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東欧の小国エストニアの学校で黎明期のプログラミングを学ぶ少年少女。
全体主義国家ソ連の崩壊に翻弄されながら、真摯に力強く運命を切り開いてゆく。
長年のわだかまりが解ける大団円に、彼らの幸福を願わずにはいられない。
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歴史に翻弄されたラウリと友情の物語。
文が読みやすく、すらすらと物語に入っていけて良かった。
ラウリのプログラムへの情熱、ラウリとイヴァン、カーテャの友情、そして、それらがバルト三国の独立にまつわる動きで歪められていく苦しみ、、彼らの心情がじわりじわりと伝わってきて心動かされた。
☆3.8
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北欧の歴史には詳しくなかったので、最初は不安でしたが、知らなくても感覚でついていけました。話に緩急があまりなくて、核もよくわからず疑問が多いまま、でもラウリという人物にはどんどん興味が湧いていってスルスル読めてしまいました。終盤で点と点が繋がる気持ちよさは格別でした。本でしか味わえない気持ちいいエンターテイメントでした。
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直木賞候補作なので読んだ。
エストニアやバルト三国について全然知らなかったけれど、エストニアは1991年にソ連から独立し、その少し前から独立運動が盛んになり、エストニア人とロシア人との民族問題があることなどがこの物語を読んでいてわかった。
私は1988年生まれなので、私が生まれている頃に独立運動などが起きていて、そんな昔ではない頃に歴史に翻弄された人達がいることに驚きだった。
ラウリ(エストニア人)とイヴァン(ロシア人)が親友で、民族を超えた友情が良かった。
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あたかも史実であるかのように一人の人物に絞って綴られた偽史小説で、冒頭からの語りが誰なのか?読み進めて、カーシャの部屋の扉を開ける瞬間にビビッときてしまった。果たして正解の人物が正体を明かし、物語は一気に盛り上がる...はずだったんだろうけど、プロローグにも書かれたように、主人公は何をしたわけでもなく、そっとそこにいた数字の大好きな少年だった、的な結末で、これが直木賞候補作なのか?とちょっと納得のいかない内容だった。スティーブジョブズのような世界を変えたような偉大なパイオニアであったならもっと劇的な顛末になっただろうけど、バトル三国の独立時代の平定不確かな時代にちょっと風変わりな少年がいた、という話なだけで自分的にはふーん程度だった。エストニアの歴史もよく知らないので知識不足もあっただろうけど、それを補ってくれるような中身の濃いものでもなかったから話のながい絵本という評価でしかない。
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歴史においてはなにも果たさなかった、ある意味で歴史から疎外された存在であるラウリ・クースク。記者の〈わたし〉は、そんな彼の半生を書くためにラウリの形跡をたどる。
ラウリは、コンピュータ・プログラムが好きな子供だったが、身近に彼と同じ視点からプログラムにを語る友がいなかった。しかしラウリが3位に入賞したコンテストで、1位を取った人は、ラウリと同い年だった。それを知ったラウリはきっと彼――イヴァンなら親友になれるはずと期待に胸を膨らませる。そして二人は同じ中学校に通い、共に切磋琢磨した。デザインが得意なカーテャを加え、三人で青春時代を過ごしていた。しかし、ソ連の状況が一変し、それぞれ立場を異にした三人は歴史の波に飲まれ、道を分かった。ラウリとイヴァンはお互いに離れてしまった親友を思いながらもそれぞれの人生を歩んでいた。
しかし、三人の道はまた交わる。記者となった〈わたし〉――イヴァンは、道中でデザイナーとなったカーテャの連絡先を入手し、ガードタイム社に勤務するラウリと何とか対面することが出来た。
ずいぶん長いこと顔を合わせなかった三人。でも、時間の壁は直ぐに消え、深夜になるまで語り合った……。
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面白かったです。心が温かくなりました。
