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紙の本
クラシックしかも弦楽合奏
2022/12/11 10:00
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヒロインの「死」を道具 きっかけにした作品はどうしても感動を押し付けるような調子になるので好きではないのだが、この作品はそれにもまして感動的なものになっている。ストーリーのテーマも数多く類似作品があるバンドものではなく、クラシックしかも弦楽合奏を取り上げているところに新鮮味がある。
紙の本
未完成なアルペジオ
2021/11/10 17:45
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:求道半 - この投稿者のレビュー一覧を見る
五人のメンバーが在籍する、アマチュアの弦楽四重奏団が活動を休止した。
その理由は、演奏家ではないものの、カルテットのプロデューサー的な役割を果たす少女が亡くなり、辛うじて均衡が保たれていた団員の能力や熱意の差が顕在化して、信頼関係が瓦解し、全員が別々の道を歩み始めたからである。
ヴァイオリンを務める吉識律は、この二年間、楽器を手に取らず、大学進学に向けて、勉学にのみ、心血を注いだ。
元々、彼は、自発的に、楽器を奏で始めた訳ではなく、将来、プロになりたくて、カルテットに所属し研鑽を積んでいた訳でもないので、音楽活動には未練がなかった。
しかし、心残りがあるとするならば、それは幼馴染の少女との約束が果たせなかった事であろう。
その少女の名前は相根小夜子と言う。
ドイツ語で、一つを意味する冠詞は、日本語では、人名として、苗字にも、名前にも、使える。
アイネがいなくなってから、律の身近からは、音楽が鳴りを潜めていたのだが、通りすがりに流れて来た前衛的な音楽に、彼は耳を傾けてしまう。
その音楽の演奏家は、彼と同年輩の女の子だ。
律と面識の無い筈の彼女は、相根小夜子の事も、あの弦楽四重奏団の他のメンバーの事も知っており、律に音楽活動の再開を促すのであった。
ロックやポップスのアマチュアバンドの物語は珍しくも無いが、本作は、クラシックの、しかも、弦楽器でのみ成り立つ楽団の、団員間の軋轢とその関係の修復を描く新味のある作品であり、かつ、二人の少女の稀有な運命を、少年の成長に絡めて、解き明かす、謎めいた筋書きの話でもある。
音を絵で表現するのは容易ではないものの、作者は楽曲から派生する雰囲気の中に登場人物を配置する事により、その困難を克服しようと企図し、その試みは、概ね、成功した、と言えるであろう。
この作品の画面は、整然としているが、描線の濃さは均一ではなく、これによりインクの濃淡に似た曖昧さやゆらぎの効果が生じる故であろうか、紙の本で読む方が、その微妙なニュアンスが強調されて、味わい深く感じられる。
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