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SFなんだけど、ファンタジーの香りもする。
全くの異世界(ここでは惑星)では、互いのコミュニケーションが上手くいかないのはもっともだと思う。それでも、ゲンリーとエストラーベンは何とか互いを理解しようと妥協点を探り、共に目的を果たそうと努力する。
二人の氷の世界での逃避行が圧倒的に面白かった。
設定がきちんと練られている世界に突如放り込まれるので、読み始めて暫くはなかなか自分が見ている立ち位置がどこなのかが分かりづらかった。
それも読み終えてみれば、異世界に放り込まれたゲンリーの、掴みどころが見えない不安な気持ちを追体験させてもらっていたのかと納得がいった。
「闇の左手」というタイトルが、非常に詩的で美しい。
光は暗闇の左手。
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雪と氷に閉ざされた惑星「冬」。その星には両性具有の人間が暮らしている。外交関係を築くためたった独りの使節としてやってきた主人公。
40年以上前に書かれた本だけど全然古さを感じない。佳作。
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全く異なる生物学的要素を持つ惑星の人々の生活などの描かれ方が、とにかく圧巻。文化の違いの中で育まれる関係性の描き方も巧み。
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学生時分背伸びして買った本を再読。ル・グウィンと言えばフェミ論と誰だって考えるだろうけど、性差がないこの世界の物語をつづるのは母さまにとって喜びだったのだろうかそれとも怒りだったのだろうか。作中淡々と進む世界。二人の主人公の会話は時にむづかしく、時に理解不能で、「女」という立場からこの物語を読まざるを得ない私には妙にひりひりと感じる部分すらあった。しかしやはり女性にしか書けない小説だよなぁ、これは。
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周期で性別が変わる相手と向き合うということの難しさ!
日頃自分の感覚かジェンダーに根付いていたことに気づかされる。
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性別のない惑星ゲセンという舞台設定がとにかく素晴らしい。詳細なゲセン人の生態や文化の描写にただただ圧倒される。
権謀術数渦巻く国家内外の争い、極寒の地での逃走劇、アイとエストラーベンの友情などツボを抑えた物語にもグイグイ引き込まれる。
セクシャリティーやジェンダーなどについて深く考えさせられる一冊。
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今改めて見れば、表紙が絶妙。たった一人の使節としてやってくる主人公と雪の星に棲む両性具有の人類たちの交流。その特殊性から築かれた文化は主人公に戸惑いをもたらしながらもゆっくりと受け入れていく。物語の本筋に関わらないながらも挿入された逸話も異質な世界を更に引き立ててくれていました。
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図書館で借りました。
SF。両性具有者のいるゲセンという惑星の物語。そこに男性が訪れる。
ゲセンの青年エストラーベン(ここには性別がないから、すべてが息子ですべてが彼)と、宇宙からやってきた使節ゲンリー・アイはゲセンに宇宙と同盟を結ばせようと行動を起こすが……。
兄と弟の近親相姦もオッケーな世界。なんかよく兄は子を身ごもっては死んでたりしますが。
この人種はケメルという月に一度の繁殖期になると、同じくケメルになっている(ケメルになるのは個人差あり)相手と触れ合うことで、ランダムに男女にわかれる。ようするに一方的に生み続ける性にはならないし、生ませ続けるだけというわけではない。
読みにくいところも多々ありますが、上質のSFだと無夜は思う。寒い冬の星。ゲンリーたちは惑星「冬」と呼ぶ。
氷の原を延々と二人で歩く。
氷河時代の世界。
触れ合いそうで触れ合わず、二人が崇高な友情を保つのがもどかしいのですが、綺麗な話でした。
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アーシュラ・K・ル・グインのSFではこの小説が一番好きです。世界観がきっちり作られているので語られている物語がすんなりと読めます。アースシーの世界と言われる他の作品群とあわせて読むとこの作品の面白さが増すかもしれません。
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ヒューゴー/ネビュラ ダブルクラウン
1969年発表。女流SF作家による作品。
おもしろくなかった。
以前は宇宙連合の植民地だった酷寒の星に降り立ち国交を復活させようとする宇宙連合の使者と星の大使との交流を描いているのだが・・・。
確かにある環境を想定して、そこで生き続けている人類の末裔を描く力はあるんだろうが、どうもピンとこない。この手のSFはあまり好きではない。
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作者はゲド戦記を書いた方らしいです。(こないだ気づいた)
この本を読むのは何度目かわからないけれど、何度読んでも面白い(?)
話は暗め。異世界もの。異世界の神話なども出てきますが、概してわかりづらいです。(苦笑)
◆以下はネタバレですよ。
惑星「冬」に使節としてやってきた、ゲンリー・アイ。
人々の生態に戸惑いながらも2年。
なかなか宇宙連合(?)エクーメンに参加の意思を出さないカルハイド国からオルゴレイン国へやってきたが、捕らえられてしまう。
…続きは読んでのお楽しみ!
