時代を先取りした女性の人生
2023/06/09 14:03
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
「未婚の母」としてエッセーなどを多数執筆し、自立した生き方が共感を呼んだ作家の桐島洋子さん。認知症の進行で執筆が中断していた自叙伝を、3人の子どもが引き継いで、壮大なファミリーヒストリーとしてまとめた一冊。
今でこそ、桐島洋子さんの生き方に「すごい」と思う人は多いだろうが、当時はバッシングもひどかったように思う(半分憧れも会ったと思うが)。
満を持して、今だからこそ、の一冊である。
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桐島洋子さんが自身と子供たちの人生について途中まで執筆し、その後をかれんさん、ノエルさん、ローランドさんが、まるで渡されたラグビーボールをパスで繋いでいくかのように執筆した作品。
洋子さんが描き出した半生のなんと、ドラマチックで、自由であることか! そして文章の瑞々しいことといったら、本当に他に比べられる作家がいるだろうか。
洋子さんは若い頃、文藝春秋社の社員で、編集者だった。その頃、作家の原稿を取りに行くのに、高原に住む作家のところには馬に乗って取りに行ったり、海辺の作家には泳いでビチャビチャの姿で原稿取りに行っている。こんな方が子供を産むとどうなるか、知っている人も多いと思うが、改めて読む価値は十分にある。
後半は一転して、子供たちの立場からの洋子さん一家の姿が描かれる。やはり、そこには華やかななだけでない複雑な事情が語られる。一度は崩壊しかけた家族の絆が再び結ばれたことがわかる。
若い人が読めば、洋子さんの生き方に刺激を得られるだろうし、子育て中の人が読めば、育児のヒントが得られるかもしれない。年配の人は家族のことを考えるだろう。多くの人にとって示唆に富む本である。
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著者を敬愛する友人が貸してくれて読んだ。子どものころ、『聡明な女は料理がうまい』という本を母が読んでいて著者の名前を知ったけれど、私にとっては『淋しいアメリカ人』で大宅壮一賞を取った人。影響も感銘も受け手はいない。
あのカッコいい桐島かれんのお母さん。
前半を著者自身が書いている。雑誌に連載していたらしいが、認知症を発症し、その後を長女かれん、次女ノエル、長男ローランドが書き継ぐ。こうして並べて見ると、圧倒的に筆力の違いがわかる。もちろん子どもたちは文筆家ではないが。
p171
「本当に大切なことは、白黒つけられない」というのも母に教わった考え方です。価値観が違うと「これが正義」と決めることは、実は意外と難しく、白黒をつけないことで、どうにかやっていけることもあります。国と国でも、人と人との間でも、きっと同じです。
p192
母は言葉のプロですが、感情的な話をすることがとても苦手です。トラブルが起きても、すぐに向き合おうとはしません。
「私はなにか問題が起きた時、それをまず箱にしまうの。時間が経って箱を開けてみれば、大体の問題は自然に消えて無くなっているから」と母はよく話していました。
桐島洋子がニューエイジに興味を持ち、本を著していたことは知らなかった。手に取ってみたい。
『見えない海に漕ぎ出して』
こんなにも才能と度胸があって魅力的だった著者。あの時代によくも…としか思えないけれど今は凪の時間なんだろう。穏やかに安寧に暮らしてほしい。って誰目線か。
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前半の桐島洋子編は、生い立ちから始まり、様々な人物との逸話や、高卒で文藝春秋に入社し、活躍した話。
当時の時代背景も勢いがあって、面白かった!
