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渋滞学って色んな分野で応用が効くんだな。所謂渋滞の仕組みから始まって、電車の混雑、蟻の隊列、ネットワークの伝送速度、電車の運行などへ。まだまだ分からないことが多い分野の様だけど、研究が進んだら経済に与える営業は計り知れないよね。こういった基礎研究にもちゃんと予算がつけられるような社会にしないとね。
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著者と渋滞学という分野に興味があり読書。著者とは学生時代に一回お会いしたことがあるが、とてもバイタリティがある方といった印象。さて、肝心の渋滞学というところは単純な離散的な数理モデルに収まらず、本作では車、人混み、アリ、インターネットを特に多く取り上げ、生物学や粉体モデルなどのより複雑な事象の分析をも動機を与えている。一つに渋滞という現象だけをフォーカスしているのではなく、制御不能(可能)な多体モデルにおいて、科学に基づいた分析をし、より適合できるルールを生み出しているのが面白い。一見すると単純なルールの集まりが複雑な現象を生み出し、それを理解し、最適なコントロール原理を抽出するようなヒントもそこに隠れているのかもしれない。理工の問題は著者の問題意識には根強いことが終章を読んでも分かる。私自身も、理学、工学とそれぞれを学んだ経験から、新しい形の理工学のあり方というのも考えたいと思った。学生時代に触れている分野とはいえ、やはりこうした複雑系、数理系のモデル解析は面白いと素直に感じた。
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渋滞はくるまばかりでなく、インターネットのデータや駅の改札口でも発生しています。いかに単純なモデルで渋滞を表現できるか、なんか物理学にも通じる考え方です渋滞をシステム工学的にかんがえて、いろいろな分野に応用するのは、けっこうおもしろいと思いました。
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渋滞をシミュレートする理論として有効なセルオートマトンモデル。その単純版ともいえるASEP(非対称単純排除過程Asymmetric Simple Exclusion Process)。もっとも単純な例ではセルの半数以上に玉があれば、どんな初期状態でも最後はクラスターが発生するという。おもしろい。臨界状態で1/2おきる。閾値か。
平均速度×交通密度=交通流量。これが基本式だと。フジテレビでやっていたサーキット場で渋滞を再現した実験は、筆者たちがやったんだ。
これらはおもしろかったが、本書ではアリ、インターネットの渋滞にも議論がおよび、これらの渋滞もセルオートマトンモデルで再現、解析が可能という。
ただ、個人的には車の渋滞の発生過程をもう少し突っ込んで解説してほしかった。
坂道などのサグとブレーキの連鎖はよく言われる理屈と変わらない。驚くような解説を期待したこちらが間違っていたか。
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【道路での渋滞】
高速道路において、大体車間距離が40mになるとメタ安定状態となり、渋滞が発生する。これは、制動距離に依存しているとみることもできるという見解もあり、
渋滞とは、単に道路の形状だけでなく車の性能や心理的な働きも考える必要がありとても奥深いものだった。
みんが同じように渋滞を回避しようと行動する→そこでまた渋滞が起きる。
高速道路に置いてETCの性能を含めまだまだ課題があると感じた。
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身の回りにありふれて存在する「渋滞」という現象を力学的、数学的アプローチで分析する試みを紹介し、「渋滞学」という横断的な分野確立のビジョンを示しています。サグによって発生する高速での車の渋滞も順番待ちの行列も山火事の防止も数学的モデル、とくにセル・オートマトンでモデル化できるというのは目からウロコです。どんどん広がって欲しいと期待したい新しい学術分野です。
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セルオートマトンって役に立つんだなぁと実感。
本筋とはあまり関係ないのだが、最終章の「複雑系科学においては、複雑な対象を複雑なまま理解する、というフレーズをよく耳にするが、これを文字通りできる人は果たしているのだろうか。」に始まるくだりには、全くそのとおりだと思った。自分自身始めてこの言葉を耳にした時の違和感と、またその時考えたことと同じことを考える人は結構いるのだろうな。
