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酒井さんの現代語訳がすいすいと読ませます。
季節の移ろいや山河について書かれたイメージが強いけれど、お寺に篭るなどどこかにお出かけするときの段が印象的でした。
あとがきの
"随筆が、どこまでも自由なジャンルであること。そして孤独とともにあること。枕草子を訳しつつ、私はそんなことを感じていました。"
という言葉もとても好きです。随筆は、心のままに何かを書くということは客観的に物事を見る必要がある。
没落したお后さま。異例だらけのお后さまである定子に仕えたからこそ得られた思い出。清少納言だからこそ得ることのできた感性がとても瑞々しいです。
定子さまだけでなく、一条天皇、斉信、行成、のちに政敵とすらなる道長でさえ、ここでは歴史上の政治家ではなくその時代を生きた人たちとして表されます。
141段の
"この草子を人が見るものとは思っていなかったので、眉をひそめられそうなことでも変なことでも、思っていることをそのまま書こうと思ったのです。"
という訳文が本当に光っています。そのまま書いたことで、1000年経っても清少納言も枕草子に出てくる人々も皆生き生きとして今の時代に現れてくれるんですね。
下巻も楽しみです。
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思いついたこと、好き嫌いをはっきり発信する女性が平安時代にもいて、それが残っているのが素晴らしい。
随筆の「随」は「なりゆきに任せる」という意味があり枕草子は作者の心の赴くがままに記された、とあるが、本当に思ったことを書いていて紫式部日記で罵倒されていた意味が少し分かった。
作品に清少納言の性格が表れていてとても面白かった。
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平安中期、一条天皇の中宮定子に仕えた清少納言が、宮中での生活を才気煥発な筆で綴った傑作随筆集。類聚、随筆、日記などの章段に分類された同書が、エスプリの効いた現代語訳で甦る。
こう、特につながりはないけど、思いついたことを並べる感じが自由気ままでいい。そして自分のことより定子さまラブなのが端々に出てきて可愛いなと思う。ご主人様のこと大好きだったんだなあ。てっきり道長のことは嫌いだと思っていたので褒めてる部分があってびっくりした。前読んだときは気が付かなかった。好きとか嫌いとかはっきりしている人の文章はキレがあって素敵。あー分かる分かるって頷きながら読んでた。今も昔も変わらないね。
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いい歳をして、いわゆる古典を殆ど読んでいない。ローマ人の物語を読み終えてから、次は何を、と考えた時に、少しずつ古典を読んでいこうと思いました。その始めは、清少納言の枕草子。
自慢話をしちゃうのも、定子様推しなのも、好きも嫌いもはっきりしているのも、私は好きだなぁ。今回、読んで気づいたのは、花、鳥、木々、虫などの文章。当たり前だけど、現代よりも静かで自然の多い所で暮らしていたのだなと気づく。音や色の表現も細かくて、同じものを見ても、全然違って見えているのではないかと思う。
平安時代と同じにものを見られるわけではないけれど、スマホを見ない時間を増やしたいなぁと思いました。もっと五感を通して、世界を見たい!そんなことを思いました。