資本とイデオロギー みんなのレビュー
- トマ・ピケティ(著), 山形浩生(訳), 森本正史(訳)
- 税込価格:6,930円(63pt)
- 出版社:みすず書房
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これぞピケティ
2025/01/22 22:21
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投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
『21世紀の資本』の続編であり、これぞピケティという一冊でもある。その厚さもあってとっつきやすいとはいいかねるので、さっとエッセンスをつかみたいという人はピケティの別の本にあたったほうがいいだろう。とはいえ、やはりピケティに関心があるならしっかり読んでおきたい。
2024/04/22 08:57
投稿元:
「資本とイデオロギー」という題名だが、内容は、格差というものは何か、それが悪化している現在はどんな世界なのか、それを克服出来るのか、を歴史と膨大な統計を使って分析する壮大なもの。
著者の主張ポイント(最も危機感を持つ未来予測)は、バラモン左翼と商業右翼の権力(ブルジョアブロック)の思い上がり(高所得者有利の政策・高教育インテリ富裕層の過度な称賛)が、社会の混乱に憤激する大衆の暴走、つまり暴動を伴う移民排斥や自国中心主義の台頭を許すのではないか、というもの。
今日の民主主義の混乱は、市民的、政治的な領域において、経済学が他の社会学から独り歩きしすぎたのが原因。経済学者は、「持ち合わせてもいない技能や分析能力の独占」をたびたび主張したがる930
2013年にフランス社会党政権は同性婚を合法化した。これには実践カトリック(月に一回以上教会に通うカトリック)とイスラム教徒投票者双方が非難した。しかしそれでもイスラム教徒投票者の9割以上は左派政党に投票した。これは、同性婚の問題など些末で、危機的なのは自分たちを国外追放することを堂々と政策に掲げる右派(国民戦線ら)の台頭だから。左派政党は右派のこの政策に真っ向から反対する718
フランスの社会党・共産党は戦前から前後にかけて資産・所得課税による国営事業や福祉などに力を入れた。そして賃金労働者を最も重要な支持者としたため、彼らには様々な控除を用意した(そのため彼らは実質、無増税であった)。しかし低所得の自営業者(農民・商人・職人)には「彼らは所得を過小申告する不正」をするので、控除を認めないか、複雑な確定申告を要請した。これが農民・商人・職人の左派不審になった708
2000年くらいまでは教育水準の低い者が左派に投票して、高い者が右派に投票していた。これが21世紀になると教育水準の低い者は右派に投票し、高い者は左派に投票するようになる。この傾向は年々大きくなっていく。それはイギリス、フランス、アメリカどこも同じ傾向。左派政党は労働者の党から高学歴の人々の党へと変身した。左派を支持する高学歴を「バラモン左翼」と呼ぶ695
ロシア帝国は末期に多くの債権を発行した。ロシアフランス同盟や、ロシアの賄賂の影響で「ロシア債権は安全で堅実」キャンペーンがマスコミで展開された。これにフランスをはじめ欧米諸国の富裕層が反応して大量の債権を買った。しかしロシア革命が起こるとソヴィエト政府は債権の全面的償還拒否をした。米英仏はソヴィエトに兵を送ったが無駄に終わった。420
日本の王政復古による急速な社会ー経済的近代化の実現は、前代未聞376
「アファーマティブアクション」はアメリカで生まれたのではなく、独立後のインドで始まった345
ヨーロッパがインドを「発見」したのは、ポルトガル王国がイスラム教国を挟み撃ちにできる国、はるか遠方にある未知のキリスト教国「プレスタージョンの王国」を探すことから始まった。そこでバスコ・ダ・ガマが探険にのりだし、喜望峰を発見してアフリカ東海岸沿いを訪ねたが、どこにもキリスト教国は無かった。そこで更に船を進めインドに到着して、ケララ州のヒンドゥー寺院��発見し、これを「キリスト教の神殿」と誤解して、リスボンに帰り「ありました!」と報告したから323
