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投稿者:K.ザムザ - この投稿者のレビュー一覧を見る
結末へ向けて細部まで緻密に計算されていながら叙情性も損なっていない、高い完成度の純文学。小説家の男とサッカー少女の姪がひたすら歩くという小規模な話だが、凡百の物語より圧倒的に人間の生と死を描き出している。
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投稿者:ナムナム - この投稿者のレビュー一覧を見る
まだまだ人生これからの登場人物たち。
続編が期待できるぞと思いつつ読んだが、
民俗学者柳田國男の諸説を引いたばっかりに、
その希望は叶わない結末になってしまった。
日常、あんまりなくらいの日常
2024/08/14 23:22
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投稿者:ブラウン - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作品の良い点を挙げないと負け、と思わせられた。この感情はそう表すのが最も近い気がする。
小説家の叔父が、サッカー少女の姪と一緒に借りパクしていた本を返しに徒歩で旅をするというロードストーリー。その合間合間に風景描写やリフティングの練習を各々がこなす傍ら、旅先の寺にまつわる真言やら野鳥の見分け方などなどを覚える様子を、地域ゆかりの作家らの残した言葉を交えて表された文章の透き通ったこと。非常に日常的で慎ましい旅路を描いているのに過ぎないのだが……あの忌々しいラスト! あれのおかげでよくもまあこんな深みを出してくれやがったな! っつって、もう200ページ足らずじゃそうそう味わえない感情の振り幅に、もう作者の手のひらの上で歯ぎしりしながらタップダンス踊らされてる気分になっている。
あんまりオススメしたくはならないが、誰かを道連れにしたくはなる。
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練習の対義語は本番という言葉になると思うけど、僕たちの毎日、おおさげに云うと人生には、練習と本番なんていう区別はないのだと思う。
もちろん大切な一日、重要な決定をする局面というのはあると思うけど、何をしても時計の針は戻らないしセーブポイントからリスタートできるわけもなく、僕たちが常に1回きりの時間を過ごしている訳で、そういう意味では、人生という尺度においては練習や本番なんていう区別はなくて、あるのは常に「今」ということになると思う。
この本を読んで思ったのは、練習とは決して本番のため、何かの目的を達成するための単なるプロセスではなくて、もっと純粋な、生きる姿勢であるべきなのかもしれないということ。そして練習の背景にあるのは目的ではなくて、願いなのかもしれないということ。
何かを成すことや何者かになることだけが人生の意味ではなくて、むしろ生きるということは要約できない「今」の積み重ねでしかない。ただ、だからこそ今をより良くするためには練習が必要で、そしてそのためには、目的ではなくもっと漠然とした願いが必要なのだと思う。柳田國男が名もなき庶民の歴史を見出したように、この小説は名もなき練習に生を見出しているのかとしれないと思った。
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スキマ時間に少しずつ読む用の本でした。
コロナ禍ではあるものの、緩やかで平和な情景が目に浮かぶ作品でした。
最後の展開は、サクッと描かれ、その後、すぐに話が終わってしまい…。
それが美しいのかもしれませんが、どうなったのかもう少し知りたいなぁと思いました。
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亜美の世界を見つめる眼差しや感覚が羨ましいと思ってしまった。わたしもかつてこうであったはずなのだが いつからこんな捻くれてしまったのだろうか...
キラキラしててわたしには少し眩しかった。が、叔父さんの書く風景はあたたかく寄り添ってくれた。
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COVID-19が流行して休校になった中
旅をする2人のストーリー。
姪と叔父という関係の2人が
自然や歴史、人との出会いを通して
様々なことを感じていくのが好き。
そういえばCOVID-19が流行した時
私はまだ看護学生という立場でした。
実習、国家試験、卒業式、入舎式、研修、、、
様々なことが影響を受けて
中止や延期、オンラインで実施に変わっていった。
COVID-19が第五類感染症に移行しても
医療現場では特に変わらない。
未だに行動も制限されることもあるし
陽性患者の看護をするときの装備が減ることもなければ
陽性患者数が減ることもない。
マスクが絶対ではなくなったからか
COVID-19+インフルエンザのWパンチかなぁ。
誰が悪いとか絶対ないから
看護師としてできることをするしかないですね。
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まず何よりタイトルが良い。作家の叔父とサッカー少女の姪は春休みを利用し徒歩で我孫子から鹿嶋への旅路を行く。道中で出会う女子大生との交流は少女に新たな気付きを齎し、各々は旅路の果てに人生の岐路に佇む。叔父が綴る旅の情景と心情、各地に根付く作家の言葉、地域の復興に貢献した名将の逸話といった要素が物語に彩りを添える多層的な作品だが、二人の旅の軌跡を容易く打ち砕くラスト一頁がこの物語の終着地点として本当に相応しいのか否か私は判断しかねる。完全なる余談だが、私が少年サッカー時代に憧れた選手こそ、ジーコその人なのだ。
