紙の本
女剣士の仇討ちの行動が事件と幸を呼び、そして女剣士は女となる
2010/01/05 18:35
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る
<あらすじ>
男装の女剣士・堀真琴は、深夜、侍を襲っては髷を切ったり川に投げ込んだりして、楽しんでいる。
真琴は、16才の時、浪人者に犯されそうになり、供をしていた父とも慕う家来を失った。
それ以来『家来の敵を討つため』と剣の道に身を沈め、やがて一流の腕を持つまでになっていたが、深夜に行っていたいたずらが思いも寄らない事件を呼び込んでいく……。
<感想>
読み出した途端、小説の世界が映像として頭の中に映し出され、非常に面白くて1日で読み終えてしまった。
16才の少女たっだ真琴、25才の女剣士の真琴、そして女に戻った真琴がリアルに想像できる。
物語の所々に話を展開させるポイントがある。
一つは、自分に勝った男と結婚すると言う真琴に対し、見合い(試合)に来た織田平太郎は、その高慢な態度に腹を立て「このような女、抱く気もせぬ」とバッサリと言い捨て、試合をせずに帰ってしまう場面。
もう一つは、16才の頃に起きた事件と深夜に行っていたいたずらが招いた事件。
これらの出来事が繋がり出す展開と、スリルとサスペンスとロマンスという起伏が、読者を惹き付ける。
また、失踪した真琴の父についての話が、物語にスパイスを加えている。
この物語は、女剣士が主人公だが、女剣士について説明している部分では、剣客商売に登場する『佐々木三冬』を例に挙げ、この時代にも女流の剣士が数は少ないものの存在したと、書いている。
池波氏の作品「[堀部安兵衛"","http://www.bk1.jp/product/01709648"]」にも、安兵衛と恋仲になる女性として『伊佐子』が登場し、真琴、佐々木三冬と同様に、自分に勝った男でないと結婚しない女性として描いている。
しかし、最後には心を許す男性が現れ、今までの反動もしくは、自分の中に押し込められていた女の部分が溢れ出したように、魅力的な女性として描かれている。
池波氏の女性の好みの一端が現れたように感じられた。
それにしても池波正太郎の小説は、読みやすい。
その答えの一つを井上ひさしほか著「井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室」で見つけた。
池波氏の小説について『やたらと多い改行が独特のリズムをつくり、それが読者に、いい感じを与えている』、『優れた書き手というのは自分と読者の関係のなかで段落をつくっていく』と述べており、実にしっくりする答えだと納得した。
紙の本
良いですね
2024/04/28 16:54
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投稿者:a - この投稿者のレビュー一覧を見る
掘真琴は16歳のときに浪人者に辱めを受けそうになり、そのときに父の様に慕う山崎金吾を殺され、その敵を討つべく剣の稽古に励む、さてどうなるかですね。
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ラノベ感覚で読みやすい時代小説。十六歳の時復讐を決意した乙女が、九年後、宝塚の男役のような女剣士になっている。読後感が爽快で気持ち良い。
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池波氏の作品は、同じ舞台の異なる人々にスポットを当てているので、どこかでひょこり別の作品の登場人物を見かけるのではないかという気になることが多いのですが、この作品も『剣客商売』の「佐々木三冬」が文字の上で出てくる。また主人公の堀真琴も彼女のように剣術に秀でた男装の麗人であり、二人が出会ったらどんな感じになるのか、なんて期待してしまった。
また真琴を助ける関口元道の姿は先日読んだ『旅路』の「堀本伯道」と重なってしまう。でも別人であり、全く違った運命に操られて物語を織りなしている。ただいずれも人間味ある人物を書いてあるため、その場面に参加したくなる気持ちはどれも同じです。
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強姦されそうになった真琴が、男を見下すようになったのは仕方がないことでしょう。
でも、憂さ晴らしに、髷狩りをする真琴の成長した姿には感情移入できなかった。酷い目にあっても、自分を律した行動が取れる人物こそ、本当に強い人物の筈。理想論かも知れませんが、そんな格好いい人間でいて欲しかった。
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独特の語り口。江戸のちょっとした薀蓄。
やはり池波正太郎はいいなあ。
日本を離れると読みたくなる作家の1人だ。
ラストがハッピーエンドなのも安心できる。
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昭和62年に発行された作品の文庫化。
主人公は七千石の旗本、掘家の養女である真琴。
16歳の時、自分を育ててくれた家臣を殺され暴行されかかったところを、偶然居合わせた老人たちに助けられる。
時は過ぎ、九年後。
真琴は敵討ちの目的で剣の腕を磨き、なみいる男など歯牙にも掛けぬ剣士に成長していた。
