紙の本
デビュー作などかなり貴重
2014/07/05 13:42
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投稿者:おこめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
短編をお書きにならない方なので、手に取った時はその内容にびっくり。
表題作は、私には大切な作品となりました。
かなり濃厚、でも今の人に読んでいただくには削らないといけないところもあるのでしょうね…。
不思議な体験をした事のある方、必読です。
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帚木蓬生の初期中短編3作。全てが医学もので、医学界の暗部を抉る強烈なものがある。
表題作「空の色紙」は、嫉妬をめぐる夫婦群像とでもいうのだろうか。狂気とは誰の内にでも存在すること、狂気を治療する医者の内部にさえ巣食っている事実をまざまざと突きつけてくる。そこに、戦争を交えることで、昭和というマクロと夫婦というミクロが同時に描かれていて、その広さと深さが読後感を充実したものにしてくれる。しかし、特攻で死んだ兄の色紙が実は幻だった、という終局は、なんだか稚拙さすらも感じられてしまった。それが残念。
「墟の連続切片」は、荒々しさも感じられる筆致で、ある面で「失敗作」と評されたことに納得もできる。でも、私には、その荒々しい文章、全体としての脈絡を微妙に欠いたその一編、という存在にこそ、作者の描きたい心情が投影されているようで、ドキドキし、そして鬱々としながら読み進めた。ショックだったのは、東富士の実弾演習の振動や、学校の屋上スレスレを飛ぶ軍用機に怯えた経験を持つ私が、アメリカ、そして安保反対を叫ぶ若者に共感できなかったこと。いや、それ自体には共感できた。でも、それを無視して研究活動を続ける教授陣に「それでも人間か」と迫る学生や若い医師たちの姿には共感できなかった。今の私の立場とは、彼らに近しいものであるはずなのに。米軍問題と研究活動とを結びつけるものは私の中にはない。それが、学園紛争時代と今の学生との距離なのだろう。
「頭蓋に立つ旗」は、デビュー作であり、その点節々に稚拙さの目立つ作品。しかし、医学部内部のあり方と、戦時中の人体実験や障害に苦しむ一人の人間の心情を複雑に絡ませた意欲作だと思う。淡々とした語り口の中に、切々と訴えるものがあった。これが昭和か、と感じた。
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嫉妬と狂気と愛のかたちと。
帚木さんって、本当にお医者さんらしい哲学の持ち主だなぁと思う。
初期の作品だからかちょっと散漫?
でも文体は好き。
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著者は九州で開業している精神科医。
メディカルフィクションと言うらしい。
専門医療用語は難解な面もあるが、私にはほとんどが未知の世界なので面白かった。
野次馬的興味かもしれないが・・・
「象牙の塔」と言われる医学界、医師の世界も垣間見えた。
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重さは相変わらずだが、初期短編ゆえに書評の通りやはり硬い気もする。が、箒木作品に親しい人ならば気になるほどではないだろう。
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初期の中短集。
『空の色紙』表題作
『墟の連続切片』
『頭蓋に立つ旗』
空の色紙以外の2作は何となく消化不良。
ただ一つ、学生運動が盛んに行われた時代と現代の学生の違いについて、再考する機会ができた事は収穫だったかなと。
まあ、正直疑問は尽きませんが。
戦争、論文改ざん、人体実験、学生ストといった非常に重たい話ばかりです。
人体解剖についてはとても勉強になりました。
医学分野の人にとってはそそられる場面があるかもしれません。
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自分が知らない時代の話。戦後や学生運動を舞台に生きた人たちを読むことは、いまを生きる者として損な事ではないだろう。
著者のデビュー作ということで、メディカルサスペンスではないけれど、その時代の無情は感じれた気がする。
