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最初何の気なしに読み始めましたが、娘から見た父や、それぞれに濃い父娘関係に引き込まれて、一気に読んでしまいました。あとがきにもありましたが、書くことができるまでに長い歳月が必要で、書くことで徐々に父娘関係を俯瞰で見られ、書くことに苦しみつつも、真摯に家族と向き合い、一種のセラピーのようでもありました。
最初の渡辺和子さんと2・26事件で青年将校に殺害された父の場面から始まり、晩年、渡辺さんが加害者遺族と出会って、加害者遺族が自分以上に辛い年月を過ごして来たと分かり、ようやく恨みから開放されたという記述に、想像を超える人生のあり様を垣間見た気持ちがしました。
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文学者の娘からの視点で父を見つめる。とてもいい作品である。どうやらこの程度の長さの文章の方がじっくり読める。
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筆者の梯久美子は、本書のあとがきに「"書く女"とその父」という題名をつけている。その題名の通り、本書は、9名の、比較的活動時期の古い、従って、既に亡くなられている女性作家とその父親との物語を描いたものである。執筆の動機について、筆者は「女性がものを書くとはどういうことか、ということに、私は長く関心をもってきた」と書いている。これら9人の女性作家たちが、ものを書くようになったこと、あるいは、書いている中身、に父親がどのように影響を与えているかを考える、すなわち、「娘と父の関係を通して、新たな側面からこのテーマについて考える」ことが狙いであったということだ。
それぞれの女性作家たちの経験は強烈だ。
例えば、渡辺和子は、2.26事件で青年将校に襲撃・殺害された父親が、自宅で実際に殺害される場面を9歳の時に目撃している。萩原朔太郎の娘、萩原葉子は、「私はまさしく父親の犠牲者としてこの世に生まれた」という父親・親族との関係を持っていた。それらは、もちろん、彼女たちの作家として書くものに、そして、その背景となる人生そのものに大きな影響を与えているのだ。
本書は、日本経済新聞の、土曜日朝刊に連載されていた。書評欄の裏のページに書かれていたように記憶している。新聞連載の1回分に書ける分量は限られており、どうしても、話が断片的になってしまう。今回、単行本で読むことが出来て良かったと思う。筆者は、ノンフィクション作家であるだけに、本書の取材や調査も行き届いていると感じた。
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「人はたまたま遭遇した時代に人生を左右されるのだ」
当たり前だけれど、人は誰も親はもちろんのこといつ生まれるか、自分のはじまりを選ぶことはできない。けれど、どんな環境においても、その父の娘として生まれてきたからには「そのように生きるしかなかった人間」がいたのだと、九人九様それぞれが悩み苦しみながらも必死に手を伸ばして生きる姿に心を揺さぶられた。特に心に残った萩原葉子さんと茨木のり子さんは作品も読んでみよう。
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渡辺和子さんの話の印象が強い。ここまで愛して愛されたからこそ、晩年の感情に繋がったのだろう。あとは大人は親はきちんとしないといけないなと思った。とても印象に残った。書ける人は自分を救えるんだろうな。羨ましい。
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9組の父親と書く娘。梯さんの取材力と筆力。どれも読みでがあった。
石垣りんの詩をもっと読んでみたい。
石牟礼道子さんの作品をいつになったら手に取るのだろう。
馬込文士村、わりと近くに住んでいたのにどうして散策しなかったのか。
読んでいて、私自身の次につながる感じがした。
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島尾ミホさんの章だけでも読みたいな、と思って手に取って、結局夢中になって全部読んだ。
梯さんの文章は読者を引き込む力が強いと思う。
石垣りんさん、茨木のり子さんの詩は読んだことがないけれど、ぜひ読んでみたいと思った。
特に茨木のり子さんの、フィリピンで日本兵の遺骨が発見されたことに関する詩が胸に刺さった。
父親と良い関係を築けている人、むしろ関係が悪かったり、その関係性に後悔が残っていたり、さまざまだった。
わたしも幼少期は父からすごく溺愛されて、でも大人になってから、父を反面教師にする部分がグッと増えたなと思う。
良くも悪くも父から受けた影響は計り知れない。
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作家は家族の恥部を赤裸々に書く運命にあるのか。色んな苦しみがある。
石垣りん
男のようになるのではなく、女のままで、1人の人間としてちゃんと扱われる。これまでしてきたことを価値ないこととして否定されることなく、誇りを持って社会に踏み出すことのできることを望んだ。
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家庭環境によって人生が左右されることを意味する「親ガチャ」本といっても言い過ぎではないほど登場する人物は死ぬまでその影響を感じされる内容。
梯久美子さんの足で取材したからこそ書かれた内容だからこそよりリアルな人物像が浮かんでくる。そして、一文字でも読み飛ばしさせてくれず、じっくり本と向き合うことになった。
それにしてもよくこれらの人物を選んだな、という父そして子供(娘)ばかり出てくる。
読後ここから、それらの著書を読んでみたくなる読み手に行動を起こさせてくれる。