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『どこの家庭もさまざまな物語でできあがっているわけだが、どうやらエダヴェイン家の場合、ひとつひとつの物語にまとわせる衣が、語り手の数だけあるらしい。』 (下 91頁)
最初はどうなることかと思った。
キャッキャしすぎて、このままの調子でずっといくのかと、
恐れおののいてしまったのだ。
無理もないことは理解する。
16才のお嬢さんが、初恋に胸を焦がしているのだ。
窓から外を眺めては、彼の姿を見つめては、きゅんで、きゃーで、ほわわんで、彼女はとにかく浮き立っている。
致し方ない。
けれども、これがずっととなるといやだなあと思っていたら、様子がかわった。
40ページごろ、女性刑事が登場する。
ロンドンに住む彼女が、なぜコーンウォールにいるのかというと、やらかしてしまったからだ。
相棒から、しばらくロンドンから離れていろと勧告されて、しようがなく、祖父の家に厄介になっている。
そして90ページごろ、女性作家が登場してからは、ますます面白くなる。
80代のこのミステリー作家は口が悪い。
アシスタント相手に披露するそれらに数々に、ケラケラ声をあげる頃には、もう読むのを止められなくなっていた。
ケイト・モートンの作品を読んだのは、実はこれが初めてだ。
名前は知っていた。評判も知っていた。その一方で、恥ずかしながら、一時代前の故人だと思っていた。
ひょっこり顔を見てみれば、派手な顔立ちの現代女性が、パンツスタイルにあぐらで、椅子の上に座っている。
そんなケイト・モートンの作風は、時代と場所、語り手を行ったり来たりして、家族の謎を解き明かすものらしい。
コーンウォール 1933年
コーンウォール 2003年
ロンドン 2003年
コーンウォール 1914年 ・・・・・・
こんな様式で、35章に分けて語られる。
細かい切り替えはテレビドラマスタイルだなあと感じ、作者が現代の人でよかったなあと思うのだ。
さて、ところが、難点がひとつある。
なんと、ミステリー読みが頼りにする、カバーの折り返し、冒頭のページにいつもあるはずの、あの、「人物紹介」がない!
肝心のエダヴェイン一家の、誰が誰やら――私はだいぶ混乱した。
10人もいないので、メモをとることをおすすめする。
はじめのほうで、簡単な家系図を書いておくと、ずいぶん助かることだろう。
上下巻あわせて600ページを越える長編だ。
上巻はじめに戸惑いはしたが、下巻は一気読みだった。
読み応えは充分な上に、読んでよかったと思える作品である。
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あるネグレクト事件関連の失策で謹慎処分を受けた女性刑事のセイディ。
彼女は祖父の住むコンウォールで謹慎処分期間を過ごすことに……。 だが、ランニングコースに打ち捨てれた状態の屋敷を発見する。
そこでは70年前に男児が行方不明になった事件現場出会った。
未解決のこの事件に興味を持ち、調べ始まるセイディであるのだが……。
下巻はすでに読み始めています。
私の好みの物語です♪
物語は過去と現在を交差させることで続いていくのですが、詳しい感想は下巻を読み終えてからUPしたいと思っています。
今はとにかく読んでいて楽しいです。謎ときもそうですが、この湖畔荘の歴史がとても興味深く、そして、第一次世界大戦や第二次世界大戦の傷をもつ人々の記憶が痛いです。
人々がどう生きていこうとしているのか、そして湖畔荘の持ち主であるエダウィン一族の人々の抱えているものが気になります。
ミステリとしても、ゴシックものとしても楽しめるのがとてもうれしいです。(どちらも好きなんです)
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最初は時代と人物がコロコロ変わるのに慣れるまで時間がかかったが、だんだんと話に引き込まれていった。主人公の感情になかなか親近感がなくついていけない感じもしたが、それも徐々に慣れていった。
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読み始めは、登場人物と舞台となる湖畔荘の景色を想像するために、ゆっくり読んだ。そのため、遅々として進まず、、、登場人物たちが頭の中で動き始めると、あとは一気読み。
映画化されたら、きっと素敵だろうなぁ。
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ミステリ。
初めて読む作家。
