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投稿者:ねったいぎょ - この投稿者のレビュー一覧を見る
たくさんの人物が登場してきて、自己紹介の意味もある長めのエピソードがあり、それはいいのですが、それがずっと続きます。こうなると誰が主人公かもわからないですし、中身の薄い話が次々と出てくる感じで、一つの小説としてまとまりがありませんでした。もう少ししっかり構想をまとめてから書いた方がよかったのではないでしょうか。直木賞を受賞しただけに期待したのですが外れでした。
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投稿者:タッカー - この投稿者のレビュー一覧を見る
ただただ長く、登場人物も多い割に登場人物が生きていないので、全く感情移入ができない。そのため読み進めることができず、全然進まない。これで本当に直木賞か?と言いたくなる。この作家がこれを自信作と言うのであれば、2度とこの作者の作品は手に取らないであろう。
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ものすごく面白かった!キャラクターも魅力的。なによりも終わり方がよくて、読後感が最高だった。
ただ、孫悟空ことはあと200pは書いても良かったと思う……。けどそうすると800p越えになっちゃうのでだめですね……。それ以外は文句なしの傑作!!
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見事としか言いようがない作品でした。
日露戦争から第二次世界大戦の時期の満州での、世代を超えた戦争、地図、建築の話。
心理描写はあまり多くないのだが、ちょっとした発言や行動の描写から、登場人物の覚悟や思いが痛々しいほどに感じられるのが作者の筆力の高さだと思った。
「建築とは時間であり、存在そのものが価値になる」という内容の言葉が印象に残った。
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読み物として優れており、構成も確か。歴史に取材するところも硬派な出来であるし、伏線回収の趣味がある読者の期待に応えている。総じて品がよい。
これはあくまで私自身の好みの問題だが、品の良さが時に破綻して狂気や情念の世界に振れたら(触れたら)素晴らしいのではないかと。そんな小説の書き方の萌芽が、ところどころ感知できたので、小川哲という若い作家のことを記憶しようと思う。
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激動の時代の満洲。荒れ狂う時代の流れの中で生き抜く人々の姿。さまざまな視点から切り取られた戦争の有様。人は時間を世界に繋ぎ止め、記録するために建物を、国家を、地図を建築する。
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日本とロシアと中国の歴史を舞台にした話。今のタイミングで読めてとてもよかったと思います。小川さんの小説は文章が読みやすくて好きです。
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ゲームの王国の上巻が特に好みだったので、期待に胸躍りながら手に取り、その面白さに圧倒され一気に読了。
これほど登場人物が入り乱れた群像劇なのに、物語が破綻していないのが凄いし、一人ひとりにしっかりと感情移入できる構成となっているのも流石。
現代を生きる私から見た満州を巡る戦争とは、「ただそこにあったもの」としか認識できないが、当事者にとっては当然そんなことはない。理想の国家を地図として描き、その実現のために戦争という拳が振り下ろされ、その中に数多くの人間ドラマが潜んでいる。そんな当たり前のことに気づかせてくれた小説でした。
特に印象に残っているのは中川の存在。実際に戦争に巻き込まれたら、今自分自身が抱いている想いとは裏腹に目の前のことに必死になり、人を殺すことになるかもしれない。彼の物語は、そんな思いを抱きながら、一番感情移入して読んでしまいました。
