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本当に未来はこうなるかもしれない・・・。
最後の先祖がえりのエピソードが美しくて悲しい。
水と風の匂いを感じました。
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2009年12月5日読了。
数十年以上経った今でも未来を感じる事が出来た。
この人の未来を見る目には感服した。現在ですらそれが未来に存在しうるように見える。それを数十年前に見ていたというのが凄い。
そしてそれを裏打ちする理論、理論を支える豊富な知識にはただ圧倒された。
ただ、技術屋が機械に対して興味を持たないってのは仕方ないんじゃないかなあとは思った。
技術者はともかく、技術屋ってのは未来より現在の事象に興味を抱いてる訳なんだし。
だからこそ、ああいう結末になったんだけども……。
それ以外はずっぽりと世界観に飲み込まれた。
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タイトルからはその内容は全く想像つかずに、最初は読む勢いもそぞろだったが、帯に描いてあったコメント(電子頭脳による画期的な予言機械の発明・・・・)に惹かれて読み進める。
そのうち、安倍文学の世界に無事に入ることができ、面白く読み終えることが出来た。
いつものながら、結びの部分はどうも釈然としない氏の作品だが、その内容は現代でも通ずるぐらいのおもしろさ。
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未来を見ることの出来る「予言機械」を作った勝美博士。しかし予言機機械は政治的に重大な影響を及ぼす可能性を持つため、厳しい政府の管理下におかれ、政治に関わらない題目しか予言させることが出来ないという制約を持たされた。
政治に影響を与えない未来の予言は個人の未来の予言であると気づいた博士は、その助手頼木と共に予言機械の実験体となる人物を探す。
しかし理想的なモデルを発見するも、彼は何者かに殺されてしまう。
ひょんなことから殺人事件の容疑者となりえる立場になってしまった勝美博士は、自身の潔白の証明と、予言機械の威信をかけて、独自に犯人の捜査に乗り出す。
しかし捜査を続けるうちに、勝美博士は、自分が殺人事件以上の大きな何かに巻き込まれていることに気づきはじめる。
そして全てを告げられた勝美博士が予言機械を通して見たものは、想像を遥かに超えた、人類の未来だった。
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この話の面白い点は、主人公の勝美博士が、未来を覗く予言機械を作っておきながら、
未来へは無頓着な点だと思う。
勝美博士は予言機械を製作し、プログラミングにおいては右に出るものがいない学者である。
しかし機械的な作業を好み、理論を好む。そして日常の連続、現在の安穏が破壊されることを恐れる。
割と頑固で、硬い価値観を持っている。
よって、未来を見ることのできる予言機械の最高の利用方法は、未来を覗くことによって、起こりうる最悪の事態を免れること、すなわち現状をよりよく維持することだった。
おそらく、現実世界、ほとんどの人は勝美博士のような人間だと思う。
しかし安部公房はあとがきでも書いているが、そのことに警鐘をならす。
未来が希望に満ち溢れているか、絶望に満ちているかは、現在の価値観からは判断しかねるものである。
しかし、現状に甘んじていては未来は単なる苦悩の世界でしかない。
現在から遠くはなれた未来は、現在の連続する日常性からかけ離れていて、残酷である。
もちろん未来とは遠いものなので私が見ることはないかもしれないけど、しかしそれは確実に訪れうる。
もしかしたら私がその過渡期にあたるかもしれない。
現状に甘んじることなく、常に残酷な未来と対峙する姿勢を喚起する内容となっている。
いつもどおり、想像のはるか斜め上をいく展開。
しかし安部公房のメッセージ性が濃く、割と意外だと思う点も多々あった。
科学や生物学など、専門的知識が存分に多用され、架空の設定も細かく理論詰めされているのはさすが。
読んでいて現実の話なのではないかと錯覚してしまうほど。
プライドが高く、現状維持を望む勝美博士の心理的な描写もしっかり作りこまれていて、非常に感情移入しやすい。
また、サスペンス要素も多いので、一気に読み終えてしまえる作品。
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これが純粋な日本のSF超大作、
だと思った。
50年代に執筆したものとは思えない。
ウェルズのタイムマシンが読みたくなった。
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未来を予言する装置から発展するは予想もつかない展開。
非現実的なのに、何処か真実味のあるように感じられるのは作者の技巧なのだろうか。何時か、こんな世界が来るかもしれない―――そう思うと、とてもぞっとしてしまう。
