紙の本
南都焼き討ち事件の、その後
2021/10/17 16:37
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
平家による南都焼き討ちという歴史的事実に関わる、人々の迷いと恨みと、そして祈りが語られる。人はなぜか競い争うことを好み、己の内なる憎しみや悔恨に囚われ、それがゆえに終わることなき苦しみにもがき続ける。しかし、怨み心は恨みをすてることによってのみ消えるという釈迦の訓えに従えば、怨嗟の輪廻から解脱することが出来るのではないか、と主人公を足掻き続けたのだと思う。その祈りは届くことになるのだ。平安末期の隠れた歴史物語は、心を温めて、終わりを告げる。
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平安末期の南都焼き討ちを招いてしまった悪僧(わけあり)が主人公。その後、罪に戸惑い償いと真の救済を模索。
壮絶で残酷のなか必死に生きる人々。その後を知りたくて夢中に読み進めてしまいます。
NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(令和4年1月〜)と同じ頃の時代背景。
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重衡、僧兵と学侶、奈良が舞台だからありありと風景が浮かんで嬉しい。大好きな五部浄、運慶が慌てて持ち出して壊した。いいなあ、見てきたかのような躍動感。運慶と範長のツンデレやりとりが楽しい。山田寺の仏頭も盗まれたのではなく…という展開がほっとする。ニッチな(?)人物にも温かい光を当ててくれる瞳子さん、いいね。作品解説じゃなくて歴史解説になってるという押し出し強めの巻末解説は佐藤優、同志社つながりだ。
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平安時代末期、平家によって焼き討ちにあった南都(奈良)の興福寺の僧、範長の悔恨と覚醒の物語。平家が滅亡してからのストーリー(第4章〜)が良かった。[電子書籍]
南都の僧の目を通した平家滅亡の様が新鮮でした。また、物語の最後の旧山田寺本尊(興福寺国宝館に仏頭のみが現存)のストーリーが良かったです。
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平安時代末期、平家が栄華を極める中、平重衡による奈良の寺社勢力に対する南都焼討。
藤原家、平家、源家。
滅ぼした者が滅ぼされ、そしてその繰り返し。
栄華を極めて他者を滅ぼしても、いつか滅ぼされるという憎しみや恨みの連鎖が辛いです。
生きること、正しいことを説く仏教の世界でこんな乱暴で残虐なことがある時代。
興福寺や東大寺の静かな佇まいを思い出しながら、そこに憎しみや殺し合いがあったことに驚きます。
「怨みごころは怨みを捨てることによってのみ消ゆる」
どんなに時がたっても、今の世界でも同じように憎しみによる戦争がなくならないこともとても悲しくつらく思います。