紙の本
本を出版する人と本を読む人と
2024/03/06 16:02
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投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
1991年に刊行された、まさにミステリアスな戦後の出版事情を探索する物語。人探しという謎から、戦前戦後にわたる出版事業と国による統治とがぶつかり合う状況が生み出した悲劇が、さまざまな人間の人生を歪なものに変えていったのではないだろうか。古書そのものに関心はないが、本を出版するということが心からの喜びである人がいて、本を読むことが好きな人がいる平穏な時間が続くといいと思った。
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シリーズ4作目にして唯一の長編。主人公の須藤はあくまで古本の探偵であり人探しは専門外だが、敗戦後に地下出版を行い検挙され姿を消した謎の人物の生死を確認するよう依頼される。報酬に目がくらみ捜索を続けるうちに、その人物に徐々に魅力を感じるようになり⋯。猥褻な書物をなぜ危険をおかしてまで出版し続けたのか。戦時中から戦後にかけての人々の壮絶な生き様や愛書家たちの思いが交錯し、その思いが噴き上がるように猥本が世の中へと流通していったのだな、と本作を読み終わった今は感じます。
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このほんとであっ?たのめ?!めなこ!?こめいががく、かないりはつ、がんをなるかくりつりはこ?!?こけや、ここ、け、りゆうてや、こだまや、かねこ、みずほ、ほをにつがらないんは、がんに、なりたからわなむるで、がんになりえる、りえきや、たぬき、おひやらしよりいの、すこそきなあのくせに、なにたちぐせつかう、こて、たまどんをあげほそかわがらしやはいより、かばをかばさえゆりものをつかうがまあぶあのみのぐそひっかけてもよこやりいちかわよりほそいせしやしやわりよりちやわんめつきなおる?じやない、やまぬばいおん、くれえよくら
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復刻版<古本屋探偵の事件簿>シリーズ、分冊版の下巻。今作がシリーズ唯一の長編らしい。冒頭の案内文に『ロス・マクドナルドを彷彿とさせる傑作長編』とある通り、探偵役の須藤が関係者に聞き込みを繰り返し、徐々に真相へと肉薄する展開は正にハードボイルド黎明期の探偵小説を彷彿とする仕上がり。戦前から戦後にかけての【禁書本】を巡る時代背景を軸とした複雑な人間関係も本家以上に錯綜している。とある登場人物の独白で締め括る最終章には少々肩透かしを食らうものの、当時の出版業界を取り巻く過酷な状況を窺い知れる興味深い読書だった。