インドのカーストでは道徳と規律が重要視される。菜食主義やアルコール禁止など。そのなかで特に性欲・愛欲には厳しい。そのため未亡人の再婚がタブーであり、思春期前の少女の結婚が重要視される313
植民されたアメリカ大陸が20世紀を迎えると、南北で違いが起きた。南(ラテンアメリカ)では人口の大半がネイティブ・奴隷・白人の混血となった。対する北は、人口増加したがほとんど混血が進まなかった253
ハイチは1805年に歴史上初の黒人奴隷反乱と、独立宣言を行った。やがて、1824年独立は承認されるが、その条件に、フランスのハイチ奴隷主に「奴隷を手放した損失補てん」が含まれていた。ハイチ政府はこれを完済するのに130年かかった。218
歴史を決定論的に読むよりも、過去の出来事を思想の十字路や分岐の可能性として見るほうが興味深い122
2024/05/12 06:55
投稿元:
『21世紀の資本』に続くトマ・ピケティの超大作。欧米の他に中国、インド、日本、南アフリカなどについても経済の格差に主眼をおいて歴史的に分析している。時代の変遷に従って、国民の資本格差がどうなっているのかを比較することによって普遍性を導き出し、解決策を述べている。分析は極めて精緻であり勉強になる。ピケティの主張はマルクス主義に似ており、純粋な資本主義、自由主義、グローバル主義は格差を広げるので、平等を追求する社会主義の方向に舵を切るべきというのが結論となっている。自由と資本主義は強力であり、ピケティの主張では競争力を低下させ国力を削ぐだけになるように思われる。ピケティのいう「参加型社会主義」の地域ができても経済活動に向けたインセンティブに欠けるため、新自由主義には敵わないように思え、同意し難い。
「能力主義と起業家精神はしばしば、今日の経済における勝者たちがとんでもない格差をろくに検討もせずに正当化し、敗者たちが才能や美徳や勤勉さに欠けていたのだと言って責任を負わせるための便利な手段となっている」p2
「新生児の平均寿命は1820年には26年ほどだったのが、2020年には72年になった。19世紀初頭には、新生児の2割ほどは1年以内に死んだが、それが現在は1%だ」p18
「米国の有権者に占める民主党の得票率は、教育水準が低く、比較的所得が低いか、資産がないも同然な有権者で高かった。これに対して共和党支持の有権者は、高等教育者の間で比率が高く、所得も資産も多い人々だった」p39
「(1950〜70年代)既存の社会民主主義の政党や連合は格差を低減して富を再分配しようという本気の野心をだんだん捨てていった。それどころか彼ら自身が租税競争や財と資本の自由な移動を促進し、新たな共通税制や共通の社会ルールについて考えなかった。こうして彼らは最も恵まれない有権者の支持を投げ捨て、もっと高い教育を受けた人々、つまりグローバル化の主要な勝者たちにますます専念するようになったのだ」p42
「フランス三層社会:聖職者(知識人階層)、貴族(軍事階級)、平民」p71
「所有権格差という重要な問題について、フランス革命が失敗したのは明らかだ。エリートの刷新は行われたが、実際には1789年から1914年にかけて世襲財産はきわめて集中したままだった」p116
「再分配はパンドラの箱であり、決して開いてはいけないのだ、とフランス革命ではこの種の議論に何度もお目にかかる」p126
「1789年の革命以来、フランスは自分たちが「自由、平等、博愛」の国だと言いたがる」p152
「格差は文明の必要条件」p175
「『バーク貴族名鑑』1826年に刊行されたイギリス貴族の人名録。血筋、財産、結婚、所領、偉業が記され、今だに発行が続いている」p176
「スウェーデンとその社会民主主義派は、はるか悠久の昔から平等主義者で、その平等性はバイキングのもつ古来の熱意から来ているのに対して、カースト制度を抱えていたインドは永遠に不平等であり、それはアーリア人以来の神話もどきの理由から来ている、と考えた」p187
「19世紀にはヨーロッパのあらゆる所有権社会で、富の集中が極端に高まった。格差の課題は19世紀末から20世紀前半にかけて、まずはその対抗言説を生み出し、そして社会民主主義および共産主義という対抗レジームの台頭をもたらした。続いて1914年〜1945年には自爆フェーズがやってきた。自国内での社会的緊張と、外国での植民地競争が、ナショナリズム台頭と戦争への行進の原因となり、それが結局は19世紀の財産主義秩序を一掃してしまったのだ」p198
