手堅い手法で書かれてますが、で!?、という読後感。
2023/06/02 18:37
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投稿者:flowerofzabon - この投稿者のレビュー一覧を見る
優秀な博士論文を読んだような読後感というか。手法は、あまり多く使われているものではないが、他の研究者の業績から「発掘」して、面白そうな分野のデータを取り出し、変化の度合いを検証している。手堅い。環境破壊への強い懸念など脱成長を主張するイデオロギー本だったらどうしようと思って読み始めたらそうではなかった。政治的価値観もはっきり示されてますが、鼻につくというよりは立場の明確化としては好ましいレベル。
日本人は大きなスパンでの社会的視点とか苦手だから本書に飛びついたのかと思ったが、そんな本でもなかった。筆者の視点からは日本が典型として挙げられるが、かといって褒めさやすでもなく、貶すでもなし。
面白トピックとしては、唯一外さない予測と言われる人口動態を国連が思ったより外していることや男女の寿命差が生物学的というよりもジェンダーに起因していると推測されることなど。
煽りはないまともな本ですし、直感的な納得も手法の安定感もあるが、ゆえに驚きや意外性や発見や未来への示唆はないです。変化の速度はどんどんゆっくりしていくって、そりゃまあそうだろう以上の感想が浮かばない。
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読み始めてから読み終えるまで、とても時間がかかりました。減速したのは「飽きたから」というのが私のこの本に対する態度だったと思いますが、世の中の捉え方を変えるきっかけにはなりました。
"経済と人口は急速に減速していたにもかかわらず、社会の進歩は加速していた" と書かれていた第12章は、身近な例と思えたからか、より印象に残りました。
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人口、経済、情報、テクノロジー、債務etc...地球の気温を除くあらゆるものがいかにスローダウンしているかを様々なデータを通じて紹介している本。特にテクノロジーにおけるイノベーションの減速は肌感覚として強く実感できる。解説の山口さんがいう現代に生きる人々を惑わす「全ては加速している」という迷信を解除してくれる良著。ニックランドに始まる加速主義は、実際に世界は減速しているからこそ技術至上主義者に魅力的に映るのかもしれない。
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レビューはブログにて
https://ameblo.jp/w92-3/entry-12765801162.html
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日本は世界で最初にスローダウンするというところから始まり(詳しい日本のスローダウンの話しは本の終わりにあり)、学生ローンや自動車ローン、住宅ローンが多いアメリカは最もスローダウンからほど遠いと思いましたが、ジワジワ確実に人口の増加率が下がってローンの増加率も下がって、スローダウンしていく様子を独特な図表で表していますが、少し見づらいところもありました。
減速や減少したスローダウンのあと、ウェルビーイングになるのかが論点だと思いました。
人間がコントロールしなくても時代の流れでスローダウンすることになれば、自然と斎藤幸平の脱成長になるのではないかと思いました。
お金使って経済を回転させるのではなく、週休3日制にしたり、近くを散歩して近所の人とたわいも無い会話をしたり、お花を見たり、図書館で本を借りて公園で読んだり、お金を使わなくても楽しむことが環境にも良く自分もみんなもウェルビーイングかもしれませんね。
スローダウンはいいですね!
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当たり前のように言われている、あらゆるものが加速している、加速は良いことである、という事を多くのエビデンスを使って否定している本。
あらゆることがスローダウンしていて、スローダウンこそ良いことであるとの、気づかなかった視点を与えてくれる。
最近東京に転勤になって改めて感じたことが、全てにおいて便利になりすぎている。明らかに行き過ぎ。災害などでその生活が維持できなくなった時、耐えられるのか非常に疑問。この本を読んで、都市圏の生活こそ一番にスローダウンすべき案件だと感じた。
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加速主義的な発想とは異なる視点の提供。
人口の減少は自明。これに伴い経済も減速。技術(データ量)に対する考察は別の角度もあり得る。
減速する中で何が起こるか。
・絶対量だけでなく変化率を見る
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イギリスの地理学者による「今の世界は減速しつつあり、それは良いコトだ」という主張の1冊。
原題を直訳すると「減速 - 大加速(グレート・アクセラレーション)時代の終わりと、それがなぜこの星、経済、我々の暮らしにとって良いことなのか -」という感じでしょうか。
本著、論旨もちょっと引っ掛かるのですが、それにしても500ページ(脚注除く)使うには少し冗長に感じたのと、グラフの見辛さや本としての読書中の引っ掛かりを踏まえて、☆2つとしました。個人的には、本著以外に時間を使った方が有益かなと。