剣の腕がたつためにしでかしたいたずらが、真琴に九年前の仇を打たせる運命へと引きずり込む。
真琴は自分を助けてくれた老人たちの手を借り、復讐を遂げようとするが、掘家に一大事が起き、七千石の家を継ぐため、婿養子をもらわねばならぬ。
時が差し迫る中、真琴と、真琴に気付いた仇の勝負がじりじりと近づくのであった。
ーーー
池波先生の、緊張感溢れる描写と、相変わらずおいしそうな食べ物の描写に(笑)、楽しく読み進めていきました。
真琴の微妙なおんなごころの変化も、どうなるのかなと探りながらで面白かったです。
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完本 池波正太郎大成23にて読了
幼い時に母を亡くし、父に至っては名前しか知らない真琴。そして、16の時に、無頼浪人たちに襲われ、父親のように慕っていた奉公人を失ってしまう。
その奉公人の敵を撃ちたいと、女剣士となった。
育ての親である伯父との確執。
お家の安泰か、女剣士としての自由な生き方か。
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池波正太郎先生の作品です
独りの女剣士が生まれた理由を
過不足なく語り、師やが狭い未熟さでさえ
ゆとりや愛情を感じさせる筆致で一気に
読ませる
佐々木美冬のコトがチラリと書いてあるのが
面白かった♪
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男勝りの女剣術使い、真琴の物語。
16の頃、無頼浪人に襲われそうになった真琴を助けたのが関口元道。しかし一緒にいた山崎金吾は殺された。
仇討ちをしようと剣術に励む真琴だが、そのうち剣術自体が面白くなっていく。
そして闇夜に侍の髷を切ったりするようにもなる。
真琴を養女に迎えた伯父、堀内に「自分に剣の試合で勝てる相手となら夫婦になる」といい、困らせていた。
そんな真琴を狙う者、そしてそれを救ってくれたのは・・。
作者の著書は剣客商売ばかり読んでいるのですが、この話にも佐々木三冬その他の人物の名前が出てくる。
特に真琴と佐々木三冬は「女剣客」として共通するものがあり、読むとつい比べてしまう。
同じようなタイトル「ないしょないしょ」の方が主人公の性格が好みだった。
しかし実際には色々な人間がいるので、これはこれで、まんぞくまんぞく。
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二人の無頼浪人に暴行されかかり、腹心の家来を惨殺された堀真琴が、剣の道に入り、男装の麗人として生きていく様を描いた物語。
一人の人間として、そして心根はあくまでも女性として、細やかな女心の機微も描いた筆致は流石の一言。
平成の世で、仕事に生きつつも己の生き方に迷う女性は大いに共感できると思う。
たった一行だが、剣客商売の佐々木美冬が登場するのがちょっと嬉しい。
ぜひ、二人を出会わせてほしかった。
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家来を殺され、自らも暴行されそうになった女剣士の成長を描く長編。女剣士といえば池波作品の「剣客商売」に登場する佐々木三冬を思い出すがこの作品の主人公「堀真琴」もゾクゾクする魅力を秘めた姿に描かれている。圧巻池波正太郎。
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十六で浪人に襲われ家来を殺された真琴は、それをきっかけに女剣士となる。
道場に通い腕を上げ、ただの敵討ちのためでなく剣の道が面白くなり、養女となった叔父の苦労も知らず、自由気まま。
だが、叔父の病状が進むにつれ真琴を取り巻く状況にも変化が訪れる。
最後はまんぞく、まんぞく?
2014.6.30
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L
作家が大御所。この手の読み手語りかけ文は個人的に興ざめなのだけれど、まぁまぁすんなり。
真琴が曲がった剣の道と曲がった性格を突然180度変わっちゃうところが、なんていうか乙女というか可愛いというか、所詮おこぼだな、的な。
平太郎の良きオトコぶりもいまいち端的すぎて伝わってこなかったかな。
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ちょっとした出来事が、波を呼び、それが大波になって押し寄せてきて逃げられなくなる。さらにその余波がまた繋がりあって翻弄される。この先どうなってしまうのだろうと楽しく読ませてもらった。
直接的ではないけれど自分が原因で、父のように慕っていた人を暴漢から殺された真琴。仇を打とうと始めた剣術が、めきめきと頭角を表していき、次第に剣術そのものに魅了される。旗本の後継ぎという自分に与えられた立場も省みず、我が儘に暮らす。無礼な侍との出会い、信頼する恩人からの優しい説教のお陰で心境に変化が。
主人公がいい人ではなく、壊れている。お鳥見女房の「主要人物がみんないい人」を読んだ直後なのでそれがまた良い。
女々しい女と男らしい男たちが出てくるのも珍しいなあ。
最後の急展開で「?」となってしまったけれど、落ち着くところに落ち着いたので読後感はさっぱりしている。この作家の別の作品も読んでみたい。