紙の本
衝撃の内容で、驚きました
2021/09/18 13:36
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投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
近年、全国の国公立大学で学長などが勝手に指名され、大学を私物化する事態が相次いでいる、という衝撃の内容を、実際に国公立大学で働く方々が告発した1冊です。全部で7大学が取り上げられています。
今、国公立大学でこのような事態が起こっていることを知り、私は大変驚きました。その私物化ぶりもすさまじいものです。ぜひ、数多くの方々に読んでほしい1冊です。
紙の本
学問の 自由侵される 日本かな
2023/02/28 22:46
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投稿者:清高 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1.内容
日本国憲法第23条で学問の自由が保障され、大学の自治が認められているとされ、その中には人事の自治が認められているという(芦部信喜『憲法』(岩波書店)の「学問の自由」(筆者の手元にある新版補正版(1999年)では第八章三)を参照)。しかし、小泉純一郎政権の下で行われた国立大学法人化からは、教育公務員特例法を適用しなくてもよくなり(「法人化により教職員が非公務員とされた」(本書p.4)から)、その結果、「学長と学長指名の少数の人物に強大な権限が付与されることになった」(同前)という。その結果、大学の自治が侵され、学長やその取り巻きの独断により、大学が壊れつつある。そしてそれは全国で起こっている。本書はそのうち7校を取り上げ、国立大学法人化以来の問題を指摘する。
2.評価
(1)筆者は、前述のとおり、憲法の解釈学を勉強したことがあるが、その知識からすると、本書の問題意識を共有するものである。すなわち、国立大学法人化以降の大学のあり方は問題と認識する。統計を見たわけではないが、大学の教職員より民間企業で働く人が多いと推測するので、本書の問題意識を読者が持てるかはわからないが、1.で書いた憲法学の知識や、大学と民間企業が違うこと(pp.30-31に書いてある)を理解して、一人でも多く本書の問題意識を共有してほしいものである。
(2)ただ、筆者が読んだ限りでは、pp.17-18「学長選考が原点だった」と、p22ll.1-6がわかりにくく、読者が問題意識を持てるか疑問に思ったので、その点で1点減らして4点とするが、日本のあり方を考えるうえで重要な1冊である。
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この20年、国立大学法人化によってどの様に大学が壊れてきたか。七大学における具体例が詳細に記録されている。記憶の新しいところでは北大の総長が放逐されたこととか、東大とか筑波大での総長選考における騒動とかですが、地方大学ではそれどころではないトップによる大学の私物化が起きているようだ。
法人化後、交付金削減、競争的資金の増大、法律の改正などを通じて、大学という公的な教育研究組織を企業のようなトップダウン型経営体に変えてきたわけで、実質的に財界・政界の言うことを聞くトップが据えられるようになった。これを主導してきた財界・政界にとっては、アカデミックな旧態依然とした大学を壊すことが目的だったので、本書のような事実を突きつけられても平然としていることだろう。
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取り上げられた大学の事例をみると、国公立大学はお先真っ暗のように思えてしまう(東大の現総長の「対話と共感」の理念は少し明るい話題かも。大学運営にどう反映されるかが気になるけど)。改正された国立大学法人法のもとで国立大学がどうなっていくか今後もチェックしていきたい。
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文科省による2004年の国公立大学の法人化が大学改革の自主性・独立性を確立するためだったはずだが、逆にいかに政治の介入を招き、学長の暴走を許すことになってしまったかという改革の失敗の実例が、旭川医科大学、下関市立大学、京都大学、東京大学、筑波大学、大分大学、北海道大学での学長問題の混乱を招いたかを事例紹介で痛感した。一体何のための大学改革だったのか!?かつて「大学の自治」に価値を置かれていたのが、今は「大学のガバナンス」という言葉が大流行。「ガバナンス」の主体は一体誰なのか?「競争的環境の中で個性輝く大学」というキャッチフレーズはますます逆行していると言って過言ではない。今後の日本の大学の将来に暗澹たる大きな不安を感じざるを得ない。
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買うか否か数秒迷った、大学のネガティブ事例集。
いつにも増して中立を意識して読み進めた。紹介されている7大学が特別なのではない。「私物化」は、国立大学法人法と政府・文科省主導の国立大学法人改革の「無自覚な追認・内面化」の帰結だ。いち職員として、学生のための大学とコモンズとしての大学を意識して行動していこう。
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心底驚いた
例え自分とは違う意見であってもそこに透明性としっかりした説明があれば納得はできる
どこか大学の話をしてるのか政治の話をしてるのかわからなくなるのはなぜなのだろうか
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NHKドラマ「今ここにある危機と僕の好感度について」で話題になった大学の改革や学問の自由、自立。
実際に危機にし瀕しているのは聞いていたが、ここまで酷いとは。
学費は上がっているにもかかわらず、教育の質は落ち、研究も落ち着いてできる状態ではない。これでは日本の高等教育、研究の質が下がるのも仕方がないだろう。
国の教育への関与は決して良い影響を与えないと確信する。
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今後、深堀りした本が出ると思うけど、状況を概観するのに、今の時点でなら十分な情報が得られる。21世紀で20年経ったけど、この件も含めて、性善説が機能しない感じは何なんかな。逆に、機能してるって聞くとこもありはする、その差は何なんだろう。その一方で、お金はあるけど雇用できない状況で、民間に仕事が生まれてる歪さの恩恵もあったりして、うーん。
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法人化以降、国立大学は年々運営費交付金を減らされ、財政が厳しいなかでも改革を迫られるなど、追い立てられてばかりの印象だが、近年特に、学長のリーダーシップを強めてきたことのツケ、歪みが表に出てきたことが、7大学の例を挙げて紹介されている。
想像以上に劣化が進んでいたことにショックを受けた。
大学が経営体になることで、本来大学が担うべき教育研究の機能が疎かになるのは本末転倒。大学の私物化を止められないものか。