紙の本
奇妙なファーストコンタクトもの
2022/07/18 19:14
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投稿者:コンドル街道 - この投稿者のレビュー一覧を見る
天文学者ミッチェル博士が受信した謎のパルス信号、それは人類に奇妙な変化をもたらすものだった。
フェイクドキュメンタリータッチのある意味ファーストコンタクトもの。注釈や参考文献リストもあって、本物のドキュメンタリー感がある。
紙の本
クロスオーバー?
2023/01/04 22:05
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投稿者:yukiちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「優越者」の作ったパルスに共鳴した人類は、「優越者」の脳に配線替えされたのか?
そして、彼らが残した別世界に移住してしまったのか?
地球に残された人類に救いは来るのか?
もし、バラード大統領が男性だったら、違う選択をしていたのか?
そんな疑問ばかりが残されて、非常に悶々とさせられるラストだった。
アーサー・C・クラーク「幼年期の終わり」、グレッグ・ベア「ブラッド・ミュージック」、ジョン・ブラナー「幻影への脱出」、ジェフ・ヌーン「ヴァート」、これらの作品の雰囲気をミックスしたような、不思議な感想を抱いた。
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小説というのは語られる内容以上に、語り口、どのように語られるかが大事だったりするのだが、これはまさに語り方の勝利。モキュメンタリーの手法はホラー映画ではおなじみで、小説でもそこまで珍しいわけではない。例えば、長江俊和氏の「出版禁止」とか、同時期に早川から出た「異常論文」も、基本はこれのヴァリエーションといえるだろう。けれども、それらの多くがどこかで偽ドキュメンタリーの枠からはみ出すのに対して、本作は極めて禁欲的。無数の脚注もそれらしいが、巻末の、偽の謝辞や架空の本をズラズラ並べた参考文献リストには、それだけで笑ってしまう。忘れてはいけないのは、侵略なのか贈り物なのかも解らない、異星人からのメッセージに混乱に陥る社会の、大きなうねりを描くのに、この手法がぴったりだと言うこと。これがいちばん大事なのかも知れないが。
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この手の本、大好き。少しずれるかもしれないが、テッド・チャンの『地獄とは神の不在なり』とか、今この現実に何か1つ価値観をぐるりと変えてしまう出来事があったとして、その様子をドキュメンタリーチックに伝えるSF、モキュメンタリーの類。
なんでしょうね。めちゃくちゃドラマチック、というわけでも実はないのだが、しかし世界に起こる災厄、災害の類いというのは基本的にどれもそうで。自分が生きてきた中でも、あるいはこの2021年現在においても、大規模な災厄というものを経験してきていて、それにより価値観が揺さぶられたりはしてきたわけだが、じゃあその中で誰がヒーローだったのか、誰が悪かったのかみたいなわかりやすいドラマだとか、人類は不可逆的に破滅へと向かい始めたのかというと、実はそんなことはないわけで。大局を見れば、それでも地球は回っているとしか言いようがない。それでも生き残ったものはただただ前へ進む、としか言いようがない。この本の中で起きた異変は当然ながら現実に起きてきた出来事とは較べようにならないほどの大災厄ではあるわけだが、じゃあそれで世界はどうなったんだ、っていうところが、この本のポイントかなぁ、と思う。そういう意味でのリアリティを感じたし、とても楽しめた。
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宇宙から発信されたパルスコードによって変容する人類が描かれる。パルスコードが引き起こす“上昇”と呼ばれる現象によって、奇行に走る人や透視能力を発現する人が出てくる事例も紹介される。
ただ本作は、そういった「突如として生まれた“能力者”が引き起こす事象」を派手なアクションを伴って描いていく方向(漫画『AKIRA』や映画『クロニクル』など)には舵を切らず、“起こったこと”を一定の距離感を保ちながら整理していく筆致が採用されている。
モキュメンタリーの形式を採ることで、“語り”の構造的にも「起こった事象から距離を保つ」ことができており、多角的な視点から事象が描かれている。マックス・ブルックス『WORLD WAR Z』と並べてみるのも一興かと。坂野公一さんによるデザインも攻めている。
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全編にわたって、会話の書きおこしとインタビュー的な文体が続いており、大変読みやすかった。
主人公のダリア・ミッチェル博士が偶然宇宙からのパルスを発見し、パルスのDNA再編成機能によって人々が「上昇」し、世界が崩壊するという感じの話。
脱落も含めて上昇したのは世界人口の約1/3とのことで、残った2/3の人々は、結局各々の人生を続けるしかない。
そういう面では、インフラの復旧すら進まない世界で、動植物を育てたり創作活動をしたりすることに娯楽を見出しつつ生きることのできる人間の適応力は凄まじいなと思える作品だった。
このご時世、どうしてもコロナ渦を連想してしまうけれど、なんだかんだで混乱しつつも、おおかたの人はそれなりに適応して生きているし。
また、主要人物が大体上昇せず残ってる一方、枝葉の人物はほぼ途中で死んでるのは、若干ご都合主義感があったりする。
ラストの展開としては、あまりまだ消化出来ていない。
脳が改変されて優越者に耐えうる容器となったはいいものの、結局優越者は大昔に滅んでいて、じゃあ上昇者たちはダリアが見た別次元?にとんで、その後は?ただそこに存在するだけの何かになるのだろうか。
そこそこトンデモ感はありつつ、一応論理的に進んできた話なので、最後ももう少し固めて欲しかった気がする。
専門家委員会からの大統領演説草案作成も、その結論に到達してしまった意見に対して一応の一貫性が感じられるだけに。
まあSFなので細かいことを考えるのは不毛だけれど。文章量に対して、思ったより全然サクッと読めてよかった。
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これはもっと話題になっていいSF…!