「奴隷制の廃止:イギリス1833年、フランス1848年、米国1865年、ブラジル1888年」p205
「フランスの債権者は、ハイチの国民所得の平均で5%を1849年〜1915年にわたり吸い上げ続けたという。それでも、1825年の合意で含意された金額より少なかったので、フランスの銀行はしょっちゅう、ハイチはダメな借り手だとグチることになった(融資は米国に譲り渡され、支払いは1950年代初頭まで続く)」p220
「米国では1960年代まで人種差別が合法的に残った」p228
「奴隷制が廃止されたとき、奴隷所有者は賠償を受けたが奴隷自身は賠償されなかった。ハイチでは、奴隷解放の代償として重い対価を負い、その支払いは20世紀半ばまで続いた」p251
「植民地は主に植民者と本国の便益のために構築されており、地元民の便益のための社会教育的な投資は、きわめて限られていたことが豊富な証拠からわかっている」p268
「植民地から得た金銭的利潤が1760年〜1790年(第1植民地時代)と1890年〜1914年(第2植民地時代)でだいたい同じ規模だったというのは驚くべきことだ。第1植民地時代には、収奪は残虐かつ徹底的で、小さな領域に集中していた。奴隷が島に輸送され、砂糖と綿花生産で働かされ、生産された富からすさまじい利潤が収奪された。収奪された富は最大限だったが、反乱のリスクも深刻だったので、この仕組みを世界規模に拡大するのは困難だった。第2植民地時代には、収用収奪のやり方はもっと細やかで高度なものとなった。投資家は多くの国で株式や債権を保有し、そこから各地域の産出の一部を引き出した。これは世界のずっと多くの部分、さらに全世界にも適用できた。最終的に、第2システムの規模は第1システムとは比べものにならないほど大きくなり、1914〜1945年の圧倒的な政治ショックで中断されなければ、さらに大きくなった可能性もある。第1植民地時代は反乱で、第2は戦争と革命で終わった」p277
「資産は公平な見返りを稼ぐべきものだ。そうでなければ、誰が富を蓄積する努力なんてするだろうか。そして誰が我慢強く消費を控えたりするだろうか」p278
「国家間の論理的な矛盾の解決はもっぱら力と武力でなされる」p280
「貿易黒字:国が輸出部門での雇用を作り出しつつ、他国に対する金融債権を蓄積する。これは将来の財務収入を確保するもので、追加資産を獲得するのに使えるだけでなく、他の国で生産された財やサービスも購入できる」p282
「ヨーロッパはインドが何世紀も経験してきた民族宗教的対立の一部を経験し始めたばかりで、格差をめぐってインドがたどった道筋は、遠くの外国勢力という外部世界との遭遇に大きく左右された。今度はその他の世界がインドの体験から大いに学ぶ番だ」p302
「日本は、王政復古によって急速な社会・経済的近代化が実現するという前代未聞の事例を提供してくれる」p376
「ヨーロッパのすべての国で、19世紀全般から1914年までは財産の集中が非常に高く、特にこの期間の最後の第一次世界大戦直前の10年間にはそれが加速度的に増大した」p414
「労働に関する格差は、20世紀を通じて大きく低下した」p415
「両大戦による家屋、建物、工場、その他の資産の物理的破壊はかなり大規模だったが、資産喪失の説明としてはごく一部でしかない」p420
「(資産喪失の2大原因)一つは収容と国有化、もっと一般的には民間財産の価値と資産所有者の社会的影響力引き下げを明確に狙った政策(家賃統制や企業における労働者代表との権限共有)が含まれる。もう一つは、民間貯蓄の大半が戦費調達で政府に貸されて債券となり、その価値の大半がインフレなどの要因で失われたからだ」p420
「第一次世界大戦前夜まで好調で堅固に見えた所有権社会が、1914年〜1945年に崩壊した。崩壊は徹底的で、名目上は資本主義を掲げる国々でも、国有化、公教育、保険と年金改革、最高所得と最大財産に対する累進課税を通じて、1950年〜1980年に実際には社会民主主義に転向した。しかしその成功にもかかわらず、1980年代になるとこれらの社会民主主義社会は至るところで格差拡大に対処できなかった」p465
