紙の本
中園孔二、まさに天才
2023/12/01 15:10
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「日曜美術館」で中園孔二という画家を初めて知った、画塾に高2の夏に通い初めて東京芸大に現役合格してしまう天才、しかし25歳で事故により夭折してしまう、「ポスト人間」は圧巻、彼のことを詳しくこの本で知ることができた。
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1989年生まれ、2015年に高松の海で25歳で亡くなった画家中園孔ニさんの評伝。
ある展覧会で絵がすごく良くて、香川の展覧会も行くことにした。展覧会を見る前に読むか、見てから読むか悩ましいけど、先に読んだ。
関係者が生きているからこそ、まだ整理がついていないような生々しいエピソードを集められている一方で、随所に切り込みすぎない配慮も伺える。
夜の森に一人で出かけたり、鉄道を歩いたり、米軍基地に侵入したりという変わった行動もあるが、いわゆる「夭折の天才」というイメージ付けを避け、あくまで悩みながら自分の生き方を探っている一人の優しい青年として記録を残している。あまりに早すぎて、唐突に中断してしまって、気の毒に思える。
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横須賀美術館での展示で、作品の存在感に圧倒された体験が今も生々しく残っている。
パーソナルな部分は全く知らずに、同世代ということくらいしか知らずに読みはじめ、
その危うさと誰もが共感するような人間味と、
胸が詰まるような良い気持ちになる、中園さんと人とが過ごす時間のエピソードの数々。
止まらない、ぐいぐいと読み進めてしまう。
これはルポタージュというの?周りの人の話から鮮明に浮かび上がっていく、なんて魅了的なひと。とても面白い読書だった。
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日曜美術館で存在を知り、丸亀の美術館まで行って作品を観た。ソウルメイトをずっと探していた、というようなことだったので、孤独感を感じていたのかと思っていた。
ソウルメイトだ、と腑に落ちる人と出会えたと思ったのかわからないけど、たくさんの人とふれあい、支えられていた、短いかもしれないけど濃い人生だと感じられた。
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まるで自分も知り合いだったかのような、そしてその場にいたようなありふれたエピソードの数々は、遠い存在であった作家を身近な存在へと近寄らせ、けどやはりもういないんだという現実を突きつけ、さらに深い喪失感を感じさせる。
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子ども向けに毎日教育テレビを再生していて、その流れで美術番組をたまたま見かけた。そこで特集されていたのが中園孔二だった。香川県での展示に合わせた特集で、その独特の絵の雰囲気がとても好きになった。けれども香川まで行くのも難しいので本著を読んだところ、信じられないくらいにオモシロかった…評伝は人の歴史なのでどうしたってオモシロくなるのが大半だけども、絵と格闘する1人の青年をつぶさに見つめた他の追随を許さない圧倒的なクオリティ。藝大出身ということもあり『ブルーピリオド』とクロスオーバーする部分があるので、『ブルーピリオド』が好きな人にも刺さるはず。
中園孔二は2015年に25歳という若さで海で亡くなっており、もうこの世にはいない。彼が亡くなるまでに残した絵を中心に著者が幼少期を含め彼の軌跡をたどっていく。取材ベースで友人、家族、講師、同級生など彼にまつわる膨大な証言が登場し、そのどれもがユニークでオモシロい。絵から感じるエナジーがハンパないので破天荒なのかと思いきや、動と静が混在するなんとも言えない人物像で興味深かった。人間誰しもアンビバレンスを抱えていると思うが、彼の場合の動と静は生きるか、死ぬかの極端な境界線になっているエピソードが多い。それゆえにあれだけの絵が描けるのかもしれない。と思いきや天才型かといえば、それだけな訳ではなく、ひたすら絵を描いた先にある境地に到達していたという話も興味深かった。
前半は彼が高校でバスケを辞めて、藝大に入りメキメキと頭角をあらわしていくのだけど、このパートが一番好きだった。好きなものにひたすらのめり込んでいくき、しかも藝大に現役で受かるくらいのクオリティーを叩き出してしまうのだからたまらない。後半は藝大卒業後、産みの苦しみと闘い内省している様が手記中心に書かれている。前半のある種無双しているフェーズとの対比が興味深く、また表現されている絵との相関を見ていくのも絵に造詣が深くなくても楽しめた。
