魔女を標的にする背景
2024/06/07 20:31
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ブラウン - この投稿者のレビュー一覧を見る
魔女狩りは何故起き、終息したか。その要因を、魔女像の起源から始めて文化、情勢、人心など様々な要素から考察する。
改めて思うが、魔女と囃し立てる動機の身勝手なこと。それをここまで鮮明に書いている本はどれだけあるだろうか。権力の行き届かない僻地へ抱く恐れ、声の小さい少数派への侮り、異物嫌悪、隣人への憎悪……一大虐殺とも言える歴史的ムーブメントを起こした動機は、決して古いものではない。現代においてはどのような要素を代入すると同じ過ちが起きてしまうのか。歴史を読んだはすが現代に洞察の眼差しを向けるよう促された気分だ。
文章が丁寧で読みやすかったです。
2024/04/11 11:10
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
中世ヨーロッパで起こった魔女騒動について著した歴史書です。
当時の魔女騒動にはどんな背景があったのか、知りたくて購読しました。極めて文章が丁寧で、読みやすかった印象が強いです。読み終えて、目的を果たすことができました。
投稿元:
レビューを見る
魔女狩りという暗黒の歴史を分かりやすく説明している。予想通りかなり不愉快な内容だ。
キリスト教が背景とするアダムとイブの伝承において女が邪婬なものと考えられていたことが関係している。閉経した女性に対する露骨な差別が魔女伝説につながっている。
また教会や王権の正当性を高めるために対局の悪の存在を創出したとも言える。愛の宗教であるはずなのに、どちらが悪魔なのか分からない。
キリスト教に限らないが、原理主義的な考え方は極論になりやすい。正義の強調のために、強力な悪の存在が想定されてしまう。これは欧州の人々の底流を流れる考え方なのだろうか。科学を生み出す土壌であるとともに魔女狩りのような暗黒史も作り出してしまう。これは決して過去の話ではないような気がする。
投稿元:
レビューを見る
配架場所・貸出状況はこちらからご確認ください。
https://www.cku.ac.jp/CARIN/CARINOPACLINK.HTM?AL=01427673
投稿元:
レビューを見る
ヨーロッパ、特にドイツでは魔女狩りが盛んだった。それは自分が不幸だと思わせる環境の下、その不幸の原因は誰かのせいだと信じさせるキリスト教的考え方があった。
天候不順で農作物の収穫量が少なくて不幸、疫病が流行って病人がたくさん出るので不幸、身分の違いによる不自由さで不幸、など。それを誰かのせいにすることは施政者や教会にも好都合だった。
人間の醜さ…
魔女狩りが最も盛んだったドイツ、その伝統はナチスによるユダヤ人迫害にも関係がありはしないか?
読了45分
投稿元:
レビューを見る
魔女狩りについては一方的に魔女と呼ばれた人がいること、そして魔女と呼ばれた人が理不尽に虐殺されていた、という程度の認識だったが、その実態をよく理解できた。
魔女であることの証明方法か拷問による自白であったり、悪魔のなすことだから悪魔との契約などといった物的証拠はすべて消滅してしまうといった考え方はいまとなっては理解できないし、これらを事実として正式な裁判を経て処刑されていたというのは驚きだった。
ある意味、神秘的・超自然的な社会から法治社会への変遷における共通の出来事なのかもしれない。
魔女とされた人々に境界人が多かったことから日本だと穢多非人が差別されていたことに近いかと思ったが、地域の呪術的な医療や儀式を行っていた有識者という点を見ると、イタコやユタなどが近く、弾圧を受けた歴史からも受けた扱いとしては近いのだろう。
イタコやユタが少数ながらも現存することからいまも世界に魔女がいること自体はわかるが、アフリカなどでは魔女狩り(迫害)が行われていることは非常に驚いた。
一方で、現代社会でもSNSなどによる一方的な決めつけや社会的な処刑が多数発生していることを考えると、形を変えても魔女狩りは行われ続けてしまうように感じた。
投稿元:
レビューを見る
2024.05.24
私には大変良書。「ヨーロッパ近世」というわかりにくい時代を「魔女狩り」という側面から解きほぐしてくれた。
大いに知的好奇心を満足させてもらえた。岩波新書の存在意義を感じる。
投稿元:
レビューを見る
魔女狩り、ざっくりとしたイメージしかなかったので読んでみた
読んでみると魔女狩り自体は数世紀に渡って行われており、時代ごとに標的となる階層の人が変わっていたりと興味深かった。イメージとして多いのは農村にとっての余所者や下層民が魔女の典型だったが、16世紀以降は社会的地位が高い裕福なエリート層、貴族なんかが標的となっていたと知り、それはかなり意外であった
また宗教改革の影響なども記されており、その方向性から魔女狩りを論じたものを読むのは初めてだったが大変におもしろかった。特に宗教改革で有名なルターは政治と社会おける家父長制的秩序への反逆者、社会的規律化と絡んでいた国家およびその統治モデルたる家の破壊者として、その秩序の外側にいた独り者の女を魔女として球団した
投稿元:
レビューを見る
池上先生お若いのね。高校時から読んでる気がしてるんだが気のせいか。木村小三郎先生とか間違えてるかも。中世ヨーロッパと言ったらこの方よね。
投稿元:
レビューを見る
魔女狩りとはなんだったのかを資料をたどりながら考える一冊。一般的に言われている集団ヒステリー論は正確ではないし、中央政府は関与どころかむしろたしなめる側であった。それであってもなぜ魔女狩りは世紀をまたいで行われていたのか。
それは、中央権力に対抗する地方領主の示威行為でもあったし、農村経済が変化していく中で若い世代と守旧派との闘争の武器でもあった。
そんな、種々入り交じった魔女狩り模様をわかりやすい筆致で描いていて面白い本だ。