「戦争は何も持たない者よりも多く持つ者に大きな被害を与えた」p466
「格差縮小の重要な原因は、社会をそれ以前に比べ平等にし、さらにもっと反映させた一連の税制と社会政策にあった。これらすべての社会は「社会民主主義」と呼ぶことができる」p466
「ゲルマン北欧諸国(ドイツ、オーストリア、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー)の最大企業では、労働者代表が企業株式を部分所有しているかどうかにかかわらず、取締役会の1/3から1/2の席を占めた。先鞭をつけたドイツでは、1950年代初頭からこの制度が実施された」p478
「イギリスは第一次産業革命によるリードのおかげで、19世紀の大半を通じて世界最高の生産性を謳歌してきたものの、第一次世界大戦前の数十年間を通じて加速度的に形勢不利に陥り、20世紀最初の10年では、明らかに米国の後塵を拝していた(原因は、米国の労働者訓練の先進性)」p492
「(1980年代以降)社会民主主義はその成功にもかかわらず、格差増大に適切に対処できなかった。それは所有権、教育、課税、そして何よりも国民国家の超克とグローバル経済規制への知的、政治的取り組みの刷新、深化に失敗したからだ」p541
「20世紀の成功と失敗の知識を使えば、資本主義とソ連型共産主義の両方を超えられそうな新しい発想、たとえば参加型社会主義と一時的共有権などの概要を導き出せる。具体的には、累進資産税、ユニバーサル資本支給、株主と従業員の権限共有で過度の富の集中を抑えつつ、ある程度の規模の民間企業を許容する社会が考えられる」p554
「富の分散の欠如は21世紀の中心的課題で、それは貧困国や発展途上国のみならず富裕国でも中層、下層階級の経済システムに対する信頼を弱めてしまう」p635
「戦後期で使われた各種手法で最も問題が多かった側面はまちがいなくインフレに関係している。インフレは確かに債務を急速に減らしたが、代償として大衆階級の貯蓄を侵食した」p825
「私は今日の資本主義システムを乗り越えて、21世紀の新しい参加型社会主義の概略を描けると確信している。これは、社会所有、教育そして知識と権限の共有に基づく、普遍的、平等主義的な展望だ」p872
「(ピケティの目指す)公正な社会は、その全メンバーにできるかぎり多種多様な基本財へのアクセスを可能にする。基本財とは教育、保険、投票権、もっと一般的には、さまざまな社会的、文化的、経済的、市民的、政治的生活へのできるかぎり完全な参加だ。公正な社会は社会ー経済関係、財産関係、所得と資産の分配を調整し、その目的は、最も恵まれないメンバーが、できるかぎり高い生存条件を享受することだ。公正な社会は完全な均一性や平等性を前提にしない。所得と資産の格差があっても、それが願望や生活選択のちがいの結果であり、恵まれない人々の生活条件を改善し、機会を拡大するのであれば、公正とみなされる」p873
「私は参加と分散化という目標を強調し、20世紀にソ連などの共産主義国で試されたハイパー中央集権型の国家社会主義と明確に区分するため「参加型社会主義」という用語を使いたい」p874
「年次資産税の方が相続税より大きな役割を果たすべきなのは当然に思える。ただしそれは、年次資産税が累進的である場合に限られる」p882
「累進資産税はこれまでより資産の循環を高め、財産のもっと広い分散を確保するために不可欠なツールだ」p882
「資本主義と私有財産を超克し、参加型社会主義と社会連邦主義に基づく公正な社会を確立することは可能だと、私は確信している」p926
2024/08/02 14:33
投稿元:
931ページの大著。「21世紀の資本」の続編。
当然熟読は不可能。
しかし、全頁間違いなく眺めた。
ピケティの思考プロセスを追うことだけはできたと自負している。
テーマは「格差」。
私の問題意識でもある。
ピケティはこの問題を、古今東西の格差の歴史を追いかけながら、分析を深める。
格差を正当化するのは「格差レジーム」、格差はイデオロギーだと看破する。
1950年から80年はそれ以前と比べ、格差が低い水準だった。
それが今日拡大するきっかけになったのはレーガノミクス。
このあたりは自分もリアルタイムに覚えている。
