紙の本
年金が危ないのではなく、デマに惑わされる人が危ない
2021/11/22 09:36
11人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雑多な本読み - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近、公的年金制度が危ない、破綻するという噂が多い。有識者と言われる人も同じ主張をするとマスコミ等に取り上げられやすいのかと思う言説も少なくない。
筆者は、冷静に厚生年金保険を中心とする公的年金制度を解説し、その安定性を確認する。その説明ポイントは以下のとおり。
まず、制度として、公的年金は貯蓄でなく、保険であり、賦課方式を取っており、貯蓄(積立)ではないという。
次に、年金は自助でない。もちろん、全額税金ではないので、公助ではなく、共助にあたる。社会全体で協力して、老後の生活を守るもの。
個人から見れば、保険料を一定期間払うことにより、将来のモノやサービスに対する請求権と位置付ける。
と年金の性格を規定する。これ自身は、特に目新しいことではないものの、解りやすく記述している。
この上で、年金に対する誤解を解こうとしている。
年金は赤字や運用が失敗続きとか、若者は損をすると世代間対立を煽る言説に対して、誤りを正していく。さらに少子高齢化で年金を支えきれないから破綻するという説にも反論していく。
公的年金の積立残は、他の国に比べて多額であり、運用も年によって良くないケースもあるが、プラスの年が多い。通算で見ると大きく積みあがっている事実を指摘する。
少子高齢化でも、65歳以上と未満の人数を比較して、お神輿型から肩車型に移り、支えきれないという説が流布しているが、65歳を基準で区切るから無理があるという。社会は60歳定年から、70歳まで職保障に変わりつつあり、支え手の区分が変わりつつあることを指摘する。
他の点も次々指摘し、公的年金制度の安定性を明らかにしている。公的年金から離脱し、民間年金に頼る方がよほどリスクが高いと的確に指摘する。筆者の経験から出ており、説得力がある。
新書だから、手軽に読めることも魅力である。
電子書籍
年金は崩壊しない
2022/02/22 12:09
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:sas - この投稿者のレビュー一覧を見る
私は給付水準の低下はあれども、年金制度は崩壊しないと考えています。
しかしながら、とかくマスコミ(特に、ワイドショー)や雑誌等で年金はあたかも崩壊する可能性が高いなどと煽るものが多く、辟易としています。
そのような中で、日本の年金制度はキチンとした制度だということを高らかに謳っているのが、この本です。
非常に分かりやすい良本です。
一つだけ申し上げますと、適用拡大の箇所で、「従業員が500人超」などの表現があります。
多くの新聞などでも、同じような書き方がされているのを散見します。
この「従業員」は、厳密には「被保険者」のことです。
つまり、「正社員」と「4分の3基準を満たしたパートタイマー」である被保険者の総数のことです。
誤解を与えかねないためにも、そこについて丁寧な説明がなされているとより良かったと思います。
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メディア等でいわれるような、年金に対する思い込み、をファクトに基づいて説明する本です。
説明もわかりやすく、良書です。
年金に対する思い込み↓
●年金財政は赤字
●若い世代は払うだけ損
●政府は年金を無駄遣いしている
●未納者が多いからそのうち破綻する
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来年度(2022)から新年金制度が始まるというタイトルだったので本屋さんの店頭で手に取った本でした。
現在の年金制度について巷で流れている否定的な情報について丁寧に解説してあり、現在の年金制度はよく考えられて設計されている制度であることがよく分かりました。
年金未納者はほとんどいない(数%程度、p94)、65歳以下の人(支える人)と65歳以上(支えられる人)の割合で考えるのではなく、一人の就業者が何人の非就業者を養っているかで考えると、日本においてその割合は1970年(1.05人非就業者)から2040年(0.96人)変わらない(p103)は知っておくべき事実だと思いました。
以下は気になったポイントです。
