電子書籍
心と体
2023/03/25 00:55
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投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
交通事故で負った傷や、目に見えない言葉の刃による傷など、心を閉ざした若者たちの繊細でひたむきな結び付きを描いた、前向きになれる応援物語。
与えられた入れ物(容姿)に悩む人たちが、諦めから孤独を選ぶ事で思考が凝り固まり、どんどん悪化していく心理。それでも捨てきれない人への期待。人との交流は、傷付く事もあるけれど、それ以上に得るものがあるという事を優しく教えてもらいました。
崎田のキャラと似顔絵師のエピソードが特に深く心に残りました。
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自分だけでなく誰しもが化け物を心に飼っている。
けれどそれは受け入れられない自分を切り離して化け物という別人格を作り出してしまっただけ。
時折 心の中から顔を覗かせる化け物が醜くて堪らなくなって痛め付けるような言葉を吐き殴るけれど結局自分自身を嬲り殺しているだけで何の救いもない。
自分や他人が理解しなくてもいい。
たった一人でも自分を気にかけ、寄り添ってくれる存在がいるとしっかり顔をあげて気付けるかどうか。
そこに人の幸せはあるのだと強いメッセージが込められた作品。
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去年、また妖精が
引き出しにそっとゲラをいれてくれてて
ゲラ、読みにくいから
読まないかもなー
ってペラッとめくったら
ペラッがとらなくてそのまま読み終わった
とんでもないものに出会った衝撃
久々にしっかり揺るぎない最高点
感想を本気で述べると
めちゃくちゃ長くなる
ここもスキ
ここは心が抉られる
こっちはわかるぜーってなるし
あそこはわかるわけないけど
想像するとこんななのか
さらにここ!あとここ!
ここらへんからは
ずっと涙にじみっぱなしでさ
頼むから未来よ優しくあれ
って温泉つかったみたいな
あったかい気持ちで読み終われたんだよ
ハラハラと美しい涙が流れたしな
みたいにアツく語りそうなので
こんなところで勘弁してやる
誰かの一枠しかないその枠に
入れてもらえる日が
己にもくるとイイナァ…
星は前のめりに5つ
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事故に合い、身体に傷を持ったことで、自分を蔑み化け物だと思う祥司、中学の時の好意を寄せていた男子の心無い考えから異性に嫌悪感を持つ千尋。千尋の妹、文房具屋の孝志朗。自分の傷を癒したり許したりすることの難しさ、口に出さないと分かり合えない、それを超えた時にまた広がる世界。訳もなく泣きたくなる場面がたくさんある。
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泣きましたよ。泣きましたとも。
幼い頃に交通事故にあい右半身に傷痕がたくさん残ってしまった自身の事を「化け物」「壊れた入れ物」と言い、人との関わりを避けてきた祥司。
居酒屋で偶然居合わせた千尋。明るく美人で快活に見える千尋にもトラウマのせいで恋人とうまくいかなくなる過去を抱える。
そんな2人が恋に落ちどう向かいあっていくのか。
それと並行して
不登校になった千尋の妹、絵美。学校に行かずに通う文具店の店員と、絵美に学校の配布物を届ける話のできない少年の3人の物語も。
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2023/01/21リクエスト 1
★2.5
幼い頃の交通事故で全身に傷を負い、人となるべく関わらないように孤独に生きてきた祥司。
毎晩、夕食をとる行きつけの居酒屋で千尋に出会う。
祥司にとって、自分の人生にはない華やかさを持ち明るい千尋だったが、中学生の頃からのトラウマを抱えていた。
やがて、なんとも清潔感のある交際に発展していく…
千尋は故郷の福岡に父親と妹を残し、高校卒業後、単身上京していた。
スクラッチの宝くじを削ることだけを生きがいに、父親の文具店を手伝う孝志朗。
妹の絵美は、姉の千尋が家から出ていってから不登校になり、文具店の試し書きノートで絵を描き続ける。
文章で学校の様子を絵美に伝える、口がきけない少年。
千尋は、コロナ感染拡大で勤務先が店を閉めることになり、その機会に福岡に戻ろうと決める。
