わかりやすい経営者のための本
2025/05/02 17:32
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投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
経営者の役割を示した本で、非常にわかりやすい内容でした。企業の価値創造の主体は、組織から個にシフトしている。個の力を引き出すためには、組織行動のコンテクストが重要。この組織行動のコンテクストというのは、簡単に言えば仕組みのようなものです。うーん、なるほどなるほどと思いつつも、どうもこの手の本は、じゃあ、あなたが経営してみればと、どうしても意地悪な見方をしてしまいます。
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投稿者:せーとー - この投稿者のレビュー一覧を見る
前著は同じ理屈を、違う言葉で何度も繰り返していて非常に読みにくかったが、今作は著者の講義をそのまま筆記してあるので、そういった点の読みにくさはなかった。
ただ内容としてはドラッカーの焼き直しというか、そこまで目新しい論が展開されるわけではないという印象。
そして著者をはじめとする多くの経営学者が論じる個を活かすというのが、結局のところ実践されずにいる多くの現実を解決するというところまでは踏み込まれていないのが、あくまでも学者の講義という感じ。
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経営学のハウツー的な本ではなく、企業独自の制度などがなぜできたのかというプロセス(文脈)を追いかけ、本質的なナニカを語ろうとしている。
遠回しな表現が多いが、本質を掴みにいくための過程が重要であり仕方ないのかも。例によって規模がめちゃくちゃでかく、コングロマリット事業を営む企業群が調査対象になっているため鵜呑みにできないことも要注意。
◯コンテクスト・マネジメントとは
組織による意思決定と行動を考察するフレームワークのこと。
意思決定と行動のプロセスを分けて考え、デザインし、運営し、その中に魂を吹き込むことらしい。
▼個人的な解釈
企業コンテクスト(文脈、歴史)によって引き出された要素から、経営管理すること。
経営にはあらゆる組織に当てはまる普遍解はなく、オリジナルの固有解を追求すべきであり、コンテクストなしであれこれ戦略や制度を考えるのは有意ではない。
◯概要
・トップは、カルチャーの定義・醸成・定着に情熱を燃やし、執着するべきというのが全ての結論である。
・経営者がおうべき変数は、マッキンゼーの7Sによって明らかにされている。目に見える経営要素だけでなく、インビジブルな要素も着目すべきである。
・戦略の決定は、事実上ミドルが行っている。実行するのはミドルだから。だからこそ戦略実行について経営層は進捗を追い、実行とPDCAを見守らなければいけない。
・経営者は実行にある程度無力である。ミドルマネージャーを巻き込み最善を考え、行動しなければいけない。
・戦略もなにかも、実行するのは人である。ということは、実行に耐えうる知識やスキルをもった人を、組織的に育成しなければいけない。現場レベルのDoは現場で強制的に学べるが、それ以外は狙って「学習する組織」をつくらなければいけない。
・コントロールだけ考えてはいけない、組織固有のコンテクストを理解し、コンテクストにあっているのかを見るべき。
◯デカくなる企業の共通点
・社会に対する大胆な理念を掲げている。
・個に成長機会と自己実現の機会を与えるプラットフォームになりえている、そのように見せている。
・個と個の結びつきを、機会や仕組みで図っている。
◯学習する組織
・学習する組織とは、知識を創造、習得、移転する能力を有し、新しい知識や洞察を反映させながら既存の行動様式を変革できる組織。
・「他社他者から貪欲に学ぶ」「失敗から得た教訓を未来の行動に反映させる」「過去にとらわれず環境変化に迅速に対応する」「組織内で水平・垂直に学習を共有する」。
・学習する組織の基本は、対話である。なぜを繰り返す対話、雑多な対話、学習移転できる対話の時間をとれ。学習影響力が高い人物を評価できる制度があるかどうかも重要。
・学習するチームのドリームチーム(コミュニティではない、学習影響力の高い人材がいるドリームチームである)こそ、会社で最も称賛されるチームであり、経営者や幹部に据える人材はそこにいる。
トップはどんなパーパスや戦略的方向性、目標を掲げているか。情報共有システムや人事評���システムはどうなっていて、失敗からの学びを全体で共有できる仕組みはどの程度整っているのか。
行動規範はどのようなものが定められていて、トップの言動は、現場やミドルの率直かつ誠実な行動をどのくらい促せているのか。これら一連のことを考える必要がある。
◯7S 3つのハードな経営資源と4つのソフトな経営資源
戦略(Strategy) :ある一定の目標を達成するために立てられる企業の限られた財的・人的資源の配分を目的とした一定期間の計画ないし行動方針
構造(Structure):組織のしくみの特徴(機能的である、分権化している、など)
システム(System):一定の報告パターンおよび会議形式のようなルーティンな方法