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さまざまな流れの停滞を数理モデルによってシミューレーションしている。内容は、高速道路の車の渋滞、地下街や航空機から避難する時の人の渋滞、アリのフェロモン走行による渋滞、ネットのパケット渋滞、山火事(渋滞が起これば拡散しない)、人体内の分子モーター(神経繊維内部でタンパク質を運搬する)などである。基本的には、人や車は自己駆動粒子であり、ニュートン力学に従わないし、流体の運動法則であるベルヌーイの定理(流体の速度は通過する部分の断面積に反比例する)もなりたたない。数学的モデルとしては、ASEP(前方が空きならば進め、同じ場所には一つしか入れない)で解析するのだが、高速道路の渋滞などはスロースタートルールを加えると、渋滞特有の「人」字カーブがあらわれるそうである。しかし、アリでは追い抜きが怒らず、バッファに収まらないパケットは破棄されるなど、流体によってそれぞれに特長がある。また、建築法も引いており、一つの非常口から逃げられる人数は幅1mあたり1.5人/秒、60mをこえる地下道では、どの場所からでも30m以内(普通に歩いて23秒)に直接地上へ抜ける道があり、粒体でも人でも出口が粒体の直径の6倍あれば、「目詰まり」がおこらない。こういった知識は渋滞がおきた時にどれくらいで逃げられるかを計算できるので重要な知識だろう。粉粒体の運動は「ブラジルナッツ運動」(大きな粒が浮く)などまだ数学的に解けないものが多く、砂時計の内部の動きもまだ嚴密に示す式がないそうだ。今後の渋滞学はネットワーク理論やゲーム理論(協力や譲りあい等)と連携して進める必要があると指摘している。お金が貯まるなどといった現象も渋滞として考えられるそうだが、これはまだ分からないらしい。
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ASEP セル・オートマトン法
ブラジルナッツ現象
時間調整のため停車します
高層ビルのエレベーター
コンピューターが間違える計算
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世の中で話題になっていた時期に当時の上司に借りて読んだ一冊。
渋滞を起こさない一番簡単な理由であったり、混雑をどう解消するか、を学問にするだけでこんなに面白くなるのか、という点で目からうろこでした。
東大の先生が本気になればこんな実験もできるのね、ということで、社会のためにこの学問をもっと効果的に使って欲しいものです。
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半分わかったかどうか。全体を通して思ったこと。何故か会社の会議の動員予測について、「うちの会社の会議は微分化し過ぎかとおもう。得られた結果を要素還元的なアプローチで料理できてないなあ、科学的でないな〜」と、しみじみおもってしまいました。
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素晴らしいの一言。
渋滞の解明には、いろいろなアプローチがありますが、まずは適切なモデルの構築がカギ。
そのモデルを用いた説明をしているわけですが、シンプルかつ丁寧で、非常にわかりやすい。
また、そのモデルの応用も素晴らしい。
そして何より、西成先生の、基礎科学と応用科学に対する姿勢、自然科学観には、強く共感します。
是非、たくさんの人に読んでほしい本です。
そして、不快な渋滞を、みんなでなくしていきましょう。
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一番心に残ったのは、自然渋滞の発生する原因。体感しない程度の緩い勾配・サグによってもたらされるのね。確かに考えてみればなるほど納得。気づいたら10-20kmスピード落ちてること、確かにありますもんね。
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車だけでなく人の混雑,アリの群れから森林火災やたんぱく質の合成まで,ありとあらゆる渋滞現象の発生原理が分かりやすく解説された名著。あなたが渋滞に直面した際取るべき行動のヒントがここにある。終盤,デジタルコンピュータの限界をカオス理論におけるパイこね変換に基づき紹介し,数学の重要性を説くあたりは秀逸。
*推薦者 (工教)S.H.
