紙の本
人権なき日本
2022/01/27 09:40
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:GORI - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本で働く外国人労働者の実態がよく分かる。
新聞のニュースでも見ているが、本作を読んで日本の入管の実態がよく理解できた。
スリランカ出身のクマさんとシングルマザーのミユキさん、娘のマヤさん、そして「ハムスター医療過誤訴訟、全面勝訴」の恵弁護士、みんな楽しくて、頼もしくて、勇気を出して戦って、家族を守ることが出来て良かった。
素直に泣ける物語。
人種、宗教などの差別が無くなる国になって欲しい。
投稿元:
レビューを見る
出会って、好きになって、一緒にいたいと願う。小さな幸せが突然奪われたのは、彼がスリランカ出身だったから。最新長編小説
投稿元:
レビューを見る
温かい涙がポロポロポロポロ止まりませんでした。こんないい涙をながしたことあったっけ?というぐらいの、優しくて温かい涙でした。
しかし、その流した涙と同時に、日本の外国人に対する法律、この作品のテーマとなっている入管行政の実態に、衝撃を受けました。
今まで、特に考えた事のなかった入管や不法滞在の問題などについて、考えさせられることになります。
ビザが切れると入管施設に収容されてしまうこと、なかなか在留資格が与えられないこと、日本人と結婚しても、偽装結婚とみなされて強制送還の対象になること、日本では難民申請がほとんど通らないことなど様々な問題を知りました。
その中でも一番衝撃を受けたのは、非正規滞在の子供が日本で生まれ、日本で育ち、日本語を話し、日本しか知らない子供にも在留資格が与えられず、職につけないことです。それが自分の国の法律なのか?と、大きなショックを受けました。
そんな重たいテーマではありますが、語り手が女子高生であり、彼女の視点でとらえられていますので、内容も非常に分かりやすい、とても温かい家族小説でした。
多くの人に読んでもらいたいなぁと思う一冊です。
投稿元:
レビューを見る
ニュースの「入管」に眉を寄せるようになったら、もう読んでほしい物語。巻末に参考文献も載せておられるので、読むちからのあるひとはどんどん踏み込んでほしいと思う。
投稿元:
レビューを見る
お母さんが好きになった相手は、日本に暮らすスリランカ人、クマさんだった。娘のマヤちゃんのユーモア溢れるチャーミングな語り口調でお話は進められる。でも、内容は外国人のオーバーステイを描いた、とても重いものだった。
入管のニュースをちらっと聞いたことはあるけれど、それについてしっかりと考えたことはなかった。何も知らず、関心もなく、今まで過ごしてきてしまっていた。日本の入管はこんなにまで許容がないということを初めて知った。
だからこそ、日本はまだ比較的安全な国とも言える面もあるのだけれど。
実際、私が住む土地には、外国人の学生がとても多い。夕方以降のスーパーのレジ打ち、コンビニには外国人の店員さんが多くいる。頑張ってるんだなぁと思う。同時に、夜道で集団で騒ぎ立てている人たちもいるし、コロナの流行し始めはそれらの学生さん外国人の感染が多く、怖いなぁと思ったこともある。仕事で関わった、ある国の人達特有の、身勝手な自己主張の強さとかに唖然として、もう関わりたくないと思ったこともある。
若い頃、ヨーロッパに行った時、日本人は差別されていると肌で感じた。何だか、汚らわしいと思われていると。皆からではないけれど、駅やお役所など、あまり商売と結びつかない所は特に当たりがきつかった。大好きな憧れの国だっただけに、ショックだった。
個人的には、日本人は、外国人にヘコヘコして笑顔で接し、お節介なまでのお世話をする人が多いと感じていた。お決まりの作り笑顔で。外国人と接することがステイタスとすら思っている風に見えていた。
でも、この本に書かれている事は、真逆だった。こんなに酷いことを日本人が…?とショックだった。今まであまりにも無知だった自分にも。かと言って、何かできそうでもないけれど、一般の日本人がまずは入管事情をもっと知り、問題意識を個々が持つ必要だと痛感した。
お話は、深刻な問題を扱ってはいるけれど、家族愛に溢れていて素敵だった。難しい法律用語なんかも、クマさんが助かって欲しい一心で頑張って読めた。こんなにハートフルなお話を読むことで、感動しつつ、入管の事を知る機会を与えてもらえてありがたかった。本としても、とても面白かった。
投稿元:
レビューを見る