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面白い。SFジャンルが得意ではないと思われる私でも楽しく読みきることが出来た。
しかし、『シグフレソル』が何を意味しているのか、読み終わってもさっぱりわからなかったのが心残りです。
ゲセンの言葉などは、読んでいくうちに自ずと理解できるようになっているのに、『シフグレソル』だけはわかりませんでした。
物語のすべてが明らかになる必要はないとは思いますが、頻繁に出てくる単語なので、やっぱり凄く気になるのです。
あと、ラストの展開が何だか納得いかないところがあるのですが、それは『シグフレソル』が理解できないゆえの事なのでしょうか。
でも面白いです。
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光は闇の左手(ゆんで)
暗闇は光の右手(めて)。
二つはひとつ、生と死と、
ともに横たわり、
さながらにケメルの伴侶、
さながらに合わせし双手、
さならがに因ー果のごと。
さ、寒かったーー!!
とても寒い世界の物語でした。
ゲド戦記大ファンの私としては、★5つをつけたかったのですが、
いかんせんちょっと読みにくい。
同著者のエッセイ「ファンタジーと言葉」を読んでから読むと、だいぶ読みやすいです。
あらすじとしては、地球を含む83の星からなる連合国家(?)エクーメンからの使節、
ゲンリー・アイが、両性具有の人類が住む惑星<冬>ゲセンにて、
いろいろな国を巡りながら、エクーメンと交易を持ってくれるよう、
様々な人物と話をします。
しかし、男でも女でもなく、「戦争」という言葉も持たず、
空を飛ぶ発想もない=異星人の存在が信じられないゲセンの住人は、
アイの話、アイの存在になかなか心を開くことができません。
唯一、アイの話を信じ、できる限りの支援をしてくれたのは
「王の耳」エストラーベン。
彼が、アイを自分の食卓に招き「王はあなたの話を聞き入れないだろう」と忠告するところから
物語は動き出します。
とにかく世界観がすごい。
ゲセンの人間も、もちろんただの両性具有ではありません。
1ヶ月のうち20日間は、男でも女でもなく、性欲も全くない状態。
2〜3日の間にパートナーに触れることにより、男か女のいずれかになって、
残りの日は性行為のことしか考えられなくなるというものです。
たったこれだけのことで、世界は全く違うものになります。
考え方、感情の起伏から仕事の内容、家庭内における役割・・・
その全てに隔たりはなく、この惑星の大自然のように、雪に覆われて起伏がありません。
物語そのものも、大きな起伏はないです。
自分と他人、男と女、国家と個人・・・
なくてはならないけれども、けして交わることのない2つのあいだを
吹きすさぶ風と雪の中、自分が生きるための荷物を引きずりながら歩いていく。
そんなお話です。
印象深いのは、ハンダラ教の”とりで”をアイが訪れるシーン。
ハンダラ教とは、ゲセンの人々にそこそこ普及している宗教で、
階級や寺院、教義、神などといった、普通ならば宗教に必ずあるものが全くない宗教です。
彼らが重んじるのは無知、不活動、不干渉といった、
かなり閉鎖的な行動や心理状態で、「ヌスス<我関せず>」という言葉で表されます。
”とりで”では予言が行われており、アイもそれに興味がありました。
予言の場では、アイを入れて9人が闇の中で輪になって座ります。
そのうち2人は「うすのろ(精神分裂症)」、
1人はケメラー(男か女のうちどちらかになっている)、
もう1人は変態性欲者(ホルモンを注射して人為的に興奮状態になっている)という
なんとも混沌とした面々。
そこでアイが見る光景は、この世界、この物語、そしてアイ自身(または読者��身)の「闇」を
まざまざと見せつけられるものだったのです。
ゲド戦記とはまた違った切り口での、「光と闇」の物語。
たぶん読むたびに新たな発見があることでしょう。
アイの物語も終わっていません。
ル・グウィンの世界は、これまでも私にとって特別な存在でしたが、
新しい作品を読むたびに新しい「特別」が追加、更新されていきます。
今後も積極的に読んでいきたい。
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再読。本は新たに所有しないと決めているのに、古本屋の100円コーナーで見つけて、にんまりして握り締めてしまった。 光と闇。男と女。両性具有という両方併せ持った形でやっとひとつの気がしてくる。エストラーベン。せつない。
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ヨーロッパのキリスト教使節の、
中世日本訪問時の記録物語を読んでいるかの如く気分になった。
あくまで気分だけど。
アイとエストラーベンの、
二元論的思考を超える関係への昇華に立ち会った時、
深い深い所で感動が芽生える。
文化人類学的、民俗学的な言及も、
物語に厚みを持たせている。
読み手を選ぶとは思うが、
選ばれた読者は至福の読書体験を得られる名作である。
1970 年 ヒューゴー賞長編小説部門受賞作品。
1969 年 ネビュラ賞長篇小説部門受賞作品。