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ここに書かれている香港の風景はもちろん、筆者がおもいをはせる日本の風景さえも、いまはない。しかし、『香港世界』のなかには書かれ、過去、確かにそういう風景があったのだと想像させてくれる。
エネルギー溢れるのにどこか切ない
2023/07/29 09:11
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投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
Little Thunder氏のカバーイラストとデザインが良すぎてジャケ買いした香港生活のエッセイ。エネルギー溢れるのにどこか切ない人々、映画と叉焼飯と街市、フェリーとダブルデッカー、どれも親しみを込めた文章で取り上げられてて、アジアに行きたい気持ちをかきたてられる。
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ひと昔まえの香港について細かく書かれている本。
私も何度か行ったことのある国ですが、こんな街並みもあったんだ…と、タイムスリップしてみたい気持ちになった。
香港=買い物やグルメが目的、宿泊はペニンシュラで。←と思っていない旅好きな人に刺さる内容では。
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ちょっとハスに構え飄々と、でも隠しきれない愛を覗かせながら都市を描く文体は、どこか懐かしく、文体も文化だなぁと感じさせる。1984年刊なので、書かれている内容は今は変貌を遂げたかつての香港の姿。筆者は香港が変わっていくことをもちろん予感しているが、その想像ともまた違った現代の香港への思いを、「文庫本のためのあとがき」の〆で「リンゴ日報廃刊の日に」と凝縮している。印象的だったのは「香港人の素顔」の花嫁の家・新聞少年と、「香港トワイライト」の深圳・九龍城・南Y島。「潮がひくように数百万の人間がいなくなったとき、いまわれわれが香港と呼んでいるあたりは、ふたたび華南の長い自然の海岸線のなかに溶けこんで、容易に見きわめもつかなくなる」そんな香港もまたよいではないか。
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自宅に眠っていた積読本の1冊。
覚えてる。女の子がしているリボンの巻き方が可愛くて、ジャケ買いしたやつだ。
本書(河出文庫版)のためにカバー絵と、更に巻頭にあるエッセイ漫画を担当されたのは香港生まれのアーティスト 門小雷(ムン・シウロイ)氏。現在「リトル・サンダー」のアーティスト名で広く活躍されている。
人物に風景・配色と柔和でありながら、同時に現地の活気も伝わってくる独特の雰囲気。そんな彼女の制作テーマは、「香港の記憶といまを生きるわたし」との事。
自分は今の香港を知らない。
返還直後の香港を訪れたことはあるが、よく知らないで周っていた。
返還前の香港となると、ますます未知の時代である。
ライター業の一環で香港に滞在していた著者が様々な文化的背景を持つ人々との交流や、生活の中で感じた点を余すことなくまとめた本書。香港史を予習をしてこなかった反省はあったものの、時間の流れすらチャキチャキとしたものに変えてしまう土地のエネルギー、そして”飯テロ”によってもたらされた空腹感で読後は頭がいっぱいになっていた。(美味しそうな広東料理が度々出てくるんです…!)
「この街が放つ、密度の高いエネルギーとふてぶてしい存在感。[中略]私は、その熱い空気を腹に吸いこんで、香港とひとつになる」
思い出されるのが、著者の「外国人的体験」観である。これが、とても新鮮且つ個人的に一番納得の得られた見解だった。
我々と同じような顔をした人々が、(香港のような)よく似た風景の街で同じようなものを食べているにも拘らず、全く違う言葉・文化と社会の中で生きている。この「不可解な事態」に立ち会うのが本当の「外国人的体験」ではないか、と著者は述べる。
著者は日本人ならではの礼儀はあえて持ち込まず、現地に溶け込むように生活されていた。というか、香港人になりきって生活されていたと言うのが正しいかもしれない。
香港人に合わせてラフな格好で酒楼に行き、道を聞かれたりいきなり怒鳴られてもその場で何となくやり過ごす。
そのうち自分が香港人であるような錯覚になってくるのだそう。
自分が香港を訪れた際、街にはサリーを身に纏った富豪らしき夫人らが闊歩し、何組か白人の一家も見かけた。著者の言葉を借りると、彼ら(我々と違う風貌)との出会いや交流は「異人的体験」になる。
しかし日本人と言われてもおかしくない容貌の新婦(ウェディングドレス姿)が新郎の先をズンズン歩く様をホテルのロビーで見た時、「異人的体験」とは全く異なるインパクトが残ったのをよく覚えている。
カリキュラムを組んで異文化交流や語学学習を進めるのも良いけど、現地の空気になったつもりでそういった生の体験(特に香港は活きが良さそう!)にぶち当たっていく。
却ってその方が本物の「香港の記憶」が刻まれていくのだろう。著者やリトル・サンダー氏がそうだったように。
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香港へ旅行に行かれる方は、読んでおくと良いと思います。40年ほど前の香港の様子がわかります。その内の多くは、現在も変わっていないように思えます。
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南丫島の描写で、南シナ海を遮るものなく見渡せる小山にて、サーっと吹き渡る海風が想起された。あそこの空間は、香港にあって異質で、まさに本書記載のとおり、それ自体が「体験」だと思う。また行きたいな。