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コロナ禍でいろいろなことが自粛されたり、緊急事態宣言も東京で4週間後には出されることになるという世間。
中学校入学を控えたサッカー少女の亜美と小説家の叔父は、鹿島まである目的のために歩いて旅をすることを計画する。
亜美はサッカーボールを蹴りながら、叔父は途中で風景を文章にたしなめながら、それぞれの練習の旅が始まる。
旅の道中で成長していくのがわかるサッカー少女の亜美。
教室の中で学ぶこともあるだろうけれど、ただ、歩いて6日間旅をするだけでも、学ぶことが大いにあるということなんだろうなと思える作品です。
旅とは目的地につくことだけではなく、目的地にたどり着くまでの過程が大事ということがそのままわかるわぁと思います。
また、間にジーコの語録みたいなものも適切に出されるので、ジーコ語録読みたいと興味が湧く作品でもあります。
何をやるにしてもまずは願いから。
願いがなければ夢にもならないし、願いがなければ願いを叶えるために動けない。
確かにそうだよなぁと思えるものがこの旅の中にはいっぱい詰まっているなと思いました。
ただ、私は、本作品に対してラストは安直過ぎやしないか?と思ってます。
おそらく、こういうことを伝えたいのかな?と思うところもあるし、作者の意図もあるのはわかっていても、最後だけは私は合わなかったなという作品になってしまいました。
そういう意味では今の私には合っていない作品なのかな?と思いながらも、こんな旅をしたくなる素敵な6日間だなと思えた作品です。
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ジーコの話に惹かれました。スポーツのなかでもサッカーだけはなぜか疎遠だったけれど、ジーコの本でも読んでみたくなった!
誰もが知る日本の名所ではないけれど、地域の特性がよく描かれていて、情景や動物の観察力に長けている著者さんだなと思いました。そして、ちょこちょこ織り交ぜたコロナネタが、「あぁ、あの時そうだったよなぁ」と思い出させてくれて、この本を読んだ2024年のいま、あーわたし生きてるわーって思えました。
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王道の感動もの。
歩いて鹿島まで行くという、夜のピクニックと似た話ではあるものの中身は完全な別物。
小学生の姪の天真爛漫で子供から色々を学ぶ大人の構図や、鳥にまつわる数々のエピソード。
文章が全体としてまとまってつながりがあり、とても読みやすかった。文量もちょうどいい。
途中からシリアス感もあり、気になって読み進めてしまった。
自分の生きざまを仕事に合わせなければならない、はこの本の主旨として秀逸。
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乗代雄介『旅する練習』講談社文庫。
この作家の小説を読むのは『本物の読書家』に継ぎ2作目。
第34回三島由紀夫賞、第37回坪田譲治文学賞のダブル受賞で、第164回芥川賞候補作となったロード・ノベル。
新型コロナウイルス感染禍という閉塞的な時間の中、自分の好きな事に熱中し、一つの目標に向かい、歩み続ける少女の姿が眩しい。しかし、問題はラストだ。余りにも悲しい唐突なラストは全く予想もしなかった。
弱小少年サッカーチームで唯一の女子で、一番上手い亜美は、女子サッカーの名門の私立中学校の受験に合格し、入学金免除まで勝ち取った。中学校入学を目前に控える亜美だったが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、3月2日から24日まで臨時休校となり、学校もクラブの練習も最後の大会も予定が無くなってしまった。
亜美は小説家の叔父と2人で利根川沿いに徒歩で千葉の我孫子から鹿島アントラーズの本拠地を目指して旅に出る。亜美はリフティングをしながら、入学予定の中学校から出された日記の宿題をこなしながら、ゴールを目指す。そして、旅先で偶然出会った、ジーコを敬愛し、就職を目前に控えた大学生のみどりもまた鹿島アントラーズの本拠地を目指していた。
全てを裏切るラストに悲しい気持ちになる。亜美のこれからの輝かしい未来に期待していたのだが、それが一瞬にして砕け散る。
しかし、人生とはそんな儚いものなのかも知れない。
定価704円
★★★★
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何がどうなっても構わないような妙な気分で、
自分の気持ちがどちらに転んで行くかもよくわからないまま、
という表現が,何となく心に残り何度も読んだ
ラストにさらりと書かれた衝撃は、消化出来るのかまだ分からない
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難しい言葉や表現が多く、読了までに時間がかかりました。全体的には堅い文章ですが、亜美ちゃんの存在が、物語にふわっと空気を含んで軽くしてくれているような印象を受けます。結末は、なんとも言えない読後感。この旅を丁寧に残したかった一番の理由が分かりました。時間を空けて再読出来たら、また違った印象の物語になると思います。
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亜美が唐突最終ページで交通事故で死んでしまうってどうかと思った。実在のモデルがいるのかな?
「テストは3点、笑顔は満点、ドキドキワクワクは年中無休なの」