紙の本
ダイヤを作るモノ、ダイヤに等しきモノ
2006/05/27 22:48
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:シノスケ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ナノテクの発達は人類社会に変容をもたらした。国家という集合概念は崩れ去り、人種や宗教、おのおのの主義主張から分分派し細分化されていた。マフィアのピザ屋とタクシー+剣士という突拍子もない仮想世界を組み立てたのは『スノウ・クラッシュ』だったが、やはり国家ではない集合体が幅を利かせ、特にアメリカの扱いは相当ひどかった気がする。本作ではそもそも国というまとまりがなく、同じ都市部の中でも派ごとの明確な境界や、人々の扱いの違いが目立つ。
さて、物語はある部族の有力者フィンクル・マグロウ卿が最愛の孫娘のために、ナノテクの真髄からある書物の作成を依頼することから始まる。初頭読本(プリマー)と呼ばれることになるそれは、子供の精神を大きく開花させ、貴族らしい思考と意思の力を開発する。作成を命じられたハックワースは、自らの娘にもその本を与えるべく不正な方法を用いてコピーを作り出すことに成功するが、肝心の本は不幸な事故から兄と暮らす貧民ネルの手に。幼い少女は本を手にしたことで世界の変容へと巻き込まれ……
ネルの読む本の物語がお話としては実は肝要で、そこに作者の主張が明文化されている分親切な作品なんじゃないだろうか。それぞれの視点が交わることもなく、思惑も重ならず、ただ共有社会の厳しい束縛と社会としての慣性が分化しているようで面白い。その中でネルの持つプリマーが彼女の幼少体験にどんな役割を果たしていくのか。ナノテク自体はかすみがちだけど、科学的魔法の域に達していても必要なものは現代と変わらないんじゃないか?
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本の中に出てくる本は面白い。と確信しています。たぶん劇中劇みたいな感じでその行為が現実の自分とシンクロしているからだと思います。映画とかにすると途端につまらなくなる。
この小説が書かれたのと同じ95年(win元年)「LULU」というヴィクトリア風動く絵本のCD-ROMがあったけど、つまんなかった。
ダイヤモンド(テクノロジー)、儒教、ヴィクトリア調の美学。
スカル・ガン、マター・コンパイラー、きょうりゅうの王を決める話、退役軍人の巡査、256×256人の12歳の少女軍団。
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「クリプトノミコン」読後すぐに手をつけた本。
教育の大切さと限界が作者の作品作りのテーマなのだろうか。
虐待の場面が痛くて読み進めるのが辛く、下巻は未読。
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「偽善者だったからこそ二十世紀末、ヴィクトリア主義者は軽蔑されていたわけです。彼らを偽善者呼ばわりした人々の多くは、当然ながら、身にやましい点があった。それでもパラドックスを感じなかったのは、自分たちが偽善者でなかったから−道徳的スタンスもとらず、道徳心もなかったからです。」
「当たり前なのだよ、実際の話。厳格な行動基準を遵守することがかんたんだとは、誰も言っていない。それには困難がつきまとう−道すがら、われわれは間違いも犯す−だから面白いのだ。内面的葛藤。本能と、独自の道徳体系を希求する厳粛な心との、無限に続く争い。人間本来の姿だ。問題は、その葛藤のなかで、どうふるまうか。それがあとになって、上に立つ者の判断を左右する。」
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造語とそれに当てられたルビが多すぎて読みにくすぎる。物語世界に入る前に挫折してしまいそうだ。
>上巻半分を過ぎて、ようやく登場人物と舞台設定が整った。ここまでくると一気に面白くなってくる。
>最後はせっかく面白くなりすべてがつながったのにこれで終わり?という感は否めない。状況説明は詳しいが、本来なら盛り上がる叙事場面が淡白なのは作者の特徴か。
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上巻読了。好きだ!最初の50ページ読んで感性が合うようなら、心震える読書体験になるだろう。逆に合わない人もいると思う。設定・世界観に酔える。翻訳もこなれている。
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ヒューゴー賞の割に読みにくい
表紙 4点瀬戸 羽方 日暮 雅通訳
展開 5点1995年著作
文章 5点
内容 635点
合計 649点
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世界観もストーリーの展開も最初はまったく掴めなかったが、まぁそんなもんかと目の前に展開される世界をそのまま受け止めているうちに、混沌の中から世界観が見えてきた気がする。
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SF。
一冊の本を巡る物語。
世界観が独特で、正直かなり読みにくい。
少女ネルが本で体験する物語が一番面白い。
この初等読本、欲しいな。
総評は下巻で。
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「近未来、ナノテクの発達により、文明社会は大きく変貌していた。世界は国家ごとではなく、人種・宗教・主義・趣味などを共有する者の集まりからなる、多種多様な“国家都市”に細分化されている。上海の貴族フィンクル=マグロウ卿は、孫娘の教育用にナノテクの枠をきわめた初等読本の作製を依頼するが…ダイヤモンドをはじめ、すべてをナノテクで作りだせるようになった近未来を描く、ヒューゴー賞・ローカス賞受賞作。」
スティーヴンスン,ニール
1959年、アメリカのメリーランド州生まれ。ボストン大学で、物理学と地理学を専攻した。卒業後、車の運転手や農作業、中華料理店の下働きなど、さまざまな職業を経験する。1984年、長篇The Big Uでデビュー。1995年に刊行した『ダイヤモンド・エイジ』は、ヒューゴー賞とローカス賞を受賞