投稿元:
レビューを見る
世の中には思いもよらないような人がいるものだ。天文台のエンジニアであり、かつ折り紙研究家、さらに博識ぶりや文才も疑いがない。はじめての(折り紙の本ではない)著書ということで少し手探りで書いているような感触もあるが、それにしてもなんと軽やかなエッセイを書くことか。数学の中でもとりわけ図形が苦手なわたくしには厳しいところもあったが楽しく読んだ
「字余りの歌・・・」では、わたくしがたまたま最近読んだばかりの『日本語の発音はどう変わってきたか』でも取り上げられていた、本居宣長の再発見による古代和歌の字余り法則が題材に。本職の日本語学者がサラッと流したところも突っ込んだ考察をしている
他にも紙飛行機の起源をさぐってみたり、谷川俊太郎の「二十億年」の出どころを考察したり
投稿元:
レビューを見る
折り紙と数学
幻想の補助線
パスタの幾何学
解けない問題
解けない問題を解く
単純にして超越
すこしずれている
五百年の謎
吾に向かいて光る星あり
四百六十六億光年の孤独 あるいは、四十三京五千兆秒物語
管をもって天を窺う
遠くを見たい
折り紙の歴史に関わるあれこれ
あやとりの話
紙飛行機の話
無限の御幣
字余りの歌と長方形の中の円
千羽鶴の話
投稿元:
レビューを見る
自然科学、なかでも数学を扱ったエッセイ集というのはなかなかお目に掛かれません。著者は折り紙研究科にして天体観測も生業にしているという博識ぶりを発揮して、幅広いトピックスのエッセイを書き上げています。
折り鶴、御幣(神社で神職がお祓いの時に使う)と無限、パスタの形状(立体の螺旋)このあたりのトピックスは文体は軽妙ですが内容は、しっかりと数学しています。
紙飛行機を扱った章では、「飛行機が発明される以前の紙”飛行機”は矢羽根みたいで、飛行(翼が揚力を得え飛ぶ)ではなく慣性による運動だった」と分析したり、楕円/放物線/双曲線に関しては望遠鏡の構造と関連づけて、それらの折り紙による作図法に言及したり…。
角の三等分線・正七角形が正確に作図できない事、円周率などのトピックスでは”正確には”解けない"問題を近似的に解こうとした人たち試みの内容などで、私はこの辺りが最も興味深く感じました。
雑誌に連載されていたエッセイなので、各章の長さも適度なボリュームです。折り紙と幾何学が絡む部分での証明・解説では、著者が「自明」としている部分はちょっと鉛筆と紙を持ち出して確認が必要なぐらいに途中の課程が省略されていたりしますが、そこの部分は気にせず読み進めても問題はないですし、気になる方は頭の体操と思って自分でちょっと手を動かしてみるのも良いでしょう。ちょっと肩の力を抜いて数学と向き合う、そんな印象の本でした。