*所蔵情報
http://libra.lib.utsunomiya-u.ac.jp/webopac/catdbl.do?pkey=BB00324926&initFlg=_RESULT_SET_NOTBIB
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「渋滞学」なる学問があるとは知らなかったので、手に取った本。
第一章「渋滞とは何か」は渋滞自体の説明というよりは、渋滞を説明する理論及び用語の説明が多く見られる。
「ホースで水を撒くときに先を細めると勢い良く水が出るが、人間の場合は当てはまらない」という誰にでも想像できる例をうまく用いて、物理学に疎い人でも容易に読めるように見事に書かれている。この他にも、慣性の法則、作用=反作用の法則を用いて人と水の違いを説明したり、管の中を通る空気の流れも超音速になると管を細くすると遅く、細くしなくても外部から温めると遅くなるという事を、人間は興奮・パニックに陥ると「人の温度」が上がり流れの速度が遅くなるという説明につなげたりとユニークである。
現実を表す「良いモデル」として、更に渋滞の説明にも役立つASEP(Asymmetric Simple Exclusion Process:非対称単純排除過程)という、セルオートマトン法の一種の解説がなされている。
第二章は、年間約12兆円という経済損失を発生させている交通渋滞が起きる原因を考察している。
高速道路で渋滞が起きる原因の第一位は「サグ部・上り坂」であり、すぐには気がつかない程ゆるやかな坂道の為に自分と、その後ろにいる車がどんどん減速してしまい、ブレーキを踏む強さもどんどん大きくなってゆくという連鎖反応で渋滞が発生するのだという。
交通の流れを分析する際に「基本図」が使われ、渋滞していないときのデータは右上に伸びる直線となり、渋滞が発生する所(右下がり:渋滞への相転移が見られる)を見ると、車間距離が40m以下(急ブレーキを踏んで止まれる制動距離)になった時が渋滞になるという。そして、この状態でも自由走行の80km/hを保っているのを「メタ安定」といい、通常10分程度しか持たず、渋滞に変化してしまう。
このメタ安定が現れやすい道路がサグ部であり、これ以外にもカーブ(見えづらい場所にあるとき:夕方の西日の影響)、トンネル(暗さ・閉塞感・水が溜まらないよう為のサグ:夜よりも昼のトンネルのほうが渋滞が多い)、合流部(ただし「弱いメタ安定状態」という60km/hで走れる状態が続くことがある)が主な地点である。また、混んできた時は追越車線でなく走行車線を走った方が良い、というお得な情報が明かされている。
この本が出版される8年前は、料金所が高速道路で渋滞が起きる原因の第であったらしく、それを解決したのがETCの導入であったそうだ。その効果を認める一方で、個人負担が未だに高額であること、ETCゲート通過時に速度を20km/h以下に落とさなければならないという課題が解決される必要があると述べている。
都市交通における基本図は台形をしており、ボトルネック型と呼ばれている。青信号に変わったときに自分が動ける番になるまでには、車一台あたり1.5秒かかることや、よく赤信号に引っかかる人は速度を落とすと解消できる可能性があること、先日日本でも導入されたラウンドアバウトは、交通量が適度に少ない時に最も効果があると述べられている。
第三章は人の渋滞についてである。
明石歩道橋事故の事例を参考に、通常人間は自己駆動粒子として振舞っているが、集団が極端な密着状態になって���るとニュートン粒子として振舞うようになってしまうという。そして、群衆の状態は動因によって「会衆」「モッブ」「パニック」の三つに分けられている。
超満員の電車から一斉に出ようとすると詰まってしまう(ボトルネック)構造を「アーチアクション」といい、眼鏡橋はこれを応用している。避難の際に発生するボトルネックは「ミンクの実験」でも追試が行われれおり、競争でなく譲歩し協調することが大切であることを示している。
航空機からの避難には、90秒以内に脱出が可能でなければならないという基準があり、実験ではドアの幅が約70cmより広いと競争し、狭いときは譲歩協力したほうが早く逃げられるという結果になったという。さらに、競争しながら逃げている時には、避難口の付近にわざと障害物を置くことで避難時間が短くなるという、意外な結果がある。