その前に祥司に大切な人なのだと伝えるが、受け入れてもらえず。
容れ物ではなく、その中身が好きなのだ、そう伝えたが祥司は受け入れてくれなかった。
全ページの4/5までは、先が見えずだらだらと話が展開する。期待して読み始めた本だったので、正直イライラした。残り1/5ですべての伏線が回収される。
僭越ながら、途中、あまり必要でないエピソードも挟まれるため、そのあたりを削り、大切なところに繋がるエピソードの分量を増やしてもいいのかなと思った。
まだまだ若い作家さんなので、今後も読みたいと思う。
次が楽しみです。
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中身っていうのは、自分でつくっていくものです。人生の岐路で、どの道を選ぶかは自分次第。そして、その選択によって、中身はどんどん変化していく。よくも悪くもなる。
どっちを取るも自分次第、というのが何より苦手だった。正解のない問いについてあれこれ考える。
どれほど汚く見えても、生きている顔には、生きる「美しさ」が必ず浮かんでいる。
頼れるのは自分だけ、自分がしっかりしなければ、というプレッシャーは常にある。
ひとたびさか道を下りはじめたら、ブレーキをかけ、さらに引き返すことは容易ではない。
その程度のことで、と自分でも思う。だから言えなかった。うまく伝えられる自信がなかったし、その程度のことで、と返されるのは明らかだ。わがまま言わないでくれよ。眉をひそめ、顔をしかめる様子まで目に浮かぶ。
そこには乗らずとも並走はしておいて、その気になればいつでも、すぐに乗りこめる。そういう状態にしておきたかった。絶対にはぐれてはいけない何かから決定的にはぐれてしまうことへの恐怖心が踏みとどまらせていた。
真面目を極めた結果、不真面目という真理に辿り着いた。流れに身を任せて、可もなく不可もなく。それが一番。努力とか忍耐とか本気とか、そういうのはまとめて捨てた。どうせしんどくなるから。
でも、怠惰な人生っていうのも、それはそれでしんどいんだぜ。目標に向かって頑張ってるやつに出会うと、相対的に自分の駄目っぷりを突きつけられるからな。たまに、生来の真面目さが顔を出して、なんで生きてんだろ、なんのためき生きてんだろ、とか考えちまったりして。
夢とか希望とか目標とか、そういう大層なもんがなくても、それくらいで十分なんだ。ちょっとだけ先の、ちょっとした楽しみ。人生、これに尽きる。
家族に決まった形はないが、その内側にいる全員が幸せであることが前提だ。
何でもかんでも押せ押せで貫くのではなくて、引くべきところはさっと引けるのが美点だ。
最も苦しめたのは、「努力すれば自分が普通であるかのように振る舞える」ことだった。だがそれは、あくまでも「普通に見える」だけであって、決して普通ではないのだ。
変わっていくのは寂しいよな。すげえ寂しいし、ちょっと怖い。でもまあ、止められねえからな、時間ってのは。だから、その時々の自分の気持ちってのは、ちゃんとそこに置いていくべきだと思うんだ。
限りある命。かけがえのない人生。二度とない今日。
逃げたり、はぐらかしたり、茶化したり。そういうのは、もうなしだ。
好きでもなくやりたくもないことは頑張り続けられない。
どうしたらもっと自分に、自分の人生に全力になれるのだろう。つまらない人間のままで、クズのままで終わっていいのか。誰も正解を示してはくれない問いに、自分なりの答えを見つけ出すのは簡単ではない。
持ってないもんのために躍起になるんじゃなくて、もう持ってるもんに目を向けてみよう。そうやって、自分の周りの、自分の好きなやつらを全力で大事にすることで、もしかしたら自分にも全力になれるんじゃねえかな。
わたしの幸せ、不幸せを決めるのはわたしです。
自分の大事な人が、その人自身のことを大事に思っていないなんて悲しいです。ものすごく悲しいです。
苦手なことがあるなら、得意なことでカバーすればいい。考えてみたら簡単なこと。
自分なりの方法で、精一杯。
受け入れて、折り合いをつけるためには、やっぱり愛しかない。どんな困難や試練にぶつかったって、揺るぎない愛があれば、乗り越えられるもの。
もし、あなたがいま誰かのドアの前に立ってるんだったら、思い切ってノックしてみてほしい。すぐには開かなくても、諦めないでノックし続けてほしい。だって、人が訪ねてきてくれると嬉しいでしょ。きっとみんなそう。
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Amazonの紹介より
あなたは生きていい。著者渾身の人間賛歌!
