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横暴で非理性的な軍部?これまでの昭和陸軍像を覆す。
軍部の暴走を招いた要因とされる統帥権独立性には、政治からの軍事の独立とともに、軍部の政治介入禁止という二面性があった。軍人たちは、これらをどう認識してきたのか。政治との関わり方に苦悩する昭和陸軍に迫る。(2020年刊)
・歴史とイメージ ープロローグ
・明治陸軍と政治
・宇垣軍政
・陸軍派閥抗争
・近衛文麿と陸軍
・東条軍政
・統帥権独立と政治介入 ープロローグ
大変面白く読む。
本書を読むと昭和陸軍が政治に対しどの様な対応をとろうとしてきたのかがよく分かる。従来、統帥権独立が軍部暴走の元凶のように語られてきたが、本書を読むと、統帥権独立には、政治からの軍事の独立とともに、軍部の政治介入禁止という二面性があったことがわかる。また、軍事指導者たちの多くは、主観的認識においてその制度と規範意識に沿おうと努力したことがわかる。
著者の「統帥権独立制と軍部の政治介入は、あまりに自明の常識として、やや無批判に扱われすぎたのかもしれない」との記述は重い。今後、さらに研究が進むことを期待したい。
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戦争への道は軍部の暴走に起因し、そして軍部を抑制できなかったのは、制度としての統帥権の独立が障害となったためである、と近代史の常識として語られてきた。
しかし、統帥権独立制には、政治からの軍事の独立という面と、軍部の政治介入禁止という二面性があったのであり、軍部が政治介入を一貫して行ったものではないと著者は言い、具体的な史実を述べていく。
輻輳した昭和史の流れを、陸軍、特に政治との接点を持つ陸軍大臣及び軍務局の視点から叙述しているので、これまで良く分からなかったことが、ずいぶん理解できるようになった。宇垣が度々首相候補に擬せられた事情、二・二六事件後の広田内閣で軍部大臣現役武官制が復活した経緯、新体制運動に対する武藤軍務局長の目論見と挫折、首相、陸相、参謀総長を兼務した東条に対する批判など、興味深い問題が分かりやすく論じられている。
軍人の政治介入を忌避する精神がたとえ軍人自身に持たれていたとしても、兵器の近代化や総力戦に耐え得る国家社会創りのためには、自らの意思を国政に繋ぐことが必要不可欠である。そのときに統帥権独立制は、軍部にとって桎梏ともなってしまった。
昭和陸軍に対する見方がガラリと変わるような、刺激的な一冊である。
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対米戦に至るまでの昭和の陸軍と政治についてのこれまでの常識を覆す刺激的な説。
統帥権独立については司馬遼