後半の桐島三兄弟のエピソードも良かった。
三人ともとても謙虚で、母に対して色々と思うところもあり。
外から見たイメージと、実際の家族像にずれがあるというところは森瑶子ファミリーと似ているな、と思いました。
読みやすく、オススメです。
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あの聡明で闊達な著者が認知症になり、連載していた自伝を
子どもたちのかれん、ノエル、ローランドの3人がそれぞれの目線から桐島洋子を描き、完成させた一冊。
若い頃は、いや40過ぎてからも恋多き女で、ノーベル経済学賞の候補だった青木昌彦氏とも事実婚だったことは知らなかった。
アメリカの海軍退役軍人との間に未婚で3人出産し、いざその男タグが奥さんと離婚したのに著者と一緒にならず、他の人と結婚したのには驚いた。
で、ノエル氏の章で最後に結婚した人が虚言癖があり、猫を壁に投げつけるような男だったとか(勝美洋一)。
なんでまたそんな男に惹かれたんだろう。
とにかく、破天荒で自由を愛する人だったというのはわかる。子どもたちもみなそれぞれ自立して立派だし。
(幼い頃はハーフということでだいぶいじめられたらしい)
次女のノエルを出産費用がかからないという理由で各国を航海中の船上で産む、しかもクリスマスの日に。
その章で桐島洋子自身の頁は終わってる。
できれば、最後まで彼女自身の言葉で綴った自伝を読みたかったけど、かれん、ノエル、ローランドのそれぞれのエッセイもそれはそれで面白かった。
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たまたま財閥や著名な方などとお知り合いがいて、恋をすることが好きでロマンチストで優雅な人生を過ごされたんですね。
ジェンダーという言葉がない時代に男勝りに仕事をやり、シングルマザーで子育てし成功者と見ていましたが、姉弟3人のお話を聞くとメディアで言っていたこととは違ったようですね。
ノエルさんとローランドさんはもっとお母さんに甘えたかったんですね。
あと個人的にカレンさんのスクール水着は笑いました。
洋子さんよりもカレンさん、ノエルさん、ローランドさんのほうが波瀾万丈だったと伺えます。
洋子さんの影響なのか、リベラルなご家族だと感じました。
一度参院選に出馬したローランドさんは洋子お母さんの自己責任的な生き方を賞賛しているようですね。そうなると「世の中の人も自己責任的に生きれば良いのか」という疑問が残りました。
今の時代、仕事したくても仕事ができない障害のある人や、育ちの環境により、人とうまくコミュニケーションが取れない人や、社会とうまくやっていけない鬱になってしまった人などを、ストレスなくみんなが平等に生活ができるようにしたいと取り組んでいるZ世代など、若い人たちからすると温度差があった内容でした。
アーティスト、クリエイターやデザイナー、お金や時間にゆとりのある方なら、共感できる本だと思いました。
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小学館の新刊発表会で、大好き桐島かれんさんのプレゼンを聞いてから、読むと決めていた。桐島洋子さんが途中まで完成させていた自伝の続きを、アルツハイマー発症後、3人の子どもたちがそれぞれの視点から書き連ねた。ふんわり尊敬する桐島さんのの理想化された人生、娘息子にとっては過酷な面もあったのだが…かれんさんは一時絶交している…母としては複雑な思いもありつつ人としてこよなく尊敬し、愛している様子が伝わる。
私なんぞ比べるべくもないが、強烈個性の母親、姉ふたりと末弟の3人きょうだいの長女という境遇から、かれんさんを近しくまぶしく感じてきた。このような人になりたい、このような人を育てた桐島マザーはすごいと素直に思う。
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何てチャーミングな文章を書くのだろう。引き継いで書かれた3人の子供からの目線も面白いが、やっぱり桐島洋子さんの文章に惹かれる。彼女の人生は到底まねできるものでもないし、考え方も自分とはまるで違うし、破天荒すぎて羨ましいとは思えない。けれど、そのドラマチックな人生を、嫌みもなくチャーミングに書いてしまう彼女はきっと文章以上に魅力的な方なんだと思う。
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未婚のまま3人の子どもを出産し、子どもはそれぞれ異なる分野で活躍しているーそんなイメージだけだった桐島洋子さんの自伝。
ノエル出産以降を子どもたちが担当するのは、そういう趣旨かと思っていたら、ノエルさんのあとがきで洋子さんの今を知って驚きました。
私も比較的自分の考えで子育てをしてきて、他の母親とは違う点が多いと思いますが、ここまで自分の信念を貫くことはできなかったなあと思います。
できればノエルさん出産後の人生も、洋子さん本人の書いたものを読みたかったですが、きっと誰にも真似のできない「桐島洋子の生き方」を知ることができてよかったです。
