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「死に場所」から「生き抜く場所」へ
2007/06/08 15:15
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:イム十一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
医師である著者が、終末の医療現場での実体験を基にして作られた全10編の物語です。
前5編は著者が医療現場で体験した人間の「死」にまつわる陰・暗の部分を基にした話、そして著者が南極行の船へ船医として乗船した時の医師としてのターニングポイント的な体験をインターローグとして、後5編では、前5編で語られたような医療現場での陰・暗の部分にいかにして光を当てていくか、その苦悩と感動が語られています。
「死」という避けられない現実を突然目の前につき出された時、人はどういう風に死んでいくべきなのか、人生の終末をいかにして生き抜くのか、を真剣に考えさせられました。
私達は誰しもいずれ必ず「死」という現実を受け入れねばならない時がきます。しかし、普段の生活の中ではその現実を実感として考えることはほとんどないのではないでしょうか。
私達一人一人がいつも目の前にありながらも見えない「死」という現実に対して真剣に向き合って、今この時を大切に生きていかねばならない、ということを著者はこの本を通して教えてくれているように私は感じました。
死を受け入れること
2019/06/27 12:26
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投稿者:雪子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
前半は病院で失望の中で亡くなる患者さんのの厳しい話、後半はいずれも癌患者で亡くなるのですが、死を受け入れてやすらかに亡くなる感動的な話。最後は中学生の息子への遺書で始まる壮絶な胃がんと戦った男性の話。日本で傷みを和らげるモルヒネの使用が行われていない現実も書かれている。死を受け入れること、しかも癌患者の例を通して、考えされられる1冊です。
猜疑心と孤独と絶望と
2003/08/09 00:53
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Kay - この投稿者のレビュー一覧を見る
末期患者はただ病室のベッドを占拠している物体——それが現代日本の現実の一面でもある。その患者の周りに人が集まるのは、もはや臨終の時だけだ。明らかに死の直前にいる患者に蘇生術を施しても、僅か二、三十分心肺が停止するのが伸びるだけでその間患者は家族や友人と話が出来るわけでもない。そこには激しい蘇生術によって最後の最後まで傷つけられた遺体が横たわっているだけだ。
初めはさほど重い病気ではないと言われ、ちょっとのつもりの入院がついには我が家に帰ることは出来なくなってしまった。家族や医者の態度もどこかよそよそしくなり、体力は衰えていく。猜疑心と孤独と絶望だけが頭に渦巻いている。そんな患者の心の内を思うと、胸の奥がきりきりと痛む。「まだ」生きているのではない。「いま」生きているのだ。
筆者はこの状況を医者として「仕方がないこと」と頭の外へ追いやらなかった。全ては南極行きの船で読んだ本の一節で、今までの自分の中の不完全燃焼していたものが消滅したことから始まった。末期癌患者にその病名を告げず、必死の蘇生術の末の患者の死、その後の何か納得のいかない心の中のわだかたまり。
その人の人生最後の日々。それが第三者の手にのみ委ねられているのは仕方ないと言えば仕方ないが、おかしいと言えばものすごくおかしい。どうせ死ぬんだから、なんて言い方はしてはいけないのだろうが、物言えず、何も考えられない時間がちょっとぐらい延びるよりも、家族や友人と過ごせる時間が一日でも増えたなら、それはどんなにか死にゆく患者に満足を与えるだろう。筆者はそんな当然のことを言っている。ごく、当然のことを言っている。
人はいつか死ぬ……
2002/04/30 12:59
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投稿者:麒麟 - この投稿者のレビュー一覧を見る
医者である著者が、病気と闘い死んでいった方たちの実話を載せています。
もちろん面白半分に載せているわけではなく、がん告知や延命、末期がん患者の治療の現状などを世の中に知ってもらい、ホスピスの必要性や、どのように死にたいのか、など、読む側にとても多くのことを考えさせてくれる本です。
常に患者のことを考えてくれる山崎先生に、医療現場への不信感を募らせている私も、「こんな先生もいるのだ」と安心しました。
自分が死ぬときは、山崎先生のいる病院で……とまで思ったくらいです。
本書の中には、死と直面された方たちのさまざまな闘いや死への覚悟のようなものが載せられていますが、中でも、息子と娘を持つお父さんの話は、今でも涙なしには読めません。
この話の冒頭に、息子にあてた父親の手紙(遺書)が載っているのですが、死を目前にしてもなお、これほど冷静に、家族のことを一番に思ったすばらしい手紙が書けるものかと感動しました。
涙が出るのも、かわいそうという同情的な思いからではなく、こんなにすばらしい人が存在したということへの感動のようなもの、そしてそんな人が早くに亡くならなければならなかった悔しさのようなもの、言葉ではうまく表現できませんが、そのような感情からです。
私は人間がまだまだできていないので、ときに傲慢になったり、努力を怠って、だらだらと時間を過したりしてしまうのですが、そんなとき、この本を開いてみるのです。
本書は、人はいつか死んでしまうのだと、人の命には限りがあるのだと実感させてくれます。そして、死に直面したときに凛としていられるように、今を、精一杯生きていこうと思うのです。