・年金の本質、1)年金は貯蓄(将来のために自分で蓄える)ではなく保険(将来の不幸のためにみんなで備える)である(p30)収入に占める年金が100%という世帯は、48.4%である(p36)、2)自助でも公助でもなく、共助(=社会全体で面倒を見る)である(p38)、3)年金は将来のモノやサービスに対する請求権である(p46)
・年金生活者が関心があるのは金銭ではなく、消費(食料、娯楽、医療サービスなど)であり、いかに将来の生産物を手に入れることができるか、ということが最重要である、それには賦課方式で運営する方法以外にはない(p49)現役で働いている人の給料からその一定割合を保険料として、納めてもらい、その保険料を年金として支給する仕組み。年金支給額は賃金、物価にスライドする仕組みだが、これは賦課方式だからできる(p51)
・年金は一般会計とは別の勘定で、戦前からあったいくつかの保険事業(厚生年金関連4つ、国民年金関連2つ)を、平成19年(2007)に統合してできた、年金特別会計であり、令和元年末で約190兆円の貯金があり、赤字ではない(p56)これは年金給付の4.9年分になる、アメリカで3年分。欧州においてはほとんどない。しかし現役世代が払い込む保険料を年金給付の原資にしているので年金は支払われている(p61)
・国立がん研究センターのデータによれば、40歳の人が向こう20年間に罹患する確率は6.9%、70歳の人が10年間で31.7%、80歳の人がそこから罹患する割合は56.6%、現実には二人に一人が「がん」になるというのは、80歳以上の人の話である(p64)
・世代間の給付と負担の関係では、1955年生まれでは厚生年金では3.4倍(負担より支給が多い)、国民年金では2.3倍、1975年生まれでは、2.4倍、1.5倍である(p65)ここで負担額とは自分が負担する額であるが、番組などでは国や会社が負担する保険料(折半である)も含まれている可能性もある(p69)
・公的年金制度がなかった時代は、子供が親の面倒を見るという「私的扶養」の時代であった、国民全員が加入する国民年金制度ができたのは1961年である。現在の70歳以上の人たちは親を養いながら、かつ年金保険料を払っていた(p67)
・年金の運用(GPIF)は過去20年間で100兆円余りの利益をあげている、マイナスの年もある(p80)
・サラリ��マンの配偶者も配偶者が払っている保険料で将来年金を受けられるので、未納にはならない。日本人で年金保険料を納める必要のある9割は、未納になることはない(p91)公的年金加入者全体の6759万人のうち、免除・猶予者(583万人)を差し引くと、125万人となり本当の未納者は、1.85%となる(p94)
・1970年当時から考えると少子高齢化はかなり進んでいるものの、その間、さまざまな制度の見直しを行なってきたことでそうした時代に十分耐えられるような改革が行われてきている(p108)
・将来支給される予定の年金が予定されていない場合、それを年金債務と呼ぶのは積立方式の場合である、企業年金は積立方式で運営されているので企業年金には債務が発生するが、公的年金は賦課方式なので異なる。現在と将来の受給者への給付=現在の保険料収入+今後の保険料収入+国庫負担+年金積立金、となる(p124)企業年金は給料の後払いであるのに対して、公的年金は社会保障制度である(p125)
・GPIFの長期的な運用目標は「名目賃金上昇率+1.7%(スプレッド)」過去10年間の名目運用利回りは、平均で3,61%、名目賃金上昇率は0.44%なので、実質運用利回り=スプレッドは3.17%である。これは厚生労働大臣がGPIFに達成しなさいと要請しているスプレッド(1,7%)よりも大きい(p133)
・厚生年金の定額部分の支給開始年齢を60歳から65歳までに2001年から徐々に引き上げていくと決まったのは1994年であるが、この検討自体は1980年頃から始まっている。2004年改正により確定給付から確定拠出に変わったので、5年ごとに行われていた保険料の見直し(=財政再計算)ではなく、年金の財政が当初の予定通りになっているかを検証する「財政検証」となった(p139)
・2004年改正のポイントは、1)基礎年金の国庫負担を2分の1に引き上げ、2)財政検証の実施、3)保険料水準固定方式の導入である(p140)2005年4月から毎年280円ずつ引き上げられ、2017年以降は16900円と固定する、それ以来は引き上げられていないし予定もない(p141)固定したので、マクロ経済スライドの導入と、年金積立金の活用が行われる様になった(p141)
