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投稿者:ケロン - この投稿者のレビュー一覧を見る
この世界観なんかいい。
マンモスがいて、亡霊が生きている人間に影響を与えることができて、動物が人間に姿を変えられるなんていい。
紙の本
歴史のいろいろな面をテーマにしていると感じた
2023/12/16 17:49
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投稿者:りら - この投稿者のレビュー一覧を見る
歴史収集の形を取りながら、人の話を聴きとっていく聖職者チーの話二話。
歴史というのは、記録されているもののみが残っていくが、実際には一つのできごとにも関わった人それぞれに見方、受けとめ方があり、どれが真実とは言えない。
歴史書は、それをまとめた者が都合の良いようにまとめられていく。
それは中国をはじめとする様々な歴史書からもわかることだが、できるだけ多様な視点からの事実と思しきことを集めることで、将来いつの日かにそのできごとの背景などが明らかになっていくのかもしれない。
そういうことを言いたかったのだろうか。
独特の世界観と癖のある文章で、なかなか読みづらかった。
その中でも、この訳はかなり頑張っている方だと感じた。
原文の言葉を日本語でどう表現したら伝わるのかについては、相当苦心したのではないか。
そこを踏まえても、これはどういう状況なのかと、行間にいろいろ考えてしまい、読み進めるのに時間がかかる。
そんなことは考えずに、そういう世界なんだと、ひたすら文字を追っていくことができれば浸ることができるだろう。
なので、そういう本読みができる素直さのある人には、この世界観を楽しむことができると思う。
自分自身はチーの他の話も知りたいかと訊かれたら、気にはなるが、積極的に読みたいとは言えない感じ。
が、こういう世界観を自分の中で構築して、表現していく力は、今後もっと伸びていくのではと期待している。
オールモースト・ブリリアントが先祖代々子々孫々歴史を覚えているのに、聖職者が話を聴き集めていくのはなぜなのだろうか…。
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こうした枠物語は大好きです。
一遍は物語りを聞き取る。
もう一遍は自らが物語を語る。
カターサリットーナーガラやマハバーラタ・アラビアンナイトがお好きな方にお勧めしたい一冊です。
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これはこれは極上のシノワ風味ファンタジー。転生したら後宮の悪役令嬢みたいな流行りのエセ中華とは違います。
2編の中編からなり、これがほぼデビュー作とちうから恐るべし。歴史伝承を記録する役割で各地を旅する年若い聖職者チーを中心に、愛と裏切りの逸話が語られていく。
世界観や道具立てもよいが、女性が徹底的に主役であるところがうれしい。時には女つーか雌虎と愛を交わしたりね(姿は人だが)。
これは漫画にするなら、諸星大二郎先生にオドロエロく描いてほしいわあ。
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きっとこれから長く続くでしょう。
翻訳がチョット残念に感じる。
英語をカタカナで表記していることに意味があるのだろうか?
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ファンタジー世界のなかで語られる伝承や伝説を聞き取るという、入れ子構造のような濃密なファンタジー作品集。
舞台となる現在の時系列のファンタジーの世界観ですら全容が語られていないのに、さらにその世界のなかの伝承や伝説にフォーカスを当てます。
書く側からするとかなりの想像力と強固な世界観が必要となる作品に違いない。
それなのに作品の世界観に破綻を感じることもなく、自然と話に入っていけました。
何気ないふうに物語は展開していくけど、実はこれって相当すごいことをしている作品なのではないかと思います。しかも中・短編のページ数で……
収録作品は2編。追放された皇女の伝説をかつての侍女が語る表題作と、言葉を話す虎が、人間界に伝わる虎の伝説を語り直す『虎が山から下りるとき』
表題作は侍女の語りを通して、皇后の気品や存在感がくっきりと浮かび上がる。
世界観や話の展開はもちろん、何より侍女の語り口がよかった。懐かしさのなかに憧れや恐れといった様々な感情を秘められているのをなんとなく想像させる。そのすごみを感じます。
『虎が山から下りるとき』の試みも面白い。人間と虎。同じ伝説が伝わっていても、そのニュアンスや話の細部は大きく違っていて、それをすりあわせていくと伝説がまったく違ったかたちに変わっていく。
ミステリ的な面白さもあるし、一種の恋愛もの、寓話としてもそれぞれの見方から解釈が分かれていくのが面白く読めました。
作品の出来については文句なしだけど、惜しむらくは収録作品の少なさ。2編ではあまりに物足りない…。