累進課税こそがやる気を失わせ、経済発展を削いでいる。
課税を低くすれば、能力のある人はとことん努力し、
それがひいては国の成長につながる、という話。
そういう側面はあるだろう。
アイデアを駆使して起業し、新たな富を生み出せば、
それは万民のためになる。
しかし、しかしだ。
累進課税の税率を引き下げたことによって起きたのは、
経営者の報酬アップ。
サラリーマン社長が受験勉強と企業内競争に勝ち抜いてトップになり、
株主にいい顔をするため、つまり会社利益を出すために、
投資でなくひたすらコストカットをする。
名目上の利益が増え、株主には配当、自分には高報酬。
これは何も生まない。
むしろマイナスだけ。
累進課税が緩んだからこうなる。
結果報酬の差が次世代の教育格差につながり、再生産される。
偏差値エリート+社内政治のうまい人が高報酬を得るのはおかしい。
繰り返すが起業家はいい収入を取ればいい。リスクを負っているのだから。
文科省の古い教育制度と、顧客より上司を見て渡り歩いてきた人間が
高報酬を得るのはいかん、と言っているのだ。
ピケティは累進税率を世界的に元に戻せ、という。
私も80年当時は税率ダウンに賛成していたが、
現在のこの状況を見れば、ピケティに賛成する。
・・・本当はもっともっといろんなことが書いてあったが、
自分の感想も交え、ここまでとさせていただく。
序文と謝辞
はじめに
イデオロギーとは何か/境界と財産/イデオロギーを本気で考える/集合的な学習と社会科学/本書で使った情報源――各種の格差とイデオロギー/人間の進歩、格差の復活、世界の多様性/格差の復活――最初の方向性/エレファントカーブ――グローバル化をめぐる冷静な議論/極端な格差の正当化について/歴史から学ぶ――20世紀の教訓/イデオロギーの凍結と新しい教育格差/複数エリートの復活と平等主義連合形成の困難/所有、教育、移民の公正を再考する/世界の多様性――「長期」の不可欠性/自然言語と数学言語の相補性について/本書の構成
第I部 歴史上の格差レジーム
第1章 三層社会──三機能的格差
三機能の論理――聖職者、貴族、平民/三層社会と現代国家の形成/三層社会の正統性低下――革命と植民地化のはざまで/三層社会の現代性/三層社会における格差の正当化/分断されたエリート、統合された平民?/三層社会と国家形成――ヨーロッパ、インド、中国、イラン
第2章 ヨーロッパの身分社会──権力と財産
身分の社会――権力バランスの一形態?/三機能身分、自由労働の促進とヨーロッパの運命/聖職者と貴族の規模とリソース――フランスの場合/アンシャン・レジーム末期に減少する貴族と聖職者/貴族の減少はどう説明できる?/貴族――革命と王政復古の間の財産階級/財産所有組織としてのキリスト教教会/豊かな教会vs豊かな世帯と相続慣行/教会財産――経済法と資本主義の起源?
第3章 所有権社会の発明
1789年の「大区分」と現代財産の発明/労働賦役、強制使用義務、地代――封建主義から財産主義へ/ロッドとアンシャン・レジーム下での重層的な永続権/規模を考慮せずに、財産を新しい基盤に乗せることは可能か?/知識、権力、解放――三層社会の転換/革命、中央集権国家、公正についての学習/財産主義イデオロギー――解放と神聖化とのはざまで/所有権社会における格差の正当化
第4章 所有権社会──フランスの場合
フランス革命と所有権社会の発達/格差を減らす――「世襲中流階級」の発明/格差の首都パリ――文学から相続文書まで/ポートフォリオ分散化と財産の形態/ベル・エポック(1880-1914年)――財産主義的で不平等的な現代性/1880-1914年のフランス税制――静謐な蓄積/「四人の老婦人」税、資本課税と所得税/普通選挙、新たな知識、戦争/革命、フランス、平等性/資本主義――工業化時代の財産主義
第5章 所有権社会──ヨーロッパの道筋
聖職者と貴族の規模――ヨーロッパの多様性/戦士貴族、所有者貴族/イギリスと三層=財産主義の漸進主義/イギリス貴族は財産貴族/古典小説での所有権社会/バークの貴族名鑑――准男爵から石油億万長者まで/貴族院、財産主義秩序の守護者/累進課税をめぐる戦いと貴族院の凋落/アイルランド――三機能、財産主義、植民地主義イデオロギーのはざまで/スウェーデンと四身分社会の憲法化/一人百票――スウェーデンにおけるハイパー制限選挙民主主義(1865-1911年)/株式会社と制限選挙――お金の力の限界とは?/19世紀所有権社会の不平等化/所有権社会の三つの課題