パニック状態でないときの移動では、お互いに衝突を避けようとして自然に進行方向ごとのレーンが発生し、そのレーンがどちらの向きになるのかはその国の走る方向と一緒だという。また、駅構内において歩行速度が遅くなるところでは、周囲に気を配れることもあり広告をみる機会も多くなるため、近年注目されているという。
第四章はアリの渋滞の話である。
アリは車と違い、自分と仲間のフェロモンを利用して移動することもあり、お互いの距離が近いほうが早く動ける、適度に混み合ってくると通常動きが遅い先頭のアリが早く動けるようになる(列が長いので末尾のアリのフェロモンを嗅ぎつけるようになるため)という筆者の推測がなされている。
アリも渋滞問題を抱えていたこと自体初耳だったこともあり、興味深い章だった。今後の研究に期待したい。
第五章は幅広い領域における渋滞問題を考える章である。
インターネットの渋滞は、大量のパケットが「ルーター」という交差点に集中することで引き起こされるが、車が交差点で待たされるのに対し、パケットは物理的実体がないため渋滞すると捨てられるという違いがある。現在、輻輳状態に応じてウィンドウ数(ホストが一度に送り出すパケット数)を変化させる制御を効率的に行うための研究が行われているという。
粉粒体は一つ一つは固体だが、ある程度集まると液体の動きもするようになる(例:アリジゴク)。砂時計で1分を測るための理論的な計算、ブラジルナッツ現象のメカニズムの解明が、まだ出来ていないという事実があるが、その理由には遠くの場所まで瞬時に情報を伝える「非局所性」(例:金属の玉のおもちゃ)と、三つ以上の物が同時に衝突する際にはその動きを予測できない「多体衝突」(例:ビリヤード・カーリング)による「非可換性」(順序を入れ替えると結果が異なる事)によるもと述べられている。
乗り物の渋滞についても触れられている。電車や地下鉄で「時間調整のために停車」しているのは、四章のアリと同様に、ダンゴ運転状態となり渋滞が発生してしまうのを防いでいる(先頭はギュウギュウ詰めで乗り降りに時間がかかるが、末尾はガラガラですぐに発車できてしまう)、エレベーターが勝手に動くのは「群管理」が行われているため、飛行機が離陸許可を得るのに時間がかかるのは、「滑走路の奪い合い」と「航空機が使える空域が限られている」という大きく二つの理由によるものだという。
第六章はこれからの渋滞学をどう考えるかという話である。この章には日本の理科系大学の未来の展望と、数学の重要さが分かる情報が豊富に載っているので、「数学を勉強して何になるんだ!」という人こそ読むべきだと私は思う。
ネットワークをつながりの様子によって分類することをネットワークの「トポロジー」といい、本章ではバス型・リング型・スター型の3種類が説明されている。この考え方は高速道路の建設(首都高速道路とその他の関係)や航空機の路線(高い空港使用料を取るか否かで直通・乗り継ぎに分けている)にも応用されている。
ある程度ランダムな繋がりのネットワークの中に、実は多数の接続を持つ中心的な役割をもつものが少数存在するネットワークを「スケールフリーネットワーク」というが、これは現在悪意のあるネットワーク攻撃にどこまで耐えられるか研究が進められているという。
何でもコンピューターで計算するのではなく、数学的に「紙と鉛筆で」計算しておおよその値を算出してからコンピューターで計算し、さらにその結果を「紙と鉛筆で」計算するという、得られた結果を要素還元的なアプローチをする重要性を、カオス理論である「パイこね変換」の例を用いて解説している他、大学が独立行政法人化している昨今だからこそ、一見お金にならないような数学の基礎分野の研究を国がサポートするべき、理学部と工学部の乖離化が進んでいる今は、両分野を修めた人材が育つことが望まれると述べている。
興味本位で手に取った本が大当たりだったときの喜びは、どう書き表して良いのかわからなくなる。この本も、その一冊だ。
自分用キーワード
定量的 定性的 自己駆動粒子系 臨界状態 臨界密度 相転移 待ち行列理論(リトルの公式) (非)平衡状態 プラトーン走行 映画『スピード』 スルーバンド:グリーンウェーブ(信号機) 個別要素法 ル・ボン『群集心理』 建築基準法施行令(長さ60mを越える地下道では直通階段が設置されている) 二方向避難の原則 ハリネズミのジレンマ 自発的対称性の破れ ボトルネックでの振動現象
Swarm Intelligence ブラジルナッツ現象 排除体積効果 跳ね返り係数 in vivo(in vitro) ロードプライシング ルーティング問題 ワッツ「スモールワールド」(たった6人を通して世界はつながる) パイこね変換