背表紙まで鏡文字になっている凝った装丁や、本中本として展開される「ノンフィクション」の作り、各ページみっちみちの注釈…本の技巧的なところにワクワクして買ったのだけど、中身もとても面白かった!
深宇宙から届いた人工的な「パルス」、見えないはずのものが見える人々が同時多発した「上昇」とは何か?その目的は?というSFミステリはもとより、それを巡るアメリカ政府や組織の政治劇、宇宙の中でヒトはどう生きるのかというヒューマンドラマ。
インタビューと会議録の再編集によるドキュメンタリー手法が、事件をめぐるいろいろな面を無理なく展開して、テンポよくぐいぐい読ませる。
ふんわりとしかわからないところに賛否があるかもしれないけれど、他の面白さが圧倒的なので私はOK!
竹書房文庫SFは、装丁が独特で気になっていたのだけど、今回とても良かったのでこれから気にしていきたい。
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SFなんだけどノンフィクションのような。
これは2023年に起こるある出来事をまとめたもの。
物語に入るというよりかはもう一つ上の階層で登場人物が読んでる手記を読んでるみたいな、、新感覚。
最後は洋画っぽく、え?これからどうなるの?だったり、え?結局どういうこと?みたいな置き去り感があった。
それもまたよし
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反転した表紙・背表紙に一瞬、我が目を疑う。あれ……不良品??ワクワクして即座に読む決意をした竹書房の逸品。
裏表紙を読むとどうやらSFらしい。竹書房さんのSFか、どんなんだろう?手にとるとすぐに特殊な組み方をした小説だとわかる。インタビューや手記、会議録や機密記録など、何かの事件を扱ったノンフィクション風に構成されているのだ。
内容としては、ファーストコンタクト+パンデミック+オカルト(UFO&陰謀論)をミステリーを感じさせる構造でミックスした感じ、というところ。古くからあるSFや最近のテクノロジー・オカルト情報などから多様な要素を盛り込んでおり、驚天動地のようなパンチのある展開はないものの、エンタメとして非常に手が込んでいると感じた。やはり、あくまでも架空のノンフィクションとして書かれているのは面白い。時系列がバラバラだが、うまく構成されていて違和感がなかった。謝辞と参考文献のこだわり具合には思わずニヤリとしてしまった。
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先週紹介した「いずれすべては海の中に」と同様、竹書房のSFシリーズ。
竹書房、おしゃれにしたいのはわかるけど表紙を鏡文字にするのはどうなのよと思いつつ、パラパラとめくってみたら面白そうだったので購入。
先日、SFにはいろんなサブジャンルがあるって言ったけど、その中でも地球外知的生命との出会いを主題にした「ファーストコンタクトもの」というものが存在する。古いモノではアーサー・C・クラークの「幼年期の終わり」とか、映画だと「未知との遭遇」とか。
この作品も、ファーストコンタクトものなのだけれども、ただ、異星人との出会いはない。深宇宙からのパルス信号を、タイトルにもあるダリア・ミッチェル博士が観測する。それだけ。
結局、このパルスは、我々とコミュニケーションをとるために送られてきたものではなく、我々に「終局」という、人類の3分の2が消滅するという破滅をもたらすもので。そしてこの本は、その「終局」が終わった後に、すべてを疑似ノンフィクションのような形で資料をまとめたという体で構成されている。
設定もわかりやすいし、科学者が語る内容も難しくない。
「終局」に向かう中での、人間関係や心理の描写の方に焦点が当てられているので、最後は結構じーんとさせられる。
そして、表紙がなんで鏡文字になっているのかの理由が、読んだ後になんとなく(あくまでなんとなくっていうところが良い)わかって感心したりもした。
人類の3分の2が消滅した世界というのは、果たして絶望なのかあるいは希望なのか。その答えはなにも書いてないのだけれども、考える価値のある面白い問いを残してくれたなあと。
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22.4.27〜5.2
こういう構造の作品大好き。
コーヒーを何杯も飲んで徹夜して〜でなんとかしてるっていう描写の意図的な軽薄さについて考えた。
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ドキュメンタリー風に書かれたSF、とても良く出来ていてリアルな感じが秀逸。
地味に、不安になりながら最後に希望があるのか、絶望なのか判断を悩む。
飽きずに読める。