第II部 奴隷社会、植民地社会
第6章 奴隷社会──極端な格差
奴隷のいる社会――奴隷社会/イギリス――奴隷廃止の補償、1833-1843年/奴隷所有者補償の財産主義的な正当化/フランス――1794-1848年の二重の廃止/ハイチ――奴隷財産の公的債務化/1848年奴隷制廃止――補償、規律工房、「志願兵」/強制労働、財産主義神聖化、賠償金問題/米国――戦争による奴隷制廃止、1860-1865年/米国における段階的な奴隷制廃止や補償の不可能性について/奴隷制の財産主義的正当化と社会的正当化/「再建」と米国の社会自国主義の誕生/ブラジル――帝国と人種混合による廃止、1888年/ロシア――弱い国家での農奴制廃止、1861年
第7章 植民地社会──多様性と支配
ヨーロッパ植民地主義の二つの時代/入植者植民地、入植なしの植民地/奴隷社会と植民地社会――極端な格差/財産と所得の最大限の格差/植民者のための植民地化――植民地予算/歴史的に見た��隷と植民地収奪/植民地収奪の残虐性から「穏やかな商業」の幻想へ/他の国に所有される困難/宗主国の合法性、植民地の合法性/フランス植民地における合法的な強制労働、1912-1946年/晩期植民地主義――南アフリカのアパルトヘイト、1948-1994年/植民地主義の終焉と民主連邦主義の問題/フランス=アフリカ連邦からマリ連邦へ
第8章 三層社会と植民地主義──インドの場合
インドの発明――手始めに/インドと四層身分――バラモン、クシャトリヤ、ヴァイシャ、シュードラ/バラモン的秩序、菜食主義、父権主義/ジャーティの多文化的な豊富さと、ヴァルナの四層身分/ヒンドゥー封建主義、国家建設、カーストの変容/インドにおける国家構築の特異性/インドの発見とイベリア半島のイスラム包囲/武力による支配、知識による支配/インドにおけるイギリスの植民地国勢調査、1871-1941年/インドとヨーロッパの三機能社会における社会集団を数える/識字地主、行政官、社会統制/植民地インドとカーストの再硬直化/独立インド、過去からの地位格差に直面/インドにおけるアファーマティブ・アクションの成功と限界/財産の格差と地位の格差/社会枠およびジェンダー枠とその変容の条件
第9章 三層社会と植民地主義──ユーラシアの道筋
植民地主義、軍事支配、西洋の繁栄/国家が夜警もできないほど小さかった頃――近代国家の二つの躍進/国家間の競争と共同のイノベーション――ヨーロッパの発明/スミス的中国とヨーロッパのアヘン商人/保護主義と重商主義――「大分岐」の起源/日本――三層社会の近代化加速/被差別部落民、不可触民、ロマの社会統合/三機能社会と中国国家の構築/中国帝国試験――士大夫、地主、戦士/中国の反乱と未完の分岐/立憲聖職者共和国の事例――イラン/シーア派聖職者の反植民地主義正当性/平等主義的なシーア派共和国、スンナ派石油王朝――言説と現実/イスラム諸国の平等、格差、ザカート/財産主義と植民地主義――格差のグローバル化
第III部 20世紀の大転換
第10章 所有権社会の危機
20世紀前半の「大転換」を再考する/格差と私有財産の崩壊(1914-1945年)/ヨーロッパ財産主義から米国新財産主義へ/所有権社会の終焉――賃金格差の安定性/私有財産減少の分析(1914-1950年)/収用、国有化措置、「混合経済」/民間貯蓄、公的債務、インフレ/過去の清算、正義の確立――私有財産に対する特別税/富の減少から永続的分散へ――累進税の役割/現代累進税制の英米起源について/財政国家と社会国家の隆盛/課税の多様性と税累進性の役割について/所有権社会、累進課税、第一次世界大戦/財産主義崩壊における社会イデオロギー闘争の役割/社会に組み込まれた市場の必要性について/帝国競争とヨーロッパ均衡の崩壊/異常な戦争賠償から新たな軍事秩序へ/所有権社会の崩壊と国民国家の超克/民主社会主義とオルド自由主義の間にある連邦連合
第11章 社会民主主義社会──不完全な平等