ラジオを聴いて、絶対に読まなくてはと本屋さんにかけこみ、じっくり読んだ。ちょうど『ルポ 入管』を読んですぐに読んだこともあってか、フィクションなのに、フィクションではない、現実に起こっているのだろうという臨場感というか現実味をひしひしと感じるお話だった。
帯にあるように「家族3人で暮らしたい ただそれだけの望みを叶えるのがこんなに難しいなんて」の言葉に尽きる。
綴り手のマヤと一緒に、どうして、日本を出国させること前提、何か悪いことずるいことをしようとしている(した)ということが大前提なのだろうか。入管の対応にいちいち悲しい気持ちになったり、憤ったり…その一方、私もそう言ってしまうことあるだろうなという内なる偏見に気づいたり…。
日本にはさまざまな国から、日本で生きていこうとやってくる人たちがたくさんいる。その人の力ではどうにもならないことで、日本に来たことを後悔させるような思いをさせたくないと強く思う。
そして。シリアスな内容ではあるけれど、読んでいると練乳入りのミルクティーが飲みたくなるし、クマさんのスリランカカレーはじめスリランカ料理が食べたくなる。スリランカに行きたくなる!もしかしたら食べ物を通して、その国のことがちょっぴりでも知ることができれば、知らない国から来た人に対して身構えてしまうこともなくしていけるのではないか、そんな気もしている。まずは、この入管の問題に興味がない友人とスリランカ料理を食べに行くことから始めてもいいのかもしれない。
投稿元:
レビューを見る
中島京子さんが読売新聞の連載小説を⁈もともとそれだけで期待値高かったけれど、さすがのひと言。
これまでも、入管施設内で外国人入所者の扱いが非人道的だという事について時々ニュースで聞くことはあったけれど、それがどういうことなのか?本当のところは分かっていなかった。クマラさんが物語の中で経験した理不尽な扱われ方は、現実に名古屋の入管施設で亡くなったウイシュマ・サンダマリさんの存在と重なり合い、いたたまれない想いもあるけれど、それでもなんとかしようとする人々は居てくれること、その先には「光」もある。私たちにもできることがあると信じたくなる。スリランカ料理が猛烈に食べたくなる。そんな希望にあふれる読後感。
投稿元:
レビューを見る
タイトルの「やさしい猫」にとても深い意味があった。その深い深い意味がわかるのは、ずっと後で…
最初は、ほんわかとした家族の物語かと思われたが…
確かに家族の話なのだが、そうなるまでにとても苦しくて、辛くて長い道のりがあった。
この物語の中で、知ることのできない外国人収容施設での出来事や裁判の様子が描かれているがこれも胸にずしんとくるものがあった。
投稿元:
レビューを見る
スリランカの女性が入管施設で亡くなったニュースを最近見た。
不法入国とか在留資格とか、日本人として住んでいる私はよく知らなかったけれど、こんな理不尽でひどい問題が現在の日本で起こっているなんて…。
投稿元:
レビューを見る
「ちいさなお家」「ながいお別れ」などを書かれた作家。
中島京子さんの最新作。
幼くして父を亡くしたシングルマザーと暮らす少女の、一人語りで始まる。
夫と死別し、女で一つで保育士として生活を支えた母、ミユキさん。
少女マヤは小六でもご飯の支度もできる。
東日本大震災のボランティアで、スリランカカレーのオーナーがカレーを振る舞った際に知り合った年下のスリランカ青年、クマラと出会う。
東京の下町の商店街で偶然の再会。
そこから付き合いがはじまり、結婚の決意。
だがそこからが。。。
日本語留学が終え、就労ビザで修理工場に務めるも、クビになり、仕事を探すも就労ビザが取れるような会社が見つからずオーバーステイに。
ミユキとクマラはいき違いがありながらも、結婚を決意するが、入管に相談に行く直前職質で警官に逮捕される。そこから親子の大変な入管とシステムとの戦いが始まる。
これは、物語だがフィクションではない!
いくつもの悲しい難民申請を却下された外国人や、その家族たちのおびたたしい実録から描かれた話。
こういった理不尽極まりない実例が、こうしている間も続いているのだ。
日本の入管という部署は、『難民保護と入国管理を一つのところで大きな裁量を持ってやる』ということは、『助けてあげたい!と追い出してやるぜ!が同じ管理官が裁量するということ。そして追い出す数が多い人が出世する事実!!!!!』
そんなまるで理に合わない実情の我が母国、日本!
難民申請成功率1%未満が日本で67%がカナダ。
どういう国なんだ!!誇れる国とは到底いえない。
そしてこのシステムは、国民ほとんど知らない。
重箱の隅を突っつくような意識で『追い出す!』
あちこちの道路やビルを作った人が、会社の都合でお払い箱になって、ビザが切れたら追い出す、、、って!