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一八九九年の夏、南下を続ける帝政ロシア軍の狙いと開戦の可能性を調査せよ、という参謀本部の命を受け、高木少尉は松花江を船でハルビンに向かっていた。茶商人に化けて船に乗ったはいいが、貨物船の船室は荷物で塞がれ、乗客で溢れた甲板では何もかもが腐った。腐った物は船から松花江に捨てるのが元時代からの習慣だった。一人の男が死体を投げ捨て、「こいつは燃えない土だ」と呟いた。高木は「どういうことだ?」と尋ねた。
男は「土には三種類ある。一番偉いのが『作物が育つ土』で、二番目が『燃える土』。どうにも使い道のないのが『燃えない土』だ。『燃える土』は作物を腐らせるが、凍えたときに暖をとれる。だが、『燃えない土』はどんな用途にも使えない。死体も同じことだ」と言った。通訳の細川が男の出身地を問うと「奉天の東にある李家鎮(リージャジェン)」と答えた。土が燃えるのは石炭が混じっているからだ。これは使える、と細川は思った。
李家鎮は何もない寒村だったが、その地に居を構える李大綱という男が、冬は暖かく夏は涼しく、アカシアの並木がある美しい土地だ、という噂を流した。相次ぐ戦乱で家を失くし、職を奪われた人々が桃源郷の夢を追い、はるばる来てみると、夏は暑く冬は寒く、アカシアなどどこにもない。怒る人々に、李大綱は、誰がそんな嘘を流したと憤って見せ、住む気があるなら、空いている家に住めばいい、土地ならある、と応じた。帰る家のない人々は李大綱から金を借りて家を修繕し、それぞれ仕事をはじめ、李家鎮は体裁を整えていった。
満州東北部にある架空の村を舞台にした歴史小説である。史実を押さえながらも、正史には登場することのない人物を何人も創り出し、日本が中国、ロシア、そして米英との戦争に非可逆的に引きずり込まれていく時代を描いている。人によって読み方は色々だろうが、こういう読みはどうだろうか。当時の日本は、戦争に駆り立てられていたように見えるが、果たしてそうか? 日本の戦争遂行能力を正確に把握していた者は一人もいなかったのか。もしいたとしたら、その結果はどうなっていただろうか、というものだ。
大陸のはずれで清朝の支配の及び難い満州という土地は、ロシアと戦うことになった場合、日本にとって是非とも押さえておきたい土地であった。また、日露戦争で多くの戦死者を出した手前、放棄もできない。リットン調査団が何と言おうが、むざむざ利権を諦めることは不可能だ。そこで、満州族が自ら支配する独立国という建前を作り、五族協和、王道楽土の美辞麗句で飾り立てた。満州国建国は列強を意識した苦肉の策だった。
「五族協和」がどこまで本気だったかは知る由もない。ただ、歴史年表を追うだけで、その当時の日本の軍国主義化にはすさまじいものがあることがわかる。満州国建国に携わった人々の胸にどれほど美しい夢があったのかは知らないが、軍部の力によってそれはどんどんねじまげられていく。その有様を一つのモデルとして描いて見せるのが、李家鎮という街の興亡である。
魯迅の言葉に「思うに希望とは、もともとあるものともいえぬし、ないものともいえない。それは地上の道のようなものである。もともと地上には道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ(『故郷』)」というものがある。「地上に道がない」というのは、冒頭のエピソードでも分かるように、当時の中国では水運が中心だったからだ。
もともとはただの平原であったものを、一人の説話人がかたった話が人々の頭に理想郷を作り上げた。絵空事を信じてやってきた者は無理にでも芝居を続けるよりほかはない。そうして幾人もの人の思いを寄せ集めて出来上がったのが李家鎮。後の仙桃城(シェンタオチェン)である。ロシアにとっては不凍港、旅順に至る要衝、日本にとっては戦争を続けるための石炭という資源の宝庫。仙桃城は、人々の欲望によって築き上げられた架空の都邑だ。
細川は彼の目的にかなう人材を各方面からスカウトしてくる。彼の言い分が通るのは、 参謀本部が後ろで動いているからだろう。満鉄からの依頼で、存在が不確かな「青龍島」の存否を明らかにする仕事についていた須野も細川にスカウトされた一人。須野は細川の紹介で満州で戦死した高木大尉の妻と結婚し、明男という子を授かる。高木の遺児である正男と共に、この親子は日本の勝利の可能性を探ろうと悪戦苦闘する細川の手駒となって働く。
