紙の本
進化しているのは形ではなく形づくり。
2022/06/19 21:47
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
いきなりサブタイトルに「エンハンサー」。一寸専門的で難しいかな、と思わせられてしまいます。著者の研究の部分であるエンハンサーの遺伝子の詳しい話が出てくるあたり(4,5章)はジュニア新書としては少々難しいかも。でも著者の文章の滑らかさで読み進められました。
今では「恐竜から鳥が進化してきた」というの説が定着してきましたが、なぜそう言えるようになったのか。羽や指のでき方という発生の観点から形を作るための遺伝子、進化を通しての共通性などの研究成果が説明されます。これを要約すると「恐竜も鳥エンハンサーをつかっていたか」という言葉になっていく。「進化しているのは形ではなく形作り」という言葉も本書の中で使われている言葉ですが、読んでいくと「確かに」と理解できた気がします。
あとがきにもありますが、著者が書くことが好き、ということが伝わってくる文章でした。気持ちよく読める、でも「進化」という一つのことへの見方(現在私がもっている、でしょうか)に新鮮な一ページを加えてくれる深さと広さ。著者の本をまたいつか読みたいです。
投稿元:
レビューを見る
1章 ◆動物は生まれてくるもの
1 生物って何? 動物って何?
2 ヒトもカエルもサカナも脊椎動物
3 脊椎動物の体は「ちくわ」
4 生まれる=発生する――すべての動物は一個の細胞から
5 「ちくわ」のでき方
6 三七兆個の細胞のかたまりにならないわけ
7 発生のメカニズムには不思議がいっぱい
コラム1 今日も実験してみよう!――ミルククラウンと水たまりに石
2章 ◆料理の達人「エンハンサー」のアレンジ采配
1 タンパク質ってすごいんです!
2 料理をおいしくするコツはレシピにあり
3 ゲノムはレシピ本を所蔵する図書館
4 二万五〇〇〇冊のレシピ本で、どうやって体を作り上げるか
5 料理の達人「エンハンサー」が、フルコースの内容を決める
6「エンハンサー」って言葉をはやらせたい!
コラム2 オチを考えることの面白さ――暗記パンと研究論文
3章 ◆動物は細胞ひとつ作ったことがない
1 父も父の父もお酒が飲めないんです
2 私がお酒が飲めないのは、遺伝
3 私、ダーウィンの親戚なんです
4 動物って一度も途絶えたことがないんです
5 遺伝情報が伝えるものは?
コラム3 つながりを考えることの面白さ――華厳の滝を登るウナギ伝説
4章 ◆進化したのは形態ではない、形づくりなのだ
1 もみじのような赤ちゃんの手
2 発生における四肢の形づくり
3 sonic hedgehog、ゲームキャラを名前にもつ遺伝子がカギになる
4 形づくりが変わると形が変わる
5 形づくりの仕組みをずらすための仕組み
コラム4 奇妙な手足をもつ脊椎動物
5章 ◆鳥エンハンサーによる鳥づくりと恐竜から鳥への進化
1 鳥らしくない鳥も、鳥らしい鳥以外の動物も、いない
2 鳥エンハンサーの見つけ方
3 鳥の祖先は鳥エンハンサーを使っていた?
4 鳥類恐竜起源説
5 発生学者は鳥は恐竜の子孫ではないと言っていたことになる
6 そして恐竜も鳥エンハンサーを使っていたか
コラム5 生物学というサイエンス――複雑すぎる物理現象
6章 ◆ 水中から陸上への脊椎動物の大進化とエンハンサー
1 手と翼と胸ビレはみんな同じもの
2 わき腹から生える「蛇足」、背中から生える「片翼」
3 誰がどうやってヒレを作り始めたか
4 ヒレから四肢への進化とエンハンサー
5 私たちはどこからきたのか……
コラム6 未来おおききみへ――考えることの面白さ
投稿元:
レビューを見る
設計図も無く、全くの偶然から進化してきた生物の仕組みは本当に驚きです。なぜ1つの受精卵が分割し、いつの間にか数多くの異なる器官や組織が出来上がる、その仕組みの素晴らしさを本書から知ることが出来ました。そのキーがエンハンサー。形づくりの仕組みです。
もしかしたらその考え方は色々なところに応用出来て、生命だけでなく例えば形が無い「企業風土」といったものがどのように形作られるかも説明できるかもしれません。そんな妄想を読後にしました。