真の友情は立場も時間の隔たりも越えて語り合えるものですね。私も普段の生活を振り返って、人との交わりに感謝しようと思いました(´˘`)
でも、それと同時に大きな時代のうねりに呑まれてしまって、おもうまま真っ直ぐに生きられない命があるということを忘れてはならないとも思いました。
私は宮内悠介さんの本は初めて読んだのですが、決して劇的では無い人物にリアリティを与え、肉感を与えてくれる素晴らしい作家さんだなあと思いました。フィクションであることを忘れ、本当のかつてを生きた人の伝記を読んでいる気持でした。他の本も是非手に取って読みたいです。
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※帯より
ソ連時代のバルト三国・エストニアに生まれたラウリ・クースク。黎明期のコンピュータ・プログラミングで稀有な才能をみせたラウリは、魂の親友と呼べるロシア人のイヴァンと出会う。だがソ連は崩壊しエストニアは独立、ラウリたちは時代の波に翻弄されていく。彼はいまどこで、どう生きているのか?――ラウリの足取りを追う〈わたし〉の視点で綴られる、人生のかけがえのなさを描き出す物語。
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※以下引用
「とどのつまり、彼は何をなしたのか? 歴史のどの位置に彼はいて、どういう役回りをはたしたのか? ラウリという人物は、我々人間存在の何を照射するのか?」
これに対して、わたしは「何もない」と答えるよりほかない。
ラウリ・クースクは何もなさなかった。
(P5)
「よく勉強するんだ。この国は、努力さえすれば誰だってなんにでもなれるのだから」
(P19)
「この国でまっすぐ生きるのは難し��。まっすぐ生きたいと思ったら、多かれ少なかれロシア人連中の言うことを聞かなきゃならんからな。だが、少なくとも無知は罪だ。俺は要するに、無知だったんだ。この国で、光のある道を生きろとは言えない。だからせめて、おまえさんはまっすぐ、したたかに生きてくれよ」
(P59)
「どうしてこの村に?」
「きみに会いに来た」
(P63)
ラウリを襲った感覚、それは居場所があるということだった。
(P75)
「そうとも。親友と会うのに理由なんかいらねえ。何年ぶりか知らねえが、話題なんかなくたっていい。二人で空でも見てればいいのさ。どうだ、俺は何か難しいことをいっているか?」
(P204)
「もっと許せないのは、いっとき、ラウリがラウリの人生を生きようとしなかったこと。」
(P233)
データは不死だ。
ならば、わたしはラウリのデータを書き残す。記憶素子と、水晶の箱庭に。あるいは図書館という人文のデータ大使館に。青春の一片を、わたしの親友を、わたしはデータとして残すことを選ぶ。
(P234)
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ソビエト崩壊前後と現在のエストニアを時代背景とした友情物語。
ソビエト崩壊前後の時代に翻弄されたラウリと現在のエストニアでその行方を捜すジャーナリストという視点が交互に語られる構成が読みやすかった。
もちろん構成には現在における謎と当時の真相提示というどんでん返し的な意図はあるとしても視点を変えるタイミングとかが上手です。
資料も多く読み込まれているようで著者渾身の作品だと思います。
一番の収穫は、エストニアが電子国家であるということが知れたことです。
河野君、こういう国を根本から勉強及び模倣した方がいいですよ。
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宮内さん、先入観でSFの人かと思っていたけれど
近代史のこと、黎明期のコンピュータのことを描いてくださった!ということで。とくに、ソビエト時代のバルト三国に焦点が当たっているのでそこは興味津々。東欧の近代史、今のロシアとウクライナの関係にも通ずる所なので学んでみようという意気込みで。
読み始めてみると純真な天才少年の孤独に胸を突かれる。そしてその彼の足跡を辿っているのは誰?という謎までも。
時代や国家に翻弄された彼らだった。なんと素晴らしい人材がこうやって産まれそして陽の目も見ずにただの人になってゆくのかと思うと世の無常に切なくなるが、フィクションとして、そこに光を当ててくれた宮内さんに感激。
終章ではまさかの(うますぎる?)感動まで授けて頂き本を読むという楽しみに浸ることができた。