表題の「地図」とは国家を、「拳」は戦争を意味する。この物語は現実には存在しない「青龍島」が、なぜ地図に書き込まれることになったかという謎を追うミステリ風の副主題を持っている。「画家の妻の島」の挿話をはじめとする、地図に関する蘊蓄も愉しい。細川の徹底したリアリズムに対し、須野のロマンティシズムがともすれば暗くなりがちな話に救いを与えている。幼少時より数字にばかり固執する明男が、母の心配をよそに順調に成長し、建築家になるという教養小説的側面も併せ持つ。
登場人物の大半が男性であり、恋愛もなければ房事もない、近頃めずらしいさばさばした小説だ。戦争に材をとりながらも、威張り散らす軍人は脇に追いやられ、主流は知的かつ怜悧な人物で占められているのが読んでいて気持ちがいい。しかし、議論を重ね、言葉を尽くして、日本に戦争遂行能力がないことを解き明かしても、戦争は阻止できない。「問答無用」は日本の病理なのか、と暗澹とした思いに襲われる。それどころか、よくよく見れば、この国は以前より愚昧さを増しているようにさえ見える。せめて、虚構の中だけでも論理的整合性を味わいたい、そんな人にお勧めする。
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小川哲さんの新作は、日露戦争~第二次世界大戦までの半世紀、満州で繰り広げられる歴史×空想の群像小説(辞書レベルに厚い)。読んで行くうちに一体何冊の参考文献が使われているんだ…と不思議になってくるレベルの緻密度で、かつて中国に存在した満州の裏側が描かれる。中盤くらいで、時計や温度計を使わずに時間と温度湿度を言い当てれる明男と、本を年間1000冊読む中川という変態キャラが出てきてから俄然面白くなる。地図と拳の拳は戦争・暴力のこと、歴史小説ながらもSF小説を読んだような読後感…これは直木賞か?。
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初小川哲。戦争に翻弄されながら、一つの街の設計、建築を取り巻く人々の物語。
戦争を描きつつもエンタメ的な要素(明男のキャラとか、孫悟空の修行のシーンとか)もあって読みやすい。
「なぜこの島が地図に描かれたのか」ていうことだけでも物語が描けそうな気がする。地図の奥深さを垣間見た。
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半世紀にわたって一つの街を中心に展開される、
暴力と、建築の歴史の物語。
600頁超という厚さもさることながら、とにかく密度が濃い。カロリーが高い。
その中で伝えてくることは、「建築とは、時間」であるということ。造ろうとするもの、壊そうとするもの、すべての営みのなかで、土地に建造物は産まれ、そして朽ちていく。
今ある建造物、その全てもまた、時間の流れのなかで意味と価値を持つものなのかもしれないな、と本を閉じたあとふと思ったり。
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600ページ強あるし漢字の読み方分からんし(李家鎮なんて「リージャジェン」よ?)読破に時間がかかった。
しかし、さすが小川哲さんの本。淡々としてるのに目が離せない展開だった。
登場人物が多いのでメモしながら読めば良かったと少し後悔。
史実に基づく歴史小説なのかと思いきや、架空の島を舞台にした作品なのね。凄い。一部空想歴史小説か?
「国家=地図」。う~ん、感慨深い。当たり前のように使っているけれど、地図がなければ私は日本が島国だということすら知らなかった。
地図を作ることと「拳(つまり戦争)」は一見関係がなさそうだが、実は繋がっている。
うまく言い表せないけれど、先人たちが試行錯誤してきて、時には戦い、勝ちそして負けた上でこの世界は成り立っている。
どの国にも拳の歴史は必ずあるのではないだろうか。
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素晴らしいエンタメ群像劇。架空の都市を舞台にしつつ満洲国の本質を突く小説。登場人物は多いが、1人ずつキャラクターがしっかりしているので混乱することなく読み進められる。読みやすくかつ読み応えのある文体。
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p564 戦場では、優秀でないのに勇敢な人間から順に死んでいく
p567 戦場では、銃弾を命中させるより、引き金を引くことの方が難しい