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短編含め全3話、表題作「空の色紙」は読みやすく、登場人物の複雑な心情や、掴み切れないもどかしさが伝わる。「墟の連続切片」はなるほど初期の作品らしく、勢いが先走っていて表現が粗いため入ってこない部分が目立つ。個人的には最後の「頭蓋に立つ旗」が好きだ。石郷の無骨さはなんともイメージ通りのカタブツ教授というか、そこが逆に人間らしさを感じさせる。
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デビュー作を含めた医学もの中編3編。
戦争時代の話では、特攻隊が飛び立った場所の話や学生運動時代の話、解剖実習の具体的な話など興味深かった。
「良質の日本語で書き尽くした、面白くてためになる作品が、ひそかな目標である」あとがきより。
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2014年5月14日読了。少々内容が古いけど、心の葛藤や矛盾さの表現が好きだった。最後まで読んで、はっと気づかされる気持ちの変化。結局、心が病んでいる人もそうでない人も、境界線はないのかもしれないと、この作者にはいつも思い知らされる。
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言い回しが古かったり、専門的な記述がすぎる部分はありますが、内容的には自分の知らない時代の異常な状態での心理状態や葛藤などが読めて興味深かったです。
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精神科医の小野寺は、殺人容疑者の精神鑑定を依頼された。妻との関係を疑い、自分の息子を殺したというその男は、本当に狂気のさなかにあったのだろうか?小野寺は調査を進めながら心の動揺を覚える。実は彼自身も、ある事情のために妻への屈折した嫉妬の感情を抱きつつ生きてきたのだった―。表題作をはじめ、デビュー作「頭蓋に立つ旗」など初期の医学もの中編3編を収録。
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最初の作品を読んで"やはり帚木さん!"次を読んで"エッ?"、最後で"アリャリャ”という感じ。
空の色紙はなかなかです。第2次大戦が出てくるところも、ヒューマニスティックなところも、いかにも帚木さん。
しかしあとの2作はね。「頭蓋に立つ旗」はデビュー作だそうですが、文章にやたらと力が入っている感じですし、何がテーマなのか判り難いし、最後に力尽きたようです。「墟の連続切片」はそこまででは有りませんが、やはり何か生硬な感じがします。
とは言え、「空の色紙」の良さに免じてこの評価です。
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帚木蓬生の初期作品3作を収めた本書は、時代背景もあり、鬱屈した、しかしなにか正義の上に立ち続けたいという複雑な意思を表明しつつ環境に流されてしまうもどかしさあるいは諦めが表現されている作品である。つまり、文学的であるというよりも著者の意図が前面に立ち、言いたいことは何かあることはわかるが、分かりにくいといったある意味それが若々しさなのかもしれん、と感じたのだ。(「つまり」になっていなようだが。)
表題作『空の色紙』は精神鑑定に携わる精神科医の視点から、精神鑑定の意義を問いかけていることとは別に精神的に病むほど思い込んでしまう男女関係の疑いの恐ろしさと、精神科医といえでもその状況にはまり込んでしまう危うさを描いている。題材としても独特で、その後に続く各著作の片りんを感じさせる。
『墟の連続切片』は当時の大学医学部における諸問題と学生運動を絡めた意欲作にも思えるが、いろいろな「書きたいことが」詰め込まされているようで、結局最も言いたいことは何だったのか?よくわからなかった。(作品名も自分ではタイプできなかった)
『頭蓋に立つ旗』は医師を育てる教官が、何故そのようなスタンスをとるのか過去や自身の経験を振り返っていく物語。学生運動との関係を混ぜつつ、真の思いが別のところにあることを文学的表現にチャレンジした作品という印象。チャレンジャブルな感じが好感を持てたが、多少最後はあっさりとしている。
いずれの作品もいわゆる帚木作品とは異なるものの、そこに至る道程を垣間見ることができてそれはそれで楽しめた。
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中編3つ。一つは人間の嫉妬、一つは狂気、一つは空虚かな。人の心は清浄に保ち続けるのは難しいね…。感情とは良いものも悪いものも脳内で自然発生的に起こってしまうから扱いが大変。まぁ、発生したとしても口に出したり行動に出したりはコントロールできるのかもしれないが。