(本著内のツッコミどころを途中まで読書メモに入れてたのですが、結構な量になってしまいました…)
英語版Wikipediaの著者ページも見に行ったのですが、地理学者さんながらここ10年くらい一般向けの本を色々書かれていて、本著もこの文脈なのでしょうか。(その中で本著だけ邦訳されたのは、日本が"衰退"の先進国だからでしょうか…)
まず、本著の言うスローダウンが進んだ社会では、下記のような変化があるそうです。
・お互いをもっと気づかうようになり…
・考える時間が増え…
・モノを長く使うようになって、ゴミが減る
えー、、スローダウンの先頭に立つ日本人として、最近は治安の悪化を感じているところです。。著者が想像するような形で、みんな大人しく衰退を受け入れるんでしょうか。↑みたいな余裕は、最初に無くなると思うんです。
あと本著、そもそもスローダウンそのものの定義が曖昧だと感じました。人口減なのか、財務の悪化なのか、イマイチ明確でないような。
本著を読んだ上での個人的な見解としては、未来に対しては基本的にはポジティブで、(本著の主張とは違いますが)これからももっと暮らしを変えるような技術は出てくると思ってます。
あまり明るくない未来があるとしたら、人間の優秀さが方向違いに発揮される場合かなと。特に企業が目先の業績や株価をクリアするために、例えば一生飲み続けないといけない薬を発明する…とか。
あと、翻訳や編集もちょっと気になる箇所が。あんま書いてもな…と思ったので↓に並べておきます。
本著、並んでいるデータはとっても豊富なのですが、それがスローダウンの証跡かと言うとそうとは思えず。同じコトを言いたいにしてももうちょっと別のアプローチがあるのではないかと思い、もったいないような感覚も抱きました。
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(翻訳等で気になった箇所)
・エンクロージャーが訳されて「囲い込み」になってたのは少し驚きました。今の学校の世界史はコレで習ってる?
・「ペスト」と「黒死病」が書き分けられてたんですが、考えあっての訳なのでしょうか。
・グラフの単位が「100万人」「10億人」となってるのは単に直訳してしまったんだな…と残念な感じです。「1.5×10億人」とか、訳の段階で吸収できるでしょうに…
・世界の1人当たりGDP、本著の記載だと2006年→足元の間に激増してるんですが、グラフとも一致せず過去値が少なすぎるような…。年間の伸び値な気がしますが、そう読めない文章でした。(1950年代:$150��1972年:$260、2006年:$470、いま:$15,000強)
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1900年から2000年の期間があまりにも変化の激しい時代だった。だから僕らはこの期間を生きているためにこれがずっと続くだろうと思っている。しかし、僕らの普通はほとんど起こりえない時代を生きたためにおかしくなってしまってる。変化の激しい時代も終焉を迎え、資本主義から新しい時代へと移っていく。公正と安定がより増す時代である。また今まで起こったようなとても大きなイノベーションはもう起きない。これから起きる変化は起きても小さな変化である。変化が小さいために、人間は退屈になってしまう。だから、娯楽やスポーツ、音楽、芸術がより発展していくように思う。そこにITは大きな役目を果たすだろう。消費資本主義は終焉を迎え、これからは競争ではなく協調が尊重されていく。そんな社会の中で主役となるのは、男性ではなく女性である。今まで求められてきた男らしさやリーダーシップではなく、女性のような協調性が求められていく。今まで人間は外部環境を変えることに努力してきた。しかしこれからは、内部(人の考え方や態度)を変えていくことになる。
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人口増加はスローダウンしているようだ。
その理由は、衛生環境や貧困の環境が、過去よりも(1901年以前と以後)改善され、多くの子どもを産まなくても幼児の生存率が高まり、少子化でも自身の老齢時の面倒は見通しがつくこと(また、健康保険等の社会制度の充実)、また主に女性の、子どもを産むか産まないか?も含めた、選択が出来るようになっている知力の増進により、出生率が減少していることに拠る、という。
人口についてはそうかもしれないが、ほかのことはどうか?という疑問は残る。
それでも、"これまでの一時代のような、常に成長(市場の拡大)が求められる帝国主義や資本主義"では、豊かな(←どういう意味での?自身への疑問)社会を築くことは限界があるだろう、スローダウンしていることも可能性としてもう十分に有り得る、ということを、まずは気付きとして得られることは、内容としてとても良い本である、と思う。
そのうえで、ではこれからは、なにを以て"豊かな社会と考えるのか?"、"どう社会を構築していくべきなのか?"を考えることが必要になるのだろう。
今までのように、拝金主義(ともかく、まず自身が儲けて、それが"豊かになるということだ"と考えること、と私は捉える)では、社会がさらに劣化する(構成員がお互いに楽しく暮らせない)と思う。
"トリクルダウン理論"、内容を詳しく知っているわけではなく、見当はずれな物言いかもしれないが、日本語に訳して"おこおぼれ理論"という名称からして、大変、人を見下した、失礼な考え方で、富裕層の牽強付会なのでは?と思ってしまいます…