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普通は常識にとらわれて枠の中に収まってしまうところ、枠を飛び出して自分だけの人生を開拓していく。おそらくADHD とかアスペルガーの類なのかなと思うが、未来を切り拓いていくのはそういう人たちなのだ。
常人たるわたしには真似できない人生だけど、こんな子育て、こんな判断もありなのだと、可能性を示してもらいよかった。
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今まで桐島洋子氏の本は読んだことがなかった。
ただ氏に関しては、世間の評判で漠然と、自由奔放に生きてきて、自身も著名な作家でありながら、恋を楽しみ、才能ある子どもたちを育ててきた、、、といった一般的な知識しか持ち合わせていなかった。
しかしこの本を読んで、、、どうだろう!なんと驚くべき行動力と自由な感性、そして恵まれた裕福な家の出身だったことか、ということに驚愕した。
しかも今年亡くなった私の母と同年齢とは、、、
そしてそれほどまでに色々な意味で活発で優れた女性が今はアルツハイマー病であるということに、途方もなく切ない気持ちになる。
ただ、作品は残る。
常に独自の感性で刻まれた数々の文章は、今後も読者を魅了し続けるのだろう。
私も他の作品も読んでみたいと思った。
独自の感性で育てられた子どもたち、(彼らは私と同年代だが)、彼らの人生もまた波瀾万丈であったはずだが、桐島氏を穏やかに見守るファミリーの力強い絆を感じた。
この本は私の中で今年一番の作品でした。
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子供の頃母が桐島洋子の事を奔放な女、3人の子供のお父さんがみんな違うって言っていた。(実際は同じお父さん)でもなんか憧れがあったのかな?本は読んでたもんな。今この本も読みたいって言っているしな。面白かった。ノエルさん誕生の先も読んでみたかったな。
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テレビで林真理子氏がおすすめしていたので、久しぶりにエッセイを手に取った。
世代だろうか、桐島洋子のことはあまりよく知らなかった(むしろ、彼女の3人の子のお母さん、といった感じ)のだが、のっけからぐいぐい引き込まれた。
その豪胆な人生は俄かには信じられないことの連続だ。
もっともっととそのエピソードを追い求めている最中、突如として語り手は3人の子に移る。その理由はあとがきで明かされ、少なからず衝撃を受けるのだが、本人の手によって綴られなかったことが本当に残念だ。
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桐島洋子さん、これまでに本屋でエッセーの類いを目にすることがあり「どんな人なんだろう?」とうっすら思っていました。イメージとしては“聡明であり大胆な明るい女性像”を描いていました。
長女である桐島かれんさんの写真集を以前から集めており、かれんさんのインテリアに対する独自の世界観、また家族や人々に対する包み込むような愛情を感じて自然と惹かれていました。そのかれんさんの本の中に母である桐島洋子さんの話が度々載っており、どんな方なんだろうと思い、本書を手にとりました。
結果、とても興味深かったです。
本書の前半は洋子さんご自身が自分の人生を振り返り途中まで綴ったもの。後半は、お子さん3人がご自身たちの思いも含めてお母さんの残りから現在までの人生を綴ったものになります。
自由奔放に生きること、自分の意思に忠実に生きること、自由を選択し続ける人生は、強さがあるからこそ成し遂げられることなんだなと感じました。と同時に、その意思を持ち続けることはまわりの環境をも時として焼き焦がしてしまう、とも思いました。
桐島洋子さんの生き方を、洋子さん自身が書かれた瑞々しい文章によって、またお子さんたちの率直な思いが綴られた文章によって、様々な視点から解きほぐされた一冊でした。
長女であるかれんさんのインテリアを選ぶ上での素敵な世界観、また家族に対する深い眼差しがどのように作られたのか、少し理解できたような気がします。
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三菱財閥の一族の1人として育った筆者。舞台は上海、葉山、東京と次々移り変わる。勤務先の文藝春秋には仮病で2ヶ月の休暇をとってる間に第一子かれんを出産。第二子ノエルは世界一周旅行終盤の船上で出産。第三子はベトナム戦争従軍記者として日本を離れいる間に..。そして、3人すべてアメリカ海軍中佐との隠し子なのだから、筆者の人生そのものが小説より奇なり、の面白さ。至って真面目で、大胆不敵。聡明で驚くばかりの行動力。
この小説は前半は桐島洋子の回顧録、後半は筆者洋子の3人の子どもたち、かれん、ノエル、そしてローランドの3人の手記から成っている。子どもの立場から見た親の姿の描写が親である私として、大変面白い。
編集者、文筆家であり母親でもあった洋子の真実と、3人の子どもたちから見る真実。人間として母をリスペクトしそれぞれが母親を支える姿は、複雑でありながら美しいと思う。
常識に囚われて、べき論を掲げてしまう母親である自分に恥ずかしくなりながら、彼女の型破りな行動力と桐島家という血筋に羨ましくもなる一冊。