国を命からがら逃げてきた人が、身分を証明するものを持っていて、出国するとき見つかったら殺されるか収監される危機で、どうやって自分で証拠を持ち、それを証明できるだろうか?それを平然と『証明できないなら追い出す』それが我が国、日本。
是非是非読んで欲しい作品。
色々な問題が盛り込まれていながら、物語としても完成され実に感動的な1冊になっている。
投稿元:
レビューを見る
中島京子さんの新作は、入管に収容されたスリランカ人と家族の物語。
知識として知っていた入管の酷さを実感させられた。偶然にもウィシュマさんの犠牲が広く報道されたばかりだが、本当に何でこんなことになっているのか。
詳細な描写による数々の理不尽なシーンは現実感に溢れ、実際にこんな目に遭わされている人たちの存在が確かなものと感じさせられ、救われない気持ちになる。
ただ、この小説は絶妙のユーモアがちりばめられた文章なので読み進めるのは辛くはないし、ハッピーエンドになるに違いないという予断を頼りに、一気に読み進めることができた。
クライマックスの裁判の場面は大迫力。判決を聞くのってむちゃくちゃ怖いんだろうな。
投稿元:
レビューを見る
読み終えて、しばらくドキドキが収まらなかった。
濃い話だった。
入管のことは報道で触れたりして「ひどいな」と一瞬思うことはあっても、なにも知らずにいた。
牛久入管のすぐ近くに住んでいるのに。
私にもなにかできることがあるだろうか。
マヤが語り掛けている相手が誰なのか、最後にわかってニンマリしてしまったが、ひとりでも多くの人に読んでもらいたい本である。
投稿元:
レビューを見る
とにかく多くの人にこの本を読んで欲しい。
日本の行政の謎。
確かに悪い事をする外国人も居るから取り締まるのだという事は分かってはいるけれど。
日本は平和で公平な国だと思っていたのになぜ?どうして?何でこんな事が野放しになっているの?と疑いたくなる現実を突きつけられた。
こんな事が実際に起きている。
理不尽な人間。理不尽な制度。
理不尽な目に遭って心を奪われている人たちがいるという現実をまずは知る事から始めよう!
投稿元:
レビューを見る
ミユキは、偶然知り合ったスリランカ人クマさんと恋に落ちる。ミユキには娘がいて、陽気なクマさんにすぐに馴染む。しかし、クマさんは勤務先から解雇されてしまった。その事を言い出せないまま、時は流れ、クマさんのオーバーステイが問題になってしまった。
うーむ。素晴らしい小説だった。
非人道的と言える入管システム。犯罪者ではないのに、ビザが切れた者を刑務所のような所に閉じ込める。病気になっても救急車も呼んでもらえない。
また外国人に対する差別意識。外国人と結婚すると言うと、騙されてるのじゃないかと言われる。しかし日本人の夫だって暴力を奮ったりするわけで、日本人なら安心というのはオカシイ。
というような事を色々考えさせられるだけでなく、エンターテインメントとして充分に面白い。ラスト、審判はどう下るのかドキドキした。そして魅力的な登場人物たちもとても良かった。
投稿元:
レビューを見る
この小説の書かれた目的というか主張したいことがはっきりしすぎていること、登場人物のセリフを使って読者に対して知識を与えているところとか、文学作品と考えるなら私はあまりいいとは思わなかった。しかし、これが新聞の連載小説で、入管のことや在留資格のことなど全く興味関心がなかった人が知ったり、考えたり、感じたりするきっかけになったであろうことを思うと、とても素晴らしいことだと思った。
恥ずかしいくらいに単純に、今度生まれ変わったらものすごく勉強する人になって弁護士になりたいと思った。困った人を助ける人になりたい。
生まれ変われないので、今のままで何ができるか考えなくてはならない。入国管理制度、入国管理局、技能実習生、日本語学校の留学生等、あまりにも闇が深くて、一体何ができるのかと思ってしまう。人を人と思っていない扱いが限度を超えている。一般常識から考えて理不尽なことが普通に行われていても、普通に暮らしている日本人には可視化されないし、自分とは関わりのない問題に思えてしまう。でも今のようなことを続けていると、日本という国を嫌ったり憎んだりされてしまうだろう。外国人の人の力を借りなければ国が成り立たないと一方で政策を進めながら、その人たちを大切にしないというのはどう考えてもおかしい。
よりたくさんの人が関心を持って、国を動かしていくというのが一番ではないか。そう思うと、素晴らしい作家がこのような読みやすく面白い小説の形にしてくれたことは大きな意義があるのだ。