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・真の未来は、おそらく、現在の価値判断をこえた、断絶の向こうに、「もの」のように現れる。
・未来を裁く対象としてではなく、逆に現在を裁くものとして、とらえる。
あとがきより
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過去に読んだSF小説とは一味違う。より現実を共なった内容だった。
価値観も、正義も悪も相対的な基準でしかない。
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50年前に書かれたものとは思えない。
圧倒的心理描写はあるが公房の他作品比べると読みやすい分、登場人物達の複雑な心理変化が少なくネタに頼り切っている印象で、もうちょっと練れたのでは?と思ってしまった。
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予言機械は、さまざまな情報をインプットすることで、非常に正確な予言をやってのけ、タイムマシーンと称されて話題を呼んだ。
この機械を使って未来を予言しようと研究を始めたのが、勝見博士の研究室であった。街で偶然みつけた、平凡な男を機械にかけ、その男の未来を予測しようという計画を立て、博士と助手が男を尾行するが、その翌日、男が殺されたというニュースが伝えられる。そして、殺人犯として捕まっている女性を、予言機械にかけようと彼らが試みたところ、今度はその女性も殺されてしまった。
しかし、これらはすべて仕組まれたことだった。
博士の知らないところで、人類の未来がすでに機械によって予言されており、その未来に備えるための準備が、知らないところでちゃくちゃくと進められているのであった・・・。
安倍公房のとてつもなさを思い知らされる作品だ。
未来を予言されて、知ることで、未来は少し変わる。それを繰り返すことで社会がどうなるのか、未来への準備のために行われているとてつもない研究・・・ありえない事柄ばかりなのに、生暖かい現実感をともなって描かれている。未来とはなんなのか、を考えさせられる。
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今まで読んだ安部公房の中でダントツに読みやすく、分りやすかった。
そして面白かった。
話の展開の飛び方がすごくて途中までは着地点が全く見えない。
出オチな話が多いような気がする安部公房の作品の中では変わっているのかも。
「未来」を描く場合は、あるいはそうなるのかもしれない。
恐ろしいと思ったのは、読者はちゃんと
主人公の「先生」に共感するように描かれている(とおもう)のに
話の後半から、「狂っている」とされる側の話が
客観的に見て、部分的にでも全体的にでも、
共感せざるを得ないように書かれていることだ。
主人公の側に立っていると、最終的に
必然的に、自分が殺されることに納得してしまわなければ
いけないような(論理に従っていくとそうなるのだ)
そんな気分になる。
日常の延長に長く続く未来は無いというのは怖いけどその通りなのかも。
心理描写と角度、話の特異性や展開もそうだが
私は安部公房の情況描写が好きなので、
それだけ拾っていくのも楽しい。
話の通りにとても端的で客観的なのに、詩的で美しいのだ。
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人類の未来を予言する機械の開発に当たる勝見博士。実験に選んだ男の殺人事件に巻き込まれ謎の男からの脅迫電話が。強制的に堕胎させられる妊婦たち。胎児の誘拐事件。勝見自身の子供も誘拐される。勝見の助手である頼木が明かす「第四間氷期」の謎。水棲人間達の研究。
2010年9月28日読了
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最初に読んだのは、大学受験が終わった日だったか。おもしろかった。それから何度も読んでいる本。もはや、ストーリーをなぞるように読んでいて、おもしろいとか感じることはない。それでも、たまに思い出して、読んでしまう。
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日常的連続感にすがる矮小な想像力を、可能世界たる未来が断罪する。ストルガツキー兄弟(タルコフスキー『ストーカー』の原作者)の兄が露訳したことでも知られる小説。思いのほかライトなSF推理で一気に読み下せる。
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研究に没頭する主人公が、自分が開発した予言機なるものを介在とした組織に翻弄されていく。
途中、組織によって、主人公の奥さんが騙されて中絶手術されてしまう。
でも、物語はその奥さんのことは放りっぱなしで、それによってますます翻弄されていく主人公を追っていく。
物語が進む上ではアタリマエなのか。。。
作者が男だからか。。。
主題は別にあるからか。
未来における問題の前では、一人の女性の気持ちは小さい。
明るいわけでも暗いわけでもない、そこにある未来。。。