・積立金は概ね100年をかけて、現在ある4.9年分の積み立てを、100年後には支出の1年分となるような給付水準調整を行なった上で、概ね100年にわたる財政見通しを作成したことになる(p146)
・アメリカの映画(シッコ、2007年)は、自助努力と市場万能主義が行き着くところの社会が描き出されている(p160)
・雇用者のうち正規採用で働いている人が、3539万人に対して、パートや非正規雇用の人が、2090万人いる。この中で厚生年金に入っていない人が、1050万人いて、これが非常に大城は経済的不安となる(p176)
・現在は、1)週労働20時間以上、2)月額賃金8.8万円以上、3)勤務期間1年以上の見込み、4)学生でない、5)従業員500人超の企業などに、対しては厚生年金の加入が義務付けられている。今回は、3)と5)が法改正された、3)は撤廃され、5)は2022年10月からは100人超、2024年10月からは、50��超に引き下げられる、50人超になれば、現在より65万人が増える見込みとなる(p179)
・年金の支給開始時期を引き上げるのは短期間ではできない、55歳から60歳への引き上げに要した期間は20年、60歳から65歳への引き上げは決定してから32年経過するが、まだ終わっていない(p193)
・年金受給開始時期を決めるのは、損得ではなく自分のライフプランをどうすべきかで考えるべきである(p196)
2021年12月12日作成
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【年金、破綻しないんで】
GPIFが運用している資金はバッファ部分であることを初めて知りました。
基本的には入ってきたお金をそのまま年金として使用しているだけなのですね。
ただ、バッファが200兆円もあるということは、高度成長期に年金としてたくさん取り過ぎていたということだと思いますが、特に取られ過ぎ問題が発生していたわけではありません。やはり、経済成長の方が大きかったため問題にもならなかったのでしょう。
経済が成長することは重要です。
また、「非就業者」/「就業者」が昔と今でもそれほど変わらず、1以下であることには驚きました。よく、高齢化社会で将来は65歳以上一人を支えるために、60歳以下1.8人で差さえなければならないといったことを聞いていましたが、就業者でくくるとそのようなことにはなりません。
65歳になっても働く人が増えているというのはいいことです。しかし、人手はまかなえていますが、給与が増えないということは生産性はよくないということです。
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2022年3冊目。269ページ、累計1342ページ。満足度★★★★☆
私含めて投資に関しては詳しくても、年金については詳しくない人が多いだろう。既に受給をしている人以外の全ての人におすすめできる良書。「不安」な人は読むと安心できること請け合い。
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【書評】
これは読んでおいたほうがいい!『知らないと損する年金の真実 - 2022年「新年金制度」対応 - 』(大江英樹著)の感想・レビュー - いつか子供に伝えたいお金の話
https://mushitori.blog.fc2.com/blog-entry-604.html
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年金の本質(=保険)という前提、制度の中身まで分かりやすく解説してくれる良書です。
個人的によかったのは最終章
・ケーススタディのケースが地獄。こうはならないと誓う
・個人年金保険ぶった斬り。年利コンマ数%かつ途中解約で元本割れのゴミクズ貯蓄。保険ではない。
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読んだ理由。年金制度について知識を得たい。
感想。制度について曖昧に理解していた部分が補完され、どんとこい状態に。大満足。
フリーランスなので改めて自助努力の必要性を認識。活用できる制度を取り入れていく所存。
年金制度の運用において何が問題になるのか理解できたので、これからは報道などを見ても自分で考えることができそう。