4~5編作品が収録されていれば、間違いなくこの世界にはまりきっていました。
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短編が2篇収録されていて、どちらも同じ世界線の話。
異世界を描く場合、自由に世界を創造できる一方でそこに広がる臭いを感じさせるのは難しくなると思う。
その場所で生えている植物、気候、そこから導き出される食習慣や習俗。
展開される話の中でこれらがあやふやだとどうにもうすぼんやりとした世界になる訳で。
しかし、この短い中で直接語られないにも関わらず人々がきちんと歴史を持ってそこに生きていたと言う臭いを確実に感じさせる筆力に圧倒される。
風景に映り込む調度品から、言い回しから、仕草から。
それらが生み出され使われ、伝えられ続けてきた重みがこの掌編に濃縮されている事に、迷わず2022読了書フィクション部門の1位を捧げたい。
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ストーリーはつまらなくないのに、「アジアっぽい」「異国っぽい」を切り貼りしすぎという印象だった。剃髪の聖職者、賭け事は中華風、「匙座」という星座はあるのに粥を手で食べる、貴族は腹を切ることが敵に殺されるよりマシなような描写とか、世界観の土台がきちんと語られないまま唐突に挿入される「それっぽいもの」についていけなくて、途中で断念。
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2021年のヒューゴ賞中長編部門を受賞したファンタジー作品。著者であるアジア系アメリカ人女性の描き出す世界は中国やチベット、中央アジア、小アジアに近いような世界観で、まだ亡霊や人に変態する虎や、古代象(マンモス)などが普通に出てくる。内容的にはタイトル作の「塩と運命の皇后」と「虎が山から下りるとき」の二編がおさめられている。主人公となる大寺院の聖職者、チーが物語を語り、そして物語を聞いて記録することを職務としており、その行為が二篇とものキーとなる。魅力的な物語(の中の物語)と、エキゾチックな世界観に、続編の刊行を望まずにはいられない。
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二篇のうち、一篇目「塩と運命の皇后」は、幻想文学的でわたしには少々難解だった。聖職者チーと記録する鳥や、老女ラビット、その所有する思い出を纏った小物の数々から語り出されていくひとつなぎの話たち、その中で語られる皇后ーーパーツは魅力的なのだが、どうも好きになれそうにないような味で、これが賞を取るならヒューゴー賞も寝ぼけたものだと思ってしまった。しかし、二篇目「虎が山から下りるとき」は三姉妹の虎とチー、スーウィー、古代象の緊迫感、語られ、次第につよくただされていく物語に、ぞくぞくした読書の楽しみを思い出させてもらった。物語の注にもあったので書いてしまうが、雌虎と学者の卵の女学生の恋、スーウィーがチーに投げかける自由な響きも面白い。作者がクィアであるというのもうれしい。新しい物語が書かれていくのはよろこばしいことだ。……わたしが求めるのは、必ずしもそれでないことは於くとして。
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図書館で。
主人公がどういう人たちで、どこに行って何をしているのか、という事があまりわかってないままに老女の話が始まるので色々と?と思いながら読みました。そういう意味では世界観がまるで入ってこないので、お話に入り込むまでとっつきにくかったです。封鎖されていたってどういう事なんだろう。赤く光る池とか。
てっきりファンタジーなのかと思ったらそうでもない感じで、外国から嫁がれた皇后の処遇は人道的になってないの一言に尽きる気がする。でもその中でもしたたかに生き延び、機会を待つ姿はたくましいし強いなと思いました。
虎の話は面白かったです。死なないでヨカッタ。
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1本目は読みにくく、「これは挫折するかも」とすぐに思いました。
でも内容は、皇后の辛酸を嘗めた歳月の長さを肌で感じるようだったし、舞台となる架空の世界も、西洋よりは私たちにもう少し近い国の話のようであり、なかなか味わい深かった。
2本目は逆に、どうなるのか先が気になって一気に読めました。聖職者たちと一緒に焚き火を囲み、その話に夢中になって耳を傾ける1人になった気分になりました。
夜に読んだのも良かったのかもしれない。
時間がたっぷりある時に、気長に読む本かなぁ。
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少し流れに乗るまで慣れが必要だった(表題作の構造として、まず語られるエピソードにまつわる品物のリストが置かれるところで止まってしまう)が、支配者として奪う性を持つことを自覚自認している皇后の、語り手に対する宣言にはじんときた。