彼に対する様々なパースペクティブがたくさん出てくるのを読むと「人に歴史あり」とはよく言ったものだなと思うし、これだけ取材しているのはジャーナリズムをひしひしと感じた。一方で亡くなった後にメモを含めこれだけ明らかにされてしまうことに対して、本人がどう思うか分からない。下世話さを感じる人もいるだろう。しかし本著は間違いなく読者の人生の深い部分にタッチできる稀有な書籍だと思う。関東近郊で展示があれば次は必ず見たい。
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アーティストには色々な表現方法がある。描くことが自己表現の人、人のために描く人、中園さんは両方兼ね備えた人だったと思う。
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なぜ彼の絵画に惹かれるのか、その切実さの一端に触れることができた。周りの人たちの彼への捉え方に身体性と瑞々しさがあってすごくよかった。
*
①あなたにとって絵画とは何ですか
相槌のようなものでした。
今は、よくわかりません。
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友人の画家(というより僕にとっては画家というより友人なのだが)にすすめられて読んだ。切実さに圧倒されると同時に、出てくる固有名詞の同世代感に切なくなった。彼はPogoのディズニーの二次創作が好きだったらしい。いいですよね、アレ。
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丸亀市で開かれていた「中園孔二展」の記事から見つけた本だったと思う。25歳の若さで事故で亡くなるまでに600点もの作品を残した方。創作に行き詰まって自死ではなく、夜の海にでかけて事故にあったと言われている。高校生の時に、突然バスケットボールを辞めて芸大を目指し、現役合格。卒業作品展で注目され、卒業後の初個展で名前が知られたという。作品にはポップなものも多いが、複雑なレイヤー構成になっているものもあり、興味を惹かれることは間違いない。
中園孔二の一生を関係者からのヒアリングでまとめられた一冊。創作にストイックな面は当然としても、理解できない変わり者、とっつきにくい人、というような話は無く、多くの人が中園を支え、助けられ、今でも彼のことを大切にしている人ばかり。次に展覧会があったら、ぜひ足を運びたい。
著者はノンフィクションライターで、東京藝大卒業作品展で中園晃二(後に作品は孔二で描かれる)の絵画に、「今年は天才がいるよ」と言った藝大教授を通して、彼のことを知った。その後、彼の作品に「わからなさ」を感じ興味を持ち、関係者をあたって中園の生前の姿を知ることで、作品を理解できるかも、と取材を始めたらしい。
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死者の個人的なノートや友人からの聞き取りを読むという禁断の体験。うしろめたさを感じつつも一気に読み切ってしまった。自分が20代に書いたノートや友人の思い出が本に書かれると思うとぞっとする。
中園孔二は天才なのかもしれないが、いい意味?で「10代の終わりから20代って皆こんな感じだよな」と思いながら読んでいた。僕にとっても20代という期間は何かを表現したり、音楽や映画やアート、ソウルメイトと出合いながら、ぼんやりとしてまだ輪郭のない自分の領域の「外縁」を作っていく時間だった。その内容は一人一人違っても、皆も大体そんな感じだと思うのだけど、どうなのだろう。
坂口恭平の名前が出てきたが、中園孔二にも何とか生き残ってその生命活動をもっと見せて欲しかったという気持ちになった。彼の活動は色々な人の人生に寄り添うものになっていたはずだ。
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画家の評伝を読んだのは初めてだ。それも同時代を生きた、どころか、はるかに年下の画家であればなおさら。いっぽう筆者は同世代なので、画家を見る筆者の視線に沿うのはたやすかった。もちろん筆者の誠実な取材と筆致あってのことだが。
高橋源一郎が「小説家の仕事は、わかりようもない他者について、まるでわかったかのような納得感を錯覚させること」というような意味のことを言っていたが、評伝も同じかもしれない。読み終わったいまではこの画家のことをとても近しく感じる。