交通事故で体に傷を負って以来、人目を避け孤独に生きてきた祥司は、行きつけの居酒屋で一人の女性に出会う。祥司には眩しいほどに快活に見えた千尋だったが、人に言えないトラウマを抱えていた。スクラッチの宝くじを削ることだけを生きがいに、父親の文具店を手伝う孝志朗。文具店の試し書きノートで絵を描き続ける、不登校の絵美。文章で学校の様子を絵美に伝える、口がきけない少年。 心を閉ざした若者たちの繊細な人間関係を描き、読む者すべての人生を肯定する大傑作。
表紙から想像するに、シリアスなヒューマンドラマなのかなと思いましたが、それに加えて恋愛の要素も入っているので、気持ちとしてはちょっと和みました。ただ、心苦しいところもあって、人間って何でこんなに平等じゃないんだろうと思うばかりでした。
それでも人生捨てたもんじゃない。色んな境遇があろうとも生きていいんだと優しく背中を押されたような気持ちになり、ジーンとくるものがありました。
あらすじでは、交通事故で負傷と紹介されていますが、最初の段階では明らかになっていません。容姿が変で、何かしたらの障害を抱えていて、他人からは揶揄われているといったイメージでした。明らかになるにつれてわかってくる理不尽ながらも生きている姿に頑張ってほしいと共にその世界観に引き込まれました。
群像劇になっていて、それぞれが何かしらの過去を持ちながら苦悩している模様が描かれています。
ある出来事をきっかけに心を閉ざした人達の描写が、心苦しかったのですが、ラストの展開に心が温かくなりました。
誰だって恋愛をしたい。普通に生きたい。でも、なかなか思い通りにはいかない人生。死にたくなる時もあります。でも、誰かが見てくれている。救いの手を伸ばしてくれる。
そんなメッセージをくれるかのように心に染み渡りました。
応援したい一方で、自分も相手の容姿を第一印象として判断し、拒否してしまうなと思ってしまいます。
その人の背景を知らず、ただ目の前にある光景だけで、普通と違う人というレッテルを貼ってしまう自分もいて、そこは反省しなければいけないなと思いました。
逆に自分も「違う人」と思われているかもしれないので、他人と生きることの難しさを痛感しました。
なかなか難しいところもありますが、純粋に「生きることって良いんだ」と気付かされた作品でした。
色んな方々に読んでほしいと思いました。
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交通事故で自分の本体が壊れていると感じる祥司。
居酒屋で隣に座った千尋もまた、心の傷を負っていた。
自分の外見ではなく内面を見て欲しい、こんな自分を受け入れて欲しいと切に願う二人のお話。
内向的で穏やかで暗い雰囲気の祥司と、明るく気さくな千尋は、互いの交流を通してその距離を少しずつ縮めていく。
ただ、祥司の理性は鉄壁なバリヤード。
千尋の太陽な暖かさに身を委ねてしまえばともやもやするものの、
長い年月を通して築き上げた傷つかないための防御壁は強固だった…
自分のダメなところ、弱いところ、未熟なところも含めて、
そのままで良いと、好きだと言ってくれる人に出会い、
その先の未来を一緒に歩めるって、本当に素敵なことだなと思わせてくれた本だった。
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心に残りました。すっごくすっごく好きな作品になった気がします……!!!