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最近出版された本を読んでみました。なんと、「年金は保険である」「経済発展が重要」と言うあたりは5年前に書かれた「年金問題は嘘ばかり」(高橋洋一)と全く同じで、新しいところはなかったです。よく年金の不安をあおる話題に人口減少を言う方がいます。1970年は65歳以上1人に対して65歳未満が13.1人いましたが、2040年には1.8人になってしまう、ってやつで私も見たことがあります。これに対して、「年金問題は嘘ばかり」では頭数で割っても意味がない、保険収入で見るべきだってもっともな意見。確かに1970年と2040年ではそもそもの1人当たりの収入も違っていますから、保険料も違っているでしょう。そのためにも今後とも経済成長が必要ってことでしたが、この本ではもう少し働き方の変化を言っています。
少子高齢化でも働く方が多くなっているということです。昔は定年55歳でしたが、今は65歳でも働いている方がいます。事実私も年金受給者になっていますが、年金も払っています。非就業者と就業者の割合で見ると1人の非就業者を何人の就業者で見ているかと言うと、1970年は1.05人でしたが2040年は0.96人。ほとんど変化なくて、2020年よりも増加する予想です。ただ、個人的には、非就業者と就業者と言うくくりは少々乱暴で、詳細が書いてないのでわかりませんが(意識的に書いていないかも)、私は年金をもらっているけど就業者でしょうし、赤ちゃんは非就業者でしょう、また就業者の中にも扶養の範囲内で働いて厚生年金は扶養扱いの方もいるでしょう。年齢だけで数字を挙げるのもミスリードの要因ですが、この頭数だけで安心だというには少々データ不足の点も(視点的には面白かったです)
いずれにしても、年金の不安をあおるデータにしても安心というデータにしても、切り口次第。100年安心発言もありましたが、制度は安心でも、政治と行政には不安って言う気持ちが、うまく年金と言う身近な話題にすり替わっている可能性も大いにあるなあって言うのが印象でした。
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年金は保険(貯蓄ではない)。
貯蓄:将来の「楽しみ」のために「自分」で蓄える
保険:将来の「不幸」のために「みんな」で備える
年金が想定する不幸の代表は「思いのほか長生きしてしまうこと」
年金は損得で考えても仕方ない。
受給時期を繰り上げるか、繰り下げるか、の正解は一概に言えない。ライフスタイルが各々違うし、そもそも人はいつ死ぬのか分からないから。ただし、次の格言は示唆に富んでいる。
「繰り下げの後悔はあの世でする。繰り上げの後悔はこの世でする」
「年金」と名の付く金融商品には近寄るな。
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今まで年金について漠然とした不安があったが、
本書の年金の本質は
貯金ではなく保険、
自助や公助でなく共助、
将来のモノやサービスに対する請求権
という説明が腑に落ちた。
また、年金について損得ではなく自分のライフスタイルや価値観を踏まえて繰り上げや繰り下げ受給するかなど考えなくてはいけない。死んだら損も得もないのだから。
年金なんか自分たちのときにはもらえないと思っている若者に是非読んでもらいたい1冊です。
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年金に関する誤った情報、特にマスコミのいい加減な情報垂れ流しに晒されていると、あまり疑問を持たずに「そうなんだ」と納得してしまう。
本書は、そんな誤った情報をエビデンスとファクトをもとに年金の正しい理解へと導いてくれる。
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年金の本質についてわかりやすく解説しており、その真実に驚かされる。まず、年金は、安心して長生きするための保険であること。そして、年金財政は、積立金が200兆円もあり破綻などしないこと。さらに、支える人と支えられる人の割合自体は昔から変わっておらず、世代間格差など存在しないこと。最後に、物価が変動することを考えると積立方式より賦課方式の方が優れていること。こうした事実を知ったうえで、どのように活用していくか考えたい。
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年金=不安定で信用できないもの、という先入観を見直させてくれる本でした。情報をきちんと正しく理解するためには、自分がきちんと正しく受け取れるように意識して学んでいかないといけないな。