各章で、1911年、1933年、2003年と年代・舞台・視点が変わる構成。
自然豊かな情景と、ノスタルジックな雰囲気がとても好み。
それぞれのエピソードがどう繋がるのか、楽しみ。
総評は下巻で。
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警察を謹慎処分になった刑事。イギリス、コーンウォールに住む祖父の家で過ごす間に、70年前の未解決事件を紐解いて行く。物語は二転三転し、意外な結末を迎える。悲惨なエピソードに胸が痛むが、登場人物が誠実であり、読後感は良い。
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下巻をまだ読んでいない状態での感想です。
洋書の日本語版ですが、特有の無理やりな和訳がほとんど感じられず、読み進めやすいです。
章ごとに年代と主人公が入れ替わる構造で、世界観を把握するのにけっこう時間が変わります。
どうやらみんなそれぞれ隠し事や疑問を持っていそうですが、ほとんどその正体はわからないままです。
下巻で全部回収されることを期待して。
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『忘れられた花園』を読んで以来の作者の本ですが、またもや違う時代に生きる女性二人が主人公です。
現代パートの主人公は、ネグレクト事件でのミスで有休消化という名の謹慎処分中の刑事、セイディ。
どうも彼女が過去にプライベートで起こした事件がきっかけで、そのミスが誘発されたらしいということは薄々わかります。
過去の事件に向き合いたくないがために、早く職場復帰したいセイディは時間をもてあまし、たまたま祖父が買っている犬の散歩中に見つけた荒れ果てた屋敷が、未解決の誘拐事件の舞台となった場所であることを知り、興味に駆られてその事件を調べ始めます。
過去パートの主人公は、誘拐事件のときにその屋敷に住んでいた、作家志望の少女・アリス。
彼女は現代パートでは有名なミステリ作家として名をはせています。
しかし、事件について何かを語るということは一切ありません。
それは不自然なほどに。
少女時代のアリスは、その屋敷・湖畔荘をとても愛し、結婚して家を出るくらいなら一生結婚しないでこの家で暮らしたいと考える少女でした。
その反面、恋を知ったアリスは、恋する少女特有の夢を見たりもするのですが。
最初、あまりの不穏な書き出しに、アリスが事件の被害者で、死んでしまうのではないかと心配でしたが、いけ好かない婆さま作家として長生きしていたことがわかり、安心して事件について考えることができました。
アリスの母のエリナの少女時代から語られる過去パートでまず気になったのは、アリスが語る堅苦しい母と、アリスのように自由闊達にふるまう少女エリナの乖離。
なぜ彼女は変貌したのか。
ほとんど社交というものをしなかったアリスの家庭で、年に一度開くミッドサマー・パーティ。
その夜に赤ん坊が誘拐されたわけですが、容疑者たり得るのは家族と数人の使用人だけ。
この中に犯人がいるはずですが、家族それぞれに語られない秘密があるようです。
事件は解決されないまま70年がたち、アリスと姉のデボラはそれぞれ過去と向かい合う最後の時が近づいてきたことを感じています。
セイディも、事件を追いながら自分の過去と向き合うことになるのでしょうか。
アリスの両親たちが若かった頃に起きた第一次世界大戦、アリスたちが若かった頃の第二次世界大戦も、なんらかの影響を事件に与えているようにも読めます。
いくつも散りばめられている伏線がどう回収されて、事件がどのような姿を見せるのか、下巻がとても楽しみです。
第二次大戦の時代をアリスが回想しているシーン。
”あの時代を生きた人々は現代人よりずっと禁欲的だった。己の感情をみだりに口にしなかった。怪我をしても泣くな、潔い敗者たれ、恐れを決して認めるなと、子供のころから叩きこまれたものだった。”
日本人だけがこういう教育を受けていたわけではなかったんだな。
そして、イギリス国家は、一人の餓死者も出さないよう、王立公園をつぶして畑にするなど、内政もしっかりしていた。
勝敗を分けるのはそういうところ、というわけではないにしても、彼我の違いが残念でならない。
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上下巻。
イギリスのコーンウォールを舞台に現在と70年前の事件が交互に語られ、徐々に明らかになっていく謎にドキドキした。
ボリュームがあるけれど惹き込まれる。
舞台となる湖畔荘の描写が素敵で、イギリスに行ってみたくなった。