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紙の本
乱れた回帰線
2024/05/15 17:09
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投稿者:求道半 - この投稿者のレビュー一覧を見る
一期一会の精神は、茶道を嗜む者だけが堅持すべき理念ではなく、否定者と成った者が、後半生を送る上で、常に意識すべき処世訓である。
食卓を囲まない、殺風景な食事時でも、その場に集う者が全員、同じ釜の飯を食い、心を通わせる機会は、常人とは異なる生き方を規定された否定者にとっては、値千金の一時となる。
否定者の生涯は、一般人よりも別離の苦しみを痛感させられる、過酷な試練の連続だ。
大抵の場合、人間が否定者になる瞬間は、誰かが死ぬ時であり、その者の肉親や身近な人々が、その能力の発動により、犠牲者となる。
その能力を制御する術を身に付けた後でも、否定者は安穏な暮らしを送れない。
人権が剥奪されて、珍奇な生き物として売り買いされたり、他の否定者から命を狙われたり、死者の蘇生を試みたりして、否定者は命を落とす。
誰かと知り合った矢先に、その人は帰らぬ人となり、花を手向けるべき墓標の数だけが増え続ける。
相手が死んでいなくても、音信不通の状態が長く続き、待ち草臥れて、心が挫けそうに成る事もある。
久し振りに出会えたとしても、ものの数分で、離れ離れになるのが、否定者を束ねる者と、その人に惚れた者の宿命だ。
たとえ、その身が焼かれる痛みを感じる程に、恋焦がれていたとしても、否定者が最優先に取り組むべき課題は、神々を殺せる手立てを、早急に確立する事である。
神々の眷属は、否定者との戦いの好機を、手薬煉引いて、窺っているのだが、それを迎え撃つ側には万全の備えがあるとは言えず、敵方についての情報が不足し、味方の状勢の確認にも難儀しているのが、否定者の実情である。
だが、腹が減っては戦は出来ぬ。
日々の食事は、奇縁を結ぶ仲立ちとなる。
否定者は食を疎かにしてはならぬのだ。
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