紙の本
『潮風テーブル』
2023/10/09 19:12
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投稿者:百書繚乱 - この投稿者のレビュー一覧を見る
借金を残したまま母親が家を出て、一人になった18歳の海果
母親が入院、父親が不在の中学1年生 愛と2人で築50年の小さな居酒屋〈つぼ屋〉を切り盛りしている
その夏……台風で家が大きな被害を受けたうえ、近くにパスタのチェーン店が出店して売上が下がり大ピンチに
プロ野球復帰の思いを秘める若い漁師の一郎
左遷と離婚のピンチにある信金職員 葛城
低農薬農家の息子 耕平と母子家庭の少女 小織
選挙違反で父が逮捕された人気の若手俳優 慎
葉山の小さな料理店を舞台に、魚市場ではじかれる魚やイカと同じ〈戦力外〉の、けれど素朴で実直な人たちの人間模様を描く“潮風が吹き抜ける感動の物語”
《守りたい居場所が、ここにある》──帯のコピー
『潮風キッチン』『潮風メニュー』に続く第3作、2023年9月刊
カバーの写真にもなっている〈つぼ屋〉の新メニュー、食べてみたい
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今Melody Fairを聴きながら感想を書いています。
目を閉じると海果と愛の笑い声が聞こえてくるような気がします。
この小説は1本のCommercial FilmのようでありLong Movieのようでもあります。
カメラワークを多彩に切り替え、読者を小説の中へ引きこむマジックを使う、著者、喜多嶋ディレクターが生み出す多彩な映像やセリフ、そしてコピーライティング。
それらが重なりあった素朴な料理の様でもあり、不思議なカクテルのようでもある小説です。
飽食の時代に、読者自身が自分を振り返り、警鐘に気づくような作品になっています。
※気づけない人もいますけど・・個人差ですから・・
私は本書を読み進めるにあたって、5回泣きました。
何処で泣いたか?、この本を手に取った皆さんと同じか否かはわかりませんが、何気ない平凡さ、その平凡を手に入れる事ですら必死に生きて、やっと手入れる幸、そんな、幸せを感じられるような作品に仕上がっています。
ただ、読者の心を少しだけえぐり取る結果になるかもしれません。
私はこれで、泣いてしまったのですけどね。
さて、潮風シリーズの根底にあるのは、貧困と富裕のギャップ。
日本でもそれは必ず存在しているという事。
富裕層はそれを理解する事。
貧困層と書くのははばかられますが、貧困層は前を向いて生きている限り、困った時には必ず助けてくれる人がいるということ。
助けてもらう事は恥ではなく、前を向いて一生懸命に生きている限り、それは美しく、そして必ず幸せになれるという事。
だから、何事もあきらめてほしくないというメッセージも込められています。
全シリーズに、「一生懸命前を向いて生きる」そんな思いが込められていています。
それを登場人物の生き様に置き換えて、ストーリーを組み立て、読者を感動の涙に誘う小説です。
今回の「潮風テーブル」もまんまと著者:喜多嶋隆にしてやられた感が否めません。
それは、のめり込めばのめり込むほど、いつしか登場人物が乗り移ったかのように、小説の中で起きる出来事を疑似体験している感覚に襲われます。
だからこぞ、プっと笑ったり、涙がこぼれたりするのですよね。
先にも書きましたけど、
私も物語りを読み進めるうちに5回は泣いてしまいました。
なので絶対に電車や会社で読まないほうが良いです。
ご自宅でリラックスしながら、喜多嶋ワールドを堪能してください。
そして、登場人物と一緒に、物語りを楽しんでほしいと思います。
この感想を読む皆様に、もっともっと物語りを楽しんでほしいので、ネタバレは、もう少し経ってから公開する事にします。
余談ですが、
私の仲間達で以前、国際NGOチャイルドスポンサーシップや足長育英会に寄付をしていた事もありました。
今回の慎のCMや、ドキュメンタリーが本当に実現すればよいと個人的には思いました。
あ・・これはネタばれですね。(笑)
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【あらすじ】
海果の店の近くに、大手チェーンが経営するパスタ専門店がオープン。
台風で家の壁が損傷を受け、その修繕費も用意しなければならないのに、売り上げに影響が出始める。
一方で、野球選手として復帰するためのトレーニングを開始した一郎も、自分の進むべき道に迷いがあるようで。
葉山を舞台に描かれる湘南キッチンシリーズ第三弾。
【感想】
今回は、STORY STORY YOKOHAMAさんから、特典付きのサイン本をお取り寄せ。
この湘南キッチンシリーズはお気に入りで、本棚に並べておきたいので、サイン本で欲しかったのです。
直接サインをいただいたこともあるのですけれどね(^^;;
もともと喜多嶋さんの作品はメッセージ性の強いものが多いのですが、このシリーズは、かなり直球のストレート。
何を恥ずかしいと思うか、何を誇りに思うか。それは人それぞれだとは思います。
けど、私は喜多嶋さんが描く登場人物たちのように、自分に恥ずかしくないよう、背筋を伸ばして、自分の足で一歩一歩地面を踏み締めて、生きていきたい。
このシリーズでは、1冊目から、貧困差や企業や政治家の不正問題を取り上げていて、今、何を考えるべきか、何を恥じるべきかということについて、考えさせられます。
私は10代の頃に、喜多嶋さんの小説から「人生の流儀」という言葉を教わりました。
人生は長く曲がりくねった道だけど、その道を歩く、自分の生きる流儀を決めるのは自分自身。
哲学とか、政治とか、そんな難しい分野でなくても、身近なところから、考えることは出来ます。
本作もそんなことを教えてくれる1冊になっていると思います。