電子書籍
ギュゲスの指輪とリア王
2022/06/03 15:57
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投稿者:とめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
コロナ禍を奇貨として監視社会のインフラ整備をした中国や戦争などの不条理を笑い飛ばそうと、不確定で不確実な要素に満たされた不条理な時代を乗り越えるための劇薬・化け物としての哲学的思考を紹介した書。
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平凡社新書
不条理を乗り越える 巻次:10021002 希望の哲学
新書
小川 仁志(著/文)
発行:平凡社
新書判 224ページ
定価 840円+税
ISBN978-4-582-86002-3 COPY
ISBN 139784582860023 COPY
ISBN 10h4-582-86002-8 COPY
ISBN 104582860028 COPY
出版者記号582 COPY
CコードC0210
0:一般 2:新書 10:哲学
初版年月日2022年4月15日書店発売日2022年4月19日登録日2022年2月26日最終更新日2022年4月9日
紹介
《目次》
はじめに
第1章 不条理な新世界
「パンデミック後の世界」と「すばらしい新世界」
…………
第2章 パンデミック狂騒の果てに
不条理な幕開け
なにが残り、なにが戻り、なにが変わるのか?
歴史上の例外
…………
第3章 揺らぐ経済・社会
決断主義と官僚機構の再構築
危機に瀕する民主主義
テイクアウト型リベラリズムへ
…………
第4章 揺れる生き方
不確実性を抱きしめて
自己肯定感を高める
丸いからこそコロコロと転がれる
…………
終 章 不条理と向き合うための笑去主義
不条理を受け入れる
…………
おわりに
参考文献
《概要》
私たちの世界はいま、コロナ禍という不条理に見舞われている。一見、豊かで幸せそうにみえた日本でも、パンデミックによって、格差や不平等、差別など、さまざまな問題があぶり出された。この、変えることのできない不条理な世の中にあって、自己肯定感を喪失せずに、希望を持って生きることはできるのか。
考え、行動し、真理を追究する?闘う哲学者?が、この世のあらゆる不条理を乗り越えるための哲学を示す。
目次
はじめに
第1章 不条理な新世界
「パンデミック後の世界」と「すばらしい新世界」
日本社会に溢れる不条理
哲学の役割
第2章 パンデミック狂騒の果てに
不条理な幕開け
なにが残り、なにが戻り、なにが変わるのか?
歴史上の例外
怒りの哲学
危機を集団的に乗り越える
第3章 揺らぐ経済・社会
決断主義と官僚機構の再構築
危機に瀕する民主主義
テイクアウト型リベラリズムへ
正義論とイカゲーム
ポスト資本主義
第4章 揺れる生き方
不確実性を抱きしめて
自己肯定感を高める
丸いからこそコロコロと転がれる
親ガチャと反出生主義
共犯としての能力主義
終 章 不条理と向き合うための笑去主義
不条理を受け入れる
反抗と連帯
笑去主義へ
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これまで不条理には①諦める②抵抗する③連帯するの3つの哲学的対処法があったが「笑去主義」で笑い飛ばしていこうというのが著者の結論。ちなみに不条理に似た言葉として理不尽があるが、これは人によって引き起こされたものであり、どうにかなる余地があるとのこと。
全体的にはコロナをメインとする昨今の世界情勢や社会問題に対し、最新の参考文献を多数引用しながら著者の考えを述べた時事評論というかエッセーのような内容で、哲学・思想の良質なブックガイドにもなっている。出来栄えとしては斉藤孝風な印象もあるが、2人は似たような所もあるので、これはこれでよいのかと。
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50歳になったら、専門スキルよりも教養や哲学を重視して大局観みたいなものとか賢者を目指そう(なんんかこう言っている時点で頭悪い子みたいだけど)と哲学をカジュアルに読める本をと思って読んでみた。
システムデザインを検討するときに、情報通信システムというインフラがあってその上に業種ごとのアプリケーションがのっかるように、経営戦略の環境分析(5FとかPEST)などを考える思考のインフラツールというか方法論として、哲学を活用しよう!といった感じのコメントを序章で著者はしているように思う。
ファリード・ザカリアの10個の教訓の解説やアフターコロナを事例に「何が残り、何が戻り、何が変わるのか?」という思考枠組みのアイデアを提示している点は、考えている人には当たり前な思考回路なのだろうけど、自分のおかれる環境分析を考える点でとても有益な話だと感じた。破壊は創造の第一歩なんて話もあるけれど、その点も本書はふれている。もう少し拡張してパラダイムシフトのメカニズムのような話をしていて「秩序の更新」と「けがれ」という言葉で議論している。けがれと汚れの違いをふまえて行動経済学や保険会社のCM、公衆衛生の分野で応用されて話題になったナッジの事例から世の中の変化について見解を示している。情報と意思決定の重要性についての指摘や、パラダイムシフトという価値観の変化には、「状態の価値」と「行動の価値」といったコンセプトツールを提供していた。SNSのデジタル民主主義に関する話題にもふれていて、群集心理やカリスマ性、単純化の話をなるほどと感じる解説もある。
雑多に有益だなぁと思ったことを羅列してみたけど、思考ツールの部品をいろいろ見せてもらった感じがするので、読者はこれらを組み合わせたり変形させたりしてカスタマイズして考えてくれ、ということなのだろう。そうすれば、世の中で起こっていることに対して自分なりの見解をもてるようになるんだろうなぁと思う。たまに読み返して思考のブラッシュアップに使おう。