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投稿者:yukiちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
これこれ。こういうSFを待ってたんですよね。
ガッチガチのハードSF。私の大好物です。
自らの繁殖のために、気の遠くなるような時間をかけて星系を改造し、知的生命体種族(「篝火」人)をも創り出す存在「女王」。
その存在と意思を通じ合わせるDI(「知能流」が生まれるきっかけを作ったジキルとハイド)。
そして、かつて太陽系人類の外交官であった「わたし」。
この登場人物(?)のプロフィールだけを見ても、ご飯3杯はいけます。
SFを読み始めて半世紀以上が経つが、私のオールタイムベストは、アーサー・C・クラークの「銀河帝国の崩壊」である。
アルビンが送り出した宇宙船は、いつの日にか、バガボンドを創った人々の末裔と出逢えるだろうか~そんな夢のようなお話が大好きなのである。
そして、本作も、そんなSF心をときめかせてくれた。
ジェイムズ・ブリッシュ「宇宙都市」、ラリー・ニーヴン「リングワールド」、フレデリック・ポール「ゲイトウェイ」、デイヴィッド・ブリン「スタータイド・ライジング」etc.
これらのSF作品は、どれも私の本棚でいまだに輝き続けている名作ばかりだが、「オーラリーメイカー」もそのうちに入ってくるかも知れない。
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・・・これは・・・オラフ・ステープルドン「スターメイカー」???・・・
と思ってしまうぐらいスケール極大な表題作をはじめとして、異星生物を主なテーマとしたハードSFの中編3編を収めた作品集。あのハル・クレメントをもじったペンネームを冠する作者ならではの、直球王道どストライク、本寸法のハードSFです。
如何にも春暮氏らしいのは、異星生物の生態系や思考回路を冷静に丁寧に描き出すことによって、それに対峙する地球人類(ソラリアン)の問いや課題を引き出す、内省的な作風です。一言でいうと「エモい」です。
ただ、氏の前作「法治の獣」と比較すると、こちらの方がより「エモい」ですね。おそらく、設定上は前作よりもはるか未来の話で、水・炭素で構成される生物により結成される<連合>と人工知能を中心とする文明<知能流>との闘いという大きな物語を背景として、地球人類を含む全ての知性が<連合><知能流>どちらに属するか?そもそもどこから「知性」と定義するのか?という、根源的な問いをその世界観に内在するからでしょう。
ハードSF慣れしていないと、冒頭の表題作のあまりのスケール感についていけなくなるかもしれませんが、そんな時は後ろから順に読んでみてください(どこから読んでも支障ない構成になっています)。最後の作品「滅亡に至る病」が、一番エモいかも。「法治の獣」がイマイチしっくりこなかった方にも、全力でオススメします!
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デビュー作の増補版。解説によると、発表順とは異なり「法治の獣」より、本書の方が後に執筆されたらしい。なるほどと思ってしまうのは、「法治の獣」はSFの読者には愉しい本だったけれど、所謂ヒューマンインタレストをほとんど欠いた作風は少しばかりガチすぎる感じで、娯楽読み物としてはさすがにキツいように思えたから。本書ではSFとしての強度はそのままに、それを人間ドラマと絡ませる作風に変わっている。好みはあるでしょうが、読み物として完成度は本作の方がずっと高いかなと。
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ハヤカワSFコンテスト優秀賞受賞作の表題作と単行本収録の「虹色の蛇」を大幅に加筆修正したもの。加えての書下ろしの「滅亡に至る病」からなる。表題作は〔完全版〕をうたっている。
いづれも、人類が太陽系外にその目と手を伸ばしていた未来の物語。作者命名の《系外進出》(インフレーション)シリーズに属する。人類は異星の知的種族と《連合》を作る。人類から独立した人工知能は、《知能流》というネットワークを作りだす。なぜか人工知能は人類から集団で離れていくのだが、他のSFでもこういう設定があったなあ。<ハイペリオン>とか<天冥の標とか>。まあ人類に公然と敵対されても困るが。
解説の林譲治氏は、作品からペンネーム由来のハル・クレメントよりも、スタニスワフ・レムとの共通点を感じるという。確かに物語に「進化」というバックボーンを感じた。
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オーラリメイカーはいろいろな視点から話が進むのでちょっとわかりにくい。
一気に読めば良いのだろうけど。
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「宇宙を描くよりも変な生物を描きたい。それは地球では難しいので必然的に宇宙を舞台にすることになる」という作者の言葉通り、変な生物を期待して世界観に巻き込まれていくのが楽しい作品群。ただ、解説にもある通り、それだけではなく現代人類に内省を促す内容なのがにくい。『知性とはきっと、何かと?がり合わずにはいられないものなのだ。自分の種族と。他の種族と。自ら生んだ幻想と。あるいは、まだ理解さえできないものと』(オーラリメイカー)
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宇宙は厳しく希薄で寂しい。星系を自己の生存のために作り替える宇宙生物を描いた超スケールの表題作を含む珠玉の中編集。生命・生態・知性・機械・自我とは何か。創造力と知見に富んだハードSFでありながら、繊細かつ的確で、時に詩的な文章表現によって綴られる存在の営み。大幅に加筆されたとは言えこれがデビュー作。今最も読むべき作家。