登場人物それぞれが抱えている悩みや葛藤を引き連れながら、不器用にも一生懸命己の力で前に進もうとする姿が、鮮やかに胸に刺さりました。特に好きなシーンは、千尋と祥司が身体を繫げる場面。ベッドシーンなのに厭らしさみたいなものは一切なく、ただ二人が二人を思い、感情を交わし合う姿が見れて、不思議と心が満ち足りた気持ちになりました。
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自分と彼らの悩みが重なって、同じようにどこかに彼らも過ごしているような感覚になりました。すぐそばにいる大事なことを改めて気づかせてくれる本です。
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タイトルと、ジャケットを本屋さんで見かけて
これ絶対面白い、読みたい
そう思っていた本です
期待どおりでした!
人はそれぞれに悩みとか、傷を抱えていて
本当は、わかり合いたいし、わかってもらいたい
こんな自分でもいいんだよって言ってもらいたい
誰かのドアの前に立ってるんだったら、思いきってノックしてみよう
すぐには開かなくても、諦めないでノックし続けて欲しい。人が訪ねてくると、嬉しいものだから
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自分で「壊れた機械」「いびつなドア」って言っている。周りからの目にさらされながら、1番は自分を好きになれないことが、読んでいて、もどかしかった。
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この作家さんは全然知りませんでした。
帯の書評が魅力的で思わず手に取りました。
単純にすごく良かったです。
導入部も、どういうことなんだろう??って引き込まれたし、結末部分も違和感なくすっと入ってきました。
最近、読む本読む本が、すべて何かしら人生が生き難い人々を描いた話しだったけど、この本もその系統。でも、そこまで現実感が無いわけではないので。
部分部分で心理描写が自分の好みと合わないことがあったけど、それもそんなに気にならず。
ただそこまで深い、心の奥底にあるものが抉り出されるような感覚は無かった。ので、星4つまで。
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自分が弱っているときは、自分を他人だと思って声がけをすればいい、と、いうようなことを聞いたことがある。
ネガティブな気持ちがぐるぐると渦巻いているときは、どんなに酷いことを思っても突き放さず、寄り添うように自分に声を掛ける。何度でも何度でも。
この小説の主人公・祥司は、自分を「化け物」だと思ってる。自分の体のことを「壊れた入れ物」だとも思っている。
両親を既に亡くし、二十歳ながら天涯孤独の身で、ショッピングモールの清掃員をやっている。当然のごとく、職場では浮いていて、新しく入った元同級生の新人にも辛く当たられる。しかし、仕事は真面目にこなし、日々を生きながらえるように淡々と過ごしていた。ある日、いつもの飲み屋に行くと、同じくらいの歳の女性が声を掛けてきて―――。
実は途中で読むのを中断していた。
胸がチクチクしたからだ。
こんな上手いことあるわけないよ、と、思ってしまった。
そんな天使が空から降って来る的なこと、ありえないよと。
また読み出したのは、ひとえに、もったいなかったからだ。
途中まで読んだのに読了せずに図書館に返却するのは惜しいと。
文章は読みやすく、すらすら読める。苦ではない。
読み進めると、祥司に声を掛けてきた女性――千尋にも、人には言えない傷があるのが分かってくる。
聡明で美しく、人からも好かれ、人生をきちんと進んでいるように見える千尋。
祥司と千尋のふたりと、不登校の千尋の妹・絵美と、文房具屋の青年、声が出せない少年の三人、祥司と元同級生のふたりの交流が入れ代わり立ち代わり綴られる。
皆、人に言えない傷を抱えている。
彼ら彼女らが、「自分なんか」と、思うたび、言うたび、そんなことないよ、そんなことないよ、と、否定したくなる。
いつしか彼ら彼女らの傷が、私の傷と重なり合っているような気になってきて、そんなことないよ、が、自分に向けた言葉のように思えてくる。
他者の傷は分からない。どんな色だか、どんな深さだか、どのようにすれば回復するのかも。
でもな、と、思う。
意外と、似ているのかもしれない。
ラストまで読むと表紙のイラストの意味が分かる。
途中から泣きすぎてしまい、目の周りが赤黒いパンダか、試合後のボクサーか、酔っ払いのようになってしまった。
どうしてくれる、黒田小暑さん。