ヨーロッパ社会民主主義の多様性について/米国のニューディール政策――安売り社会民主主義/社会民主主義社会の限界について/公的所有、社会所有、一時所有/権限共有、社会所有の制度化――未完の歴史/ドイツ共同経営の成功と限���/ゲルマン北欧型共同経営の普及の遅れについて/社会党、労働党、社会民主党――交差する道筋/ヨーロッパ共同経営指令から「2x + y」提案へ/共同経営を超えて――社会所有と権限共有の再考/協同組合と自己管理――資本、権力、議決権/社会民主主義、教育、米国優位の終わり/米国――初等、中等教育の初期先進国/1980年以降取り残された米国下層階級/法、税制、教育制度の一次格差への影響について/高等教育化と教育、社会の新たな階層化/お金で大学に入れるか?/欧米での教育アクセスの格差/近代的成長の源泉としての教育の平等/社会民主主義と公正な課税――実現しなかった機会/資本主義と国民国家の超克に直面する社会民主主義/資本フローのグローバル化と自由化の再考/米国、ヨーロッパ、資産税――議論は続く/累進資産税、あるいは恒久的な農地改革/18世紀からの惰性で続く資産税/資産税についての集団学習と将来的な見通し/交差する軌跡と財産税の再発見
第12章 共産主義社会とポスト共産主義社会
財産理論なき権力掌握は可能か?/「マルクス・レーニン主義」政権の存続について/共産主義と反植民地主義による解放の浮沈/共産主義と正当な差の問題/分権的な社会組織における私有財産の役割について/ポスト共産主義ロシア――オリガルヒ、泥棒政治への転換/オフショア資産が総適法金融資産を超えるとき/「ショック療法」とロシア泥棒政治の起源/独裁混合経済としての中国/負の公有財産、私有財産の全能性/負債への逃避、課税公正性の放棄/中国の格差容認の限界について/中国の格差の不透明性/中国――共産主義と金権政治のはざまで/文化大革命が格差認識に与えた影響/中国モデルと議会制民主主義の超越について/選挙制民主主義、境界、財産/一党制国家と党管理民主主義の改革可能性/東ヨーロッパ――ポスト共産主義への幻滅の実験室/EUにおける市場原理の「自然化」について/ポスト共産主義と社会自国主義の罠
第13章 ハイパー資本主義──現代性と懐古主義のはざまで
21世紀の格差の形/中東――グローバル格差の頂点/格差測定と民主主義的透明性の問題/税務透明性の欠如について/社会的公正、気候的公正/国家間と個人間の炭素排出の格差について/格差の測定と政府の責任放棄について/不透明性の克服――公的金融台帳/情報時代における公式統計の劣化について/新財産主義、富の不透明、税制競争/ハイパー集中化した富の持続について/21世紀における家父長制の持続について/貧困国の貧窮と貿易自由化について/貨幣創造は私たちを救ってくれるのか?/新財産主義と新金融体制/新財産主義とオルド自由主義――ハイエクからEUまで/能力主義と新財産主義の創案/慈善幻想から億万長者の神聖化へ
第IV部 政治対立の次元再考
第14章 境界と財産──平等性の構築
左派と右派の脱構築――社会政治対立の次元/1945年以来の左派得票――労働者党から高学歴党へ/有権者的亀裂と政治‐イデオロギー的亀裂の世界的研究に向けて/民族‐人種的亀裂と社会自国主義の研究を国際化する/政党の刷新、投票率の低下/大衆階級の投票率低下について/教育的亀裂の逆転について――高学歴党の発明/教育的亀裂の逆転の堅牢性について/教育的亀裂の逆転、職業的亀裂の再定義/左派政党と大衆階級――決別の構造/「バラモン左翼」と、社会と教育の公正の問題/教育の公正に関する新しい規範の必要性について/左派と右派から見た財産について/左派と自営業者――不信の世紀年代記/「バラモン左翼」と「商人右翼」の強みと弱み/フランスにおけるアイデンティティと宗教的な亀裂の復活/自国主義の台頭と大いなる政治‐宗教的な混乱/宗教的な亀裂、出自をめぐる亀裂――差別の罠/境界と財産――四区分された有権者/有権者の四区分の不安定さについて/黄色いベスト、炭素、富裕税――フランスにおける社会自国主義の罠/ヨーロッパと大衆階級――決別の根拠/ヨーロッパが新財産主義の道具にされている点について
第15章 バラモン左翼──欧米での新たな亀裂