蛇足ながら、直木賞候補作になっている。より多くの人に読んでいただきたい。
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思ってた内容ではなかったけれど、読んで良かったと思える本でした
歴史を作ったわけではないけれど、歴史の一部とはなっている
私たちは今、歴史の一部を生きていると言ってもいいのかもしれない
国境や人種を越えた友情や愛情が、当たり前のものとなってほしいし、国の政策一つで人はこんなにも翻弄される
今の当たり前は、明日には当たり前じゃないかもしれない
まっすぐに、そしてしたたかに生きる強さを身につけてこの時代を生きていく
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170回直木賞候補。読みやすかった。なにごともなし得なくて、なにものも残さなかったとしても、みんなちゃんと生きている。私もそういう一人。みんなそういう一人。良かったです。
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まあ、さくっと読めた。最近多い誰かのバイオ的な小説で、主人公は架空の人物。
1977年生まれ、ソビエト時代のエストニア出身ラウリ・クースクというIT技術者を調べていく話、ラウリは故人でもないし、実在の人物でもなく、設定でもさして何かをなした人でもないので、なぜ記者が追うのかがわからず、ちょっとモヤっとするが後半、理由が判明する。同世代とは言わないが、似たような世代なので、ペレストロイカがリアタイで、私の友人もまさにソビエト崩壊で国の独立のあれやこれやでラウリ達と似たような境遇だった者も数人いるし、逆にロシアンで逆の立場の人もおるので、いろんな立場のいろんな話を聞くこともあった。そんなあれやこれやを思いだされて、微妙な気持ちにさせらた。本書の時世は現代なので、コロナの影響や、ウクライナインベイジョンなんかもちらりと触れられている。確かにホットな地域の話ではある。
バルト、難しい土地よな。
読み始めてすぐはパジトノフをモデルにしたような感じかとも思ったが、世代がめちゃ離れるし、まあ、記者が誰かわかった時点で、プライベート感ですぎてちょっとガッカリはした。
まあ、同窓会的なエンディングなのが、なんかもう一つなんか欲しい感あるというか、読了感にひっかかりなさすぎて、ちょっと寂しい感じではある。普通の人の普通な人生の話という感じか。短いし、読みやすいのは読みやすい。
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直木賞候補作品として書店に並んでいたので興味を持ち読みましたが、
他候補作品と比較すると読み劣りするように感じました。
作品背景は70年代後半から現在のエストニアを舞台にした友情の半生記、
目まぐるしく変わる社会情勢に翻弄されながらも強い絆で結ばれた男女3人の、出会いを時系列を変えながら辿っていくストーリー。
話の流れや歴史は面白いのですが、200頁そこそこで字体も大きく、今ひとつ深く掘り下げて書く事が出来なかったのかと残念、ストーリーも最初から予想通りで深い感銘はありませんでした。
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24/01/04読了
ラウリを探し、その人生を紐解く物語。
ミステリランキングに入っているのが謎だったのですが、読み終えて納得。よいラストだった。
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エストニアがIT先進国になるずっと前にゲーム開発に取り憑かれた若者を探して。
その探しているのが誰か?最初はノンフィクションライターか何かと思っていたら、後半にその人が明かされてびっくりする。
冒頭に「ラウリ・クースクは何もなさなかった」と記載されているが、読み進めるにあたり何かを成し遂げたのではないかと期待が高まる。が、確かに何も成し遂げてはいない。ただ生き方として何かを残したとは思う。エストニアの独立運動に翻弄された若者として。
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旧ソ連時代、内紛の中でプログラミング 技術を通して育んだ友情。時代背景は複雑で難しいところがあるけれど、ストーリー自体は分かりやすく結末も良かった。