スタッフ(Staff) :企業内の人員を重要な職種・特質別に分類・配分すること(たとえばエンジニア、企業家型、管理のプロなど)。ライン対スタッフといった意味合いではない
経営スタイル(Style):経営幹部が組織の目標をどのように達成するかという特徴、およびその組織の文化的特質
経営スキル(Skills) :経営の中心人物ないし企業全体の持つ顕著な能力
共通の価値観(Shared Value):組織がその構成員に植え付ける理念あるいは指標となるような概念
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経営学や組織論、リーダーシップ論などには流行みたいなものがあり、ティール組織やパーパス経営の次に来るのがこの本で主張されていることかと理解。要は、組織の存在意義を構成員全員がよく理解し、アップデートし、その規範に基づいて行動、意思決定するように促すのが、コンテクスト型の経営手法でありリーダーシップというもの。スタートアップのような企業だと実現しやすいのかと思う。組織が成長するにつれ難易度が上がるように思えるが、その工夫が思案しどころなんだろう。
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コンテクストというのは、組織風土やカルチャーに近いものかと感じた。
プロセスや体制を外形的に整備するだけでなく、なぜこのようなプロセス・体制になっているのか、それを通じてなにを成したいのか、トップが絶えず社内に発信することで初めてカルチャーとして定着する。
トップの主な仕事は、このカルチャーの醸成・定着であり、それを成すだけの熱量や想いが必要ということなのだろう。
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経営学に於ける、いわゆるプロセス学派の議論の系譜を辿りつつ、コンテクスト・マネジメントの観点から戦略や組織について概観した一冊。骨太であり、各所のロジックはどうしても頭から抜け落ちてしまうが、今後も折に触れて開きたい。
読み違えている部分もあるかもしれないが、個人的な観点からは、本書は「経営に絶対的な唯一解はない」ことを強く念頭に置き、故に戦略でも組織でもなく、コンテクストでマネジメントをする、という概念を提唱されているのだと理解した。コンサルとして働く中で痛感するが、経営という複雑な事象に唯一解は存在せず(もちろん、外してはいけないお作法はあるが)、事業をどのように解釈しどう仮説を立て意思決定するか、というサイクルが全てであり、いかにこの確度を高めていくのか、という点がポイントとなる。この根底にあるのがWHYであり、言い換えると、WHYの部分が欠落した途端に全ての仕組みや構造は意味合いを失うと考える。
コンテクスト、という言葉に対する解釈も人それぞれであろうが、個人的な解釈としては、「WHYの部分を(リーダーが半ば主観的に)規定/流布し、現場の能動的な行動を支援するマネジメント手法」という言葉になろうかと思う。学問的にはこの相互作用をどう解明するかが難しいのだが。。。一方で、この感覚は実務家には既に受け入れられているようにも感じ、学問的にも解明のし甲斐がある投げかけなのだろ感じた。
特に印象に残った箇所は以下
・「人間の本性が「善」でも「悪」でもなく「弱」」(p.148)
・「M-formでは、ともすれば「分権」と「集権」が繰り返されます。本社が事業部をグリップするべきか、それとも事業部に権限移譲するべきかという選択を常に迫られ、なおかつこの選択には正しい答えが存在しないため、多くの企業では分権化と集権化との間で、まさに振り子のように揺れるのです」(p.181)
・「リクルートは「合算」という経営プラクティスを実施しています。予算は、中長期の戦略と連動して、事業ユニット長(事業責任者)と経営ボード(本社)とで合意するのですが、運用に特徴があるのです。事業ユニット長は、単に予算達成を目指すのではなく、中長期の成長戦略投資を最適化するために着地予測精度を求められています。そのため予算を大きく上振れしても必ずしも経営手腕が高いと評価されるわけでなく、むしろ経営ボードから、"事業の見通しが読めていない"と見なされることもあります」(p.207)
・「PPMは、企業がキャッシュの創出と需要を組織内で自給自足しながら安定的な成長を遂げるという手法です。けれども、現在の英米流の企業経営では、自分たちでキャッシュを生み出して、それを組織内にうまく配分しながら、安定的な成長を実現させていこうというのは正しいアプローチとはみなされません」(p.224)
・「組織は戦略に従う」というアルフレッド・チャンドラーの言葉を前回紹介しましたが、経営の現実は違います。「戦略(企業全体戦略)は組織(組織能力)によって制約される」というふうにとらえるべきなのです(p.250)
・「つまり、経営者は「コントロールを失う」という不安を乗り越えないといけない���いうことですか」(p.353)
・スマントラ・ゴシャールは、亡くなる前に上梓したハイケ・ブルックとの共著『アクション・バイアス』の中で、伝統的企業の経営における最大の問題は、個の主体性の喪失であるとの警鐘を鳴らしました」(p.382)