒し駆逐したという事例は存在しない!
④電気(1873年)
・静電気の発見(紀元前6世紀頃)~蓄電器の発明(1746年)~電池の発明(1780年)~ボルタ電池の発明(1800年)~ファラデーによる発電機の発明(1831年)
・エネルギー変換により電気の利用開始
・直流・交流変換
⑤肥料(1913年)
・自然界の窒素固定化は根粒菌と稲妻のみ
・チリ硝石等の天然資源の肥料・爆薬利用による枯渇
・クルックス卿による「空気から窒素を固定化する技術開発」に向けた演説(1898年)
・ハーバー・ボッシュ法の確立(1913年)
→450~580℃、200~300気圧条件下で窒素分子の三重結合分解、800℃、25気圧の条件下で天然ガスからの水素分離するエネルギーが必要
○農業の工業化
・世界三大穀物(2019年)
小麦:7億6400万トン
米:4億9800万トン
トウモロコシ:11億1700万トン
・トウモロコシはC4型光合成で高成長率
・トウモロコシの米国内消費
家畜飼料用:45%
バイオエタノール等燃料用:34%
コーンスターチ等工業用:11%
食用:10%
・牛肉から得られるエネルギーは投入エネルギーの1/10
・加工食品、清涼飲料の炭素分のほとんどはトウモロコシ由来
・トウモロコシ由来のバイオエタノールのEPR(Energy Profit Ratio:エネルギー収支比)は0.8と化石燃料をそのまま燃焼したほうが効率的
→非可食部の活用、EPRが1を超えるものにすべき
<知の追求>
・エネルギーの定義
アリストテレス「種子が内在する力(デュミナス)を発現し、その目的を達した(エネルゲイア)」
・エネルギー:運動エネルギー、熱エネルギー、位置エネルギー、電磁力、質量
☆熱力学の第二法則=エントロピー増大の法則(最も重要で示唆に富む物理法則)
・エネルギーは自然と散逸していく。第一法則によって保存されているはずのエネルギーが有限とされるのはエネルギーには質の問題がある。
・人間が活用できる質の高いエネルギーは有限でかけがえのないものであり、大切に使わなければならない
・カルノーの定理から見る熱機関の効率改善の将来性
火力発電蒸気タービン高温槽600℃:熱効率43%
ガスタービン(1600℃)コンバインドサイクル:熱効率60%
→1700℃運転を目指すが素材開発の面で限界が近い
(原子力280℃:熱効率30%、地熱200〜350℃、バイナリー80〜150℃)
・エントロピー増大の法則に支えられ、マクロの世界において初めて認識できる「時間」の概念
・散逸構造:エネルギーが流れる開放系の研究を通して、局所的に秩序が立ち現れること 例)台風、生物、文明
・散逸構造を維持するためには、外部からの継続的なエネルギー供給を必要とする
・省エネルギー技術は社会の隅々まで十分に普及したものに対して適用された場合に限りエネrグイー消費量を下げるが、それ以外はむしろ消費量を増加
☆エネルギー消費量増加の共通キーワード:時間の短縮
→生物としての人間をはるかに上回る速度の時間の流れに身を置くことになった
・エネルギーの4因子
大きな力、小さな力、電磁力、重力
・エネルギー源の分類
日々降り注ぐ太陽エネルギーをそのまま活用するもの
→太陽光、水力、風力
そうでないもの
→原子力、火力、地熱、潮力
・地上に降り注ぐ太陽エネルギーの占有という考え方
例 全陸域の約40%が人類による食糧生産で使用(牧草地含む)
<心の探究>
・環境クズネッツ曲線
・経済活動に関する投資効果は計算が比較的容易であるのに対して、環境への影響を適切に見積もることには常に大きな困難が伴う
「本書は厳密に言って何人にも追従するものではない。私はこれを著すにあたって、いかなる党派に仕えるつもりもなく、どんな党派と闘う気もなかった。もろもろの党派と別の見方をするというより、ずっと先を見ようとしたのである。彼らが明日のことに感けるのに対して、私は思いを未来に馳せたかったのである」アレクシ・ド・トクヴィル『アメリカのデモクラシー』
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人類史を紐解けば森林資源と土壌の窒素の限界との戦いだった。火から始まるエネルギーを使うことで人口増をもたらした。そしてエネルギーを際限なく使うことで資本の神、貨幣価値という抽象概念をどんどん大きくしている。というところが面白かった。気候変動はこれまでもあったが、現代は移動が自由にできないので問題だと。このあたりも良い解釈だと思った。
程よい暮らしを実現するために価値観の転換が必要。貨幣の等価交換で精算しないギブアンドテイクの関係を作るなどの提案も新しい視点を頂いた。
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エネルゲイアを巡る森羅万象。極論に走らずバランスの取れた論考です。エネルギーに関わる各々の科学技術トピックについても知らなかったことも多く実用として役立ちました。
勤め人でありながら、これだけの書籍を書き上げられたことに尊敬の念を感じます。
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前半部分はエネルギーの成り立ちなど少し難しい話もありましたが、半分を超えてくるととても内容の深いものばかりでした。
印象に残ったのは、”より少ないお金で、”より少なり財産で、より少ないエネルギー消費で幸せを感じることができるように自らの脳を意識付けすることこそが、より確実に幸せに暮らす秘訣であるということ”の部分。
自分がまさに今目指していることだからです。夫も自分も、20代のころは車だ、家だ、服だと物に執着していた部分もあった。でももう30台になると、そういうことはどうでもよくなるんですよね。それよりも、助け合いの精神におもきを置き始めて、どうすれば日本をよくできるか、自分たちの子供が大人になるころに、今現在の状況の地球を残して置けるかということばかり考えてしまう。そうやって今日も、ゴミ拾いや、マイバッグ持参、エアコンと乾燥機はつけない、リフィルショップで買い物しているんです。やれることはできるだけ全部試す、後悔のない未来にしたい。
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エネルギー関連の本でもっとも感銘を受けた。
個人的にはざっくりした感覚しか持てないことが多いエネルギー問題の本ですが、歴史、エネルギー問題における規模や量の感覚、土地や人口などの問題を難しくしている要因など。エネルギーや資源、気候変動の問題が簡単な問題ではないことは皆知っているものの、なぜ簡単ではないのかを腑に落ちる形で示してくださっている。
エネルギー革命を物理法則の発見や歴史と共に説明する流れから世界の背景にある法則、そこから現在の状況を整理して未来に向ける流れなどは圧倒された。
フェアな立場から説明をしながらも自分の意見を書いている書き方にはとても好感を持った。
また読み直したい本です。