米国政党制の変容/民主党はグローバル化勝者の政党になるか?/米国における人種対立の政治利用について/「福祉の女王」と「人種枠」――共和党の南部戦略/有権者的亀裂とアイデンティティ対立――大西洋の両側での見方/アイデンティティの流動性と固定分類の危険性/民主党、「バラモン左翼」、人種問題/失われた機会と不完全な分岐点――レーガンからサンダースへ/イギリス政党制の変容/イギリスにおける「バラモン左翼」と「商人右翼」について/イギリスでのポスト植民地アイデンティティ的亀裂の台頭/イギリスにおける移民の政治問題化、パウエルからUKIPまで/EUと大衆階級の深まる溝
第16章 社会自国主義──ポスト植民地的アイデンティティの罠
労働者の政党から高学歴者の政党へ――類似性と変種/戦後期の左派‐右派政党制崩壊を再考する/ポスト共産主義東欧における社会自国主義の台頭/社会自国主義の台頭――イタリアの場合/社会自国主義の罠とヨーロッパへの幻滅/民主党――成功した社会自国主義?/国際競争と市場自国主義イデオロギー/市場自国主義イデオロギーとその拡散/ヨーロッパにおける社会連邦主義の可能性について/国家を超える民主的空間の構築について/欧州議会の主権を各国議会の主権から構築する/信頼の再構築と共通の公正規範の促進/ヨーロッパの永続的な公的債務危機を終わらせる/債務の歴史をたどり、新たな解決策を探す/ヨーロッパの社会連邦主義的変革に向けた政治的条件/分離主義の罠とカタルーニャシンドローム/イデオロギー的不協和、税制ダンピング、小国シンドローム/社会地域主義の罠と超国民国家の構築/インドの政党システムと亀裂の形成/インドの政治的亀裂――階級、カースト、宗教/インドにおける階級主義的亀裂の台頭の難しさ/大衆階級の共通の運命についての認識/階級的亀裂、アイデンティティ的亀裂――インドにおける社会自国主義の罠/インドにおける階級的亀裂と再分配の未来――交差する影響力/ブラジルにおける格差の不十分な政治問題化/アイデンティティ的亀裂、階級的亀裂――境界と財産/ポピュリズム論争の袋小路と落とし穴
第17章 世紀の参加型社会主義の要素
参加と熟議としての公正/資本主義と私有財産の超克/企業内での権限共有――実験的な戦略/累進資産税と資本循環/資産の分散とユニバーサル資本支給/累進課税の三面構造――資産、相続、所得/累進課税への���帰と永続的土地改革/社会的、一時的所有権に向けて/一つの国における富の透明性/憲法に公正な税制を記述する/ベーシックインカムと公正賃金――累進所得税の役割/炭素排出の累進課税について/教育における公正規範の構築について/教育の偽善から脱却し、透明性を促進する/公正な民主主義――民主的平等性バウチャー/平等主義的で参加型の民主主義を目指して/公正な国境――社会連邦主義をグローバルな規模で考え直す/超国家的な公正に向けて/協力と引きこもりの狭間で――超国家的格差レジームの発達
結論
イデオロギーの闘争、そして公正の探究としての歴史/視線の脱西洋化の限界について/社会科学の市民的、政治的役割について
凡例
図表一覧/原注/索引
2025/04/17 11:16
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序文と謝辞
はじめに
第Ⅰ部 歴史上の格差レジーム
第1章 三層社会
第2章 ヨーロッパの身分社会
第3章 所有権社会の発明
第4章 所有権社会ーフランスの場合
第5章 所有権社会ーヨーロッパの道筋
第Ⅱ部 奴隷社会、植民地社会
第6章 奴隷社会―極端な格差
第7章 植民地社会―多様性と社会
第8章 三層社会と植民地主義ーインドの場合
第9章 三層社会と植民地主義ーユーラシアの道筋
第Ⅲ部 20世紀の大転換
第10章 所有権社会の危機
第11章 社会主義社会―不完全な平等
第12章 共産主義社会とポスト共産主義社会
第13章 ハイパー資本主義―現代性と懐古主義のはざまで
第14章 境界と財産―平等性の構築
第15章 バラモン左翼―欧米での新たな亀裂
第16章 社会自国主義―ポスト植民地的アイデンティティの罠
第17章 21世紀の参加型社会主義の要素
結論
凡例
索引
原注
図表一覧
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