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遥か昔から飲まれた酒。直会や集団での飲みに独り飲み。
その後、江戸時代に晩酌が始まり、市井に広まっていった。
晩酌誕生と江戸時代の晩酌文化を主体に、多くの史料を探り、
その情景を写した図版を添えて、詳細に解説する。
・はじめに
序章 酒は百薬の長 第一章 万葉集に詠まれた独り酒
第二章 中世の独り酒 第三章 晩酌の始まり
第四章 明かりの灯る生活 第五章 灯火のもとでの外食
第六章 江戸庶民の夜間の暮らし
第七章 江戸で花開いた晩酌文化 第八章 晩酌の習慣が始まる
第九章 多彩な晩酌の肴 第十章 長くなった夜の時間
・おわりに
参考資料・文献一覧有り。
その始まりは灯火の普及だった。
直会や集団での飲みに独り飲み、夕食後や寝る前に飲む
寝酒もあったが、夜の明かりは身分の高い者の高価な品。
だが江戸時代、灯火原料のナタネ油や綿実油等の生産と普及、
安い魚油の品質改善と普及、蝋燭も販売が始まる。
庶民への灯火用の油の普及により、夜間営業の外食が生まれた。
煮売茶屋から料理茶屋へ。そして庶民向けの居酒屋。
しかし夜は街灯が無く暗い上、十時頃には町や辻の
木戸が閉まってしまう。で、就寝前の愉しみとして、
家で寛ぎながら灯火の元で燗酒を飲む晩酌が、始まる。
江戸の町では、人の数が増え、物資で潤い、
庶民は酒が何時でも買えるようになっていった。
酒屋からの御用聞き、店先での量り売り。
四季を通して燗にしたのは、冷や酒は健康上良くないと
考えられていたから。
肴は、小鍋立や多彩な手作り料理。
振り売りから買う夜鯵・夕鯵、枝豆、なめものなど。
屋台店や煮染屋からの総菜のテイクアウト。
仕出し料理のデリバリー。
屋台のおでん燗酒売りからは、肴のおでんと燗酒を
一緒にテイクアウト出来た。
灯火の元で、夫婦で晩酌。親子で晩酌。男も女も独りで晩酌。
だが明治時代になり木戸は廃止、ランプの普及で長い夜に。
晩酌と寝酒は別物になり、ビールの晩酌も始まる。
晩酌について、豊富な史料を提示し、和歌や短歌、俳句や、
人情本、様々な図版、小説からも引用しているので、
楽しく読めました。特に晩酌で孝行の褒賞の記録が興味深い。
また、当時の酒が超辛口だったから、燗酒にして甘味の感度を
増して飲み易くしたらしいというのにも、驚き。
江戸時代の晩酌文化は、なかなか奥が深いものでした。