紙の本
校長先生の話
2023/08/29 13:16
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投稿者:ペンギン - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本では日本の最高学府として東大の歴代総長の式辞が取り上げられているのだが、そもそも式典のときのの校長先生の話を分析の対象として考えるという発想が面白い。小学校入学以来、終業式や始業式も含めて何度となく校長先生の話を聞かされてきたけれど、早く終わってほしいという思いで頭がいっぱいだった。でもこんな風に、心の中でツッコミを入れながら聞くことができていたら、少しは楽しい時間になっていたかもしれない。
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能力と機会を与えられたものが負う責任
時間軸に沿って時代をあぶり出す
総長が国立大学の頂点に属すること、社会に出るにあたり、何を伝えたか
何が変わり普遍的なことは
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第二次世界大戦中、東京大学の総長であっても自由に発言することが許されず、戦争を賛美するような式辞しかできなかったというのが、まず驚いた。それもあってか、戦後の総長の「軍閥・超国家主義者等少数者の無知と無謀と野望」によって推進された物であったと戦争を一刀両断しているのは気持ちよかった。
矢内原総長の旧制の学生と新制の学生の対比も面白かった。どちらも、東大生という日本のトップレベルの学生たちに対し、一長一短を言っているところがとくに。また、寛容の精神にも触れており、現代にも通じる話もあったが、筆者が言うように寛容の精神が大切ではあるものの、寛容しすぎのいまの社会もどうなのかと思ってしまった。
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東大視点の日本近現代史という内容で興味深い。何と言っても転換点は南原繁と矢内原忠雄であるが、「国策大学」から「国立大学」へという時代的背景があるとは言え、キリスト教的価値観が色濃く出ているのは賛否があるだろう。
その他、印象に残ったのはフンボルトを引用した林健太郎の式辞で「学校とは出来上がった解釈済みの知識を扱うところであり、大学は学問というものを、未だ解決されない問題として扱うところである」という文言で、大学関係者はどの程度認識理解しているのだろうかということは現在でも問われ続ける課題であるように思える。
これに関連するというわけでもないのだが、本書の難点は式辞がセレクトされ且つ著者の解釈が色濃く出ていているので、それに引っ張られないように疑う姿勢が必要だということだろう。できることなら本書に留まらず、式辞の原典集を説明抜きで読んでみることが大事なのかもしれない。